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2020.04.03 07:54 UTC / 南極 視点:アーチャー
戦況は、再び動き始めた。
確かに、ライダーの「世界を支配する」という願いは阻止された。
しかし、大聖杯は依然として奴の内にある。
そしてそれは、単純に強大なエネルギーとして機能し始めた。
「と……当然、暴走してるとはいえ、奴は原因があたしたちだって気付くわよね! あたしならすごい怒るわ……!」
「是である。――来るぞ」
言葉と同時に、雷の矢と炎がぶつかり合い、相殺される。
それは、余が大聖杯の停止直後から手元で蓄えていた雷撃と、ライダーが即座に放った炎が拮抗したという事実。
さすがは大聖杯。随分と強化されているが――
「我が行いは変わらぬ。毅然として、攻め続けるのみ」
既に、仕込みは完了している。
烈風が奔り、散在させていた嵐雲の群れが一斉に呼び寄せられる。
瞬く間に一つへと束ねられ、空は再び黒く染め上げられた。
「ちょ、こんな一瞬で……!?」
「余を誰だと思っている。事前準備に抜かりはない」
それは南極突入以前から、アサシンと共にインド洋・南大西洋で発生させた複数の嵐。
暖かい海域で水蒸気を補給し肥大化した雲は、余の干渉でエネルギーを補給し続けながら南極の寒冷、乾燥に耐えて到達し、合流したのだ。
氷の大陸の上空――そこに広がるのは、もはや空ではない。
大地を覆う、一枚の黒天蓋。
地平線の果てまでも連なる、雷鳴を孕む夜の帳。
直径五千キロの超巨大雷雲が、轟々と渦を巻いていた。
ライダーが「怒り」という本能に身を任せている今、「次元跳躍」は発動しない。
冷静さを取り戻すまでに数千、数万、数億の雷撃を叩き込む――!
「断罪し、殲滅せよ。――
号令と共に、轟音と閃光が大地を白く染め上げる。
無数の矢はライダーだけでなく、制御を失い、無秩序に飛行するワイバーンの群れをも諸共に焼き尽くした。
――だが。
次の瞬間、ライダーの巨体が眩い光に包まれ、途中からの雷を全て弾き返したのだ。
「ど、どう見てもライダーの能力じゃないわッ! まさかアレって……!」
「大聖杯の、防衛機能か……!」
恐らく大聖杯は、ライダーと同化したことで、原始的ながら「反応」する自我を獲得した。
推論に過ぎないが、かつて大聖杯の炉心となったアインツベルンのホムンクルス……その自我の残り香だったのかもしれない。
ライダー共々、我が雷を危険視した両者はその危険性を「学習」し――「対抗するためのスキルを得る」という願いを叶えたのだとすれば。
「そ、そんなのアリ!? 後出しジャンケンで必ず勝てるってことじゃないの! というかそんなポンポン願いを叶えていいのッ!?」
「自らに限定的な耐性をもたらすだけならば、世界への影響は僅かだからだ。恐らく“時間制限あり、対象はアーチャーによる雷限定、ただし完全に攻撃を受け付けない”――そういった条件付けを行い、汎用性をなくすことで極限まで効果を高めている……ッ!」
雷撃を盾のように集中させ、辛うじてライダーの炎を纏った突進を弾く。
その残火がかすめた海岸の氷は、あっという間に融け消えた。
「ま、また来るわよアーチャー……っ!?」
マスターが振り向き、驚愕する。
――ユキネが、海に向かって落下しているのが見えたのだ。
「うわあああああああーっ!?!? 嘘でしょぉぉぉぉぉ、こんなところでぇぇぇぇ――ッ!?」
(――固有結界が解除されている。それで外に投げ出されたのか……!)
(あそっか、あの位置ってちょうど今“海岸だったところ”じゃないの!?)
このままでは、ユキネは氷の海に落ちる。
四月の南極海。
外気は氷点下十度前後、海水温は零度に限りなく近い。
人間でも、数分浸かれば筋肉は硬直し、呼吸ができなくなって命を落とす。
まして毛皮しかない普通の猫など、一分ともたない。
体温は急激に奪われ、血流は止まり、肺は痙攣する――生存の可能性は、ほぼゼロだ。
だが今、ライダーを相手にして彼女を救助に行く余裕は――
「あたしが行くッ! アーチャー、なんとか奴を抑えて!!」
「……! 了承した、今ならまだ間に合うぞ!」
レゼフィルの意思を受けたのか、「映る未来」が変わった。
すぐさま、防壁を解除する。
余の肩を蹴って、マスターは飛び出した。
その全身が、「強化」の魔術で赤い光に包まれていくが――
旋回したライダーが、再びこちらに向けて突進を繰り出してくる。
マスターを守りつつ、これを止める手立ては……
「その心意気、受け取ったぜレゼフィル!
当然、ある。余は
守護の光は、真正面から悪竜の攻撃を抑え込み、弾き飛ばす。
すぐさま、状況を伝達するため隣のセイバーに「思考の糸」を繋ぐ。
「すまねえ、ちと遅れた! 本当にとんでもねえことになってやがんな、オイ!?」
「是である。セイバー、奴は大聖杯の力により、“喰らった攻撃への耐性を持つ”よう願いを叶えることができる。仕留めるとすれば、一撃で決めるしかない」
「マジか。しかも“次元跳躍”と
(当然、あるわッ! 今、あたしがユキネを助けたことで――勝利の方程式は全て揃った!)
