学園仮面ライダー ダークサイド 〜サマーナイトパーティー〜 作:大島海峡
獣のように地に身をかがめたまま、ザイクが馳せる。
放言する通り、自分が傷ついて死ぬことなど微塵も感じさせない独走。
敵のヤミーたちの只中に在って、縦横に双銃を奮い、迫り来る攻勢を片端から叩き潰していく。
とりわけ執拗に攻め来るのが、白き人造怪物カーバンクル――を模したライフエナジーの具現体。
三位一体となって
首から反転してきた怪物たちが発する怪光線を手を用いない、脚力のみの宙返りで躱しつつ、飛び上がってから、なお連射。
弾痕と血痕のごとく、チョコレートのごとき煮沸物が彼らを汚す。
そうした牽制のうえで、ベイクマグナムのマズルを持ち上げ、ドーナツのゴチゾウを装填。二度、緩慢な所作で噛ませるように上下させる。
〈ベイキング! フルブラスト!〉
そこから発せられたリング型――もといドーナツを模したエネルギーが、カーバンクルたちを一絡げに捕え、締め上げる。
〈フォンダン〉
Kは、今度はヴァレンバスターにエネルギーを充溢させ、一気に射放つ。
溶岩のごとき波。それを外から挟み込む溝やレーンのように絞る曲線の隔壁。液体と固体両方の性質を持つ砲撃が、ファントムらを飲み込み焼き尽くす。
〈ベストマッチ! さまよえる超引力! マグゴースト!〉
……そこに、憑かれ者らしき仮面ライダーが、仕掛けてくる。
左右非対称の色味を持つ科学とボトルのライダー……ビルド。
それが、見覚えのあまりない、青と白の組み合わせのフォームに変じて、不自然なまでに長い浮遊感で中空から飛びかかってきた。
それを迎え撃つも、柔軟なる体勢の変化によりそれを抜き去ったビルドは肉薄。接近戦に持ち込む。
一、二度の交錯の後、Kのてから、得物の感触が消えていた。ベイクマグナムは、超磁力によって、敵の手に奪われていた。
「へぇ……」
余裕の、だが微かな怒りの垣間見える吐息と共に、空いたその手で、ビルドマスクを押さえ込んでそのまま押しまくる。いくつかのビルドの背で轢き飛ばす。
だが、ビルドは浮かせた両足の裏で周囲のヤミーを吸い寄せ、足がかりとしtr、飛び上がってムーンサルト。ザイクのクローによる拘束を剥がし、その頭上を飛び上がって背に回る。
そして、ベイクマグナムを投げ捨てると同時に、己がビルドドライバーのレバーを握り回し、生成したエネルギーを脚部へと送り込む。
「面白いね」
Kもまた、それに倣った。振り返りざま背を丸め、
〈チョコルド!〉
と、特製のゴチゾウを噛ませた、自身のビターガヴ器官のレバーを回す。
〈Ready go! ボルテックスフィニッシュ!〉
お互いのエネルギーが脚部に満たされた瞬間、先に仕掛けたのはビルドの方だった。
足を突き出して飛び掛かったその姿が、接触間近に霞となってKの脇をすり抜ける。
そして再び彼の背後をとるや、改めて回り蹴りを喰らわそうとして――寸毫の間にて、再び止まる。止められる。
影の如く、泥の如く、Kの足下から伸びる溶液がその動きを止めている。
〈チョコルド! エンド!〉
ザイク自身は悠々とそこから抜いた爪つきの足を、突き出して叩きつける。
そして、周りを巻き込みながら、ビルドは吹き飛ぶ。その機能を停止させ、強制パージされたドライバーが、変身者と共に地を転がっていったのだった。
〜〜〜
パイルの視界には、他とは異なるものが散在している。
それは、エナジーアイテム。あるいは、野菜や肉、それにバンズというエフェクト。いずれも、なかなか刺激的な色味をしている。選択したステージは、得点を競うものではなくPvPを想定したマッチ用。
それを妨害するバグスターは、あえてこちらで準備するまでもなく、四方で蠢いている。
