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2020.04.03 07:50 UTC / 固有結界内 視点:アサシン
マスターは衝撃の事実に、完全に停止してしまっていた。
あの悪魔が、一切のリスクがない手助けをするとは思えなかったが――まさか、こんな落とし穴があるとは。
肉体の痛みだけではない。感傷は、戦いにおいて隙となる。
それもまた、強さの源だと知っていてもだ。
「令呪を以て命ず! キャスター、あの宝具を使え! チャンスは今しかねぇッ!!」
「……大地より生まれしものよ、混沌の呼び水となれ。繋げ、繋げ、繋げ――原初の最奥まで……!」
キャスターが、詠唱と共に第二の右腕を伸ばした。
虚数の泥で構成された、漆黒の腕を。
(まずい、あの宝具は……!)
肉体の操作権が、私へと戻る。
彼らに突き刺さった髪を引き戻し、跳び離れようとするが、
「――これ、は」
私の周囲に、先程の「飯綱落とし」の衝撃で吹き飛んだ、
それらが……否。
それを含む、この固有結界にいる全ての竜牙兵が、キャスターと繋がっていた。
背に突き刺さる呪骨をはじめ、その全てが融解し、黒き「泥」へ置換されていく。
一手、遅れた。
「チェックメイトだぜぇッ、アサシン!!」
「
◇
「もしも」の話をしよう。
キャスターはルーラー・ティアマトから奪い取った「生命の海」を、竜牙兵を素材とすることで高速展開した。
その海に「沈んだ」者は、
海から浮上しようとすれば、細胞単位で意思を束縛され――奴の配下にされてしまう。
ライダーが、そうされたように。
……私こと、八岐大蛇の真の姿は巨山のごとき怪物だ。
現在のヒトの姿を捨て、急ぎその巨躯を取り戻せば。
この程度の浅瀬に「沈む」ことはなく、せいぜい下腹部を泥に濡らす程度で済んだことだろう。
だが、当然の話ではあるが――
蛇という動物に、体毛は存在しない。
出雲大社の宝物庫から盗み出した「櫛」のアーティファクトは、「髪の毛」に付けるもの。
私と一体になっている限り、ユキネはあらゆる外部からの物理的影響を受け付けない。
代わりに、その全てを私が受ける。
だが、もし「蛇」の姿を取り戻したなら。
ユキネは私から抜け落ち、泥に堕ちてしまう。
そうなれば、単なる猫の彼女は即死する。
マスター死亡により、私の敗北が確定する。
ダルグレインの言った通り、あの時点で私は既に詰んでいた。
今、ユキネは――「私が代わりに泥を被る」ことで、その影響を受けずにいる。
彼女は、震えていた。
原因は痛みでも、寒さでもない。
「罪悪感」によるものだった。
「……アサシン。ごめんなさい、私は――」
「いいの。落ち度があるとすれば、それは私だけのものだから」
「……え?」
◇
「愛」についての話をしよう。
生物は、何のために「愛」を抱くのか。
私はこう答える。「遺伝子を残し、次代へと繋ぐため」だ。
古代ギリシャ・キリスト教風に言うならば「エロス」、即ち性愛に他ならない。
生物にとって遺伝子を残すための交配の相手は、誰でもいいわけではない。弱く病んだ個体を避け、より強く健康な個体を選ばねば、子孫は絶える。
そうやって、進化と淘汰を延々と積み重ねてきた。
さらに言えば、複雑な生命体ほど生殖や成熟に多大な時間と労力を要する。
そのため「恋愛感情」という、特定の相手を選び抜き、関係を固定化する機能が生まれた。両親が協力し続ける仕組みがあれば、親が子を保護・養育し続ける動機付けになるからだ。
シニカルを気取るならば、「愛」とはまさに「遺伝子の奴隷にかけられた、脳内物質による幻想」である。
ならば。ユキネのように「去勢され、生殖能力を失った」生物にとって、愛とは何のためにあるのだろうか。
