誰にも叱られなかった私へ   作:みそそ

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第4話

誰にも叱ってもらえなかった私は、この終わらない寂しさを消すために、もう一度だけ、別の過去の歴史へ向かうことを決めました。

 

まだ「正義の味方」という偽物の夢にしがみついている、別の世界のあのガキのところへ行くのです。

 

でも、今の私にはよく分かっています。

あの少年の前に現れて、世界はただの原子の粒が集まっただけの箱だとか、お前の夢はただの社会の呪いだとか、そんな本当の理屈をいくら並べたところで、何の意味もないということを。

 

あの少年は、自分の心の中に「絶対に正しいと信じるキレイな景色」を1つだけ持っています。だから、周りがどんなに本当のことを教えても、苦笑いをして、耳をふさいで、逃げてしまうのです。

 

かつて、誰の言葉も聞かずに地獄へ突き進んだ私が、そうだったように。

あの少年は、自分の見たくない情報をぜんぶシャットアウトして走っている、おそろしいほど頑固な生き物なのです。

 

「――だから、言葉はもういらない」

 

私は、誰もいない砂漠の真ん中で、ゆっくりと立ち上がりました。

シャッターを閉じて、こちらの真理をみようともしないあの男を止める方法は、話し合いではありません。その胸に、直接この冷たい剣を突き立てる以外にないのです。

 

私はずっと、自分には中身なんてない、からっぽの人形だと思っていました。

 

でも、もし……。

 

あの少年を、この手でどうしても殺して、この不条理なシステムを全部めちゃくちゃにしてやりたいという、胸が焼けるようなこの怒りと苦しみだけが、私の「本当の気持ち」だというのなら。

 

――行ってやるさ。

 

世界のためでも、世界の掃除の仕事でもない。

これは、俺の、最初で最後のワガママだ。

 

 

そのとき、からっぽの砂漠の暗い空に、突如として一条のまばゆい光が差し込んできました。

それは、かつて私が手放さず、ずっと肌身離さず持っていた「赤い宝石のペンダント」の引力でした。過去の世界にいる遠坂凛という少女が、そのペンダントを触媒にして、私を呼び出しているのです。

 

自分で召喚される場所を選ぶことはできません。

これから向かう光の先にいるガキが、まだ殺せる余地のある士郎である確率は、極めて低いギャンブルのようなものでした。

 

でも、1%でも因果を殺せる可能性があるなら、今の私は、その光の先にすべてを賭けるしかありません。

男は、大きな赤い外套をなびかせ、ゆっくりと光の中へ歩き出しました。

 

自分がこれから向かう世界線の士郎が、自分のすべての絶望を正面から受け止めた上で、「それでも、この理想は美しかった!」と、自分を乗り越えていく、まぶしい光の少年だとは――。

今のエミヤは、まだ何も知りません。

 

ただ、胸に宿した唯一の、泥臭い人間のエゴだけを抱きしめて、赤い弓使いは、召喚の光の中へと消えていくのでした。

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