◆
2020.04.06 10:52 UTC / 南極 視点:セイバー
「い、一体何が起こって……!?」
「静かに、セイバー。身体に障ります」
そう言うと、ルーラーはワシの背に手を当てる。
瞬間、全身を襲ったのは――
急に、体から悪いものが消えていくような感覚だった。
「アイスランドから転移を経由してここに来る途中で、バーサーカーから
――ならば。わたし自身が海である以上、触れることでそれは満たせます」
な、なるほど……?
微妙に怪しい理屈だが、とにかく解毒できているのは事実だ。
さっきの「歌」の影響か、他の毒の多くも吹き飛んでいる。
まるで、バッドステータス同士をぶつけ合って相殺したかのようだ。
……さすがは元人類悪。やることが滅茶苦茶過ぎる。
ついでに言えば、その称号は伊達ではなかったらしい。
ルーラーは
背中の翼を始め、疑問はかなりあるが……絶望的状況が好転したのは間違いない。
(それでも、ヨルムンガンドの毒だけは残っている。ワシが“九歩”しか歩けないことに変わりはない……それより、“一万倍”の方はどうなった!?)
すぐさま、ルーラーが抱える石碑に視線を向ける。
一番下の、最も新しい記述には――
既に上から二重線が引かれ、血で拇印が押されていた。
修正と、訂正印を表すかのように。
「――起動せよ、
「……然り。この術には唯一と言える弱点が存在する。『天命の書版』を元々所持していた者――ティアマトだけは記述を否定し、術を無効化する権限を持つ。もっとも、“天命の印”が我が元にある以上、無効化できるだけに過ぎないが」
キャスターが「流体化」を解除し、「双頭のリンドヴルム」の姿に戻りながら言う。
なるほど、頭が倍なら聴力も倍――ティアマトの宝具
更に言えば、音は空気中を振動として、秒速三百四十メートルで伝わるが――
水中ではその約四倍、秒速千五百メートルに達するッ!
液体は圧縮されにくく、外から加わる圧力変化がそのまま内部へ響く。
つまり、身体を液体化した状態では音の振動を「受け流す」どころか、「全身で拾ってしまう」。ましてや、相手は「海そのもの」だ。
故にティアマトの宝具は、双頭+流体化していたキャスターへの特効となった。
奴は平然を装っているが、恐らくやせ我慢だろう。
その余裕めいた声音にすら、微かな軋みが混じっている。
ワシを縛っていた
さっき使ったのは、恐らく「
サンスクリット語での名前は「パジュラ・マハーセーナーパティ」――パジュラは「頑強」を意味する。
これらを踏まえると、「自身の肉体に対して“崩れてはならない、倒れてはならない”という規律を敷く」術ということになるか。
……「再生」するタイプじゃないなら、まさにやせ我慢だってか。
「それで? この通り逆転されンのも、儀式が完成しないのも“予言”の通りだってか?」
「……否。元より“見えていた”のは、術を行使する場面が最後。成否までは不確定事項。――されど、こうすればルーラーが現れるだろうことは“予想”できていた。術を阻止するため、必ずや安全地帯から引きずり出せるだろうとな」
憮然としたようにも見える表情で、キャスターは淡々と言う。
全ては計画通りなのか、そう見せているだけなのか――本心は見えない。
「生憎だが、その“予想”は間違っているぞ。キャスター」
――全身に走る、氷より鋭い寒気。
ルーラーの声は、南極の空気を超えて冷ややかだった。
「わたしは、“天命の書版”のために来たのではない。わたしは――おまえのあの言葉が、どうしても許せなかった。それだけだ」
赫耀の呪眼が、白の大地を禍々しく染め上げる。
全力全開の【赤き星の瞳】が、躊躇いなく迸っていた。
◆
ようセイバー、こちらバーサーカーだ。
今、お前の心の中に直接語り掛けている。
三日も経ってるだけあって、なんだか随分と久々な気がするな?
俺か? 俺は今、何だか広くなっちまった会議室を一人寂しく掃除中ですよ。
少し前は大人数でキャスター対策を話し合ったり、お前らの戦いを実況中継したりと騒がしかったのになあ……どうしてこんなことになっ
(前置きが長いんだよお前ェ! 要件は何だ!?)
