学園仮面ライダー ダークサイド 〜サマーナイトパーティー〜 作:大島海峡
ゲートを通過した先の、校舎内渡り廊下。
追いすがるバイラス・デスの両ドーパントの幻影を、パイルとネクロムゴーストの回し蹴りがそれぞれに吹き飛ばす。
「この馬鹿!」
跡形もなく霧散する彼らを尻目に、九一はKを叱り飛ばす。
「なんのための事前説明だったんだ!? ゲートを壊したら普通に追手が内部に侵入してくるだろうが」
「えー、めんどっちぃ。どのみちあんなトロトロ開け閉めされてたら、割り込まれて終わりでしょ。壊してもどうせ直るし」
「直してる人がいるんだ。その人たちに余計な迷惑がかかるだろうが」
「……この
むしろ叱る側に呆れた様子の廿日の横で、タケルは
「とにかく、これで追手の一波は退けた。先を急ぐぞ」
と促す。そこについては優良児一名、不良ども二名も異論は無く、それぞれに足を速めたのだった。
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そうしてたどり着いた先は、中庭。四つの寮のちょうど中心に位置する、区切られた空間。
世界喰らいの怪物『ディサイダーズ』。学園に襲来した彼らに対し、まとまった最後の反攻を行ったのが、ここだったが、すでにその痕跡はない。激烈な戦闘の痕も、そこで、タケルと共に抗戦していたはずの、ライダーたちの足跡も。
代わりに、異形の存在が三階分の高さの、宙を漂っている。
シャンデリアのような生物とも兵器ともつかぬ、巨大な何物か。緑碧の妖光を、四方八方に放射している。
手のようなパーツが取り付けられこそすれ、すでにそこに意思は感じられず、所在なく垂れている。
「……あれは?」
仰ぎながら、タケルが問うた。九一が答えた。
「六柱のサバト。どうやらそれを改造した、ライフエナジー散布装置のようだ」
「いったい誰がそんなものを……」
「誰だっていい。ブッ潰せばそれで終わりさ」
そうKが息まき、黒剣を腹の内から抜き放つ。
その、刹那だった。
「困るなぁ。そんなことをされちゃあ。明日のアイスがもらえなくなるだろ」
屋上から、朗々と声が響き渡る。
見れば、寝そべる何者かの影がある。六柱のサバトが発する妖光によって、その姿が浮き彫りにされる。
民族的ともとれる、朱色のベストとチノパンを身につけた彼は、上体を持ち上げた。
片膝を立てる一方で、赤くメッシュの入った髪をかき撫で、浮かべた傲岸な面持ちの中で――瞳を紅く怪しく光らせて。
「あ――その顔」
ふと思い当たったかのように、廿日は彼を指した。
「こないだ授業で習いました。
だが、その二つの名を呼ばれた彼の反応は鈍く、一瞬怪訝そうに眉をひそめていた。
しかし、こちらも思い至るように、
「エイジ――あぁ、この身体のことか。たしかそんな名前だったね」
と手を打った。
「棺の中から
そう嘯き、『映司』は左腕を天へと突き出した。そこはついさっきとは異なり、極彩色の羽を持つ怪鳥のものへと変わっていた。次いで持ち上げた右腕も、同様の変異を起こしていた。
(おそらくは)
九一はべらべらと、頼まれもせず開示された情報を頼りに、推論を立てる。
Kの世界を滅ぼした『ファンガイアの王
雷寮の
あるいは疾風寮の
本来の歴史を歪めることで、ディサイダーズたちによって人為的生み出された、いわば『強化変異体』。それが、今対峙している火野映司――もといアンクの正体なのだろう。
「で、ギブアンドテイクとして頼まれごとされちゃってね。『狩ったライダーたちのライフエナジー、使い道ないから元の場所に捨ててこい』だってさ。まったく、グリード使いが荒いね。まぁお駄賃にアイスもらえるから良いけど」
あまりにあっけらかんと言い放つので、二人と二名の人外は、その場に憮然と立ち尽くした。
そんな彼らの様子を知ってか知らずか、傍らのアイスキャンディーの包装を解いて、一舐め。
「あぁ~、でももうアイスもいい加減食べ飽きたかな」
と言い放ち、後ろに投げ捨てる。
「さっさと仕事切り上げたいからさ、行くよ」
立ち上がると同時に、獰猛さを隠さず唇をゆがめた映司の腰に、オーズのベルトが浮かび上がる。
その胸の内から鮮やかな色味のメダル――おそらくはアンク自身のコアメダルが排出され、ひとりでに傾けられたバックルに納まる。
「変身」
そのまま身を屋上から投げ出しながら、傍らのスキャナでバックルを読み取る。
〈タカ! クジャク! コンドル! タージャードルー! エーターニティ!〉
欲望の業火にその身を焼きながら、低く澱んだ歌と共に、映司の身体が落ちてくる。
背より伸び上がった極彩色の翼を打ちながら、肉体を制動するとともに地表に降り立った。
あたかもその姿は極楽鳥のごとし。
朱を基調として、七色を差し込ませたアーマーは、宵の内でも異彩を放つ。
その両目は紫色に染め上がり、その胸部には過去のグリードたちを勲章のようにエンブレムとして刻んでいる。
「――君たちの欲望の味は、どんな味がするのかな?」
挑発的な物言いと共に、オーズは腰を溜めて、左手の甲に展開した専用装置エタニティスピナーを見せつけるように構えた。