突如、甲高い声で念話が響く。
「レゼフィルか!? さっきも似たような状況だったが、それは一体どういう……!?」
(アーチャー、
「……最短で五分。それだけあれば可能だ」
(OK! なら、セイバーはその時間を稼いで頂戴! ライダーを海上に誘導すれば、ランサー戦で使ってた“大波の宝具”を合わせられるんじゃない!?)
「令呪一画が必要になるがな……マスター、どうです?」
(俺も構わない! 俺だって――負けたままでいたくない! あいつに、勝ちたいんだ!)
アルヴェイルも、セイバーを通じて念話を響かせる。
その意思の在り方は、インドで初めて会った頃の――ただ振り回されているだけの存在ではなかった。
様々な出会いと別れが、彼をここまで強くしたのか。
――その、「自然からの逸脱」が善か悪かは、今は問うまい。
(じゃあ、始めるわよ! ――ライダー&大聖杯、攻略作戦ッ!!)
◆
2020.04.03 08:00 UTC / 南極 視点:セイバー
……「バベル」以前の「絶対の言語」、なあ。
ランサーなら、それが未だ残っていたことにどうコメントするだろうか。
思うところは大いにあるが、そんな余裕はありゃしない。
「エアリアル・ドライブ、形態移行! 集結せよ、
号令と同時に、十基の礼装が一斉に飛翔する。
それらは巨剣へと吸い寄せられるように接続され、金属が噛み合う硬質な音が響く。
紅と蒼の回路が剣身を走り抜け、咥えた刃に光が灯った。
――
宝具ランクの都合上、この刃ではどうやっても奴は倒せない。
だが、時間を稼ぎ守り切ることはできる。
「――
こちらの咆哮に、ノイズ交じりの咆哮が応える。
奴もまた、宝物庫から「剣」を抜いた。
それは黄金の柄に、毒焔を纏う特大の剣。
マリアナ沖で、ルーラーに大打撃を与えたという合体宝具。
――
「――
マスターが令呪を切ったのだろう。
あの時、「感覚」は掴んだ。
ランサー戦同様、「オレ」の体が若返り――「神代回帰」していく。
身に纏う鎧も、白から黒へ。
次の瞬間、二つの剣が激突した。
火花が閃き、衝撃が海を割る。
続いて、「エアリアル・ドライブ」が凄まじい炎を噴き上げ加速する。
狙うのは、刃ではなく柄。
バーサーカーから、あれは大量の「ラインの黄金」を焼き固めたものだと聞いている。
それを砕けば、刃を維持することはできなくなる――!
「ンだらァッッ!!」
一際巨大な火花が散り、黄金の柄が割れゆく。
あと一発叩き込めば――とは、都合よくいかないらしい。
「■■■■■■■■ァ゙ァァ゙ーッッッ!!!」
怒気を吐き散らす咆哮と共に、ライダーの剣が一気に苛烈さを増した。
(とんだマッチポンプだな! 自分から出したくせに、
全てが致命打となり得る斬撃。
『聖鋼一閃・忠義の剣』のカウンターで、それらを全て捌き切る。
当然、至近距離で触れる
「それがどうした、ンのダボがぁッッ!!」
スキルと気合いで、それを跳ね除ける。
剣戟が雨のように飛び交う乱撃戦。
だが、これでいい。
――挑発し、怒りを誘発させ、ライダーをひたすら引きつける。
若い頃の「オレ」の精神状態と口調なら、その役目に一層相応しい。
そして、二十四度目の切り結びで――
「――貰ったぜ、その
トリコロールの軌跡が瞬き、金色の破片が雨のごとく降り注ぐ。
(いやちょっと待て! それって、ランサーから奪った毒が制御不能になるんじゃないか!?)
脳裏に響く、マスターからの
更に言えば、考慮すべきはそれだけじゃない。
ライダーの口元には、ずっと炎が溜められていた。
それは、
「――
すぐさま、「
……いつもなら、
だが、それでは
故に、今やるべきことは。
「来いッ!
炎がオレに直接
召喚された「神代の黒き海」は、毒も炎も、オレたちも――全てを呑み込んで、空へと巻き上げる。
思い起こすのは、どこか違う時空で垣間見た英霊の記憶の断片。
三柱の女神を組み込んだ
遥か遠き、
空中に伸びきった大波は水球へと変わり、オレごとライダーを閉じ込め、炎をかき消した。
それでも爪と牙で打ち合いを続けるが……その動きは、次第に
だが、
再び、ライダーは「次元跳躍」を始めた。
その体が透過し、水球の檻を抜け出していく。
なるほど、そりゃ大正解だ。
だが――敢えて言わせてもらう。
「――“待”ってたぜ、この
ルビ芸っていざやろうと思うと難しいですね
でも必要なことだったので…
え?カタクラフト?なんですかその誤記っぽいのは。