静かだった。
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音はない。
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光もない。
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ただ。
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海鳴りだけが続いている。
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そこは存在しない。
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誰にも観測されない。
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誰にも記録されない。
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それでも。
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確かに残り続けていた。
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■アムロ
「……また深くなったな」
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静かな声だった。
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長い時間。
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あまりにも長い時間を越えてきた声。
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■シャア
『深くなったんじゃない』
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一拍。
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『近付いた』
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アムロは何も言わない。
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ただ遠くを見る。
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外縁宙域。
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アマテラス。
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そして。
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境界。
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■アムロ
「始まったか」
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■シャア
『まだだ』
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『始まる前だ』
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沈黙。
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敵同士だった。
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長い時間。
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互いを憎み続けた。
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それでも。
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今はこうして同じものを見ている。
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■アムロ
「……変な話だな」
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■シャア
『何がだ』
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■アムロ
「お前と並んで同じ景色を見てる」
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ノイズが揺れる。
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■シャア
『歳を取ったんだろう』
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■アムロ
「死んでるかもしれないぞ」
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シャアが笑う。
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小さく。
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本当に小さく。
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■シャア
『その可能性は否定できんな』
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沈黙。
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だが不思議と居心地は悪くない。
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その時だった。
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映像が揺れる。
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白。
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誰も知らない機体。
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それでも。
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どこか見覚えがあった。
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■アムロ
「……いたのか」
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■シャア
『見つけたようだな』
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■アムロ
「違う」
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一拍。
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「見つけられた」
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ノイズが走る。
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白い機体。
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その双眼が。
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一瞬だけこちらを向いた。
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アムロは目を細める。
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■アムロ
「嫌な目だな」
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■シャア
『ああ』
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『迷いがない』
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映像の中。
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白い機体は静かだった。
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静か過ぎる。
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■アムロ
「そんな戦い方はしない」
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ノイズが揺れる。
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■シャア
『感情か』
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■アムロ
「違う」
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一拍。
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「人間だ」
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沈黙。
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そして。
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今度は赤。
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巨大な影。
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静かな圧力。
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見る者の心を沈めるような存在感。
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■シャア
『……来たか』
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■アムロ
「知ってるのか」
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■シャア
『いや』
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一拍。
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『だが』
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『理解できてしまう』
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アムロは何も言わない。
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その言葉だけで十分だった。
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映像が揺れる。
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今度は。
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レイジ。
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フィロメラ。
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白い光。
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そして赤。
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不安定なまま前へ進む姿。
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■アムロ
静かに息を吐く。
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「……似てないな」
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■シャア
『ああ』
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『だから面白い』
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■アムロ
「お前は変わらないな」
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■シャア
『変わったさ』
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一拍。
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『だから見ている』
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海鳴りが揺れる。
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遠く。
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本当に遠く。
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外縁宙域の向こうで。
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何かが動き始めていた。
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■アムロ
「……始まるな」
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■シャア
『ああ』
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一拍。
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『今度こそ』
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通信は途切れる。
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だが。
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海鳴りだけは消えない。
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長い時間。
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残り続けた想いのように。