夜。
アマテラス。
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通路。
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誰もいない。
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■セラーナ・カーン
「……」
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暗い。
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静か。
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ギシッ
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■セラーナ
「ひっ」
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振り返る。
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誰もいない。
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■セラーナ
「……気のせいです」
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歩き出す。
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ギシッ
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■セラーナ
「ひぃっ!」
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また振り返る。
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誰もいない。
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■セラーナ
「…………」
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少し早歩き。
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角を曲がる。
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白い影。
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■セラーナ
「きゃああああああ!!」
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■レイジ
「うおっ!?」
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■セラーナ
「お、お化けぇぇぇぇ!!」
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■レイジ
「俺だよ!!」
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■セラーナ
「レイジ君!?」
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■レイジ
「何してんだよ」
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■セラーナ
「だ、だって今、白い影が!」
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■レイジ
「俺のシャツだよ」
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沈黙。
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■レイジ
「怖いのか?」
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■セラーナ
「違います」
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■レイジ
「今、悲鳴上げてただろ!(笑)」
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■セラーナ
「警戒です」
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■レイジ
「へー。そうなんだ」
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歩き出す。
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■セラーナ
(ぴたっ)
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■レイジ
「なんで後ろ来るの?」
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■セラーナ
「偶然です」
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■レイジ
「服掴んでるぞ」
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■セラーナ
「偶然です」
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■レイジ
「無理があるわっ!」
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沈黙。
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■セラーナ
「わ、私……」
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ガタガタ。
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■セラーナ
「じ、実は……
お、お化けは苦手なんですぅ……」
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■レイジ
「ん?」
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■レイジ
「んじゃ、あのシャアって人と親父は?」
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■セラーナ
「え?」
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■レイジ
「あの人ら」
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■レイジ
「どう考えてもお化けだろ」
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沈黙。
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■セラーナ
「…………?」
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■セラーナ
「言われてみればそうでした……」
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■レイジ
「今気付いたのかよっ!?」
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■セラーナ
「観測対象なので」
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■レイジ
「意味わかんねぇ!!」
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■セラーナ
「そもそも残留思念体と、
お化けはまったく別物です」
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■レイジ
「何が違うんだよ」
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■セラーナ
「残留思念体は、
サイコフレームを介して現実へ干渉する、
観測可能な思念現象です」
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■レイジ
「うん」
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■セラーナ
「お化けは……」
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沈黙。
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■レイジ
「お化けは?」
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■セラーナ
「…………お化けです」
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■レイジ
「説明諦めたな!?」
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■セラーナ
「違います!」
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■レイジ
「じゃあ何が怖いんだよ」
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■セラーナ
「だって……」
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小声。
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■セラーナ
「……急に出てくるじゃないですか」
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■レイジ
「シャア達も急に出てくるぞ」
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■セラーナ
「…………」
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■レイジ
「しかも勝手に喋るぞ」
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■セラーナ
「…………」
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■レイジ
「たまに人の頭ん中にも入ってくるぞ」
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■セラーナ
「…………」
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■レイジ
「お化けより怖くね?」
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長い沈黙。
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■セラーナ
「……観測対象なので大丈夫です」
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■レイジ
「便利だな!!
“観測対象”って言葉!!」
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その時。
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ギシッ。
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二人。
同時に止まる。
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■レイジ
「…………」
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■セラーナ
「…………」
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■レイジ
「今の何?」
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■セラーナ
「知りません」
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■レイジ
「観測しろよ」
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■セラーナ
「嫌です」
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■レイジ
「即答!?」
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その時。
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通路の奥から声。
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■アムロ
「違うっっ!!」
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■レイジ
「……え?」
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暗闇の奥。
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人影。
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■アムロ
「誰がお化けだ!!
俺たちは残留思念体だ!!」
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■レイジ
「うわぁぁぁぁぁ!!」
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■セラーナ
「ぎゃあああああ!!」
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■アムロ
「なんでだぁ!?」
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アマテラスの夜に、
二人の悲鳴と、
理不尽な抗議が響いた。
あとがき
第4巻『境界の名前』、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、これまでの『残響』の中でも、かなり不思議な巻になったと思います。
戦っているようで、戦っていない。
敵がいるようで、誰が敵なのかも分からない。
現実と記録、過去と現在、人間と残響。
その境界そのものが少しずつ曖昧になっていく中で、レイジ達はブライト・ノアを取り戻すため、未接続領域のさらに深い場所へ踏み込んでいきました。
そして。
この第4巻で描きたかったもう一つの大きな軸が、エリシアです。
彼女は突然生まれたわけではありません。
最初から、エリシアはエリシアでした。
ただ。
名前も、記憶も、自分が誰なのかさえ届かない場所にいた。
反射し。
模倣し。
言葉を覚え。
感情に触れ。
「ひとりは嫌」と願い。
少しずつ、自分自身へ帰っていく。
だから、第24章でセイラが「エリシア」と呼んだ瞬間も、彼女に新しい名前を与えたわけではありません。
ずっとそこにいた少女を、ようやく名前で呼ぶことができた。
そんな場面として書きました。
「名前を与えたんじゃない」
「戻ってきた」
この二つの言葉が、第4巻『境界の名前』というタイトルの意味そのものなのかもしれません。
そしてもう一人。
この巻では、ブライト・ノアという人物の存在についても、改めて考えながら書きました。
ニュータイプでもない。
モビルスーツに乗るわけでもない。
それでも彼は、いつも戦場にいました。
アムロやシャアをはじめ、多くの人間が迷い、戦い、時には人間という境界すら越えてしまいそうになる中で、それでも現実に立ち続ける人。
だから『残響』では、ブライトを「錨」として描いています。
帰ってくるためには、帰る場所が必要だから。
そして。
第4巻で境界の向こうから帰ってきたものは、ブライトだけではありませんでした。
エリシアもまた、自分の名前へ帰ってきた。
では。
帰ってきた彼女は、これから何を見るのか。
アムロとシャアは、どこへ向かうのか。
レイジは、この不可思議な現象の中で何を選ぶのか。
そして『残響』そのものは、彼らをどこへ連れていくのか。
物語は、まだ途中です。
理解できないものは、まだたくさんあります。
それでも。
理解できないからこそ、人は誰かを知ろうとする。
理解し合えないから、人は惹かれる。
そんな『残響』の物語に、もう少しだけお付き合いいただければ嬉しいです。
それでは。
第4巻『境界の名前』。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
また、第5巻で。