機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第6章 「未接続」

外縁宙域。

 

 

二つの現実は、

まだ壊れていない。

 

 

だが、

それは安定ではなかった。

 

 

■“固定された不安定”

 

 

 

フィロメラガンダムが揺れる。

 

 

サイコフレームは、

二重発光を維持したまま不安定に脈動していた。

 

 

白。

 

 

赤。

 

 

交わらず。

 

離れず。

 

 

まるで、

互いを拒絶しながら繋がっている。

 

 

 

■レイジ

 

「……まだ続いてる」

 

 

コクピット内部へ、

断続的な感情流入が走る。

 

 

終わった戦争。

 

 

終わらない戦争。

 

 

その両方が、

まだ存在していた。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

警報は鳴っていない。

 

 

だが、

誰も安心していなかった。

 

 

空間波形は、

不安定な均衡状態を示し続けている。

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「分岐は維持されています……でも」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「でもこれは“安定”じゃない」

 

 

モニターを見つめたまま、

静かに続ける。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“決着できない状態”を

維持してるだけ」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「時間の問題だな」

 

 

 

ブライト領域。

 

 

拘束された艦影。

 

 

その存在は、

静かに“負荷”を受け続けていた。

 

 

空間の歪みが、

艦体へ断続的に干渉している。

 

 

だが。

 

 

ブライト・ノアだけは、

未だ崩れていない。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「そろそろ来るぞ」

 

 

 

■レイジ

 

「来るって……

何が?」

 

 

 

■核

 

反応が変わる。

 

 

“拒絶”ではない。

 

 

“迷い”でもない。

 

 

■観測

 

 

 

■シャア残響

 

『見ているな』

 

 

 

■アムロ残響

 

『もう一つ増えた』

 

 

 

■レイジ

 

「増えた……?」

 

 

 

その瞬間。

 

 

空間が、

わずかに“呼吸”する。

 

 

通信ではない。

 

 

もっと曖昧な、

“気配”だけが届く。

 

 

 

■セイラ・マス

 

「……まだ揺れているのね」

 

 

遠い宇宙。

 

 

届かない場所。

 

 

だが。

 

 

確かに感じる。

 

 

 

背後から足音。

 

 

■少女

 

「お母様」

 

 

セイラが振り返る。

 

 

そこには少女が立っていた。

 

 

その後ろ。

 

 

困ったような顔をした執事の姿。

 

 

■マルク・ハインツ

 

「お嬢様……」

 

 

■マルク・ハインツ

 

「盗み聞きはいけません」

 

 

 

■少女

 

「聞こえたのよ」

 

 

 

■セイラ・マス

 

「聞いていたの?」

 

 

 

■少女

 

「全部じゃないわ」

 

 

一拍。

 

 

■少女

 

「でも分かる」

 

 

「レイジが苦しんでる」

 

 

 

沈黙。

 

 

■少女

 

「行くわ」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「却下です」

 

 

 

即答だった。

 

 

■少女

 

「まだ何も言ってない」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「危険です」

 

 

 

■少女

 

「だから行くの」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「だから行かせません」

 

 

 

少女は真っ直ぐセイラを見る。

 

 

■少女

 

「もし迷っても」

 

 

「きっとお母様が迎えに来てくれる」

 

 

 

セイラの瞳が揺れる。

 

 

それは信頼だった。

 

 

■セイラ・マス

 

「そうね」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「奥様まで……」

 

 

 

セイラは小さく微笑む。

 

 

■セイラ・マス

 

「お願いね」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「何をです?」

 

 

 

■セイラ・マス

 

「この子を」

 

 

 

風が揺れる。

 

 

遠い宇宙。

 

 

届かない場所。

 

 

そこへ向けて。

 

 

■セイラ・マス

 

「レイジを助けてあげて」

 

 

 

気配が消える。

 

 

■レイジ

 

「……今のは?」

 

 

 

■ブライト

 

「気にするな」

 

 

 

■レイジ

 

「でも……」

 

 

 

■核

 

揺れが、

一瞬だけ“収束”する。

 

 

だが。

 

 

すぐに崩れる。

 

 

 

■シャア残響

 

『まだ隠しているか』

 

 

 

■アムロ残響

 

『その方がいい』

 

 

 

外縁宙域。

 

 

戦場ログが、

わずかに乱れる。

 

 

だが、

それは戦闘ではない。

 

 

■認識のズレ

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「今の通信……」

 

 

「何かが“見てる”」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“見られている側”じゃない」

 

 

「“見ている存在”が未確定なの」

 

 

 

■レイジ

 

「意味わかんねぇよ……」

 

 

 

■ブライト

 

「それでいい」

 

 

 

ブライトが、

静かに前を見る。

 

 

■ブライト・ノア

 

「分からないものを」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「無理に理解しようとするな」

 

 

■ブライト・ノア

 

「見える時は来る」

 

 

 

■核

 

静かに脈動。

 

 

その揺れが、

わずかに変質する。

 

 

 

微小ノイズ。

 

 

アマテラス艦内通信が、

一瞬だけ途切れる。

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「……今、何か……」

 

 

「一瞬、消えた?」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「通信じゃない」

 

 

モニターの一部が、

欠け落ちる。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“空間の欠損”よ」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来るぞ」

 

 

低く呟く。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「次は“観測”じゃない」

 

 

 

ブライトが、

静かに言う。

 

 

■ブライト・ノア

 

「“触れる側”だ」

 

 

 

フィロメラの光が、

一瞬だけ消える。

 

 

白。

 

 

赤。

 

 

その両方が、

同時に“欠ける”。

 

 

 

『外部干渉:未命名存在』

 

『観測状態:未固定』

 

『局所欠損:発生予兆』

 

『レヴナント:反応継続』

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