性に関する器官を切除されようと、脳の報酬系や愛着回路は残る。オキシトシンやドーパミンは放出され、心身に影響を与え続ける。
「愛」にまつわる記憶・感覚そのものが、消えることはない。
だが、どうしてもこう言いたくなってしまう。
――「その愛に、意味はあるのだろうか」と。
◇
日本において蛇神は、豊穣を司るとされる。
作物に害をもたらすネズミを食べることと、脱皮を行うことと、その四肢のない形態が陰茎に似る――即ち「種を発する」という連想によるものだ。どこぞの心理学者が喜びそうな話である。
それに、耕地に必須である水や雨を齎すことも加えて――人々は私を、豊穣の神として祀り上げた。
……皮肉も極まれば笑えてくる。
私という個に、「番い」は存在し得ないのに。
過去を気が遠くなるほど遡れば、一匹の蛇に至るかもしれない。
しかし、八つの「首」のうち、「私」という側面の蛇神は。祈りによって形を得た、自然発生の幻想種たる私は。
間違いなく――世界に「独り」の存在だった。
突然変異の動物が、子孫を残せず死んでいくのと同じように。
「水の試練」で、私の同族嫌悪について考察をしたが。
多分、特に私が本質的にティアマトを嫌ったのはこのためだろう。彼女が「追放され、見捨てられた」者であろうとも、どうしてもこう思ってしまう。
(――貴女は、「独り」ではなかったじゃないか)
八岐大蛇とは、単一の心を持つ存在ではない。
英霊が複数の側面を持つように、八つの首を持つということは、即ち八つの相を持つということ。
「伊吹大明神となり、分霊を遺した首」も、「酒呑童子の父となり得た首」もあったのだろう。
だが、「あのマンションで、ユキネの呼びかけに応じた私」はそのどちらでもなかった。
そんな私を喚んだ彼女の願いは、ただ一つ――「愛が欲しい」。
私は。彼女に渡せる確かな愛など、何一つ持っていなかったのに。
◇
だが彼女は、彼女なりに「愛」の形を理解していた。
感情の不足を補い合うための愛。
道理に合わぬ、打算なき愛。
あのマンションにいた人間の女性と共に、確かにその温もりに触れていた。
それが、「愛玩」に過ぎないとしても。
故に私は、模倣から始めた。
人の姿を取り、彼女の心に少しでも寄り添おうと決心した。
彼女のサーヴァントとして、自分にできることを探し続けた。
そして――戦いの中で、彼の啖呵を聞いた。
かつて「愛を知らぬ、哀しき竜」と呼ばれたセイバーの叫びを。
『――オレにとっちゃ、この国も! この“壁”も! 窮屈に過ぎんだよォ!!』
『だから、俺は壊す。俺たちの勝利のために。俺たちの願いのために!』
『俺が信じた――光のためにッ!!』
考えようによっては、「動物にとっての楽園」と言えなくもないランサーの「国」。
聖杯戦争の勝利のため、彼を倒すことは――楽園の崩壊に他ならない。
そうだとしても、譲れない想いがあると。
マスターのため、自分が知った「愛」のため……彼は、戦った。
あの瞬間、彼は倒されるべき「悪しき竜」などではなく。
間違いなく、輝かしい「英雄」だった。
愛によって変わることができるのだと、間違いなく証明していた。
「休戦期間」中に、彼らについていこうと思ったのはそのためだった。
もちろん、そんなことを口にするつもりはなかったが――
多分、私の中で何かが変わり始めていたのだ。
ユキネと共に、記憶の世界を歩いて。
封じられた、太古の記憶を覗いて。
感情で、セイバーやアーチャーと戦って。
……勝てる保証もないのに、スサノオの「試練」に挑んで。
かつての私ならば――冷血に、淡々と勝利を狙いに行っただろう。
何せ、私はアサシン。
サーヴァントを無視し、不意打ちでマスター殺しを六回繰り返せば勝てるクラスだ。
しかし私は、そうしたくないと思った。
