Fate/Draco―蛇竜王戦線―   作:ぴーらー

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第21話:Leave all Behind

2020.04.02 22:05 UTC / アイスランド・シンクヴェトリル国立公園 視点:ユキネ

 

 体感時間だが、もう三十分は過ぎたと思う。

 「足止め」としては上手くいっているのかもしれないけど、アサシンとしては「別にこのままセイバーもアーチャーも倒してしまっても構わない」くらいの勢いで攻め続けている。

 ランサーとの戦いでほぼ消耗していないのをいいことに、回復ではなく「事前準備」に時間を割いただけあって、一対二の戦いでありながら優勢なのはアサシンだ。

 

(当然よ。こっちは一じゃなくて八なんだもの――いや、冗談じゃなくて割と本気よ。アーチャーは私のスキルについてかなり「読んでいる」だろうけど、それでも半分がいいところでしょう。手札の多さでは、こちらが依然圧倒的に有利……!)

 

 アサシンはそう言うが、念話とはいえ、言葉にすることで自分を奮い立たせているようにも感じた。

 だって、ここまでやって未だにセイバーの防御は崩れていない。

 単純に「守りを固める」だけじゃない。的確に、適度に宝具を発動しつつ全ての攻撃を受け流している。

 アサシンだって未だに全く疲れてなさそうだけど、これじゃまさに「千日手」というやつだ。時間稼ぎが目的である以上問題はなくとも、なんだか悔しくなってくる。

 でも、こっちだって宝具を使えば……

 

(それは最後の手段よ。『八首八意・斬贄連環』(やくびやつい・ざんしれんかん)は、私の持つ全ての属性を解放する連続多重攻撃。逆に言えば、こちらの手を一度すべて晒すも同然。……あの陰湿な弓兵相手には、少しリスクが勝るわ。「剣」の方は論外。威力を抑えなければ、この地形ごと全部斬ることになる。もし回避するか耐えられたら、そのまま逃げられてしまう。色々と台無しでしょう)

 

 ぐぬう。ライダーに『八塩折之酒』(やしおりのさけ)を取られていなければ、もっと楽ができたかもしれないのに……

(本当にね。本来ならあのままライダーは倒すつもりだったのだけど……それにしても、アイツ今、何しているのかしら。「休戦期間」中はずっとどこかに籠っていたみたいだったけど――っと、無駄話はここまで。アーチャーが仕掛ける気ね)

 

 次の瞬間、上空を巨大な雷雲が覆った。

 あれは、ランサー戦で使っていたアーチャーの宝具……!

 

「――来い。『天穿・蒼雷箭』(ティエンチュアン・ツァンレイジェン)ッ!」

 

 黒雲が、「水流」の隙間をすり抜けた。

 まるで蛇の舌のように「縮小」した後、水流で覆われた内部で再び膨れ上がったのだ。

 そしてそこから、無数の雷の矢が迸る――!

 

「――甘いわ。忘れたわけじゃないでしょう、私にも同じ力があることをッ!!」

 

 セイバーを蹴り飛ばしつつ、アサシンの咆哮が雲を歪ませ、散らしていく。

 アサシンの属性の一つ、「風」。即ち、天候を操作する権能。

 伝説によれば、八岐大蛇の頭上には常に雲がかかっていた――それに由来する能力。

 先日のランサー戦でも、それによる協力プレーをしたばかりだ。

 雷の矢も弾かれ、アサシンに当たることはない。

 

「だが、天候操作の精度はこちらが上である。――その事実を、今一度思い知らせてくれる」

 アーチャーの宣言と共に、黒雲の一部が再び縮小した。

 それは彼の両腕へと貼り付き、姿を変えていく。

 確かあれは――「クロスボウ」と呼ばれる小型の弓だ。

 

『天穿・蒼雷箭』(ティエンチュアン・ツァンレイジェン)――第二射!」

「……ッ!!」

 

 無数の小さな雷の矢が、まさに「雨あられのように」襲い掛かる。「弓」ってそんな連射できるものだっけ!?

