機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

93 / 94
■第5巻 第3章 「照準」

外縁宙域。

 

 

揺れは、

まだ止まっていない。

 

 

だが。

 

 

それは崩壊ではなかった。

 

 

観測され続ける事で、

形を変え続ける未確定状態。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

静かだった。

 

 

警報は鳴っていない。

 

 

それなのに。

 

 

誰も、

気を抜けなかった。

 

 

 

■ミライ

 

「……静かすぎる」

 

 

 

■セラーナ

 

「止まってるんじゃない」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ

 

「“決まりかけてる”のよ」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

モニターを睨む。

 

 

外縁宙域には、

まだ無数のノイズが漂っている。

 

 

だが。

 

 

そのノイズが、

少しずつ形を持ち始めていた。

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「来るぞ」

 

 

「今度はブライトじゃない」

 

 

 

■外縁宙域

 

白い揺らぎの中。

 

 

エリシアが浮かんでいる。

 

 

もう輪郭は崩れていない。

 

 

だが。

 

 

まだ完全には、

こちら側へ固定されていない。

 

 

 

■エリシア

 

『……レイジ』

 

 

 

その声は届く。

 

 

だが。

 

 

どこにも定着しない。

 

 

 

■エリシア

 

『ここ……重い』

 

 

 

■フィロメラ コクピット

 

白いサイコフレームが、

微かに脈動している。

 

 

 

■レイジ

 

「またかよ……」

 

 

「今度は何だ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

空間の奥で、

何かが揺れる。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

モニターが乱れる。

 

 

座標が増える。

 

 

いや。

 

 

見えていなかったものが、

急に映り始める。

 

 

 

■ミライ

 

「座標……増えてる?」

 

 

 

■セラーナ

 

首を振る。

 

 

■セラーナ

 

「違う」

 

 

「増えたんじゃない」

 

 

「見え始めたの」

 

 

 

■観測ログ

 

UNKNOWN SIGNAL DETECTED

 

 

STRUCTURE UNKNOWN

 

INTERPRETATION REQUIRED

 

 

(未知信号検出)

 

(構造不明)

 

(解釈要求)

 

 

 

■ミライ

 

「解釈要求……?」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

眉をひそめる。

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「なんだそれは」

 

 

 

■セラーナ

 

言葉を失う。

 

 

これは機械の判断ではない。

 

 

誰かが。

 

 

何かが。

 

 

人間側へ答えを求めている。

 

 

 

■エリシア

 

遠くを見る。

 

 

まるで。

 

 

自分より先に、

何かを見つけてしまったように。

 

 

 

■エリシア

 

『……なに、これ』

 

 

 

■レイジ

 

「おい」

 

 

「どうした」

 

 

 

エリシアは答えない。

 

 

ただ。

 

 

遠くを見ている。

 

 

 

■ブライト拘束領域

 

 

■ブライト・ノア

 

静かに目を開く。

 

 

■ブライト

 

「気付いたか」

 

 

一拍。

 

 

■ブライト

 

「遅かったな」

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

 

■レイジ

 

「なぁ」

 

 

「これ……何て呼べばいい」

 

 

 

沈黙。

 

 

誰も答えない。

 

 

だが。

 

 

呼ばなければならない何かだけが、

そこにある。

 

 

 

■セラーナ

 

小さく息を吐く。

 

 

■セラーナ

 

「……ラプラス」

 

 

 

その瞬間。

 

 

空間が静かになる。

 

 

ノイズが止まる。

 

 

呼吸音だけが残る。

 

 

 

■ミライ

 

「……」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「おい」

 

 

 

■セラーナ

 

首を振る。

 

 

■セラーナ

 

「違う」

 

 

「私達が名前を付けたんじゃない」

 

 

 

■ミライ

 

「え……?」

 

 

 

■セラーナ

 

「最初からあったのよ」

 

 

一拍。

 

 

■セラーナ

 

「私達がやっと認識しただけ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

外縁宙域の奥で。

 

 

静かな脈動が一度だけ走る。

 

 

 

■エリシア

 

小さく震える。

 

 

■エリシア

 

『レイジ』

 

 

 

■レイジ

 

「いる」

 

 

 

■エリシア

 

『……見てる』

 

 

 

■レイジ

 

「誰が」

 

 

 

エリシアは答えない。

 

 

答えられない。

 

 

 

外縁宙域の奥。

 

 

静かな脈動。

 

 

まるで。

 

 

■“照準が合ったように”

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。