外縁宙域は静かだった。
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静か過ぎた。
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アマテラスは進まない。
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推進機関は正常。
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異常はない。
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それなのに。
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前へ出られない。
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まるで宇宙そのものが、
進むことを拒んでいるようだった。
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■アマテラス艦橋
警報灯だけが淡く点滅している。
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■ミライ
「反応は?」
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オペレーターの声が震えた。
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■オペレーター
「増えています」
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一拍。
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■オペレーター
「ですが……数が合いません」
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■スクリーン
暗い宙域。
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その奥。
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何かが並んでいる。
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最初は残骸に見えた。
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だが違う。
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隊列だった。
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陣形だった。
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軍隊だった。
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■レイジ
「……なんだよ、あれ」
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モニターが拡大される。
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モビルスーツ群。
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見覚えがある。
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だが違う。
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本来、
同じ場所に並ぶはずのない機体達だった。
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装甲は欠け。
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輪郭は崩れ。
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色も定まらない。
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それでも。
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確かに隊列を組んでいた。
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■セラーナ
「レヴナント……」
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小さな呟き。
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■セラーナ
「増えてる」
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■ミライ
「戦闘隊形……?」
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■オペレーター
「いえ……」
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言葉が止まる。
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■オペレーター
「違います」
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■外縁宙域
亡霊達が動く。
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静かに。
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滑るように。
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その動きには、
奇妙な既視感があった。
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■レイジ
「……っ」
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嫌な感覚が走る。
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敵を見ている感覚じゃない。
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見られている。
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そんな感覚だった。
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■ジョブ
「……嘘だろ」
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誰も反応できない。
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ジョブの顔色が変わっていた。
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■ミライ
「ジョブ?」
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■ジョブ
「この動き……」
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沈黙。
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■ジョブ
「知ってる」
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その声は掠れていた。
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一年戦争を生きた男が。
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初めて恐怖を隠せていなかった。
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■ジョブ
「連邦艦隊迎撃パターンだ……」
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艦橋が静まり返る。
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■ジョブ
「なんで……」
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「なんで残ってる……」
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■レヴナント群
隊列が変わる。
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その瞬間。
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全ての機体が。
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こちらを見る。
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■レイジ
「っ……!」
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フィロメラが反応する。
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赤い光。
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警告音。
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■セラーナ
「ダメ!」
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「見返しちゃダメ!」
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■レイジ
「何言って——」
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景色が変わる。
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燃える宇宙。
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爆発。
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悲鳴。
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怒号。
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知らない。
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知らないはずなのに。
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怖い。
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■レイジ
「ぐっ……!」
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膝をつく。
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■ジョブ
「レイジ!」
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■セラーナ
「同期侵食!」
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■ミライ
「フィロメラを切り離して!」
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■フィロメラ
応答しない。
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赤い発光だけが強くなる。
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そして。
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亡霊部隊が左右へ開く。
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道を譲るように。
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その奥。
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白い機体。
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ガンダム。
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白銀。
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淡蒼。
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深紅。
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色が揺れている。
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存在そのものが定まらない。
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だが。
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目を離せない。
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■ジョブ
「……なんだ、あれは」
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■セラーナ
「違う……」
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■セラーナ
「観測記録にない」
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白い機体の双眼が光る。
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青白く。
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そして深紅へ。
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その瞬間。
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レイジの呼吸が止まる。
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知らない。
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だが。
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なぜか目を逸らせなかった。
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■ジョブ
「……アムロじゃない」
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一拍。
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■ジョブ
「だが……」
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言葉が続かない。
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■終端ログ
『上位レヴナント反応 確認』
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『暫定識別名称』
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『ノーネームガンダム』
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その瞬間。
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白い機体が消える。
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■レイジ
「——っ!」
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白い閃光。
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気付いた時には。
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フィロメラの目前に立っていた。