「随分と、舐めたことを抜かしてくれるじゃない。数はともかく、そんな威力の矢で私を倒せるとでも!?」

 アサシンは高速移動を続けつつ、「風」の力を纏って雷を弾いていく。

 その上で、新たに「幻」の力を発動させた。

「……これは」

 出現し、一斉に跳躍したのは、これまで調査に派遣する際にも使っていたアサシンの「分身」たち七体。

 実体こそ伴わないが、その姿は「本体」と瓜二つ。

 

「いや、むしろ“実体を伴わない”ことに意味があるのか……!」

「おおいアーチャー、セイバーにも矢が当たってるぞっ!?」

 

 セイバーが呻き、アルヴェイルが叫ぶ。

 ――そう。分身たちはその性質上、分身や本体とぶつかってもすり抜けるだけ。どれだけ暴れても本体とぶつかって同士討ちになることはない。

 だが、相手からすればその区別はつかない。

 「これはガードしていいのか、分身だからガードしなくてもいいのか」も、「本体がどこにいて、どれを狙えばいいのか」も分からない。

 ただでさえ攻撃を当てられないほどの高速で移動しているのに、だ。

 なぜなら、正確に言えばその本質は分身というより「八つの首の化身体」の召喚だから。

 「人の形」を取っている今でこそ一つの人格が「代表」となっているが、本来であれば八つの意思と魂を持つ蛇神の姿こそが彼女。

 七つの分身は、「本体」を除く七つの首の神性をそのまま宿している。

 いくら「本質を見抜く」ような目を持っていようと、この幻は破れない!

 結果、どうやらアーチャーの攻撃はセイバーに当たってしまっている。

 この「水流による閉鎖空間」だからこそできる、とんでもないハメ技だ。

 アーチャーは未だに雷の矢を連射しているが、有効打にはなっていない。

 アサシンは回避し続け、セイバーは追加でフレンドリーファイアをも受ける。

 これ以上ないほど、私たちにとって有利な状況――のはずなのだけど。

 

(……何? この、何かを見落としているような感覚)

 

 ――アサシンの表情は、やけに険しかった。

 

(マスターには、正直に言っておくけど……私は、アーチャーとルーラーが「どうにも嫌い」。上手く説明のつかない嫌悪感、と言えばいいのか……まだ明文化できていない何か。でもそれは、私がこの二人の「危険性」を感じ取ったからじゃないかと解釈した。だから、「目を逸らす」ことなく、可能な限り徹底的に調査した結果として――「あのアーチャーが、こんな下手を打つはずがない」と思うのよ)

 

 跳びまわり続けながらも、私はちらりとアーチャーの顔を見る。

 ……いくらポーカーフェイスだとしても、この不利な状況にもかかわらず冷や汗ひとつかかないものだろうか?

 

(休戦期間中、「私がセイバー、アーチャーにこっそり同行していたこと」に「殺気が無かったから気付けなかった」なんて抜かしてたから、「ああこいつも完璧じゃないのね」って思ったけど……それすら、私に「気を抜かせる」ための仕込みだったとしたら?)

(さ、流石にそれは考えすぎなんじゃ……!?)

 

 しかし、そう思ったことで私も疑心暗鬼に陥ってしまったようだった。

 こうなってくると、全てが疑わしくなってくる。

 何か、何か見落としていることが――

 

「……あれ?」

 ふと、顔を見上げて思う。

 ――あの暗雲、雷を降らせているわけでもないのに何で残ってるの?

 そんな私の気付きに、アサシンの目が見開かれる。

 

「……ッ! まさか、私たちの視界を遮るための!?」

 

「気付いたか。だが――セイバー! “加速”の準備はできたぞ!」

「ようやくか! 待ちかねたぜッ!!」

 

 アーチャーの号令に、セイバーは即座に応え――炎を噴射し、高速回転を開始した。

 暗雲を破り、「水流」の上部へと突っ込んでいく。

 ……アサシンの意識は、防御に徹するセイバーよりもアーチャーの策を見抜くことに傾いていた。

 故に、それを「振り切って」急旋回するには一歩遅れてしまう……!

 

「単純な話だ。解呪もできぬ“破壊不能”のフィールドであれば、それを余も利用するだけである」

 

 アーチャーの雷を弾きながらも、アサシンはセイバーを追って跳躍する。

 黒雲を抜け、視界に入ったのは――

 

「うおおおおおおおおおお行くぜオラァァァァァァァァッッ!!」

 

 異常な回転速度でこちらに向かってくる、セイバーの姿だった……!

