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2020.04.06 11:13 UTC / 南極→溶岩の海 視点:セイバー
(前回までのォォぉー、あらすじ!by、バーサーカー!)
……は?
(セイバー・タラスク&ルーラー・ティアマトvsキャスター・リンドヴルムも最終局面!『黒咒・双声相噛(アンフィスバエナ・ドゥオルム・ウォクム・インヴェルシオ)』によって首を増やし、驚異的速度で多彩な竜種魔術を繰り出し続けるキャスター!)
え、何?
(さらに『
いや、おい。
(一方、「生命の海」を失ったルーラーは近未来の決戦兵器、『シューティングスター・ホライゾン』で武装。十一の武器に自らの子の名前を付け、マッハ十で戦場を飛び回る!
そして、セイバーは何やら小さな女の子になっていましたとさ。可愛いネ!)
……うるッせええええええええええええええ!!ワシの頭ン中で急に長々と語り始めるな!
(まあそう言うな!分身の俺が随分と楽しんでるせいで気分がいいんだ!お前も乗り遅れるんじゃないぞこのビッグウェーブに!)
……分身?ビッグウェーブ?どういうこった。
(――こっからは真面目な話なんだが、割と時間がない。少し前から、キャスターの“魂の質量”が減っているんだよ。恐らく『
マジか、おい。悪魔という「魂の専門家」みたいな奴に言われると、本当に洒落にならん気がしてくるぞ。
バーサーカーが見つけられないということは、前みたく「その辺を漂って観測補助をしている」とかではない。恐らく、ここではない遠い場所までわざわざ魂を飛ばし、何かをしでかそうとしている。
(引き続き“会議室”から調査は続ける。とにかく今は一気に攻め立てろ、機を逃すな。俺から言えることはここまでだ!)
その念話を最後に、体感時間が戻る。
「――来たれ、『
「蠢動せよ、『
キャスターの詠唱と共に、溢れ出したのは強烈な大熱波。
……否!それは、「炎の形をした蛇」だった!「ユルルングル」に匹敵する巨体が大地を割って姿を現すと、もはや「大気そのものが炎になり始める」――!
「うおおおおおおおお!?まずいまずいまずいッッ!!」
全力で「竜体」の甲羅の上に身を伏せ、魔力障壁で身を守るが――地獄のように暑い!そうとしか表現しようがないッ!
そもそも『
(ククク……なかなか面白いことになってきたな。中世イスラムの宇宙論では、世界は七つの層で成り立つと考えられていた。ファラクはその最下層を支えている巨大な蛇だ。無限の大きさと食欲を持つが、創造主たる“神”への畏怖ゆえにその顎を閉ざし続けているという――されど、キャスターはその“否定”に踏み込んだ)
あー……なるほど。「竜の世界」の完成は、「人の世の否定」。竜を悪魔と同一視する教義からすれば、それは「神の否定」と同義だ。儀式の完成を為しかけている今、キャスターは「創造主の座を簒奪」し「ファラクの化身を呼び出す」権利を得たという解釈だろうか。
バーサーカーの面白がり方的にそういう類だろ、絶対!
(クク……正解だ。ファラクは「もし神がいなければ、自分より上の世界すべてを呑み込んでしまう」とまで言われた怪物。さっそく第七層たる“火の地獄(ジャハンナム)”ごとお出ましになったようだぞ!)
「ガチの地獄だったのかよ!?そりゃ暑いわ!」
だが、実はより嫌な予感がするのは「ホヤウカムイ」の方だ。
予習が正しければ、それはアイヌの神話で「夏にその名を出してはならない者」とまで言われた蛇神……!
