機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

94 / 119
■第5巻 第4章 「揺らぎの名前」

外縁宙域。

 

⸻

 

ラプラス・コアと呼ばれた“何か”は、

沈黙していた。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

それは停止ではない。

 

⸻

 

観測が、

さらに一段深く潜っただけだった。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

空気が重い。

 

⸻

 

誰も不用意に声を出さない。

 

⸻

 

モニターだけが、

微かなノイズを流し続けている。

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「……さっきの、

消えてない」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

小さく首を振る。

 

⸻

 

「消えたんじゃない」

 

⸻

 

「見えてしまったのよ」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

低く息を吐く。

 

⸻

 

「厄介だな」

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「何が?」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

「見えたら、

見なかった事に出来ない」

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

白い揺らぎ。

 

⸻

 

その中心で、

エリシアの輪郭が静かに揺れている。

 

⸻

 

存在は安定していた。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

その安定は、

静けさではない。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『……レイジ』

 

⸻

 

■レイジ

 

「いる」

 

⸻

 

⸻

 

少しだけ沈黙。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『見えてるものが増えた』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「何がだ」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

答えない。

 

⸻

 

答えられない。

 

⸻

 

ただ。

 

⸻

 

遠くを見ている。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

観測ログが揺れる。

 

⸻

 

UNKNOWN SIGNAL

 

⸻

 

INTERPRETATION REQUIRED

 

⸻

 

(未知信号)

 

(解釈要求)

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「またこれ……」

 

⸻

 

「解釈しろって何を?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

静かにモニターを見る。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「分からない」

 

⸻

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「名前を付けたのに」

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「え?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「何も分かっていない」

 

⸻

 

⸻

 

誰も言葉を返せない。

 

⸻

 

それが一番近い答えだった。

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト拘束領域

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

静かに目を閉じる。

 

⸻

 

■ブライト

 

「また境界か」

 

⸻

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト

 

「今度は場所じゃないな」

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト

 

「理解の境界だ」

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

⸻

 

■エリシア

 

小さく震える。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『……こわい』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「ああ」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『でも』

 

⸻

 

⸻

 

沈黙。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『怒ってない』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「は?」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『分からないけど』

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『怒ってない』

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『ずっと見てるだけ』

 

⸻

 

⸻

 

レイジの表情が変わる。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「見てる……?」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

小さく頷く。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『ずっと』

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

セラーナが息を呑む。

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「……見られてる」

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「誰に?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

首を振る。

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「分からない」

 

⸻

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「でも」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「向こうも困ってる」

 

⸻

 

⸻

 

その瞬間。

 

⸻

 

外縁宙域の奥で、

静かな脈動が一度だけ走る。

 

⸻

 

肯定でもない。

 

⸻

 

否定でもない。

 

⸻

 

ただ。

 

⸻

 

観測だけが続いていた。

 

⸻

 

まるで。

 

⸻

 

答えを探しているように。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。