「さって、ゲート開通からの事件解決まで、みんなとRTAといくっすかねー」
それを一瞥した後、進むべき道筋を演算し、ローラーを転がし始める。
徐々に速度を上げていき、素早く切り返しながら、殺到する敵を紙一重で躱していく。
〈高速化!〉
〈ジャンプ強化!〉
それは、単なる場当たり的な回避ではない。
道中しっかりと、エナジーアイテムや、左手に携えた皿に載せる、ハンバーガーを構成するパーツ群を回収していく。
……と、そこに羽を撃つ音と、カラスの鳴き声が突如轟き、耳をつんざく。
風の感触を察知し、その直感を頼りに背をのけぞらせたまま、慣性で滑る。その廿日の眼前を、剃刀のような蹴撃がと追い抜けていく。次いで挟み込むように襲い掛かったヒレのごとき刃の列を、飛び上がって避けた。膝とい右掌を用い。地を削るようにして、ターンと共に減速する。
立場を入れ替えるかたちで着地したのは、腕輪を黒鉄の羽毛に巻き付けた、カラスの怪物。
鈍色の肉体と爬虫類のような顔面を持つ怪物。
いずれも、シグマタイプと分類されるアマゾンたちだ。
(バーガーの完成まで残る材料は、一番下のバンズ――)
廿日はそれを、アマゾン
「いけるっスかねぇ」
独りごちて、一度大きく伸びをしつつ、コースを演算する。
そして、八つの車輪を回して駆け出した。
〈Violent strike〉
立てた腕の刃をもって引き裂かんとするアマゾンシグマの攻撃に
一掠り。その風圧が胸部を削り、ライダーゲージを半ばまで削る。そこまでは必要経費だ。回避行動は、ある程度の被弾を覚悟をしても、最小限で良い。
次の一手。挟撃を狙った左側からの攻撃に備えるために。
突き出された腕を絡め取り、組み打ち、ねじ伏せると同時に起き上がって最後のパーツを揃える。
これでハンバーガーは完成であるが、それを食べさせるバグスター、バガモンは、このモードには存在しない。
「ほい、召し上がれっと!」
そう言って投げつけると同時に、ガシャットをキメワザ用のスロットに移し替え、ボタンを押して起動させる。
〈ジュージュー! クリティカルフィニッシュ!〉
音声を慣らすと同時に、放り出したバーガーが、
〈巨大化!〉
〈分身!〉
〈混乱!〉
〈睡眠!〉
巨大化し、そこからさらに二個三個と分裂し、かつ相手の動きをその場に縛る。
さながら隕石のように、めきめきと空間を裂く音と共に地表に達した瞬間、それは大爆発を起こして周囲を吹き飛ばした。
ハンバーガーの完成まで、左手が皿や具材を捧げ持った状態で制限する――いわゆる縛りプレイを強要される代わり、併せて取り込ませたエナジーアイテムの効果に必中の特性を持たせ、かつゲームを終了させるだけの圧倒的火力を持たせることができる。それがジュージューバーガーに特化したパイルの能力だ。
その爆風の流れに任せ、かついなしつつ、ローラーを滑らせたパイルは、その場を後にするのだった。
~~~
ウィスパーとネクロムゴーストは、互いに背を向け合いながら、着実に前進を続けていた。
互いに基本的には近接戦闘を想定したライダーモデルであるがゆえに。自然、それぞれの死角を補う形となる。
目下、もっと迫り合っているのはゴーストイマジンとシャドウイマジンである。
それと一対一で戦いながら、ゆっくりと、確実に、ゲート脇の管理室を射程に収めていく。
「露払い、頼んだ」
九一が短くそう言いつつ、タケルと直に背中合わせとなる。
答えはない。求めてもいない。ただ互いの為すべきを為すのみ。
そしてタケルの背を、身体を、すり抜けた九一が姿をかき消す。
〈Loading〉
後を託されたタケルは、メガウルオウダーに、眼魂をセットし直す。
