機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

96 / 120
■第5巻 第6章 「呼応」

外縁宙域。

 

⸻

 

静止しかけていた揺らぎが、

再び微細に震え始める。

 

⸻

 

それは、

崩壊ではない。

 

戦闘でもない。

 

⸻

 

■“何かへ引かれている状態”

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

ミライが息を呑む。

 

⸻

 

■ミライ

 

「……また動いてる」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

即座に否定する。

 

⸻

 

「違う」

 

⸻

 

「動かされたんじゃない」

 

⸻

 

「“引かれてる”のよ」

 

⸻

 

⸻

 

■ジョブ・ジョン

 

低く呟く。

 

⸻

 

「今のは……」

 

⸻

 

「人間の手じゃない」

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域・ブライト拘束領域

 

歪んだ空間。

 

⸻

 

その中心で、

一つの存在が沈み続けている。

 

⸻

 

ブライト・ノア。

 

⸻

 

まだ完全には、

こちら側へ戻っていない。

 

⸻

 

⸻

 

その瞬間だった。

 

⸻

 

■空間の外側

 

音の無い揺れ。

 

⸻

 

光ではない記憶。

 

⸻

 

言葉にならない、

懐かしさだけが触れる。

 

⸻

 

⸻

 

■ララァ・スン(干渉)

 

形ではない。

 

⸻

 

声でもない。

 

⸻

 

ただ一つ。

 

⸻

 

確かな意志だけが、

静かに重なる。

 

⸻

 

⸻

 

『……まだ』

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

『帰る場所があるわ』

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

沈み込んでいた意識が、

微かに揺れる。

 

⸻

 

それは命令ではない。

 

許可でもない。

 

⸻

 

もっと曖昧で。

 

もっと優しいもの。

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

「……これは……」

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

セラーナが目を見開く。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「今の波形……」

 

⸻

 

「人間じゃない」

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「何!?」

 

⸻

 

「敵なの!?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「違う」

 

⸻

 

「干渉ですらない」

 

⸻

 

「“記憶そのもの”が作用してる」

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「なんだよそれ……!」

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

空間が、

一気に引かれる。

 

⸻

 

ブライト拘束領域が浮上する。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

それは移動ではない。

 

⸻

 

■“存在位置の再定義”

 

⸻

 

⸻

 

■ミライ

 

「今の……何?」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「分からない」

 

⸻

 

「でも」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「ラプラス・コアの外側よ」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

小さく息を呑む。

 

⸻

 

■エリシア

 

『……あったかい』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「戻ってる……!」

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

沈んでいた意識が、

一瞬だけ浮上する。

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

「……戻るのか」

 

⸻

 

「これは」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

『……ララァ?』

 

⸻

 

白い残響が揺れる。

 

⸻

 

■シャア残響

 

沈黙。

 

⸻

 

だが、

赤い残響もまた揺れている。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

『今のは……』

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『追うな、アムロ』

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

『だが……!』

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『分かっているはずだ』

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■シャア残響

 

『今は』

 

⸻

 

■シャア残響

 

『我々を導く時ではない』

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

沈黙。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『彼女は今』

 

⸻

 

『こちらではなく』

 

⸻

 

『向こう側を繋いでいる』

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

『それでブライトが引かれたのか』

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『いや』

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『戻れる場所が』

 

⸻

 

『一瞬だけ開いた』

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ残響

 

『危険だな』

 

⸻

 

⸻

 

■シャア残響

 

『ああ』

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■シャア残響

 

『だが——』

 

⸻

 

■シャア残響

 

『救いでもある』

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

ブライト・ノアの存在が、

少しずつ安定し始める。

 

⸻

 

完全な帰還ではない。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

確かに戻りつつある。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「これで終わりじゃねぇだろ」

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

「終わりじゃない」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

■セラーナ

 

「まだ帰れてない」

 

⸻

 

⸻

 

■エリシア

 

『レイジ』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「いる」

 

⸻

 

⸻

 

その返事だけが、

静かな外縁宙域へ残る。

 

⸻

 

帰還はまだ遠い。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

帰る場所だけは、

確かにそこにあった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。