アベコベ少女ノヤンデレ裁判 作:MS
※ヤンデレ、逆NTR注意
「どうしたんだヒロのやつ、エマ抜きで二人っきり話したいだんて」
ゆっくりと屋上への階段を登り、重い扉を押し開ける。以前までなら夕暮れ時だった時間帯でも、季節が移り替わったせいか暗くなり始めている。
扉を開けた音に反応したのか、いつも通り屋上の縁に座るヒロが顔を向けてこちらを見る。暗い空に長い黒髪が溶けているようだ……
「こんな時間に呼び出してどうしたんだ?それに何も屋上じゃなくったって、少し冷えてきてるぞ」
「すまないな……やはり私たちが話す場所といったらここしか思い浮かばなくてな」
「にしても、男女が屋上で二人っきりなんてまるで告白でもされるみたいなシチュエーションだな」
場を和ませようと笑ってみせるが、肝心のヒロは口角を一度も上げるそぶりはない。どうやらかなり真剣な話らしい。
自分の座っている横をポンポンと叩くヒロ、座れってことか……フェンスをよじ登り、冷え込んだコンクリートの上に腰かける。
「エマにはなんと言ってきたんだい?いくら相手が私といえど、可愛い彼女さんがそう簡単に許すとは思えないのだが」
「普通に言ってきたよ、後ろめたいこともないしな。留学も終わって積もる話もあるだろうし、ヒロから二人っきりで話したいと誘われたってな」
「ボクも行くって駄々をこねてる姿が目に浮かぶよ」
「実際言われたな、そこの説得は聞かないでくれ」
ヒロちゃんなら盗ったりしないとは思うけど……とブツブツ呟いていたエマだったが、一番の親友の前だと逆に言いにくいこともあるだろ?なんて言ったら嬉しそうに送り出してくれたよ。やっぱりお前ら二人はなんだかんだ仲いいな
「今日呼び出したのは他でもない、エマの話だ」
「あー……留学中に連絡も寄越さず付き合ってたこと、やっぱり怒ってる?」
「当たり前だろう、私はキミたち2人の親友だと思ってたんだがな……?」
首をコテンと傾げながらこちらを見てくる。
血よりも紅い真っ赤な瞳に心臓を貫かれているようで、背筋が凍ってしまいそうだ。
「違うんだヒロ、勉強のために留学しているヒロちゃんに惚気たりしたら怒られちゃうよ!って止めてきたのはエマの方で……」
「だろうな、キミなら一報くらい送ってくれるだろうとは思っていたよ。止めるとしたらエマしかいない」
「――?」
ヒロが一瞬屋上の扉をチラリと見てから深いため息を吐く、誰か来たのか?こんな時間に他の人間が来るとは思えないが……
「なんでもない、人の気配がしたが
「それじゃあなんだろな、ちょくちょくエマと午後の授業をサボってることでも怒られちゃう?」
「なるほど、それについてはまた後で問いただすとしようか?サボりは正しくないからな」
おっと墓穴を掘ったようだ。さっきよりも目付きが鋭くなって心臓どころか胴体に風穴でも開けて来そうな雰囲気になってしまった。
「はぁ……今から聞くことに、嘘偽りなく答えてほしい。約束してくれるか?」
「あ、あぁ約束するよ。だけどヒロ、ここで立つと危ないから一旦座らないか?風でも吹いたら落ちてもおかしくない」
「私は落ちないさ、むしろ堕ちてしまったモノを拾い上げる立場にいる」
ヒロは素足のまま屋上の縁に立ち、夜景を眺めている。そのまま何度か深呼吸をして、覚悟を決めたように口を開き始める。
「エマは、人生で初めて出来た彼女か?」
「そ、そんなこと聞いて何に「答えてくれ」
「――そうだ。エマは人生初めての彼女だ」
ヒロとオレ、そしてエマは幼馴染だ。
彼女が他にいなかったことなんて知ってるはずだが……どうしたんだ?
「その言葉を聞けて覚悟が決まったよ、それに私がやらなければならないことも決定した」
そう言った瞬間タイミングよく風が吹く。
ヒロの細い身体はその風に煽られ……
「危ねぇっ!?「きゃっ……!」
間一髪のところで立ち上がって抱きしめる。左手でフェンスを掴み、右腕でヒロを抱きかかえるようにしてだが……
「ふ、ふふっ、やはり助けたな……」
「お、お前そりゃ助けんだろが。だから立つなって言っただろ?にしてもあのヒロがきゃっ、なんて言うとな?」
「いやなに、キミも立派な男の子なんだと思ってね。抱き留められるときの力強さが中々……」
そのまま感触を確かめるようにオレの胸に頬ずりしたり腕を触ったり。な、なんだ?一体どうしちまったんだよ?
「おい、ちょっとヒロ、止めてくれ」
「ふふふふふっ、はははははっ!やめてやらない、やめてやらないさ」
「様子が変だぞ!落ち着いてくれ!」
腕の中で錯乱している様子のヒロ、高笑いをしながら両腕をオレの身体に回してホールドしてくる。こ、このままじゃヤバい気が……抱えたままフェンスを登れるか?
