機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第3巻 第10章 「亡霊部隊」

外縁宙域は静かだった。

 

 

静か過ぎた。

 

 

アマテラスは進まない。

 

 

推進機関は正常。

 

 

異常はない。

 

 

それなのに。

 

 

前へ出られない。

 

 

まるで宇宙そのものが、

進むことを拒んでいるようだった。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

警報灯だけが淡く点滅している。

 

 

■ミライ

 

「反応は?」

 

 

オペレーターの声が震えた。

 

 

■オペレーター

 

「増えています」

 

 

一拍。

 

 

■オペレーター

 

「ですが……数が合いません」

 

 

 

■スクリーン

 

暗い宙域。

 

 

その奥。

 

 

何かが並んでいる。

 

 

最初は残骸に見えた。

 

 

だが違う。

 

 

隊列だった。

 

 

陣形だった。

 

 

軍隊だった。

 

 

 

■レイジ

 

「……なんだよ、あれ」

 

 

モニターが拡大される。

 

 

モビルスーツ群。

 

 

見覚えがある。

 

 

だが違う。

 

 

本来、

同じ場所に並ぶはずのない機体達だった。

 

 

装甲は欠け。

 

 

輪郭は崩れ。

 

 

色も定まらない。

 

 

それでも。

 

 

確かに隊列を組んでいた。

 

 

 

■セラーナ

 

「レヴナント……」

 

 

小さな呟き。

 

 

■セラーナ

 

「増えてる」

 

 

 

■ミライ

 

「戦闘隊形……?」

 

 

■オペレーター

 

「いえ……」

 

 

言葉が止まる。

 

 

■オペレーター

 

「違います」

 

 

 

■外縁宙域

 

亡霊達が動く。

 

 

静かに。

 

 

滑るように。

 

 

 

その動きには、

奇妙な既視感があった。

 

 

 

■レイジ

 

「……っ」

 

 

嫌な感覚が走る。

 

 

敵を見ている感覚じゃない。

 

 

見られている。

 

 

そんな感覚だった。

 

 

 

■ジョブ

 

「……嘘だろ」

 

 

誰も反応できない。

 

 

ジョブの顔色が変わっていた。

 

 

 

■ミライ

 

「ジョブ?」

 

 

 

■ジョブ

 

「この動き……」

 

 

沈黙。

 

 

■ジョブ

 

「知ってる」

 

 

 

その声は掠れていた。

 

 

一年戦争を生きた男が。

 

 

初めて恐怖を隠せていなかった。

 

 

 

■ジョブ

 

「連邦艦隊迎撃パターンだ……」

 

 

艦橋が静まり返る。

 

 

■ジョブ

 

「なんで……」

 

 

「なんで残ってる……」

 

 

 

■レヴナント群

 

隊列が変わる。

 

 

その瞬間。

 

 

全ての機体が。

 

 

こちらを見る。

 

 

 

■レイジ

 

「っ……!」

 

 

フィロメラが反応する。

 

 

赤い光。

 

 

警告音。

 

 

 

■セラーナ

 

「ダメ!」

 

 

「見返しちゃダメ!」

 

 

 

■レイジ

 

「何言って——」

 

 

 

景色が変わる。

 

 

燃える宇宙。

 

 

爆発。

 

 

悲鳴。

 

 

怒号。

 

 

 

知らない。

 

 

知らないはずなのに。

 

 

怖い。

 

 

 

■レイジ

 

「ぐっ……!」

 

 

膝をつく。

 

 

 

■ジョブ

 

「レイジ!」

 

 

 

■セラーナ

 

「同期侵食!」

 

 

 

■ミライ

 

「フィロメラを切り離して!」

 

 

 

■フィロメラ

 

応答しない。

 

 

赤い発光だけが強くなる。

 

 

 

そして。

 

 

亡霊部隊が左右へ開く。

 

 

道を譲るように。

 

 

 

その奥。

 

 

白い機体。

 

 

ガンダム。

 

 

 

白銀。

 

 

淡蒼。

 

 

深紅。

 

 

色が揺れている。

 

 

存在そのものが定まらない。

 

 

 

だが。

 

 

目を離せない。

 

 

 

■ジョブ

 

「……なんだ、あれは」

 

 

 

■セラーナ

 

「違う……」

 

 

■セラーナ

 

「観測記録にない」

 

 

 

白い機体の双眼が光る。

 

 

青白く。

 

 

そして深紅へ。

 

 

 

その瞬間。

 

 

レイジの呼吸が止まる。

 

 

知らない。

 

 

だが。

 

 

なぜか目を逸らせなかった。

 

 

 

■ジョブ

 

「……アムロじゃない」

 

 

一拍。

 

 

■ジョブ

 

「だが……」

 

 

言葉が続かない。

 

 

 

■終端ログ

 

『上位レヴナント反応 確認』

 

 

『暫定識別名称』

 

 

『ノーネームガンダム』

 

 

 

その瞬間。

 

 

白い機体が消える。

 

 

 

■レイジ

 

「——っ!」

 

 

 

白い閃光。

 

 

 

気付いた時には。

 

 

フィロメラの目前に立っていた。

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