 

2020.04.02 22:15 UTC / アイスランド・シンクヴェトリル国立公園 視点:セイバー

 

 さっきは自分の状態をサッカーボールに例えたが、訂正する。

 ――今のワシは、超高速回転する独楽だ。

 

 アーチャーによる雷の矢のフレンドリーファイアは、全て「意味のある行為」だった。

 それに気付いたのは、撃ち込まれて焼き付いた雷のうち「甲羅の周囲に刺さったもの」が「全て同じ形状」かつ「全て同じ間隔で並んでいる」と察したとき。

 「何か策がある」と悟られた時点で失敗しかねない、薄氷を踏むような作戦。

 だが、ワシは「作戦はアーチャーに任せる」「こっちはそれに全て乗る」意思を示し、その意思はアーチャーに伝わっていた。

 

(……その代わり、俺は凄く驚いたぞ! どうなることかと思った!!)

 

 アッハイ、それについては本当に申し訳ねえですマスター。

 いや、あの「自然な反応」があったからアサシンを騙す一助になったと思うっスよ!?

 

(それならいいんだが……それで、水流の上の方にあった「雷の列」は一体!? アレに突入した途端、セイバーの回転がとんでもないことになったじゃないか)

 

 そう、それがアーチャーの「策」だ。

 アイツは、アサシンに弾かれた後の雷の軌道すら、ある程度なら操作できる。

 雷雲で覆われた「水流」の上層という「アサシンが飛び込む回数が少なく、見つかりにくい場所」を見計らい――弾かれた後の矢を撃ち込んで「残す」。

 いかにも「弾かれ、逸れただけの無駄撃ち」。

 だが数を重ねるごとに、それらは「道」のようになっていく。

 おまけに、竜神の雷は「水流」を固定している呪いに「上から同化」した。

 

 つまり、アサシンの付与した「破壊不能」に乗っかる形だ。この辺りはアイツも神霊だからこそできることだな。

 

 さて、するとどうなるか。

 回転するワシの甲羅の周囲に並んだ「雷の歯」が、水流の壁に仕込まれた「雷の列」と――噛み合う。

 瞬間――火花が散る音と共に、ワシは「前に引っ張られ」、超加速した!

 まるで「自転車のチェーンとギアが噛み合い、一気に駆動する」ようにッ!

 普通の独楽なら、最初に与えられた回転エネルギーだけで回り続けるしかない。

 だが、こっちには礼装のジェット噴射がある。

 回転は減衰するどころか伸び続け――アサシンと同じように、柔らかい「水流の壁」に弾かれながら、その速度に追いつき始めた……!

 

「くっ、完全な無差別攻撃ですって……ッ!?」

「応よ! これなら分身も何も関係無えなァ!?」

 

 その間にもアーチャーは回避しながら矢を撃ち続け、「雷の列」は作られていく。

 アサシンとしても、そんな針の筵になっている場所へこれまで通り飛び込むわけにはいかない。しかも「破壊不能」だ。

 術者かつ「天候操作」ができる彼女であれば「解呪」は可能だろうが、ワンテンポの遅れは避けられないはず――!

 

「――でも、敢えて言わせてもらうわ。貴方たちは、“さっきまでの”私の速度に追いついただけ。“それ以上”には到達していないッ!」

 

 そう言い放ち、蹴りを繰り出したアサシンの脚部は――異様に赤熱し、陽炎を纏っていた。

 

「な――何ぃッ!?」

 その炎を纏う蹴撃は、明らかに速度が更に上昇している。

 ……【魔力放出】系のスキルならともかく、単純に「炎を纏う」だけで跳躍力が上がるとは思えん!

 大体、それができるなら「今まで使わなかった」理由が分からない。

 それ以前に、この「水場」の戦場で炎が十全に働くだろうか!?