「――来るぞ、セイバー!!」
ルーラーの警告に端を発し、三者は一斉に動いた。
「――『
「『ウム・ダブルチュ』!風よ、大地へと下れ!!」
「エアリアル・ドライブ、『
キャスターが黒い翼で暴風の刃を巻き起こし。
ほぼ同タイミングで、ルーラーの装備がその風を逸らし。
同じく、ワシは集結させた礼装の噴射で突っ込み、キャスターを追い越す。
――そして、大地は一瞬で「焼き尽くされた」。負傷し、衰弱していた竜種の群れが、「枯れる」ように死んでいったのだ。
(ホヤウカムイは夏や火の傍では力を増す性質を持ち、凄まじい猛毒と悪臭を放つ。人間が“風下”にいれば皮膚が腫れ上がり、最悪焼け爛れて死ぬというが――まさに神話通りの光景だな)
だからこそ「風向きを変えられる前に」、即座にキャスターの背後まで回った。ファラクはルーラーが抑えに回っている。今こそ好機!
「攻:八、防:二!撃て撃て撃てェ!!」
礼装を攻撃用に転換し、回転しながらの一斉射撃。相手が火属性なら、これまでの砲撃では効果が薄いだろう。
(だが――今は違う、ってな!ぶちかませ、セイバー!!)
それは、【マルタフォーム・リリィ】となったことによる新機能。
『
結果、可能となった――『
「お前がホヤウカムイの力を得たってんなら、その弱点も同じはず――そうだろッ!?」
夏や火の傍では力を増し、冬や寒冷下では弱体化。変温動物たる蛇と同じ、その性質がある限り!
「ぬう……ッ!」
果たして、あらゆる炎を無力化する水の弾は、黒き翼を思い切りぶち抜いた。そんだけ当たる面積を広げてる方が悪ぃんだよバーカバーカ!!
(クク……効果はあったようだが、まだ足りんな。『
……バーサーカーの念話が若干半笑いになっているんだが。今度は何がツボに入ったんだ?
(いや……現状のお前の属性を抽出したら「擬人化TSメスガキ系ハイレグドラゴンライダー」だな、と)
お前は何を言っているんだ。
(一人称が「ワシ」だけど「のじゃロリではない」のがちょっと残念だよな……)
戦闘中になに関係ない話題を……と言いたいが、実は結構洒落にならない話じゃないか?
奴は今、ワシをこう言及した。――「ドラゴン」ではなく、「ドラゴンライダー」と。
「自身の術による肉体変化」と、キャスターの『
「精神は、肉体のあり方に縛られやすい」。「黒」の時の自分を思うと、どうにも嫌な予感が凄いぞ……!
(大正解だ、セイバー。そして、キャスターは無論それを承知だ。本来ルーラーに使うはずだった術の数々が、今はお前に銃口を向けているぞ!)
念話が途切れ、体感時間が戻った途端――予感は現実となる。振り向くと共に、キャスターは。
「……連呪、『
「続――『
「『
「待て、待て待て待て待てぇ!!?」
キャスターの周囲に舞った煌めきの数は、四!奴が同時に「固有名詞あり」の術を詠唱できるのは、首の数と同じ二つまでじゃないのか!?
(落ち着け。――恐らく、ポイントは『
少し笑いを抑えたバーサーカーの念話が、脳裏に響く。キャスターが放つ炎を防ぎながらそれを聞くが……明らかに「威力がおかしい」。「エアリアル・ドライブ」で弾いた時に比べ、自分の「竜体」で受ける方が、ダメージがでかい。
(予習済みだろうが、コアトリクエはアステカ神話の地母神だ。人間の手と心臓、頭蓋骨で出来た首飾りのファッションで有名だな)
……うむ。なかなか猟奇的だが、これは「生命はいずれ死に、大地に還ることは避けられない」という、アステカの世界観の象徴だ。
人間を常食するコアトリクエを端的に示す言葉は、「子宮にして墓場」。「子供を呑み込む母親」の体現。今の術は、それに由来した「生命・人間属性への特攻」付与ってところだろう。
(だが、それだけではかの地母神の術として単純に過ぎる。重要なのは、コアトリクエのもう一つの逸話――アステカ部族神で最も篤く信仰された軍神“ウィツィロポチトリ”を、単独で産んだことだ)
コアテペック山で「羽毛の珠」を拾ったコアトリクエは、その際「罪を犯すことなく、一人で受胎」したという。コアトリクエの子たちはそのことを恥じ、母を殺そうとする。
だが――生まれてきたウィツィロポチトリは、既に完全武装していた。そして即座に
(キャスターの背後に、青い霊魂のようなものが見える。恐らくアレは“ウィツィロポチトリ”の化身だ。軍神として、“母親”の代わりに術の詠唱ができるんだろうさ!)
