学園仮面ライダー ダークサイド 〜サマーナイトパーティー〜   作:大島海峡

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4.

 獣のように地に身をかがめたまま、ザイクが馳せる。

 放言する通り、自分が傷ついて死ぬことなど微塵も感じさせない独走。

 敵のヤミーたちの只中に在って、縦横に双銃を奮い、迫り来る攻勢を片端から叩き潰していく。

 

 とりわけ執拗に攻め来るのが、白き人造怪物カーバンクル――を模したライフエナジーの具現体。

 三位一体となって亡霊(ファントム)たちが、半包囲の陣形をとって攻勢を畳み掛けてくるのを、背を丸めて低めたKはその足下を掻い潜り逆に彼らの背に回り込んでから、傾斜させた姿勢のまま、双銃を撃ち放つ。

 首から反転してきた怪物たちが発する怪光線を手を用いない、脚力のみの宙返りで躱しつつ、飛び上がってから、なお連射。

 弾痕と血痕のごとく、チョコレートのごとき煮沸物が彼らを汚す。

 

 そうした牽制のうえで、ベイクマグナムのマズルを持ち上げ、ドーナツのゴチゾウを装填。二度、緩慢な所作で噛ませるように上下させる。

 

〈ベイキング! フルブラスト!〉

 そこから発せられたリング型――もといドーナツを模したエネルギーが、カーバンクルたちを一絡げに捕え、締め上げる。

 

〈フォンダン〉

 Kは、今度はヴァレンバスターにエネルギーを充溢させ、一気に射放つ。

 溶岩のごとき波。それを外から挟み込む溝やレーンのように絞る曲線の隔壁。液体と固体両方の性質を持つ砲撃が、ファントムらを飲み込み焼き尽くす。

 

〈ベストマッチ! さまよえる超引力! マグゴースト!〉

 ……そこに、憑かれ者らしき仮面ライダーが、仕掛けてくる。

 左右非対称の色味を持つ科学とボトルのライダー……ビルド。

 それが、見覚えのあまりない、青と白の組み合わせのフォームに変じて、不自然なまでに長い浮遊感で中空から飛びかかってきた。

 

 それを迎え撃つも、柔軟なる体勢の変化によりそれを抜き去ったビルドは肉薄。接近戦に持ち込む。

 一、二度の交錯の後、Kのてから、得物の感触が消えていた。ベイクマグナムは、超磁力によって、敵の手に奪われていた。

 

「へぇ……」

 余裕の、だが微かな怒りの垣間見える吐息と共に、空いたその手で、ビルドマスクを押さえ込んでそのまま押しまくる。いくつかのビルドの背で轢き飛ばす。

 だが、ビルドは浮かせた両足の裏で周囲のヤミーを吸い寄せ、足がかりとしtr、飛び上がってムーンサルト。ザイクのクローによる拘束を剥がし、その頭上を飛び上がって背に回る。

 

 そして、ベイクマグナムを投げ捨てると同時に、己がビルドドライバーのレバーを握り回し、生成したエネルギーを脚部へと送り込む。

 

「面白いね」

 Kもまた、それに倣った。振り返りざま背を丸め、

〈チョコルド!〉

 と、特製のゴチゾウを噛ませた、自身のビターガヴ器官のレバーを回す。

 

〈Ready go! ボルテックスフィニッシュ!〉

 

 お互いのエネルギーが脚部に満たされた瞬間、先に仕掛けたのはビルドの方だった。

 足を突き出して飛び掛かったその姿が、接触間近に霞となってKの脇をすり抜ける。

 

 そして再び彼の背後をとるや、改めて回り蹴りを喰らわそうとして――寸毫の間にて、再び止まる。止められる。

 影の如く、泥の如く、Kの足下から伸びる溶液がその動きを止めている。

 

〈チョコルド! エンド!〉

 

 ザイク自身は悠々とそこから抜いた爪つきの足を、突き出して叩きつける。

 そして、周りを巻き込みながら、ビルドは吹き飛ぶ。その機能を停止させ、強制パージされたドライバーが、変身者と共に地を転がっていったのだった。

 

 〜〜〜

 

 パイルの視界には、他とは異なるものが散在している。

 それは、エナジーアイテム。あるいは、野菜や肉、それにバンズというエフェクト。いずれも、なかなか刺激的な色味をしている。選択したステージは、得点を競うものではなくPvPを想定したマッチ用。

