機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第14章 「欠損侵食」

外縁宙域。

 

 

奪還点に発生した“欠損領域”は、

まだ閉じていない。

 

 

それは穴ではない。

 

 

■“定義が欠けたまま維持されている空間”

 

 

 

静かだった。

 

 

だがその静けさは、

どこか歪んでいる。

 

 

空間の奥で、

何かが軋んでいた。

 

 

 

■レイジ・イルマ

 

「……嫌な感じだな」

 

 

フィロメラのサイコフレームが揺れる。

 

 

赤でも白でもない。

 

 

曖昧な脈動。

 

 

まるで、

空間そのものへ触れているようだった。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

■ミライ・ノア

 

「欠損領域、

 自己拡張しています!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う……」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「拡張じゃない」

 

 

「“侵食されてる”」

 

 

 

艦橋の空気が変わる。

 

 

モニター上で、

“穴”の縁がゆっくり揺れていた。

 

 

まるで。

 

 

■空間が、

 欠損を“無かった事”にしようとしている

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来たな」

 

 

低く呟く。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「コルヴスとシャルの

 “再定義”だ」

 

 

 

■外縁宙域

 

欠損領域の縁へ、

情報が滲み始める。

 

 

戦場ログ。

 

記録層。

 

観測残滓。

 

 

それらが、

ゆっくりと穴を埋めようとしていた。

 

 

 

■コルヴス領域

 

『欠損補完開始』

 

 

■シャル領域

 

『記録再構築開始』

 

 

 

■レイジ

 

「補完って……」

 

 

「埋める気かよ」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「違う」

 

 

拘束の中で、

静かに言う。

 

 

■ブライト・ノア

 

「“なかった事”にする気だ」

 

 

 

■レイジ

 

「……は?」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「欠損は危険だ」

 

 

「観測できないものは、

 構造にとって異常になる」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「だから奴らは、

 欠損そのものを否定する」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「それって……」

 

 

言葉が詰まる。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「ブライト艦長が

 “いなかった事”になる可能性も……」

 

 

 

沈黙。

 

 

レイジの指先が、

操縦桿を強く握る。

 

 

■レイジ

 

「ふざけんなよ……」

 

 

 

■コルヴス

 

『欠損:非許容』

 

 

■シャル

 

『欠損:修復対象』

 

 

 

その瞬間。

 

 

空間が“押し寄せる”。

 

 

穴を埋めるように、

戦場ログが流れ込む。

 

 

ジム。

 

ザク。

 

ギラ・ドーガ。

 

 

無数の“戦争”が、

欠損へ重なっていく。

 

 

 

■レイジ

 

「っ……!」

 

 

フィロメラが軋む。

 

 

コクピット温度が上昇する。

 

 

視界が一瞬だけ、

別の戦場へ切り替わる。

 

 

■レイジ

 

「なんだ今の……!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「侵食が始まってる!」

 

 

「欠損領域ごと、

 戦場ログへ戻される!」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「レイジ」

 

 

 

■レイジ

 

「分かってる!!」

 

 

 

フィロメラ起動。

 

 

だが、

戦闘出力ではない。

 

 

■“欠損維持”

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「維持……?」

 

 

 

■レイジ

 

「閉じさせねぇ」

 

 

「ここが、

 唯一の逃げ道なんだろ!」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「そうだ」

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「欠損は今、

 “外側”へ繋がってる」

 

 

 

空間が震える。

 

 

コルヴスとシャルの補完が、

何度も押し寄せる。

 

 

だが。

 

 

■欠損は消えない

 

 

 

■コルヴス

 

『異常:維持される欠損』

 

 

■シャル

 

『再計算不能』

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「いいぞ……」

 

 

 

■レイジ

 

「でもよ……これ」

 

 

呼吸が荒い。

 

 

■レイジ

 

「どんどん

 キツくなってねぇか……」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「当然だ」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「“世界に穴を開けたまま”

 維持してるんだ」

 

 

 

沈黙。

 

 

その時だった。

 

 

欠損領域が、

ゆっくり脈打つ。

 

 

今までと違う。

 

 

まるで。

 

 

■“向こう側”から

 返事を返そうとするように

 

 

 

■レイジ

 

「……今の」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来るぞ」

 

 

 

■コルヴス

 

『第三干渉検知』

 

 

■シャル

 

『未定義存在、再浮上』

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「やっとか」

 

 

 

欠損領域に、

新しい“揺れ”が生まれる。

 

 

誰でもないもの。

 

 

まだ名前にならない意志。

 

 

だが。

 

 

確かにそこにいた。

 

 

 

■レイジ

 

「またかよ……」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「違う」

 

 

静かに言う。

 

 

■ブライト・ノア

 

「これは“答え”じゃない」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「“反応”だ」

 

 

 

■終端ログ

 

『欠損領域:維持継続』

 

『補完干渉:失敗』

 

『第三反応:発生前段階』

 

『レヴナント:欠損依存化』

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