不条理の中を、非合理的にもがき始めたのだ。
竜の聖杯戦争において巨躯の怪物の姿を封じ、あくまで人の姿を取り続けて。
「死んだら終わりだろう」と、分かったようなことを言う奴もいるかもしれない。
事実、その姿を解禁すれば勝てる戦いがあっただろう。
ちょうど、今のように。
――でも。
彼女が求めたのは「打算的な愛」じゃない。
私が与えられる物を、欺瞞にしたくなかった。
それだけは、できなかった。
私の敗北の理由を求めるならば、そのためでしかなかった。
それが、全てだった。
「ククク……俺だけには言われたくないかもしれないが、敢えて俺が言ってやろう」
……走馬灯のような回想の中に、割り込むように声が響いた。
「難しく考える必要など、最初からなかったんだよ。見返りのない、無条件の愛。
それこそがお前たちが追い求めたもの。――他ならぬ、
――ふん。
本当に余計なお世話よ、悪魔。
「クク、全くもってその通りだ。……じゃあな、アサシン。“神域での釣り対決”、俺は結構楽しかったぜ」
◇
私と一体化したユキネは、思考の速度で私の回想を「知った」。
私の想いは、余すところなく伝えることができた。
「……最後だから、だよね」
「生命の海」に沈んだ者は、浮上しようとすればその存在を変質させてしまう。
ならば、取れる手段はたった一つ。
「浮上せず、その場を死地とする」ことだった。
「ええ、残念だけどね。……泣かないで、私の可愛いマスター。もとより、私はサーヴァント。かつて滅びた、神話の怪物の影法師。それが偶然、再び生を受けただけ……それも、制限付きのね」
「でも……こんな別れ方じゃなくたって……!」
「……分かってるわ。私だって、本当なら優勝して願いを叶えて綺麗に別れたかった。……この“海”から浮上したところで、命まで尽きるわけじゃない。まだしばらくは戦えたでしょう。けど、それは文字通りの“蛇足”。そこにあるのは、もう私ではない。――そこに“愛”はないのよ」
だから、私は。
今の私にできる、最大限をする。
私が与えられる、最後の贈り物を。
「それにね、マスター。……“さよなら”をちゃんと言える別れって――それはきっと、特別なことよ」
私たちに、遺伝子を繋ぐことはできない。
だが――「後を託す」ことはできる。
それはきっと、独りきりの「怪物」にはなしえないこと。
勇猛なる剣士と、聡明なる弓兵。
彼らならば、きっと。
どうか、彼女が多くの愛を受け取れる世界を。
「……マスターより、アサシンへ。――“ありがとう”」
ユキネの令呪四画が、烈しく輝く。
仰々しい命令など必要ない。
その言葉だけで、十分だった。
剣を抜き、構える。
皮肉にも腕の傷は、「生命の海」が埋めていた。
◇
「オイ何だ、あの輝きはァ……!?」
泥から溢れ出す光に気付いたダルグレインが、驚きの声を上げる。
キャスターの張った結界で、あらかじめ泥の汚染を防いでいたのだ。
「被害規模の想定が、測定できぬ……!? これは……!」
キャスターは異常事態を察し、「泥」を操作し防御を試みようとする。
その反応は、当然だ。
なぜなら、この剣が真価を発揮したことは今まで一度たりともないからだ。
どれだけ、並行世界を覗こうとも。
其は、原初にして究極の一。
日本の神話テクスチャにおいて、始まりから現代まで伝わりきった神秘の極限。
本来ありえない――四画の令呪を受け、神器の枷が解き放たれる。
「教えてやろう、キャスター。そんな防御に、一切の意味はないことを」
神話において、八岐大蛇が自らの「剣」を振るった描写は一度もない。
それは、「剣」が禁忌そのものであったからだ。
分霊たる伊吹童子が宝具として振るうときすら、それは山を裂き大河を生むほどの力を示す。