 それを妨害するバグスターは、あえてこちらで準備するまでもなく、四方で蠢いている。

 

「さって、ゲート開通からの事件解決まで、みんなとRTAといくっすかねー」

 それを一瞥した後、進むべき道筋を演算し、ローラーを転がし始める。

 徐々に速度を上げていき、素早く切り返しながら、殺到する敵を紙一重で躱していく。

 

〈高速化!〉

〈ジャンプ強化!〉

 

 それは、単なる場当たり的な回避ではない。

 道中しっかりと、エナジーアイテムや、左手に携えた皿に載せる、ハンバーガーを構成するパーツ群を回収していく。

 

 ……と、そこに羽を撃つ音と、カラスの鳴き声が突如轟き、耳をつんざく。

 風の感触を察知し、その直感を頼りに背をのけぞらせたまま、慣性で滑る。その廿日の眼前を、剃刀のような蹴撃がと追い抜けていく。次いで挟み込むように襲い掛かったヒレのごとき刃の列を、飛び上がって避けた。膝とい右掌を用い。地を削るようにして、ターンと共に減速する。

 

 立場を入れ替えるかたちで着地したのは、腕輪を黒鉄の羽毛に巻き付けた、カラスの怪物。

 鈍色の肉体と爬虫類のような顔面を持つ怪物。

 いずれも、シグマタイプと分類されるアマゾンたちだ。

 

(バーガーの完成まで残る材料は、一番下のバンズ――)

 廿日はそれを、アマゾン()の背後、つい今しがたまで自分がもっとも近づいていたその地点に見出した。

 

「いけるっスかねぇ」

 独りごちて、一度大きく伸びをしつつ、コースを演算する。

 そして、八つの車輪を回して駆け出した。

 

〈Violent strike〉

 立てた腕の刃をもって引き裂かんとするアマゾンシグマの攻撃に

 一掠り。その風圧が胸部を削り、ライダーゲージを半ばまで削る。そこまでは必要経費だ。回避行動は、ある程度の被弾を覚悟をしても、最小限で良い。

 次の一手。挟撃を狙った左側からの攻撃に備えるために。

 

 突き出された腕を絡め取り、組み打ち、ねじ伏せると同時に起き上がって最後のパーツを揃える。

 これでハンバーガーは完成であるが、それを食べさせるバグスター、バガモンは、このモードには存在しない。

 

「ほい、召し上がれっと!」

 そう言って投げつけると同時に、ガシャットをキメワザ用のスロットに移し替え、ボタンを押して起動させる。

 

〈ジュージュー! クリティカルフィニッシュ!〉

 

 音声を慣らすと同時に、放り出したバーガーが、

 

〈巨大化!〉

〈分身!〉

〈混乱!〉

〈睡眠!〉

 

 巨大化し、そこからさらに二個三個と分裂し、かつ相手の動きをその場に縛る。

 さながら隕石のように、めきめきと空間を裂く音と共に地表に達した瞬間、それは大爆発を起こして周囲を吹き飛ばした。

 

 ハンバーガーの完成まで、左手が皿や具材を捧げ持った状態で制限する――いわゆる縛りプレイを強要される代わり、併せて取り込ませたエナジーアイテムの効果に必中の特性を持たせ、かつゲームを終了させるだけの圧倒的火力を持たせることができる。それがジュージューバーガーに特化したパイルの能力だ。

 

