機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第4巻 第20章 「境界」

外縁宙域。

 

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未接続領域は、

静かだった。

 

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だが。

 

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その静けさは、

崩壊前の沈黙に近い。

 

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■境界が薄くなっている

 

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■レイジ

 

「……まただ」

 

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フィロメラのコクピット。

 

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微かな“遅延”が発生する。

 

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違う。

 

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レイジが動かす前に、

サイコフレームが反応している。

 

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■レイジ

 

「先に動いてやがる……!」

 

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■アマテラス艦橋

 

制御波形が乱れる。

 

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■ミライ・ノア

 

「フィロメラ制御系、

誤作動!」

 

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■セラーナ・カーン

 

「違う……」

 

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静かに否定する。

 

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■セラーナ・カーン

 

「“共有”され始めてる」

 

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ジョブ・ジョンが、

低く息を吐く。

 

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■ジョブ・ジョン

 

「境界が

消えてきたな」

 

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外縁宙域。

 

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戦場ログが揺らぐ。

 

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• 継続する戦争

• 終わる戦争

• 未定義反射

 

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三層構造。

 

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それらが、

完全に分離できなくなり始めていた。

 

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■レイジ

 

「おい……」

 

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視界の端。

 

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誰かの背中。

 

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白い光。

 

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遠い宇宙。

 

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だが。

 

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輪郭が定まらない。

 

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■???

 

『……そこに、いるの?』

 

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■レイジ

 

「またお前か!!」

 

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フィロメラが強く発光する。

 

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赤。

 

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白。

 

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影。

 

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三色が、

一瞬だけ同期する。

 

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■ミライ・ノア

 

「出力急上昇!!」

 

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■セラーナ・カーン

 

「危険……!」

 

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波形を見る。

 

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■セラーナ・カーン

 

「反射が、

レイジ側へ流れ込んでる!」

 

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■レイジ

 

「流れ込むって

なんだよ!!」

 

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■ジョブ・ジョン

 

「向こうも

境界を失ってる」

 

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レイジが瞬きをする。

 

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その直後。

 

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■欠損領域も、

同じ間隔で“瞬く”

 

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■レイジ

 

「っ……!」

 

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■ブライト領域

 

拘束艦体の周囲に、

亀裂のようなノイズ。

 

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■ブライト・ノア

 

「早いな……」

 

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■レイジ

 

「ブライトさん!」

 

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■ブライト・ノア

 

「本来なら、

もっと段階を踏む」

 

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一拍。

 

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■ブライト・ノア

 

「だが“向こう”は急いでいる」

 

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■アムロ残響

 

『焦っているな』

 

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■シャア残響

 

『自分を失う前にな』

 

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■レイジ

 

「意味わかんねぇよ……!」

 

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欠損領域。

 

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“影”が揺れる。

 

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その揺れは、

以前より人間に近い。

 

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だが。

 

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決定的に違う。

 

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■まだ“名前”がない

 

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■???

 

『……わたしは』

 

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空間が軋む。

 

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その瞬間。

 

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戦場全域に、

ノイズが走る。

 

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■セラーナ・カーン

 

「まずい!!」

 

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■セラーナ・カーン

 

「自己定義を始めてる!」

 

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■ジョブ・ジョン

 

「来るぞ」

 

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■レイジ

 

「何が!!」

 

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■ブライト・ノア

 

「“個”になろうとしている」

 

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その瞬間。

 

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別方向から、

通信が割り込む。

 

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■ベルトーチカ

 

「アムロ!!」

 

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空間が止まる。

 

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■ベルトーチカ

 

「戻ってきて!!」

 

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■ベルトーチカ

 

「あなたはまだ――」

 

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ノイズ。

 

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それでも、

声だけは消えない。

 

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沈黙。

 

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■シャア残響

 

『聞こえているさ』

 

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■レイジ

 

「……!」

 

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■アムロ残響

 

『……だから困る』

 

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その声は、

初めて“揺れていた”。

 

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欠損領域。

 

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“影”が反応する。

 

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初めて。

 

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明確に。

 

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■誰かの感情へ触れる

 

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■???

 

『……戻る?』

 

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■セラーナ・カーン

 

「言葉を……拾った」

 

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■ジョブ・ジョン

 

「感情ごとな」

 

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感情を理解した。

 

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違う。

 

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■“感情という反応”を、

自分の中へ取り込み始めた

 

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■アムロ残響

 

『やめろ』

 

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■シャア残響

 

『もう遅い』

 

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欠損領域。

 

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影が一瞬だけ、

“少女”に近づく。

 

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だが次の瞬間。

 

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崩れる。

 

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■???

 

『……ちがう』

 

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■レイジ

 

「……!」

 

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■???

 

『……まだ、ちがう』

 

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その声には、

初めて“拒絶”があった。

 

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模倣ではない。

 

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■選ぼうとしている

 

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■ベルトーチカ(干渉)

 

「アムロ……!」

 

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その声は、

今度は祈りに近かった。

 

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欠損領域が揺れる。

 

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まるで。

 

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その“願い”を、

理解しようとするように。

 

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■アムロ残響

 

『始まったか』

 

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■シャア残響

 

『人間らしいな』

 

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■レイジ

 

「お前……

何になろうとしてる」

 

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沈黙。

 

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だが今度の沈黙は、

空白ではない。

 

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■考えている

 

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欠損領域は、

もう“未定義”ではない。

 

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■“誰かになろうとしている境界”

へ変わり始めていた

 

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『未定義存在:自己定義開始』

 

『感情言語:初回取得』

 

『境界減衰率:危険域』

 

『レヴナント:個体化兆候確認』

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