外縁宙域。
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ブライト拘束領域は、
依然として安定していない。
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だがそれは、
崩壊ではなかった。
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■“失われた存在が、
再び定義され始めている状態”
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■アマテラス艦橋
静寂。
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警報は鳴っていない。
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その事実そのものが、
艦内の緊張を深めていた。
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■ミライ
「……音が無い方が怖いなんてね」
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■セラーナ
モニターを見つめたまま呟く。
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「違う」
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「戦闘が止まってるんじゃない」
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「“戻り始めてる”のよ」
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■ジョブ・ジョン
低く息を吐く。
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「来るな……」
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「今度は、
“人間側”だ」
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■外縁宙域
白いノイズ。
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その中心で、
少女の輪郭だけが揺れている。
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■エリシア
『……レイジ』
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声は届いている。
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だが。
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まだ、
どこにも完全固定されていない。
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■エリシア
『ここ……どこ?』
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戦場ログが揺れる。
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ザク。
ジム。
百式。
νガンダム。
サザビー。
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無数の戦争記録。
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だが、
誰も攻撃しない。
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■“記憶だけが残っている戦場”
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■レイジ
コクピットで、
静かに息を吐く。
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「またかよ……」
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■エリシア
『こわい』
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■レイジ
「ああ」
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「そりゃ怖ぇよな」
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少しだけ間。
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そして。
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■レイジ
「でも」
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「お前は、
もうここへ戻ってきてる」
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その瞬間。
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フィロメラのサイコフレームが、
淡く白く脈動する。
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■アマテラス艦橋
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■セラーナ
「接続安定……違う」
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「存在定義が戻り始めてる」
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■ミライ
「戻ってるの……?」
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■セラーナ
「分からない」
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一拍。
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「でも」
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「消えなくなり始めてる」
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■外縁宙域
エリシアは、
自分の両手を見る。
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指がある。
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掌がある。
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胸へ触れれば、
そこに自分がいる。
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けれど。
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それが本当に自分なのか。
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まだ、
分からなかった。
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名前も。
記憶も。
この身体さえも。
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誰かから与えられたものなのか。
自分で選んだものなのか。
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それすら、
まだ曖昧だった。
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ただ。
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一つだけ。
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聞こえている声がある。
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■レイジ
「エリシア」
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呼ばれた。
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その音だけは、
不思議と怖くなかった。
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■エリシア
ゆっくり、
胸へ手を当てる。
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■エリシア
『わたしは……』
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揺らぐ。
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遠くで。
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誰かが呼んだ気がした。
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海の向こうから。
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長い時間の向こうから。
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そして。
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■エリシア
『……エリシア』
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それは、
思い出した名前ではなかった。
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誰かに教えられた答えでもない。
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今。
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初めて自分の口で、
自分へ返した名前だった。
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その瞬間。
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世界の揺れが、
一瞬だけ静止する。
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■地球・地中海沿岸
夜明け前の海。
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セイラ・マスが、
静かに海を見つめている。
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理由は分からない。
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けれど。
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ずっと遠くにあった何かが、
ほんの少しだけ近づいた。
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そんな気がした。
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■セイラ・マス
「……届いたのね」
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海面が揺れる。
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波ではない。
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■“観測の応答”