だが――それすらも、まだ「真価」ではない。
その「先」があってはならないからこそ、剣は深く封じられてきたのだ。
「我はただ一つの想いのため、四の約定を以て此処に禁を解く。いざ、常世に八方の餞を。――百花繚乱、千変万化の花束を!!」
「……ッ!!」
「――
◆
ダルグレインは、キャスターからティアマトの「泥」の力と恐ろしさについて十分聞かされていた。
「生命の海」を全て焼き尽くして倒そうにも、それが「宝具」の象徴、騎士王の聖剣であろうと熱量が絶対的に足りない。
人類史全てを熱量へと変換した、ビーストⅠの宝具のような例外でもなければ不可能だという。
だが、この世に「確実」と「絶対」はない。
思考停止と慢心は、ありとあらゆる強者を滅ぼしうる。
そう知っていても、この状況は「詰み」だったはずだ。
逆転の可能性など、絶対に――
「クソッ……一体何がどうなったんだ、キャスター!?」
頭を振り、ダルグレインは気絶から復帰する。数秒前、彼はキャスターによっていきなり上空まで「打ち上げられた」。急激なGにその意識を刈り取られた後、視界のふらつきを振り払い、
「オイ、聞こえてんのか!? 早く返事を……ッ!?」
彼は、言葉を失った。
理解不能と、絶句だけがそこにあった。
彼は――「無」の中にいた。
(どういうことだよ……オレはさっきまで、「落下」していたんだぞ!?)
目の前には、文字通り「何もなかった」。周囲を見渡しても、見えたものは三つだけ。
剣を振り終えた、ほぼ消えかけているアサシン。
その頭部に縋りつくユキネ。
……そして。二本の右腕を「消失」し、重傷を負ったキャスター。
(――辛うじて、緊急回避だけは為した。まさに、あれは禁忌としか形容できぬ……!)
ダルグレインの脳裏に、キャスターの思念が伝わる。
それを真に外す権限を持つのは作成者、八岐大蛇のみ。
(……現存する神話において、「八岐大蛇がいつからいたのか」が言及されることは一切ない。かの国における蛇信仰の古層と共に、神器は大蛇を「テクスチャにおける、最古の神秘の一つ」と定義していたのだろう……)
そんな宝具の真名解放が齎したのは、単なる「破壊」ではない。文字通り、「消滅」であった。
其は、肉を断ち骨を断ち命を絶つ鋼の刃に非ず。
かつてある鍛冶師が目指した、「“縁を斬り、定めを斬り、業を斬る”刀」。怨恨を清算する究極の一刀――そのオリジナル。
一切の防御や宝具、概念は意味をなさず、存在したものを始原の虚へと押し戻す。
剣の軌跡は、真に「あらゆる物理構造・法則すべて」を切断せしめた。
「回避を為せたのは、大蛇が“生命の海”の完全消失を優先させたからだ……そうしなければ、自身の消滅後にマスターが、残った泥に呑まれかねない……故に、剣の軌道は横薙ぎとなり……遥か上空だけは僅かに、猶予が残っていた……」
ダルグレインは、もしこの宝具が「固有結界の外で振るわれていたら」と考えて、震え上がる。
まずキャスターの宝具や大魔術を封じる戦法上、「その前提はあり得ない」。とはいえ、
(――あんなもん、出力・射程に制限をかけられるとは思えねぇ! こ、この破壊規模じゃ……下手したら
あくまでも、消滅したのは固有結界内の情景のみ。
その「外側」に一切の被害が及ばなかったのは、まさに奇跡としか言いようがなかった。
◆
剣が崩れ壊れる音を聞き、私は意識を取り戻す。
(……キャスターは、剣の一撃を回避したようね)
剣の軌跡は、どうしても途中にある泥を滅しながら突き進む。
奴はこちらの動きも予測できる以上、逃げ道は僅かに残っていた。
少しでも「防御」をしようとする時間が長ければ、間に合わなかっただろうが――その観察眼だけは、流石と言うべきだろうか。まさか、マスターまでも生き残らせるとは。
それでも、奴の右腕と宝具は奪った。もう、
