機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

85 / 87
■第4巻 第21章 「名前」

外縁宙域。

 

 

未接続領域は、

静かに軋んでいた。

 

 

三層化した戦場。

 

 

• 継続する戦争

• 終わる戦争

• 未定義反射

 

 

その境界が、

ゆっくりと薄れていく。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

警告灯が、

断続的に点滅する。

 

 

■ミライ・ノア

 

「境界減衰率、

限界域です!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「まずい……」

 

 

波形を見つめる。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“区別”そのものが

消え始めてる」

 

 

 

ジョブ・ジョンが、

低く呟く。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来るな」

 

 

 

■レイジ

 

「今度は何だよ……!」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

戦場ログが歪む。

 

 

ジム。

 

 

ザク。

 

 

ギラ・ドーガ。

 

 

その姿が、

一瞬だけ“別の機体”へ変わる。

 

 

存在が固定されない。

 

 

 

■レイジ

 

「機体が……

変わってる!?」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う!」

 

 

即座に否定する。

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“定義が崩れてる”!」

 

 

 

■核

 

脈動。

 

 

それは、

戦場の鼓動ではない。

 

 

■“認識の再構築”

 

 

 

■アムロ残響

 

『始まったか』

 

 

 

■シャア残響

 

『境界消失だ』

 

 

 

■レイジ

 

「境界消失……?」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「名前と意味が、

一致しなくなる」

 

 

 

■レイジ

 

「はぁ!?」

 

 

 

■ブライト領域

 

拘束艦影。

 

 

その周囲へ、

微かな光が集まり始める。

 

 

■ブライト・ノア

 

「……急ぎ過ぎたな」

 

 

 

■レイジ

 

「ブライトさん!」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「人間は、

“名前”で世界を固定している」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「だが今、

この空間は」

 

 

■ブライト・ノア

 

「その固定を、

拒絶し始めている」

 

 

 

外縁宙域。

 

 

“影”が現れる。

 

 

以前より明確。

 

 

以前より人間に近い。

 

 

だが。

 

 

決定的に欠けている。

 

 

 

■???

 

『……わたしは』

 

 

 

空間が揺れる。

 

 

その瞬間。

 

 

フィロメラの白層が暴走する。

 

 

 

■レイジ

 

「うおっ!?」

 

 

 

■ミライ・ノア

 

「サイコフレーム共振!!」

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「違う!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「呼応してるのよ!!」

 

 

 

■レイジ

 

「誰にだ!!」

 

 

 

沈黙。

 

 

だが次の瞬間。

 

 

■ベルトーチカ(干渉)

 

「アムロ!!」

 

 

 

声が響く。

 

 

それは、

戦場に存在する声ではない。

 

 

■“誰かを呼ぶ声”

 

 

 

■???

 

『……呼ぶ』

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「まずいな……」

 

 

 

■レイジ

 

「何がまずいんだよ!」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「学習してる」

 

 

 

■アムロ残響

 

『止まらない』

 

 

 

■シャア残響

 

『もう後戻りは無理だ』

 

 

 

欠損領域。

 

 

影が揺れる。

 

 

その姿が、

一瞬だけ“少女”になる。

 

 

長い髪。

 

 

揺れる瞳。

 

 

だが。

 

 

顔だけが見えない。

 

 

 

■レイジ

 

「……お前」

 

 

 

■???

 

『わたし……は……』

 

 

 

言葉が止まる。

 

 

空間が軋む。

 

 

まるで。

 

 

■“最後の壁”が

存在するように

 

 

 

■セラーナ・カーン

 

「まだ駄目……!」

 

 

■セラーナ・カーン

 

「“名前”が

定着してない!」

 

 

 

少女の輪郭が揺れる。

 

 

まるで。

 

 

■“形になること”を

恐れているように

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「それでいい」

 

 

 

■レイジ

 

「……え?」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「名前は、

“存在”そのものだ」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「軽々しく

落とすものじゃない」

 

 

 

一拍。

 

 

■ブライト・ノア

 

「名前を持てば、

“誰か”になる」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「だが――」

 

 

■ブライト・ノア

 

「“誰か”になった瞬間、

もう戻れない」

 

 

 

沈黙。

 

 

少女の輪郭が、

わずかに揺れる。

 

 

名前とは、

認識ではない。

 

 

■“責任”だ

 

 

 

そして。

 

 

初めて、

こちらを見る。

 

 

 

■???

 

『……あなたは』

 

 

 

“わたし”の次に。

 

 

初めて、

“あなた”が生まれる。

 

 

 

■レイジ

 

「……!」

 

 

 

その瞬間。

 

 

フィロメラのサイコフレームが、

白く発光する。

 

 

赤ではない。

 

 

■“応答”の光

 

 

 

欠損領域は、

もう“未定義”ではない。

 

 

■“誰かになろうとしている境界”

へ変わり始めていた

 

 

『未定義存在:人格形成進行』

 

『境界消失:継続』

 

『感情同期率:上昇』

 

『レヴナント:命名直前状態』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。