 

「いや、違うッ! 炎が発生したのは“内側”だ……! その加速、『血の加熱による身体強化』だな!?」

 

 アサシンは無言で攻撃を続ける。――だが、僅かに表情が険しくなったのが見えた。

 その一瞬の変化が、ワシの推理が正しかったことを仄めかす。

 完全に理解できない、という顔をしているマスターにも向けて、ワシは「推理の解説」を開始した。

 

「実際、筋肉は温まっている方が動きが良くなるし、高温部位では酸素を運ぶヘモグロビンが酸素を離しやすくなり、筋肉が酸欠になりにくい。恐らく、アサシンがやっているのはその超強化版だ!その赤熱具合を見るに、恐らく血液温度は五、六百度近く――通常の人体ならタンパク質が先に死に、血液はそもそも蒸発どころか超臨界しているはずだが、神霊にそンな常識は通用しない! 神秘が機能の良いとこ取りをして、肉体の限界を踏み越えているッ!」

 

 自分でも驚くほどに口が回る。マスターは必死にそれを咀嚼しようとしていたが、さすがに無理があったらしい。熱暴走しそうな頭を振りつつ、必死で念話を行っていた。

 

「つ、つまりどうなんだ!?」

「結果――灼熱の血が、筋肉と腱の働きを底上げして、踏み込みの損失を限りなく減らしているんスよ、マスター……!」

 

 アサシンは何も答えず、戦場には火花が散り続ける。

 ワシは、より重要な「推理の核」を続けた。

 

「竜種の数千度のブレスに比べれば、摂氏六百度なんてのは地味に思えるかもしれん! だが、アサシン――お前には『櫛』によって“一体化”しているマスター、ユキネがいるッ! 脚部を中心とした過熱とはいえ、血流は全身を回るもの。低融点金属なら溶かせるほどの熱血が頭部まで回った時、マスターに一切の影響がないとは考えにくい……即ち! その“加速”は時間制限付きなんだッ!!」

 

 そうだ、これなら「今まで使わなかった」ことにも説明がつく。

 そして何より、「アサシンは勝負を決めに来ている」という示唆でもある!

 

「……随分と頭が回るようね、よほど先に倒されたいのかしら。だったら――」

 

 刹那、アサシンの姿が消える。

 否! サーヴァントの動体視力を以てしても、そう見間違えるほどの超加速だ……!

 

「――まずは貴方からよ。望み通りぶっ潰れなさい、セイバーッ!!」

 

 両手両足を用いた、とてつもなく「速く、重い」連撃。下手をすれば、一撃ごとが対軍宝具に匹敵しかねない威力の攻撃が――

 

(――来たッ! 一つ、二つ……三つ、四つッ!!)

 

 だがワシの回転防御は、その四連打を捌き切った。

 

 ――はずだった。

 

(……ッ!? セイバー、何だあれ!?)

 マスター・アルヴェイルが、念話で叫ぶ。

 

 視界の端、アサシンの輪郭が――「ずれる」。

 幻の継ぎ目がほどけ、現れた「五撃目」。

 滞空するアサシンの臀部から生える、白く長い「尾」。

 先ほどまでは「無かったはず」の部位。

 そしてその先端は……翡翠にも似た、神々しい輝きを放つ刃と化していた。

 

「そうだ、神話においてかの剣が秘されていた箇所は……!」

 

 白き鱗が捲れ上がり、恐るべき刀身が顕れた瞬間。

 その速度は文字通り――「神速」へと至る。

 空気が裂ける音が、僅かに遅れて聞こえた気がした。

 

「魔力ベクトル、“放出”より“圧縮”へと切替(スイッチ)

 

 それは魔力砲めいた斬撃ではなく、刃のみに収束させた一撃。

 この戦場を破壊せず、ただ相手のみを狙う一点必殺の奥義――!

 

「――神威抜刀。『神剣・草那芸之大刀』(しんけん・くさなぎのたち)ッ!!」

 

 はち切れんばかりの魔力は、防御を試みようとも、ワシの体を内側から爆散させるだろう。

 そんな、死の予感が漂った刹那――空気を穿つ音が、轟いた。

 

「……あり得ない。そんな、ことが――!?」

 

 奇しくも、アサシンの言葉と全く同じことを思う。

 翠の宝剣は、ワシの鎧の先端を切り裂いただけに留まり。

 ――アサシンの体が。空間に「縫い留め」られていた。

 神速の暗殺者に対して、そんな「神技」ができる奴なんぞ……ワシは、一柱しか知らん。

 そして、それを証明する声が遅れて耳に届く。

 

