機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第12章 「観測戦」

外縁宙域。

 

 

再接触した未接続領域は、

もはや沈黙していない。

 

 

■呼吸している

 

 

だが。

 

 

その呼吸は、

人間のものではなかった。

 

 

 

■レイジ

 

「……また来るぞ」

 

 

フィロメラが震える。

 

 

サイコフレーム。

 

 

赤。

 

白。

 

 

その狭間を走る“線”が、

二方向へ引き裂かれる。

 

 

まるで。

 

 

別々の現実が、

同時にレイジを掴もうとしている。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

空間波形が、

急速に乱れ始める。

 

 

■ミライ・ノア

 

「空間固定率低下!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う」

 

 

静かに否定する。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「固定じゃない」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“観測が分裂してる”」

 

 

 

ジョブ・ジョンが、

低く息を吐く。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「始まったな」

 

 

一瞬の沈黙。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「コルヴスとシャルの

“本気”だ」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

空間の片側が、

静かに“冷える”。

 

 

もう片側が、

重く沈み込む。

 

 

空間が重い。

 

 

違う。

 

 

“どちらの現実へ落ちるか”

を迫られている。

 

 

 

■コルヴス領域

 

『対象確認』

 

 

『レイジ・機体・未定義干渉』

 

 

 

■シャル領域

 

『再構築開始』

 

 

『戦場ログ優先』

 

 

 

■レイジ

 

「……また分かれた」

 

 

一拍。

 

 

■レイジ

 

「今度は空間じゃねぇ」

 

 

■レイジ

 

「“見られ方”が分かれてる」

 

 

 

フィロメラ。

 

 

赤側が、

“戦場”へ引っ張られる。

 

 

白側が、

“静止”へ引っ張られる。

 

 

その間で――

 

 

■レイジごと引き裂かれている

 

 

 

レイジの輪郭が揺れる。

 

 

人間。

 

 

兵器。

 

 

観測対象。

 

 

その全てが、

同時に重なっている。

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「いいかレイジ」

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「お前は今、

“存在を二つのルールで観測されてる”」

 

 

 

■レイジ

 

「意味わかんねぇってそれ!!」

 

 

 

■シャア残響

 

『戦場として見れば、

戦場になる』

 

 

 

■アムロ残響

 

『人間として見れば、

人間になる』

 

 

 

■レイジ

 

「どっちだよ!!」

 

 

 

その瞬間。

 

 

“第三の揺れ”が入る。

 

 

 

■ブライト残響(強化)

 

『どちらでもない』

 

 

 

■レイジ

 

「ブライトさん……!」

 

 

 

■ブライト残響

 

『“立つ場所”だ』

 

 

 

外縁宙域。

 

 

二つの観測が、

一瞬だけ“ズレる”。

 

 

 

■コルヴス

 

『干渉発生』

 

 

 

■シャル

 

『同期破綻』

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「今の……!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「観測の優先順位が崩れた!」

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「レイジの存在が……!」

 

 

■ミライ・ノア

 

「“一つに戻ってる”!」

 

 

 

■レイジ

 

「……戻ってる?」

 

 

 

だが次の瞬間。

 

 

空間が、

再び“圧”を持つ。

 

 

 

■コルヴス

 

『観測強化』

 

 

 

■シャル

 

『再固定開始』

 

 

 

■レイジ

 

「まだ終わってねぇのかよ!!」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「当然だ」

 

 

一拍。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「これは戦闘じゃない」

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「“現実の奪い合い”だ」

 

 

 

フィロメラが、

悲鳴のように発光する。

 

 

赤と白が、

境界で固定される。

 

 

その中央。

 

 

■“誰でもない影”

 

 

 

■レイジ

 

「……来てる」

 

 

 

影層。

 

 

言葉ではない。

 

 

だが。

 

 

確かに、

“選ぼうとしている”。

 

 

■どちらの観測に従うか

 

 

 

■レイジ

 

「ふざけんな……」

 

 

■レイジ

 

「俺は俺だろ……!」

 

 

 

■コルヴス

 

『定義:戦場優先』

 

 

 

■シャル

 

『定義:記録優先』

 

 

 

■ブライト残響

 

『違う』

 

 

 

■レイジ

 

「違う……?」

 

 

 

■ブライト残響

 

『“まだ決まっていない”』

 

 

 

沈黙。

 

 

空間が、

一瞬だけ止まる。

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「今……

止めた?」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「いや」

 

 

小さく首を振る。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「“保留”にした」

 

 

 

■レイジ

 

「保留って……

どうやってだよ」

 

 

 

■ブライト残響

 

『立て』

 

 

 

■レイジ

 

「……立ってるよ」

 

 

 

■ブライト残響

 

『違う』

 

 

一拍。

 

 

■ブライト残響

 

『“どちらの立場にも属さずに立て”』

 

 

 

その瞬間。

 

 

フィロメラの赤と白が、

初めて“同時に均衡”する。

 

 

 

■コルヴス

 

『エラー』

 

 

 

■シャル

 

『未定義状態』

 

 

 

外縁宙域。

 

 

戦場が止まる。

 

 

だが。

 

 

今度は静止ではない。

 

 

■“未確定の安定”

 

 

 

■レイジ

 

「……できんのかよ、

こんなの」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「できるようにしたのが、

ブライトだ」

 

 

 

フィロメラの均衡光が、

静かに脈動する。

 

 

赤でもない。

 

 

白でもない。

 

 

だが。

 

 

そのどちらでもある光。

 

 

そして中央で、

“まだ名前を持たない影”が揺れていた。

 

 

『観測戦:競合状態』

 

『レイジ:未定義安定化』

 

『コルヴス/シャル:再演算中』

 

『レヴナント:観測依存化』

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