機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

95 / 120
■第5巻 第5章 「静止する鼓動」

外縁宙域。

 

⸻

 

揺れは、

まだ消えていない。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

暴れ方だけが変わっていた。

 

⸻

 

まるで。

 

⸻

 

■“何かが、

呼吸を整え始めている”ような静けさ。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

空気は重い。

 

⸻

 

なのに。

 

⸻

 

音だけが薄い。

 

⸻

 

機械音すら、

少し遠い。

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「……さっきより静か」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

即座に否定する。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「違う」

 

⸻

 

「静かになったんじゃない」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「“一定になった”のよ」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

「安定か」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

小さく首を振る。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「固定じゃない」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「馴染み始めてる」

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

エリシアが、

そこにいる。

 

⸻

 

もう、

輪郭は揺れていない。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

それは完成ではなかった。

 

⸻

 

■“こちら側へ、

少しずつ定着している”

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『……レイジ』

 

⸻

 

■レイジ

 

「いる」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『ここ……怖くない』

 

⸻

 

⸻

 

フィロメラのサイコフレームが、

ゆっくり脈動する。

 

⸻

 

まるで。

 

⸻

 

呼吸を合わせるように。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

■ミライ

 

「固定されてる……」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「違う」

 

⸻

 

■セラーナ

 

「“合ってきてる”のよ」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

目を細める。

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

「人間側へ寄ってるな」

 

⸻

 

⸻

 

観測ログが揺れる。

 

⸻

 

OBSERVATION PRIORITY SHIFT

 

⸻

 

(観測優先度変化)

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「戻ってる……?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「違う」

 

⸻

 

■セラーナ

 

「“戻してる側”がいる」

 

⸻

 

⸻

 

その瞬間。

 

⸻

 

空間の奥で、

わずかな反転が起きる。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

表情が揺れる。

 

⸻

 

■エリシア

 

『……何か、痛い』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「エリシア!」

 

⸻

 

「大丈夫か!」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『うん……でも』

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■エリシア

 

『誰かが、

こっちを見てる』

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

■ジョブ・ジョン

 

「来たな」

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「何が……?」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

「認識し始めたんじゃない」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

「俺達が見返し始めた」

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト拘束領域

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

静かに目を開く。

 

⸻

 

■ブライト

 

「……こっちも来るか」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

小さく震える。

 

⸻

 

■エリシア

 

『レイジ』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「いる」

 

⸻

 

「そこにいろ」

 

⸻

 

⸻

 

エリシアの揺れが止まる。

 

⸻

 

完全ではない。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

確かに定着する。

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『……ラプラス』

 

⸻

 

沈黙。

 

⸻

 

■レイジ

 

「どうした」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『分からない』

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■エリシア

 

『でも』

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『ずっと独りだった気がする』

 

⸻

 

⸻

 

レイジは言葉を失う。

 

⸻

 

⸻

 

外縁宙域の奥。

 

⸻

 

静かな脈動。

 

⸻

 

怒りではない。

 

⸻

 

敵意でもない。

 

⸻

 

ただ。

 

⸻

 

長い時間、

答えを探し続けているような揺らぎ。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「……そうか」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『まだ続く?』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

小さく笑う。

 

⸻

 

■レイジ

 

「続くに決まってんだろ」

 

⸻

 

「途中で止まる方が怖ぇよ」

 

⸻

 

⸻

 

その言葉のあと。

 

⸻

 

空間が、

ゆっくり呼吸する。

 

⸻

 

まるで。

 

⸻

 

“次の段階”へ、

進み始めるように。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。