……別れの言葉も、言い尽くしている。「もしも」のための仕込みも、全てやり終えた。あと、残りがあるとすれば。
「――ダルグレイン」
「……何だよ」
心底嫌そうな顔で、彼はこちらを見る。
「人間の姿をした人外」ですら、彼にとっては嫌悪・憎悪の対象なのだろう。
「もはや、私に貴方は救えない。残念でした」
「……はぁ? そんなことを言うために耐えてるのかよ、お前」
ダルグレインの呆れは、道理である。
私の霊基は、「草薙」を振るった時点で破壊され、その九割が消滅している。消滅せずに耐えているのがおかしいのだ。
「貴方、“他者に救われなければいけない”ほど弱くないもの。それに、貴方の至上命題は“復讐”でしょうけど――自分だけが“する側”だと思ってると、いざって時辛いものよ」
「なっ――」
ダルグレインも、そしてユキネも。
(後は、頑張りなさい。どちらも、他ならぬ自分のために)
最後の言葉は言葉にならず、ただ意思になって――
風の中に、消えていった。
始めから、それが「自然」であるかのように。
サーヴァントマテリアル⑦追記
・『渦巣顕界・幽蛇叢雲(かそうけんかい・ゆうだむらくも)』:EX
種別:対界宝具 レンジ:0~20 最大捕捉:レンジ内全て
効果:本来アサシンが所持していた宝具ではなく、「夢歩き」の力を持つ猫であるユキネがアサシンの記憶を踏破したことにより見出した「最も古い日本の神話テクスチャ」を再現する固有結界の一種。
そのため、事実上宝具の発動者はアサシンとユキネの両名ということになる。
即ち、それは「名付けられる前の、記紀以前の世界」。
八岐大蛇はこの世界において最も信仰された「蛇神」そのものと定義され、途方もない力を得るだけでなく「この世界において、全ての”名前”は封印される」。
この世界において、「固有名詞」は存在できない。
即ち、宝具の真名解放すらも封印される。
ただ、厳密には「使用不可」ではなく「発動に大幅な制限」となり、霊核に深刻な損傷を負うことを受け入れれば使用はできる。
勿論、そのデメリットを負うのはアサシン側も同じ。
【戦闘続行(蛇):EX】でゴリ押しできてしまうが。
・『神剣・草那芸之大刀(しんけん・くさなぎのたち)』→
『八重叢雲・草那芸之大刀(やえのむらくも・くさなぎのたち)』:EX
種別:対界宝具 レンジ:1~9999 最大捕捉:レンジ内全て
効果:日本における三種の神器の一つ。八岐大蛇が自身の尾に秘めていたとされる神剣。
「娘」にして分霊である伊吹童子が振るう際には「八つの谷と峯を切り拓き、八つの大河を新たに生み出す程に恐るべきものであるが、それでもまだ真価ではない」という。
極端に厳しい使用制限がかけられているため、令呪3画の使用でも真の力は解禁されない。
ありうるとすれば、今回の聖杯戦争のような「令呪4画の使用、更に大蛇の意志を上回り体を動かし得るスキル、そして当人の承認」全てが揃ったときのみ。
八岐大蛇当人による最大の真名解放の際、その剣が齎すのは圧倒的な破壊に留まらない。
剣の軌跡は、「あらゆる物理構造・法則」を切断する。一切の防御や宝具、概念は意味をなさず、その地点にあったものは上書きされ消滅する。そしてその対象の世界はかつて「イザナギ・イザナミによる天地創造」が行われる前の「混沌」、即ち無に戻るという。
これは、日本における「蛇への信仰」の古さと神話においてヤマタノオロチが「いつから居たのか」が語られないことから「日本のテクスチャにおける最古の神性の一つである」という解釈、そして「神話においてこの剣は大蛇当人が一度も使っていない」=使ってはならない禁忌の剣としたことに依る。
――何故大蛇はそのような剣を造り出したのか、けして語ることはない。