おおう、気が早いな。
だが実際、史記に曰く――『先んずれば即ち人を制し、後るれば則ち人の制する所となる』。
要は、素早さは全てを解決するってこった。お前の考えは正しいさ!
――今のルーラーの装備と同じようにな。
(そうだよ、ありゃお前の仕業だろ! あンなことをやりそうな奴他にいるか!!)
うーむ、大正解だ!
ルーラー・ティアマトは誰かさんの狼藉によって、自らの本質ともいえる宝具――
こんなんじゃ裁定者の仕事も満足にできねえぜってことで、今までは俺の警備の下「会議室」に引きこもってたわけだが――
奴さん、数分前に突然「今すぐ南極に向かう」って言い出してな。
そのために、恥も外聞も投げ捨てて俺に助力を求めたってわけさ。
知っての通り、俺の「契約魔術」は「相手の欲望を媒介として願いを叶える」が……
はっきり言って、俺が軽く引くレベルの「欲望の質量」だったぜ?
どうしてこうなったんだろうなあクァハハハハハハハ!
閑話休題。
俺はルーラーの【自己改造:EX】をブーストし、鈍重さを補う装備を完成させた。
――偉い人は言いました。
「当たらなければ、どうということはない」と。
結果、完成したのがあの翼。
推定飛行速度、マッハ十。
サービスで付けてやった武具は、現代どころか近未来の領域。
創世の女神の神秘と未来兵器が両方備わり最強に見える――かどうかは、まだ分からんがな。
(確かに、一周回ってすげぇ神秘なのかもしれんが……)
だが、忘れるなよ?
ルーラーは文字通り、あくまで「裁定者」で「審判」なんだ。
聖杯戦争の「参加者」ではない。
結局のところ――最後に一番頑張らなければいけないのはお前だ、セイバー。
(……当然だ。マスターと共に、ワシらが絶対に勝つ。お前に言われるまでもねえッ!)
よろしい。
ならば、俺が言えることは一つだ。
――God bless you。
汝に、主の導きがあらんことを。
ククククク……クァハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
◆
2020.04.06 10:55 UTC / 南極→再現:原初の大地
「双呪――
キャスターは双頭から同時に詠唱を行い、ルーラーを迎え撃つ。
ダルグレインの時と同じくテュフォンの力が展開され、空間が書き換わる。
だが、同時に対となる存在――エキドナの力を行使したためか、その出力は以前の比ではなかった。
もはやその様は、固有結界の発動に等しい。
純白の氷原の面影は消え、見渡す限り、マグマと嵐、毒ガスに包まれた荒野と化していた。
まるで、誕生直後の地球を思わせる……一般的に「地獄」と形容される光景に!
(これで、いきなりルーラーは「海水の操作」っつーアドバンテージを失ったことになる……今までなら結構まずいが、どうする!?)
「石碑」を結わえたルーラーの背を見ながら、セイバーは思う。
当然、キャスターの術はそれだけでは終わらない。
ギリシャ神話における怪物たちの母――エキドナを由来とするその魔術は、太祖竜の領域においてこそ真価を発揮する。
二つの呪力が混ざり合い、千や万どころではない、億に届く命が怒涛のように産み落とされた。
空を駆けるもの、地を這うもの、溶岩の海を泳ぐもの。
ワイバーン。ドレイク。騰蛇。アンフィプテレ。ズメイ。
ワーム。ワイアーム。ナーガ。コカトリス。蟒蛇。
蛟。シーサーペント。蜃。ペルーダ。九頭竜。
「リンドヴルム」と同じく「個」の名前を持たずとも、「竜種」として伝承を残した者たち。
おまけにAランクの【狂化】を付与されて生まれた彼らは、「歌」によるバッドステータス程度で足を止めることはない。
何の躊躇も逡巡もなく、竜は行軍を開始する。
ただひたすらに、眼前の敵を滅ぼすため。
ルーラー・ティアマトにとって、それは皮肉極まりない光景と言えた。
まさにそれは、「旧人類を滅ぼさんとした獣」だった彼女が最も得意とした戦法。
かつて、ウルクの民を絶望と絶滅の淵に叩き込んだ情景の合わせ鏡。
そして「今の」彼女からは、失われた力。
数多の世界を観測したキャスターにとっても、そのことは承知の上。
ルーラーの情緒不安定を誘い、精神面から突き崩すという策だったが……
「――行け、『ウシュムガル』!!」
横薙ぎの熱線が、怪物軍の最前列を瞬殺した。
熱に耐性を持つはずの竜種が、木材めいて焼き尽くされる。
何よりそれは、ルーラー自身の「ブレス」ではなかった。
彼女の右手に輝くのは、金属の砲塔。
側面には楔形文字で刻まれた識別――「SSH-002 UŠUM.GAL」。
その光景に、双頭のキャスターは刮目する。
(間違いない……ティアマトの武装は、近現代における科学力を遥かに逸脱している!【獣の権能】が発動していようと、神秘に依らぬ火器が竜鱗を易々と貫けるものか……!)
