誰にも叱られなかった私へ   作:みそそ

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第2話

私が、世界の「掃除屋」として、ある別の歴史に呼び出されたときのことです。

 

そこは、真っ赤な炎につつまれて、激しく燃えている街でした。

私にとって、その景色はあまりにも残酷なものでした。なぜならそこは、かつて子どものころの私が、大火事の中で養父に助けられた「すべての始まりの場所」と、まったく同じだったからです。

 

その燃える街の中で、私は世界の仕組みに心を奪われ、自分の考えを持たない「理性のない影」にされてしまいました。ただただ、目の前の敵を殺すためだけの、冷たい人形として利用されたのです。

 

自分の原点をめちゃくちゃにされ、ただの道具として使い潰されたことに、私は激しい怒りと屈辱を覚えました。

 

しかし、そのあとで、私はその街を燃やした「大きな化け物」の目的を知ることになります。

なぜ、化け物はそんなひどいことをしたのか。

歴史のすべてを焼き尽くして、その化け物が新しく作りたかった世界とは、いったい何だったのか。

 

その答えを知った瞬間、私は怒りを通り越して、お腹の底から冷たい笑いが込み上げてきました。

化け物の目的は、「誰も死ななくて、誰も悲しまない、完璧に平和な世界」を作ることだったのです。

 

「――なんだ。お前も、私と同じだったのか」

 

私は、誰もいない砂漠で、声もなく冷たく笑いました。

世界を滅ぼそうとしたその大罪人は、人間が可哀想だから、苦痛のない楽園を作ってあげたいという、100%の「優しさ」からスタートしていたのです。

 

でも、それはさっき話した「腐りゆく国」と同じです。

死も悲しみもない世界ができたら、人間はがんばることをやめて、心がお人形のようになって滅んでしまいます。化け物のやろうとしたことは、人間を幸せにするための善意の顔をした、人間を完全に終わらせるための「おそろしい悪意」だったのです。

 

そして何より絶望的だったのは、その化け物の姿が、昔の私の「理想の成れの果て」そのものだったことです。

 

もし、昔の私が、世界を思い通りに変えられるような、神様みたいな強すぎる力を持っていたら。

きっと私は、あの化け物とまったく同じように、世界中を炎で焼き尽くしてでも、「誰も泣かない完璧な楽園」を作ろうとしていたでしょう。

 

そして、人間の心をぜんぶ壊していたはずです。

みんなは「世界を滅ぼそうとする悪い化け物を倒すんだ」と言って命がけで戦っていましたが、私にはどちらが正しいのか分かりませんでした。

 

化け物の作る楽園は心が死ぬ地獄で、みんなが守ろうとした未来は、私が今こうして奴隷のように人を殺し続けている、擦り切れゆく世界なのですから。

 

どいつもこいつも、自分の正しいと信じるキレイな美学のために、世界の矛盾から目をふさいで戦っているだけなのです。

 

「あいつも、私と同じ偽物だ。大きな力を手に入れて狂ってしまった、私の拡大コピーに過ぎない」

 

そう気づいたとき、私の胸のからっぽな穴は、さらに深く、暗く、広がっていくのでした。

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