機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第3巻 第9章 「接触戦域」

外縁宙域は静かだった。

 

 

警報は鳴らない。

 

 

誰もが異常を理解しているのに。

 

 

システムだけが、

何も起きていないと言い続けていた。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

ミライがモニターを見る。

 

 

「状況は?」

 

 

オペレーターは困惑していた。

 

 

「反応はあります」

 

 

「ですが……」

 

 

言葉が続かない。

 

 

「危険判定が出ません」

 

 

艦橋が静まる。

 

 

見えている。

 

 

だが。

 

 

敵として認識されない。

 

 

 

■レイジ

 

「なんだよそれ……」

 

 

嫌な汗が流れる。

 

 

敵が見えない訳じゃない。

 

 

見えている。

 

 

それなのに。

 

 

本能だけが警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

■外縁宙域

 

そこに何かがいる。

 

 

レーダーは沈黙。

 

 

センサーも沈黙。

 

 

だが。

 

 

視界だけが、

確かにそれを捉えていた。

 

 

 

空間が揺れる。

 

 

近い。

 

 

遠い。

 

 

その感覚が曖昧になる。

 

 

 

■フィロメラ

 

レイジは眉をひそめた。

 

 

「……寒い」

 

 

次の瞬間。

 

 

視界が歪む。

 

 

機体が揺れた訳じゃない。

 

 

自分がズレた。

 

 

そんな感覚だった。

 

 

「っ!」

 

 

身体が遅れて引き戻される。

 

 

レイジが歯を食いしばる。

 

 

「なんだ今の!」

 

 

 

■艦橋

 

「被弾じゃない!」

 

 

ミライの声が飛ぶ。

 

 

「空間干渉よ!」

 

 

 

■セラーナ

 

表示を睨む。

 

 

「もう接触してる……」

 

 

 

その瞬間。

 

 

視界が白く染まる。

 

 

 

誰かがいた。

 

 

 

立っている。

 

 

確かに。

 

 

だが。

 

 

見えた瞬間に消える。

 

 

 

■レイジ

 

息を呑む。

 

 

「今の……」

 

 

呼吸が浅くなる。

 

 

恐怖だった。

 

 

だが。

 

 

敵意に対する恐怖じゃない。

 

 

 

見られている。

 

 

理解されようとしている。

 

 

そんな感覚だった。

 

 

 

■フィロメラ

 

サイコフレームが赤く脈動する。

 

 

一度。

 

 

二度。

 

 

三度。

 

 

まるで何かを拒むように。

 

 

 

■レイジ

 

「来るな……」

 

 

知らず呟く。

 

 

 

その時だった。

 

 

ビームが走る。

 

 

 

フィロメラの一撃。

 

 

真っ直ぐ前へ伸びた光。

 

 

確かに届いた。

 

 

そう見えた。

 

 

 

だが。

 

 

消える。

 

 

 

レイジの目が揺れる。

 

 

「……は?」

 

 

 

■艦橋

 

ジョブがモニターを見つめる。

 

 

「当たってねぇ」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

「いや……」

 

 

ジョブの眉が寄る。

 

 

「違うな」

 

 

 

それ以上は言わない。

 

 

だが。

 

 

嫌な予感だけは確実に膨らんでいた。

 

 

 

■外縁宙域

 

何かがいる。

 

 

そこにいる。

 

 

それだけは分かる。

 

 

 

そして。

 

 

ノイズが流れ込む。

 

 

 

声じゃない。

 

 

言葉じゃない。

 

 

 

それでも。

 

 

何かが押し寄せてくる。

 

 

 

■レイジ

 

頭を押さえる。

 

 

「うるせぇ……!」

 

 

 

視界が反転する。

 

 

 

そこに誰かがいた。

 

 

 

レイジだった。

 

 

 

もう一人のレイジ。

 

 

 

静かに。

 

 

ただ静かに。

 

 

こちらを見ている。

 

 

 

■レイジ

 

喉が震える。

 

 

「……誰だ」

 

 

 

返事はない。

 

 

だが。

 

 

視線だけは消えない。

 

 

 

■艦橋

 

「レイジ!」

 

 

ミライの声。

 

 

 

「戻って!」

 

 

 

■セラーナ

 

「レイジ!」

 

 

 

声が遠い。

 

 

 

レイジは理解する。

 

 

理解したくなくても。

 

 

 

これは戦闘じゃない。

 

 

 

何かが。

 

 

こちらへ触れようとしている。

 

 

 

■外縁宙域

 

その瞬間。

 

 

レヴナントが動く。

 

 

 

初めて。

 

 

確かに。

 

 

 

■衝撃

 

フィロメラが弾かれる。

 

 

今度は明確な衝撃だった。

 

 

 

白い残光。

 

 

 

一瞬だけ。

 

 

機体の傍らへ現れる。

 

 

 

そして。

 

 

その隣。

 

 

赤い気配。

 

 

 

次の瞬間には消えている。

 

 

 

レイジの呼吸が止まる。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 

■艦橋

 

「物理衝撃確認!」

 

 

ミライが叫ぶ。

 

 

 

セラーナは表示を見つめる。

 

 

「戻ってる……」

 

 

 

「境界が……戻り始めてる」

 

 

 

■外縁宙域

 

距離が戻る。

 

 

空間が戻る。

 

 

 

だが。

 

 

あれは消えない。

 

 

 

そこにいる。

 

 

 

確かに。

 

 

存在している。

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