 その爆風の流れに任せ、かついなしつつ、ローラーを滑らせたパイルは、その場を後にするのだった。

 

 ~~~

 

 ウィスパーとネクロムゴーストは、互いに背を向け合いながら、着実に前進を続けていた。

 互いに基本的には近接戦闘を想定したライダーモデルであるがゆえに。自然、それぞれの死角を補う形となる。

 目下、もっと迫り合っているのはゴーストイマジンとシャドウイマジンである。

 それと一対一で戦いながら、ゆっくりと、確実に、ゲート脇の管理室を射程に収めていく。

 

「露払い、頼んだ」

 九一が短くそう言いつつ、タケルと直に背中合わせとなる。

 答えはない。求めてもいない。ただ互いの為すべきを為すのみ。

 そしてタケルの背を、身体を、すり抜けた九一が姿をかき消す。

 

〈Loading〉

 

 後を託されたタケルは、メガウルオウダーに、眼魂をセットし直す。

 己のものではなく、まして英雄眼魂でもない。眼魔の戦闘用アバターに、改良と調整を施したもの。

 

 虚空に滲み出るが如く現れたのは、青竜偃月刀。それを掴み取る。

 頭より肩にかけて被る(ぬの)は緑に転じ、どことなく東洋の気風を感じさせる。首には龍とも髭ともつかぬ装飾を巻いた。

 

 駒の如く、水車の如く、我が身を中心に、タケルはその長得物を振るう。

 そして、強く踏み込み、刺突を連続して繰り出し、相手の蛮刀を弾き飛ばす。

 相手が聞き取り不可能な叫び声と共に斬りかかるのを、上から押さえつけ、制し、返す刃の側面で、相手の横っ面を打つ。その反動を活かし、反転。より速く、鋭く、旋回させた。

 

〈Daitengan!〉

 いつしかその切先には鬼火が宿り、地表ごとに敵を灼く。

 

 その直撃を多段的に受けたイマジンの模造体たちは、耐久の限度を超えて爆発し、その爆炎が、桃の花のごとく散るのだった。

 

 〜〜〜

 

 静かに、音も立てず。

 九一は、壁を通り抜けて、施設の中に入る。

 

 すでにそこも、跳梁跋扈。灰色の怪物たちによる、百鬼夜行の体を成している。

 様々な動植物を模したオルフェノクたちに向けて、餌のごとく、鮟鱇の提灯のごとく、垂らした手首を掲げて見せる。

 

 それに、理性なき獣たちが喰らいついた。

 すばやく手を引っ込めて、おそろかになった下半身を踵で払う。すばやく起き上がって中空に飛び上がると、勢いそのままに顔面を掌で捕らえ、全身の体重を載せて沈ませる。

 

 低めた姿勢のままに拳を叩き込んで追い討つ。背に迫る敵の攻撃を避け、回り込む。

 身を限界までよじって、ウィスパーの頭を絡めとる鎖を解き放つ。

 

 その円周上に存在していた亡者たちのことごとくを屠り、青き火花を咲かす。

 

〈Exceed charge〉

 そのウィスパーを、黄金の網のごときものが捕えた。

 顧みれば、中距離。腰を溜めたXの記号をモチーフにした仮面ライダー……カイザが、自らのデバイスよりレーザーブレードを伸ばし、逆手に構えて拘束された九一を狙っている。

 

 そして彼と自らの間に、錐状のエネルギーラインを展開。自身を光の矢と化して突っ込んでくる。

 その軌道上から、ウィスパーは霧散した。

 

 攻撃を中止して足を止め、見失った標的を探すカイザのすぐ真横に、逆さまとなったウィスパーが、再び実体化する。

 

〈ウェイクアップ〉

 ベルトの側面にセットした、ホイッスル型のデバイス呼び声に、ササヤキバットが呼応する。

 覆っていた布がまくれ上がり、髑髏を想わせる剥き出しの基盤が露わとなると、その眼窩の奥底より、紅い妖光を浮き上がらせる。

 

 そして空中で自らの上下を翻しざま、人魂のごときライフエナジーの塊を纏わせた踵が、カイザの首筋に炸裂する。

 壁に激突した彼から、カイザのベルトが外れ飛び、フォトンブラッドが空気に溶け消えた。

 

 周囲を一掃した後、変身者たる生徒を壁にゆっくりと寝かせた九一は、そのままにコンソールを操作し始めた。

 

 ~~~

 

 ようやくのこと、ゲートが開き始めた。

 ゆっくりと開いていくその口を背に、集合したネクロムゴーストとパイルはその場で粘って、今か今かと、身体を捩じ込む隙を窺う。

 

「まだるっこしいなぁ!」

 

 と、そこに苛立たしげなKの声が、飛んできた。

 

「どけッ」

〈ブルキャンスパイシー!〉

 

 一喝と共に、彼の操るバギーが、多くの怪人たちを撥ね飛ばしながら、門扉めがけて猛進。

 

「ちょっ、わ!?」

 慌てて両脇に飛び退く廿日とタケルを尻目に、勢いも速度も微塵も落とすことなく、そのまま突っ込む。車体と扉、両者相打つ形で、派手な破砕音と土煙を立てながら破壊された。

 

 その中で平然と起き上がったザイクは、

「なんだ。色々理屈捏ねてた割に、案外脆いじゃん」

 などと言ってのけて、ひしゃげ穿たれたゲートの内に入っていったのだった。

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