 ――『四象一矢』(スーシャン・イーシー)、と。

 

2020.04.02 22:15 UTC / アイスランド・シンクヴェトリル国立公園

 

 回避も、防御すらも許されない絶死の牙。

 しかし彼は、それを凌ぐ方法を知っていた。

 

「――何のことはない。その攻撃が、そもそも届かなければ良いのである」

 

 アサシンにとって、マスターの危機は最大の逆鱗。故に――

 この数秒においてのみ、暗殺者の意識は完全にセイバーだけに向く。

 

「正に“頭に血が上る”とはこのことだ。お前が血液の加熱による強化を控えていた、最大の理由――その間隙、逃すはずもない」

「――ええ! 令呪を以て命じるわ。第三宝具を解放なさいッ、アーチャー!!」

 

 『神剣・草那芸之大刀』(しんけん・くさなぎのたち)発動より約三秒前。

 雷の矢が形作っていたのは、セイバーの加速レーンだけではない。

 アーチャーの視線の先――南、西、北の三方向。

 「水流」の内壁に刻み込まれた文様が、一斉に光を放った。

 令呪の後押しを受け、浮かび上がったのは「朱い羽」「白き獣」「黒の甲」。

 即ち、模倣されし四神の残影。

 そして――東に立つは、神造の矢を番える青き竜。

 

「東西南北、四象合一。照準固定、回避域完全封鎖――『四象一矢』(スーシャン・イーシー)ッ!!」

 

 雷の大弓から放たれた、一条の矢。

 あまりに直線的な動きでありながら――アサシンに、それを「回避できる可能性」はなかった。

 真名解放の瞬間、アーチャーは「全ての吉凶、方角を掌握」する。

 あらゆる幸運の介入も許さぬ必中の一撃は、『草薙』の命中直前にアサシンを「その空間に縫い留めた」。

 高ランクの【戦闘続行】スキルを持つ彼女を、ここで「殺しきる」ことはできない。だが、今はそれで十分。

 それこそが、青き竜の下した判断だった。

 

2020.04.02 22:16 UTC / アイスランド・シンクヴェトリル国立公園 視点:セイバー

 

(今のは……っ! セイバー、アーチャーがやったぞ!!)

「分かってますぜマスター、チャンスは今しかないッ! ――『聖鋼一閃・忠義の剣』(グラディウス・フィデス・サンクタ)ァ!!」

 

 ワシにとって、この状況は全部出たとこ勝負だ。

 なんせ「作戦会議したらアサシンにバレかねない」。アドリブで全部なんとかするしかない。だが――今だけは、ワシのやることは明確だった。

 

「ぐ、っ……!」

 斬撃は――過たず、動きを封じたアサシンの尾を切り飛ばす。

 即ち、一部だけを実体化させた『神剣・草那芸之大刀』(しんけん・くさなぎのたち)が仕込まれていた部位を!

 

「そうだ。お前が暗に示したんだ――その剣ならば、“水流の壁を破壊できる”と!」

 

 慣性に従い、切り飛ばされた剣先が回転しながら「水流」の一つに触れた途端。

 ――水風船に刃を入れたように、大量の水が弾け飛んだ!

 神秘への対抗策は、より強力で旧い神秘。魔術世界の基本に、揺るぎは無いッ!!

 

「後は任せたぞ、アーチャー! うおりゃああああああッ――!!」

 

 再び「雷のレーン」に乗って加速し、「水流」に空いた穴を突き抜ける。

 そのまま「歌が聞こえる方向」へと向けて、一気に速度を上げて「転移」を――ッ!