(恐らくあれは、電力稼働する“超高出力エネルギービーム砲”と呼ぶべき代物。そんなものは、人類の宇宙進出が当然というような“空想科学”の世界でしか実現していない! 言わば、それは……ッ!)
言わばそれは、「遥か未来において、人類が存続している」ことを願う祈りの結晶。
例えそれが、闘争の果てに生まれた殺戮の寵児であろうとも。
憎しみの連鎖に決着をつけるための、鏖殺の申し子であろうとも。
他ならぬティアマトが、「続いていく人類の未来」を望んだのだ。
その武装に、自らの「十一の子」の名を刻んで。
「“軍勢”を率いるのは、おまえだけじゃない……! 行くぞ、『ウガルルム』!!」
肩部装甲――「SSH-006 U4.GAL.LA」が展開し、内部機構が唸りを上げる。
そこから飛び出したのは、無数の小型ミサイルだった。
悪魔の術によって「空想を具現化した」それに、残弾数という概念は存在しない。
ルーラーの水爆級魔力炉心が枯渇しない限り、弾倉は自動で再構築され続ける。
獅子ウガルルムが、ティアマトの権力と軍勢の強さの象徴であるように。
(……
キャスターも、間髪を入れずに動いた。
「対応する――
「撃ち落とせ――
天空を裂く光が奔り、瞬時に流星が降り注ぐ。
同時に、出現したのは巨大な蛇の影。
雷雲と虹色の色彩を纏うそれは、ミサイルから守るように怪物の群れに覆い被さった。
流星をすり抜けたミサイルの一部は、巨大な蛇へと突き刺さるが――
(……効いてるようには見えねぇ。随分と頑丈らしいが……ユルルングルだと?)
セイバーの脳裏に過ったのは、オーストラリアに伝わる「虹蛇」の伝承。
アボリジニに伝わる、「父なる蛇」の神話。
恐らくあの術は、その化身の召喚。
(てっきり雷で攻撃する……みてーな術かと思ったが、そうでもないらしいぞ)
一方ルーラーは、流星の直撃を回避しながら「虹蛇」の隙間を縫い、攻撃を行っていた。
その左手には、「SSH-003 BA.AŠ.MU」が刻印された機銃。
放たれたのは、強力な毒液の連射だった。
「続け、『バシュム』、『クルール』ッ!」
号令と共に、背部装甲の「SSH-010 KU6.LÚ.U18.LU」が輝いた。
その権能は、海水に限らない「周囲の液体の操作」。
毒液は虹蛇の胴をすり抜けて、怪物たちの頭上から降り注ぎ――その鱗を、あっという間に融解せしめた。
燃え盛る地表に金属光沢の雨が舞い、霧のような白煙が立ち上る。
「ありゃあバシュムの猛毒か! 威力はワシが身をもって理解して……ン? 何だ何だ何だ!?」
セイバーが驚愕したのもつかの間、既に「虹蛇」は動き出していた。
毒液の犠牲者たちを、一斉に呑み込んだのだ。
(――思い出したッ! ユルルングルは、長い眠りから覚めた時に勢い余って自らの姉妹と子孫を呑み込んでしまうんだ! だが、ヘビたちの会議でそのことを告白した後、呑み込んだ者は吐き出され蘇生したという!
嘔吐が一人前になるための通過儀礼となるほど、それはアボリジニにとっては重要な逸話。キャスターの魔術が、この伝承を元にしていたとするならば……!)
