機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第9章 「錨離脱」

外縁宙域・核接触領域。

 

 

三層化した戦場は、

まだ崩壊していない。

 

 

だが、

それは安定ではなかった。

 

 

■“維持されているだけの限界構造”

 

 

 

フィロメラが震える。

 

 

サイコフレーム。

 

 

赤。

 

白。

 

影。

 

 

三層の光が、

わずかに同期ズレを起こし始めていた。

 

 

空間そのものが、

現在の構造を拒絶している。

 

 

 

■レイジ

 

「……もう持たねぇぞ、これ」

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

空間波形が、

急激に乱れ始める。

 

 

■ミライ・ノア

 

「三層同期率、急低下!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「限界じゃない……」

 

 

モニターを睨みながら、

低く言う。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“拒否反応”よ」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「この空間が、

今の構造を維持するのを嫌がってる」

 

 

 

ジョブ・ジョンが、

静かに息を吐く。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「核が答えを出したな」

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

■ブライト領域

 

拘束された艦体が、

わずかに“沈む”。

 

 

物理的ではない。

 

 

“意味の重さ”が、

落ちていく。

 

 

ブライト・ノアという存在が、

戦場定義から外れ始めていた。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「……ようやくか」

 

 

 

■レイジ

 

「ブライトさん!!?」

 

 

 

その呼びかけに、

空間が一瞬だけ揺れる。

 

 

■核

 

“錨不要”

 

 

“観測終了”

 

 

“構造維持条件:解除”

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う……!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「これ排除じゃない!」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“切り離し”よ!!」

 

 

 

■シャア残響

 

『終わるか』

 

 

 

■アムロ残響

 

『いや……』

 

 

一瞬の沈黙。

 

 

■アムロ残響

 

『戻るためだ』

 

 

 

空間中心部。

 

 

ブライトの存在が、

ゆっくり浮き上がる。

 

 

引き上げられているのではない。

 

 

■“戦場の基準から外れていく”

 

 

 

■レイジ

 

「ふざけんな!!」

 

 

■レイジ

 

「錨って言っただろ!!」

 

 

 

ブライトが、

静かに目を閉じる。

 

 

■ブライト・ノア

 

「錨はもう必要ない」

 

 

 

■レイジ

 

「まだ終わってねぇだろ!!」

 

 

 

その瞬間。

 

 

フィロメラのサイコフレームが、

一瞬だけ“純白”へ変わる。

 

 

赤でもない。

 

影でもない。

 

 

■“人間の重さだけの光”

 

 

 

■ブライト

 

「レイジ」

 

 

 

■レイジ

 

「……!」

 

 

 

■ブライト

 

「奪還ってのはな」

 

 

一拍。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「“元に戻すこと”じゃない」

 

 

 

■レイジ

 

「……?」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「“戻れる場所を残すこと”だ」

 

 

 

■核

 

停止。

 

 

いや。

 

 

■“空白”

 

 

 

核の脈動が消える。

 

 

問い。

 

判断。

 

選別。

 

 

その全てが、

一瞬だけ失われる。

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「核が……

意味を失ってる……?」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「いや」

 

 

小さく首を振る。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「これは、

“次の段階へ行く前の無定義”だ」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「今だ」

 

 

■ブライト・ノア

 

「ここが境界だ」

 

 

 

■レイジ

 

「……行く」

 

 

 

フィロメラが跳ねる。

 

 

三層構造。

 

 

その“継ぎ目”が裂ける。

 

 

空間が、

定義を失い始める。

 

 

 

■レイジ

 

「ブライトさん!!」

 

 

 

ブライトは、

もう振り返らない。

 

 

ただ。

 

 

一言だけ。

 

 

■ブライト・ノア

 

「頼んだぞ」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

戦場が、

“音を失う”。

 

 

爆発が止まる。

 

 

違う。

 

 

“爆発という現象”が、

意味を失う。

 

 

ビーム。

 

衝撃。

 

破壊。

 

 

その全てが、

一瞬だけ“定義不能”になる。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

■ミライ・ノア

 

「戦闘反応……

消失してます!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う……」

 

 

モニターの表示が、

白く抜け落ちていく。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「消えたんじゃない」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“再定義の空白”に入った」

 

 

 

■核

 

沈黙。

 

 

しかし。

 

 

それは終わりではない。

 

 

■“問いが消えた沈黙”

 

 

 

■シャア残響

 

『……ほう』

 

 

 

■アムロ残響

 

『行ったか』

 

 

 

フィロメラの純白が、

静かに揺れる。

 

 

赤。

 

 

影。

 

 

その全てを飲み込みながら、

“まだ名前のない光”へ変わり始めていた。

 

 

『錨機能:完全解除』

 

『戦場構造:未定義領域移行』

 

『核:空白化』

 

『レヴナント:再編準備状態』

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