「とんでもねえなオイ……だがッ!!」
「竜体」の回転を緩め、滞空状態に移行しつつ――甲羅から頭部だけを出現させる。逆に言えば、ウィツィロポチトリの化身をさっさとやっちまえばいいということ。礼装に加え、いざという時のためチャージし続けていたブレスを!ここでブチかますッ!
「うおォらぁッ!!」
周囲に「攻撃を庇えそうな配下」も見えない。『
「大した読みだと言いたいが……甘いぞ、タラスクッ!」
「……ッ!?」
キャスターが宣告し、ワシがブレスを放つ直前――その体が、「重く」なったのを感じた。体重じゃない……「動作が遅く、重い」!息を吐くのに必要な力が、倍に膨れ上がったような感覚……!
「さっきの術のどれかだとして、いつ喰らった?【対魔力】が反応するはずだろ!?」
(――ッ!セイバー、防御宝具だ!!)
「なッ!?『
突如響いた念話に、考えるより先に宝具を発動させる。
――直後。斜め下から急速に「飛来」した竜がブレスと砲撃を庇い、アタッチメントで固定したはずの「人間体」の足が、「後ろに引っ張られた」のだ。そして――
「――『
四方から、凄まじいブレスが襲い来た。
東西南北、相手の逃げ道を完全に塞ぐ回避不能の一撃。通常の防壁では粉砕されていただろうと、自ら展開した「盾」にへばりつきながら思う。そうなれば、「人間体」が外に転げ落ち――地獄の熱で即死だ。バーサーカーの指示がなければ、マジで危なかった。
(クク……キャスターの“予測”は、“その場にいない者の意志”で動く相手には効果が薄い。これまでの情報からの推測だったが、正解だったな)
「こっちは不本意だぞ畜生!……で、だ」
(考察タイムだな、分かるとも。どうせ防御中は動けないんだ、体感時間を引き延ばしてやろう)
バーサーカーの「コレ」は、認めたくないが非常に便利だ。だが、無視できない弱点もある。
体感時間と「実際の時間」のズレが生じるほど、元に戻った際に「ラグ」が出て動けなくなるのだ。その隙は、高速戦闘下ではあまりにも致命的。
(が、今回はどうせ動けないし関係ねーってな。シンキングタイム、スタートッ!)
クイズ番組かよ。
◇
(まずは一番分かりやすいところから埋めていこう。四方向からのドラゴンブレス、『
だからクイズやってんじゃないんだぞ。
……いや、似たようなものか?聖杯戦争じゃ「真名当て」は結構重要な要素だしな。
実際、答えは簡単だ。中国神話に出てくる「四海竜王」、
(その通り。『西遊記』や『封神演義』にも出てくるから知名度はそこそこあるよな)
……どちらかというと「かませ」だし、いい役じゃないらしいがな。
ともかく、アレは「四方の海」を支配する竜王の力を全方向からぶつける術だということ。
普通に喰らったら死ぬ、シンプルにして強力な攻撃だ。
(問題は次からだ。真名当てより、“何をしてきたのか”を見定める必要がある。『
ああ。確かエインガナは「何もない世界」に一人横たわっていたとされ、それに退屈しこの世のすべてを作り、最終的に人間を生んだ。
しかし人間が逃げようとしたので、エインガナは彼らの踵を「紐で縛った」という。
多分、さっきワシの「足を引っ張った」のは、この逸話を再現した霊的な紐だ。術を発動した時点で、射程圏内の人間の踵に「紐が既に結ばれている」。そういう「因果の逆転」が起こったのだろう。
で……エインガナは今でもこの紐を握っており、手を離すと人間は死ぬのだと――え、ワシ死ぬの!?