地鳴りのような音を伴い、「虹蛇」は呑み込んだ物たちを吐き出した。
――彼らの体には、一切の欠損も傷もない。
体液に濡れ光りながらも、何事もなかったかのように再び戦場へと飛び立っていく。
その間にも、流星はルーラーを追って降り注ぎ続ける。
(まずいな……膠着が続くようなら、いずれ数の差でルーラーが不利になる。状況を好転させるとしたら、ワシが動くしかないが……まだ、体が動かん……!)
ルーラーの「毒を以て毒を制す」やり方は、セイバーの体に大いに負担を強いるものだった。
雷神すら殺害した「創世の毒」が、未だ残っているのも大きい。
――「九歩歩けば死ぬ」。
何をもって「歩いた」と見なされるのか。
その曖昧な恐怖が、セイバーの足を縫い止めていた。
ルーラーの背を見送りながら、ただ拳を握ることしかできない。
(畜生、情けねえ……バーサーカーの念話にあんな啖呵を切っておいて、結局この様かよ……!)
歯噛みし、地面を殴りつけようとするセイバーだったが……突如、振り上げた拳が止まる。
戦場から足元に目をやり、その視界に入ったのは――
(……なんだ、こりゃ?)
水色の布に包まれた、小さな四角い箱だった。
布の結び目を解くと出てきたのは――黒い弁当箱。
容器には、この地獄めいた光景に似つかわしくない「適温を保つ魔術」が掛けられ、上部にはメッセージカードが添えられていた。
「……『もしよければ魔力回復の足しにしてください ティアマト』……」
その署名の傍には、一度書いて消した跡が残っていた。
――「母より」と。
◆
「自分の母親から、母親らしいことをされたことなど一度もなかった」。
人間を含む、哺乳類の基準からすれば、それはあまりに「残酷なこと」に映るだろう。
だが、自然界においては――それこそが「多数派」だ。
多くの爬虫類・魚類・両生類、そして昆虫にとって、「繁殖」とは「産卵」をもって終わる行為。
海亀の雌が浜辺に卵を産み落とし、そのまま海へと帰るように。
孵化した子亀は、捕食者の影を縫いながら、誰の助けもなく海へ辿り着かねばならない。
そこに親の庇護は存在せず、ただ生まれ、闘い、生き残るだけの世界がある。
むしろ、哺乳類や鳥類という「少数の子を育てるために大きなコストを払う生物」が「例外」であり、「少数派」なのだ。
竜という存在を「超自然的な、爬虫類の延長線上の生物」とするならば、「子を愛し、育てる」という発想自体が本能外の概念と言えるだろう。
だが、タラスクはそうではなかった。
「神の手で創造されし最上位の竜種」の血を引いた彼は、「理知的・人間的」と言える思考を持って生まれてしまった。
最終的に「信仰」と「祈り」という概念を理解し、受け入れられるほどに。
――力を渇望し続け、そのために実の父すら殺したファヴニールからすれば、ふざけるなと言いたくなるだろう天賦の才を持ち合わせて。
「生前」、それが彼を幸福にすることは決してないままに。
◆
「弁当のような屋外で食べる食事」や、「母親の手料理」という概念は知っていた。
姐さんを始めとした、人間たちの生活を見て学んだことだ。
それが、自分とは未来永劫関わりのないことだろうということも、理解していた。
なにせ、自分は「母親に捨てられた、巨大な怪物」なのだから。
――ずっと、そう思っていたのに。
本来よりも遥かに小さな手で、漆塗りの蓋を開く。
中に見えたのは――眩しいほどの色彩。
黄金の光沢を放つバゲットの断片に、香草をまぶした鶏肉のロティ。
赤ワインで煮込んだ根菜がほのかに湯気を立て、淡い緑のオリーブがその合間を彩る。
角の区画には、小さなタルト。葡萄の魔力が宿るのか、果実が微かに輝いていた。
多少ズレはあるものの、それは――「フランス」の食文化によるもの。
匂いは、懐かしいはずのない温もりを連れてくる。
海の潮と血の臭いに慣れ切った鼻腔に、柔らかなパンと蜂蜜の香りが、やけに優しく滲み込んだ。
「……いつの間に、こんな手の込んだものを」
いや、確かあの「会議室」の中で流れる時間は歪んでいる。