己のものではなく、まして英雄眼魂でもない。眼魔の戦闘用アバターに、改良と調整を施したもの。
虚空に滲み出るが如く現れたのは、青竜偃月刀。それを掴み取る。
頭より肩にかけて被る
駒の如く、水車の如く、我が身を中心に、タケルはその長得物を振るう。
そして、強く踏み込み、刺突を連続して繰り出し、相手の蛮刀を弾き飛ばす。
相手が聞き取り不可能な叫び声と共に斬りかかるのを、上から押さえつけ、制し、返す刃の側面で、相手の横っ面を打つ。その反動を活かし、反転。より速く、鋭く、旋回させた。
〈Daitengan!〉
いつしかその切先には鬼火が宿り、地表ごとに敵を灼く。
その直撃を多段的に受けたイマジンの模造体たちは、耐久の限度を超えて爆発し、その爆炎が、桃の花のごとく散るのだった。
〜〜〜
静かに、音も立てず。
九一は、壁を通り抜けて、施設の中に入る。
すでにそこも、跳梁跋扈。灰色の怪物たちによる、百鬼夜行の体を成している。
様々な動植物を模したオルフェノクたちに向けて、餌のごとく、鮟鱇の提灯のごとく、垂らした手首を掲げて見せる。
それに、理性なき獣たちが喰らいついた。
すばやく手を引っ込めて、おそろかになった下半身を踵で払う。すばやく起き上がって中空に飛び上がると、勢いそのままに顔面を掌で捕らえ、全身の体重を載せて沈ませる。
低めた姿勢のままに拳を叩き込んで追い討つ。背に迫る敵の攻撃を避け、回り込む。
身を限界までよじって、ウィスパーの頭を絡めとる鎖を解き放つ。
その円周上に存在していた亡者たちのことごとくを屠り、青き火花を咲かす。
〈Exceed charge〉
そのウィスパーを、黄金の網のごときものが捕えた。
顧みれば、中距離。腰を溜めたXの記号をモチーフにした仮面ライダー……カイザが、自らのデバイスよりレーザーブレードを伸ばし、逆手に構えて拘束された九一を狙っている。
そして彼と自らの間に、錐状のエネルギーラインを展開。自身を光の矢と化して突っ込んでくる。
その軌道上から、ウィスパーは霧散した。
攻撃を中止して足を止め、見失った標的を探すカイザのすぐ真横に、逆さまとなったウィスパーが、再び実体化する。
〈ウェイクアップ〉
ベルトの側面にセットした、ホイッスル型のデバイス呼び声に、ササヤキバットが呼応する。
覆っていた布がまくれ上がり、髑髏を想わせる剥き出しの基盤が露わとなると、その眼窩の奥底より、紅い妖光を浮き上がらせる。
そして空中で自らの上下を翻しざま、人魂のごときライフエナジーの塊を纏わせた踵が、カイザの首筋に炸裂する。
壁に激突した彼から、カイザのベルトが外れ飛び、フォトンブラッドが空気に溶け消えた。
周囲を一掃した後、変身者たる生徒を壁にゆっくりと寝かせた九一は、そのままにコンソールを操作し始めた。
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ようやくのこと、ゲートが開き始めた。
ゆっくりと開いていくその口を背に、集合したネクロムゴーストとパイルはその場で粘って、今か今かと、身体を捩じ込む隙を窺う。
「まだるっこしいなぁ!」
と、そこに苛立たしげなKの声が、飛んできた。
「どけッ」
〈ブルキャンスパイシー!〉
一喝と共に、彼の操るバギーが、多くの怪人たちを撥ね飛ばしながら、門扉めがけて猛進。
「ちょっ、わ!?」
慌てて両脇に飛び退く廿日とタケルを尻目に、勢いも速度も微塵も落とすことなく、そのまま突っ込む。車体と扉、両者相打つ形で、派手な破砕音と土煙を立てながら破壊された。
その中で平然と起き上がったザイクは、
「なんだ。色々理屈捏ねてた割に、案外脆いじゃん」
などと言ってのけて、ひしゃげ穿たれたゲートの内に入っていったのだった。