(それができるなら初手でやってるだろうし、できないと見るべきだろう。だがセイバー、何をされても「自分から」紐を解くなよ。恐らく、その時にこそお前は「神話通りに」――死ぬぞ)
バーサーカーの真面目な声に、思わず息を呑む。
(ちなみにトゥーンとは現地の言葉で「紐」を意味しマース。しかし、ニュアンスとしては生命を繋ぎ止める「臍帯」に近いのデース。それをカットするのは「神の手を離れる」こと。ゆえに死ぬ、ということなのでショーウ。Oh、どうしましたかタラスクボーイ?)
……盛大に全身から力が抜ける。何だそのカートゥーンアニメが好きそうなアメリカ人みてーな口調は。
(ノリの悪い奴だな、現状俺たちの中で唯一カード化してないからって……)
やかましいわ!真面目な話の途中だろ!?
(へいへい、次行くぞ。『
「カハウシブワレ」は、かつて「大地に果実がたわわに実っていた」頃、人間や動物、木々を作ったとされる。だが、人間に死をもたらすのもまた彼女なのだとか。
神話によれば――「最初の女」が庭仕事のため、赤子をカハウシブワレに預けた際に事件は起こった。
赤子の鳴き声に耐えかね、精霊は思わず赤子をとぐろで絞め殺してしまったのだ。
怒った女にカハウシブワレは斧で切り刻まれるが、すぐに再生。そして「これから一体誰があなたを助けるのだ?」と言い捨てて去った後、人は労働で糧を得ねばならなくなった――とのこと。
(色々と凄まじいが……要は「失楽園」神話の類型だな。「楽園の終焉・労働の強制」と「加護の剥離」のセットだ。
そして、セイバーは「術を喰らった覚えがないのに効果を受けた」。だったら、「いるだけで効果が及ぶフィールド」を展開したと考えるべきだろう)
失楽園がどうとか、その犯人がよう言うわ。
とりあえず、「消費魔力の増加」「疲れやすくなる」「加護系スキルの効果削減」あたりを受けたとすれば、さっきの現象は理解できるな。
――さて。ここまで考えてみたが、まだ分からないことが二つある。
まず四つ目の術、『
読みから考えると、
古代中国神話に登場する蛇身人首の神――妹の
彼は「八卦」「文字」「網」など、様々な「文化」の発明者――即ち「文化英雄」とされている。だが、それをもとにした術が「どう戦場に影響したのか」がまるで見えないのだ。
(だな。……そしてもう一つは、「突如すっ飛んできて攻撃を庇った竜」。自分の翼で飛行しているようには見えなかったぞ、アレ。それこそ、「空から糸に引っ張られた」ような――)
……思わず、両者押し黙る。
これも『
(キャスターが「紐」を付けられるのは「人間だけ」じゃないのか?術の対象範囲を拡張したのかもしれないが、それではセイバーの【対魔力】や防壁をすり抜けて効果を発揮できる強力さに説明がつかん!)
そうだ。こういう術は、「伝承通り」であるからこそ意味を持つ。
何より――「エアリアル・ドライブ」による大量の砲撃を、たかが一体の低級竜が庇いきれるとは思えない。間違いなく、まだ何かある。
(そのあたりが分かるのは、爆風とブレスが消えた後だな。では……時よ、再始動せよ!)
・ランサー:《レプティレス・ヴァースキ》
・アーチャー:《青竜の召喚士》
・ライダー:《水晶機巧-サルファフナー》、《竜輝巧-ファフニール》
・アサシン:《八俣大蛇》
・キャスター:《ランス・リンドブルム》、《覇王眷竜ダークヴルム》など
・バーサーカー:《魔人デスサタン》《インフェルノイド・シャイターン》など
何故かラッシュデュエルにおける《幻刃兵站デスク・タラスク》(2024年)くらいしか該当するカードが無いのである……!
因みにMtGなら《タラスク/The Tarrasque》が2021年に出ているらしい。やっぱり間に合わないじゃないか