 

2020.04.02 22:17 UTC / アイスランド・シンクヴェトリル国立公園

 

「……はあ。よくもまあ、作戦会議もなしにこんな息の合った連携をできるものね」

 

 肉体を再生させつつ、大地に降り立つアサシン。

 その手には、自動的に『草薙』が戻ってきていた。

 

「――そちらこそ、大した修復力である。空間に固定された胴体を切り捨て、それ以外の部位に“血と水”を混ぜて復活を果たすとはな」

 

 アーチャーも体勢を整えつつ、相手を観察する。

 先ほど溢れ出した「血を含んだ水」を、アサシンは吸収していた。

 「水流」は「地の利を得つつ敵を逃がさないための壁」であると同時に、緊急用の「輸血パック」でもあったのだ。八岐大蛇が「荒れ狂う河の化身」だからこその回復手段である。

 ――「雷の矢」を呑まないようにするため、回復量は減少していたが。

 更に「水流」の穴は、失われた部分を補うように引き延ばされ補修された。

 

「それで、貴方は単騎で私と戦わなければならなくなったわけだけど。――降参するなら、マスターだけは生かしてあげるわよ?」

「奇遇である。――余も、全く同じことを問う予定であった」

 次の瞬間、シンクヴェトリルの岩肌が一斉に隆起した。

 巨大な「岩の壁」は水流を覆い――そして「混ざり合う」。

 

『竜脈開扉』(ロンマイ・カイメン)。大地の竜脈を操る我が第二宝具である。――お前の“破壊不能の呪術式”が堅牢であることに変わりはない。故に、それをより強固にした」

 

 アサシンは眉を顰め、自身の地の利が激減したことを理解する。

 あの「壁」にもはや弾性は無い。

 そして、この閉鎖空間は「アサシンとアーチャーの合意」でもなければ解除できない。

 

「まあいいわ。それなら――どっちが先に折れるか。その結末を、徹底的に追求するだけよ……!!」










サーヴァントマテリアル④

クラス:アーチャー
真名:青龙(チンロン)
属性:秩序・中庸
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:A++ 魔力:A 幸運:A 宝具:A

 保有スキル
【対魔力:A】
霊獣・神獣クラスの魔力耐性。あらゆる魔術を空間そのものの「流れ」として消し去る。

【単独行動:A】
「天の使い」としての独立性が強く、マスター不在でも長時間現世に留まれる。

【神獣:A】
竜種・神性の複合スキル。天を守護する四聖獣であることを示す。

【天脈流転:A】
天地の気を読み、五行の流れを操ることで未来の一瞬先を予知・対応できる。
戦闘時は“相手が次にどう動くか”を先読みでき、回避力・命中率が上がる。

【天地律令:EX】
雲を呼び、雨を降らし、雷を落とす。自然の法則を一時的に支配するスキル。
アーチャーの青竜は雷を矢として無尽蔵に打ち出すことができる。

【東辰守護:A+】
東方を守護する竜としての加護。味方陣営の防御力・精神耐性を上昇させるフィールド型のスキル。


 宝具
『天穿・蒼雷箭(ティエンチュアン・ツァンレイジェン)』:A+
種別:対軍宝具 レンジ:10~99 最大捕捉:レンジ内全て
空一面に広がった暗雲から無数の雷の矢を降らせる。混沌もしくは悪属性の相手への特攻効果を持つ。
この宝具の真髄は「雷が降り注ぎ続けること」にある。本体を止めるか暗雲を払わない限り、攻撃目標は死ぬまで攻撃を受けることになる。

『竜脈開扉(ロンマイ・カイメン)』:B
種別:対地宝具 レンジ:1~99  最大捕捉:レンジ内全て
東洋の霊脈・風水思想に基づき、大地の竜脈(エネルギーライン)を操る。
対象地域の地形を変化させたり、エネルギーを解放して大爆発を起こすこともできる。
また、「流れ」という概念そのものに対して限定的にだが干渉することもできる。
もし彼が冬木の聖杯戦争に召喚されれば、即座に龍脈を掌握し大聖杯にたどり着く事ができたかもしれない。

『四象一矢(スーシャン・イーシー)』:EX
種別:対人宝具 レンジ:1~999 最大捕捉:1人
東西南北を司る四神の力を、一つの矢に結集する神霊級儀礼兵装。
令呪の補助を受けた青龙自身の記憶と霊格により、朱雀・白虎・玄武の力を模倣し、四神の擬似的権能を矢として放つ宝具。
発動時、アーチャーは「全ての方角を掌握する」。全ての吉凶はこの矢とその目標に集い、回避は不可能となる。

しかし、全ての力を発動するためにはその場に“四神”が実在しなければならない。
聖杯戦争において、それは度を越えた偶然が無ければ不可能である。
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