ルーラーの力なら、出撃前にキッチンの周囲だけ、更に時間の進みを遅らせることも可能だろう。
――そうだとしても、膨大な労力がかかることに変わりはない。
そんなことをする理由は、きっと一つしかない。
ルーラーが、南極に来た理由。
バーサーカーに、即座に協力を求めた理由。
キャスターに、あれほどの怒りを向けた理由。
即ち、それは。
(特にレヴィアタン――そのルーツは竜母ティアマトに遡る)
想起する、キャスターが数分前に発した
……震える手で食器を掴み、料理を口に運ぶ。
湧き上がり、込み上がったのは、食事の栄養がもたらす膨大な魔力――だけではなかった。
なぜだろう。
どうして、ワシは……いや、「オレ」は。
「……時間がねぇんだ。考えるより先に、食べなければ……!」
焦るように、料理を端から順番に平らげていく。
――途中で手にしたバゲットは、なぜか少し、ふやけていた。
キャスターの竜種魔術リスト
・『天命記す竜筆の書版(ドゥブ・ナムタルラ・シド・ウシュム)』
Dub Namtarra Šid-Ušum。
ティアマトは神々との戦いの際、「天命の書版(DUB.NAM.TAR.RA)」と呼ばれる「全ての神々の役割や個々人の寿命が書き記された、最高神の権威」の石板をキングゥに授けたとされる。
即ち「天命の書版は本来ティアマトの持ち物・能力であった」という解釈を元にした魔術。
「天命の書版」は所持神が「天命の印」を押すことで、記述された内容が有効になると信じられており、この魔術によって出現した石板に書き記した内容は新たな世界法則となる。
ただし、以下のような弱点(制約)を持つ。
・他者を直接害することはできない。個人に対してではなく世界に対して書き込む。
・内容次第では「世界の修正力」という相応の反動が発生する。
・所持者に「最高神としての権限」がなければそもそも発動しない。
・本来の所持者ティアマトは、書き込まれた内容について異議を申し立て、無効にする権限を持つ。
・『不壊なるや辰神の軍律(パジュラ・マハーセーナーパティ・アクシャヤ・ヴィナヤ)』
Pajra Mahā-senāpati Akṣaya Vinaya。
夜叉の頭領の一人で十二神将の一画、十二支のうち未ないし辰の神とされる「波夷羅大将」(サンスクリット名でパジュラ・マハーセーナーパティ)の力を元にした術。
波夷羅大将は信仰上の性格として「規律を厳守させる」ことから、「自身の肉体に対して“崩れてはならない、倒れてはならない”という規律を敷く」疑似的な防御の術となっている。
・『繁孽胎動・万蛇蠢生(エキドナ・プロゲノシス)』
Progenesis(προγένεσις=前生/原初の誕生)
『灼風創界・虚空廻天(テュフォン・アナゲネシス)』と対になる術。
テュフォンによって書き換えた世界の中で、大量の「子」を産み出す。「継続して産み続ける」ことはできず、「一度に大量に産み落とす」ことを得意とする。
厳密には以前から「用意」しておく必要があり、それを一気に解放したような形。流石にティアマトの宝具のようにはいかない。
産み落とす竜には何らかのスキルを付与することができるが、高度なスキルは使用できないためパッシブスキルの【狂化】の付与が一番やりやすい、とキャスターは判断したようだ。
・『大地を呑め、夢時の虹(ユルルングル・ワンガル)』
Yurlunggur Wangarr
オーストラリア・アボリジニの「虹蛇」ユルルングルの伝承を元にした術。
術とともに、銅の体を持ち虹色の色彩を纏う巨大な蛇(ユルルングルの化身)を召喚する。この蛇は体が金属でできているだけあり高い耐久力を持つ。
このユルルングルの化身は、定期的に傷ついた味方を呑み込み、吐き出す。 吐き出された味方は損傷を回復する。
ただし、ユルルングルはそこまで目が良くない。 そのため、敵対者を誤って呑み込み、吐き出すことで回復してしまう可能性もある。
Wangarr はヨルング文化において、祖霊的存在、祖先の時代、世界を形作った創造的・霊的な力を指す概念