機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第7章 「干渉」

外縁宙域。

 

 

二つの現実は、

まだ壊れていない。

 

 

だが、

それは“安定”ではなかった。

 

 

■均衡ではなく、摩擦の継続

 

 

 

フィロメラガンダムが揺れる。

 

 

サイコフレームは、

赤と白を同時維持したまま脈動していた。

 

 

だが。

 

 

その境界へ、

微細な“ノイズ”が走る。

 

 

白でもない。

 

赤でもない。

 

 

“欠けた色”。

 

 

 

■レイジ

 

「……まだ分かれてる」

 

 

その瞬間。

 

 

艦内警報。

 

 

■■■■■■■■■■

 

「第3層座標、欠損」

 

「外部ユニット、消失」

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

■レイジ

 

「……は?」

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「今の……通信じゃない!」

 

 

モニターを見つめたまま、

顔色が変わる。

 

 

■ミライ・ノア

 

「存在データが……

抜けた!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う」

 

 

低い声。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“消された”のよ」

 

 

 

ジョブ・ジョンが、

静かに目を細める。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来たな」

 

 

一拍。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「観測じゃない」

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「開始だ」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

空間が、

薄く“剥がれる”。

 

 

まるで。

 

 

世界の表面だけが、

削られていく。

 

 

その瞬間——

 

 

■ジム隊(層A)

 

一機、消失。

 

 

爆発なし。

 

 

残骸なし。

 

 

最初から、

そこに存在しなかったように消える。

 

 

 

■レイジ

 

「……おい」

 

 

■レイジ

 

「今の……

どこ行った……?」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「記録ごと抜けてる」

 

 

モニターの一部が、

白く欠ける。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「戦闘じゃない……」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“欠落”よ」

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

モニター上に、

異常空白領域が発生する。

 

 

■ミライ・ノア

 

「観測ログに空白が……!」

 

 

「そこだけ……

“存在してない”!」

 

 

 

■ギラ・ドーガ(層B)

 

静止状態のまま、

一機消失。

 

 

今度は、

戦闘中ですらない。

 

 

ただ。

 

 

“優先順位から外された”

ように消える。

 

 

 

■レイジ

 

「動いてねぇのに……!」

 

 

■レイジ

 

「なんで消えるんだよ!!」

 

 

 

■シャア残響

 

『見えるな』

 

 

 

■アムロ残響

 

『始まった』

 

 

 

だが。

 

 

今の声は、

“過去”ではない。

 

 

もっと近い。

 

 

もっと、

現在へ寄ってきている。

 

 

 

■セイラ・マス(干渉)

 

「……もう、

削り始めている」

 

 

 

地球。

 

 

白い館。

 

 

窓の向こうで、

海が静かに揺れていた。

 

 

セイラは、

遠い宇宙を見つめている。

 

 

見えている訳ではない。

 

 

だが。

 

 

確かに感じていた。

 

 

何かが始まった事を。

 

 

 

■少女

 

「お母様……?」

 

 

セイラが振り返る。

 

 

そこには少女が立っていた。

 

 

その表情には、

隠しきれない不安が浮かんでいる。

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「お嬢様」

 

 

静かな声。

 

 

だが。

 

 

マルク自身も、

事態の変化を感じていた。

 

 

 

■少女

 

「レイジが……?」

 

 

 

セイラは答えない。

 

 

答えられない。

 

 

まだ遠すぎる。

 

 

まだ届かない。

 

 

だが。

 

 

確かな事があった。

 

 

■セイラ・マス

 

「急がないと」

 

 

 

少女が息を呑む。

 

 

■少女

 

「私も行く」

 

 

 

■マルク・ハインツ

 

「お嬢様」

 

 

即座だった。

 

 

■マルク・ハインツ

 

「危険です」

 

 

 

■少女

 

「分かってる」

 

 

 

一拍。

 

 

■少女

 

「でも」

 

 

「レイジが呼んでる」

 

 

 

沈黙。

 

 

マルクは言葉を失う。

 

 

セイラは、

ただ少女を見つめていた。

 

 

 

■セイラ・マス

 

「そうね」

 

 

 

少女が顔を上げる。

 

 

■セイラ・マス

 

「迎えに行きましょう」

 

 

 

風が吹く。

 

 

遠い宇宙。

 

 

届かない場所。

 

 

そこではもう。

 

 

何かが削られ始めていた。

 

 

 

■レイジ

 

「またこの声……!」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「違う」

 

 

小さく首を振る。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「今のは“中”だ」

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「中……?」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「外部じゃない」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「戦場そのものが、

侵入されてる」

 

 

 

ブライト領域。

 

 

拘束艦体が、

わずかに軋む。

 

 

空間負荷が、

急速に上昇していた。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「……やはりか」

 

 

 

■レイジ

 

「ブライトさん!」

 

 

■レイジ

 

「何が起きてるんだよ!!」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「現実が、

“選別”を始めている」

 

 

 

■レイジ

 

「選別って……

誰をだよ」

 

 

 

■核

 

沈黙。

 

 

だがその沈黙は、

明確な“判断”を含んでいた。

 

 

 

■シャア残響

 

『残すか』

 

 

 

■アムロ残響

 

『消すか』

 

 

 

■レイジ

 

「ふざけんな……!」

 

 

■レイジ

 

「そんなの、

勝手に決めんな!!」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

空間が、

一瞬だけ停止する。

 

 

時間ではない。

 

 

“認識”が止まる。

 

 

そして次の瞬間。

 

 

■ジム・コマンド(層A)

 

消失。

 

 

今度は、

戦闘直前。

 

 

引き金を引く前に、

存在そのものが消える。

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「また……!」

 

 

「間引かれてる……!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う」

 

 

低く否定する。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“存在の優先順位”を

決められてる」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「侵食じゃない」

 

 

 

空間の奥。

 

 

まだ名前を持たない“影”。

 

 

だが。

 

 

もう、

“見ているだけ”ではない。

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「意思だ」

 

 

 

■レイジ

 

「……来てる」

 

 

 

■ブライト

 

「いいか、レイジ」

 

 

 

■レイジ

 

「なんですか」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「これは戦争じゃない」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「“削除だ”」

 

 

 

■レイジ

 

「削除……?」

 

 

 

微小ノイズ。

 

 

アマテラス艦内通信が、

一瞬だけ乱れる。

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「今、消えたの……

何機目……?」

 

 

沈黙。

 

 

誰も答えられない。

 

 

記録だけではない。

 

 

認識そのものが、

削れている。

 

 

 

■核

 

わずかに反応。

 

 

■“選別継続”

 

 

 

フィロメラのサイコフレームへ、

黒いノイズが混ざる。

 

 

白。

 

 

赤。

 

 

そして。

 

 

“欠落”。

 

 

 

『外部干渉:侵入確定』

 

『戦場層:局所欠損進行』

 

『存在ログ:削除発生』

 

『レヴナント:選別フェーズ』

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