「様子がヘン?変なのはキミの方だろう!?あんなに愛していた彼女のことを忘れてすぐに乗り換える薄情者め!!!キミみたいなのは正しくない!絶対に正しくないんだ!だから、だから私が代わりに正してあげないといけないんだ!!!」
「や、やめろ!暴れないでくれ!このままじゃ二人とも落ちるから!屋上だぞ!?死んじま――
そこから先の言葉な出なかった。
オレのフェンスを掴む音にかき消されたわけでも、ヒロの声に遮られたわけでない。
「んっ、んんあっ……むうっ……♡」
「はえっ?あ、なにしっ、て……?」
「ぷはっ…♡はあっ、はあっ……♡おや、キスくらいエマとしていたと思っていたのだが?もしかしてファーストだったか?」
キス、された。
それも舌を入れられるやつを
彼女じゃない、二階堂ヒロに
「お前、おまえっ!な、なな何してっ!?」
「おっとあまり動かないでくれ、ここがどこだか忘れたのか?脚がズレれば一緒に落ちてしまうのだぞ?まぁキミと一緒ならいくらでも"堕ちて"構わないがな……」
多分ヒロは冷静じゃない、き、きっとそうだ。帰ってきて、仲の良かった二人が付き合ってて、それで関係性が分からなくなったとかで、それだけ、なのか?
「ふむ、その反応を見るにキス自体はしていたが舌は入れたことなかったのか?全くウブな二人だな……そんなのだから、奪われてしまうのだ」
「ひ、ヒロ、きっと気持ちの整理がついてないだけなんだよな?オレたちは変わらず親友、だよな?」
「おいおい冗談だろう?キミは、彼女がいるのに、他の女に、キスされたんだ。これは立派な浮気だぞ?」
「ちがっ、お前が無理矢理、やってきて」
「私とキミは浮気相手だ。ふふっ、まさかこんな正しくない関係性になってしまうとはな……♡人は禁止されたものに惹かれるとは言うが、まさかここまで心地よい気持ちになるとは思わなかったよ♡」
ヒロは今まで正しく生きるために、周りも正しくするために生きてきた。ならばその分だけ悪に惹かれていたとしても、何かがスイッチとなって抑圧されていた気持ちがあふれ出したとしても……
そう考えてるうちに、いつの間にか腕の中からするりと抜け出したヒロは、靴を履いて扉へと歩きだしていた。
「今日はもういい時間だしこの辺りにしておくよ。キミも風邪ひかないように気を付けて帰るのだぞ?」
ヒロが何を考えてるのか分からない。
なんだ、何処で間違えた?
もう今までの関係の三人には戻れないのか?
冷たくなったドアノブをひねり、ドアを開ける。
さっきまで気配があった気がしたんだが……
「気のせいじゃないよ、ヒロちゃん」
「あぁエマか。どうしたんだこんな時間まで学校に残って、もう辺りも暗いんだ、早く帰りたまえ」
暗がりの中に足を広げてエマが立っていた。
右手に何か持っているようだが……あぁスタンガンか。バチバチ鳴る度に青白い閃光が闇を照らして綺麗だな。
「どうしてそんなことしちゃうの?ヒロちゃんはそんなことしない子だと思ってたのに」
「それはこっちのセリフだ。元々彼はあの子の物だった、だから私も諦めがついていた。なのに……」
あぁなんだろう、気分がいい。
元々はこんなことをするつもりも、心無いことを言うつもりもなかったんだ。
「よりにもよってキミが盗ってしまった」
「何それ、わけわかんないよ。盗ろうとしてるのはそっちじゃんか。人のモノを盗ってはいけません、正しくないって知らないのかな?」
「盗る?預かる、と言ってくれ。忘れ物や落とし物は元の持ち主が現れるまで預かられるものだろう?」
元々私はエマに嫉妬していた。
ユキはエマばかり気に掛けるし、優しい彼だってドジばかりするエマに目が行っていた。
「手がかかる子ほど可愛いとはよく言ったものだな。そういう私も正しくしたくて仕方がなかったが」
「嫉妬でもしてるの?だからって○○くんにキスしたのは許せないなぁ……」
エマの持つスタンガンがより強い光を放つ。
おそらく威力を最大にしたな……そんなの喰らったらひとたまりもなさそうだ。
「まぁやりたければやりたまえ、どうせ何回も何十回もやり直すだけさ。その度にするファーストキスはきっと甘くていいものだ」
「………ボク、絶対許さないから」
「結構、それで話は終わりか?」
武器を納めて私を押しのけながら奥の扉を開けて走り去っていくエマ、一体何を話すのだろうな。
「ふふっ、私で汚れた彼の口から愛の言葉でも囁いてもらえばいいさ……」
何が起ころうと私の魔法があるかぎり、最後に勝つのは私の方なんだ。それはゆるぎない事実。
「……悪い女になってしまったな」
少し伸びた爪を眺めながら、一人ポツリと呟いた。
キスシーンまではR15でセーフと他に書いた小説で分かってるから書くユキねぇ!解釈違いでしたら申し訳ない…でもドマゾですからこのくらいドロドロしてて好き勝手されるのが好きなんです。そして感想や高評価をいただけて嬉しいかぎりです……!本当に嬉しいので押していただける方はぜひお願い致します……!
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