才禍の少年と風精の少女 作:長夜月
「アルフィアお義母さん?どうしたの」
「何、お前が明日から居なくなるのが寂しくてな」
「大丈夫だよ!!!だってお義母さん達も来るんでしょ?」
「あぁ、私達は先に面倒を片付ける必要があるからな」
「『訪龍問題』?ならレオンさんに会うの?でも今は
「何、あの糞餓鬼には会わんよ、それよりもお前は準備出来たのか?」
「うん!!お祖父ちゃんにステイタスも更新してもらったしね」
「なんじゃ、儂の話か?」
「五月蝿いぞ狒々爺、さっさと羊用紙を見せろ」
「はいはい、ほらよ、これがベルの最終ステイタスじゃ」
□□□□□□
ベル クラネル
Lv.5
力:B791 幸運:D
耐久:B716 斬撃:E
器用:S999 精癒:E
敏捷:SSS1511 連撃:G
魔力:SS1001 覇撃:I
≪スキル≫
【
・全
・戦闘時、発展アビリティ『剣聖』の顕現
・戦闘時、発展アビリティ『魔導』の顕現
・戦闘時、発現アビリティ『覇光』の顕現
・任意発動
・全
・竜種に対して攻撃力高域補正
・常時、『体力』と『
【
・能動的行動に対してのチャージ実行権獲得
・チャージ時間はレベルに比例する
《
・想いの丈が一定以上で効果が変わる、消費
【
・雷霆の大精霊との契約がある限り効果持続
・精霊炉の使用可能性
・戦闘時、一時的に魔法スロット不要の魔法が顕現
【
詠唱文【
・雷霆の
・全
≪魔法≫
【ファイアボル卜】
・速攻魔法
・付与魔法
【
詠唱文【
・自身と武器への
・【
【ラグリウス・ヴァーテリア】
・擬似的な『器』の昇華
・効果は【魔喰増幅】、あらゆる魔法、魔力を喰らい自身の物とする
・全能力値に超域補正
・雷霆の付与を更に自身に付与、敏捷のアビリティに対して高補正がかかる
□□□□□□
「相変わらず、どえらいステイタスじゃのう」
「ああ、黒龍に挑むのを後十五年遅めれば、もしかしたら討てたかもな…」
「大丈夫!!黒龍は僕が絶対に倒すよ!!」
「そうか…、そうだな、その為にお前に様々な洗礼を与えたからな…、本当はもっと…親らしい事をしてやりたかったのだがな…」
アルフィアは少し下を向きながら言う。後悔ではなく、一人の親として何もしてあげられていないと思うアルフィアの慙愧の念だった。
それを見たベルはアルフィアに向かって元気よく言う。
「大丈夫!!アルフィアお義母さんからも、ザルド叔父さんからも、お祖父ちゃんからも沢山の物を貰ったよ!!!」
ベルの声にアルフィアは少し元気を取り戻す、すると台所からいい匂いがしてくる。作っているのは台所にはちょっと不釣り合いな大男、ザルドは手際良くご飯の支度を済ますと、それを食卓に並べ、ベルを見て言う。
「ベル、オラリオに行ったら絶対にあの糞猪だけはシバけ、あいつは弱いからお前なら十分殺れる」
「ザルド叔父さん!!急に怖いこと言わないでよ!!」
「ベル、オラリオに行ったら私達に
「やめて…!!オラリオが滅んじゃうから!!!」
「アルフィアが言うとマジにしか聞こえねぇ。って事だベル、オラリオの未来はお前の派閥選びに掛かってるって訳だ、安心しろ、お前が気に入らない派閥に入団させられたら俺がそいつらをシバく」
「何も安心できないんだけど……」
「ベルよ…、儂は暫し夜逃げしなければならない……」
「安心しろ狒々爺、お前は必ずヘラに突き出す、お前はベルの教育の害でしかなかったからな」
(お祖父ちゃん…、ヘラ叔母さんに殺されるんだ…、天に送還されないことを祈ってるよ)
家族団欒、それが最後の日だった。次の日、ベルはオラリオへと旅立った。「アルフィアとザルドはやり残した事がある」と言い先にベルを向かわせた、一ヶ月後にはオラリオで再開する手筈だ。
ゼウスはその後、夜逃げをしてヘラとの恋愛逃走劇を繰り広げる事となる。
馬車に揺られ、風にその初雪の様な白髪が揺れる。そんなのんびりした旅路がもうすぐ終わる。オラリオの市壁が見え始める、それらの門を管理するギルドの者達やガネーシャ・ファミリアの者達。
そしてベルは今、感傷に耽っていた。
(この風…、やっぱり
それは2年前、ベルがレベル3の時の出来事だった。「終末の谷に竜が出たから狩りに行くぞ!!!」とアルフィアとザルドは言い、ベルは少しビビりながらもそこへ足を運ぶ。
そこで見たのは今にも世界を飲み込まんとする黒龍の息吹を、その身を粉にしてでも食い止める一人の大精霊と出会う。
『私達の娘を…貴方に託してもいい?』
その言葉にベルは静かに頷いた。初めは谷の上に居たベルが、いつの間にか
「【
それは嵐だった、その嵐を持ってベルはレベル5相当の竜を単騎で狩り、それを持ってベルはレベル4へと昇華した。
その時の事を今でも鮮明に記憶するベルはその思い出に浸っていた。
(少ない時間だったけど、それでも僕にとってはいい思い出だったな。あの人はお義母さん達と同じで、温かい人だったな)
『そうじゃな!!儂的にはあれはかなりの上物と見るぞ!!』
(
『なぁに、昨日は家族水入らずの時間じゃったしのぉ、儂が茶々を入れるのは良くないじゃろう?』
(そんな気遣いが出来るなら、是非とも美人さんが出てきても静かにしてて―――)
『―――それは出来ん!!!!』
(即答かよ?!?!?!)
精神世界でとんだ茶番を繰り広げるジュピターとベル。二人の仲は生まれた時からの付き合いであり、既に二人は切っても切れない縁で結ばれていた。
「ほら坊主!!見えてきたぞ!!もう行くか?お前の足なら馬車より速いだろ?」
「うん!!じゃあ行ってきますね、ここまで送ってくれてありがとうございました!!!」
「なぁに、日頃の礼だ、お前さんらの一家には世話になったからな、その礼だよ。ほら!受け取れ、餞別だ」
「ありがとうございます!!それじゃあ行ってきます!!」
ベルは行商人のお爺さんから受け取ったリンゴをカバンの中に入れて、オラリオの市壁へと向かう。流石はレベル5、その限界を超え続けた脚力を持ってベルは市壁へと向かう。
「次の者!!前へ」
「はい」
ベルは門番の人とガネーシャ・ファミリアの人に、色々な検査があったが、入国許可書を持っていた為、その検査も全てパス出来た。
「お前さん、随分と鍛えてるなぁ、『
「ありがとうございます、ハシャーナさん!!!」
「まぁ、お前さん程強ければ、まあまず食い扶持には困んねぇと思うけどな!!」
市壁の前にて入国の時を待っているベルにハシャーナは元気よく話しかけ、そこで意気投合した二人は仲良くオラリオの事について聞いた。
「いい神に出会えよ!!若過ぎる冒険者くん!!」
「はい!!行ってきます、ハシャーナさん!!」
ベルは市壁の中へと入った、そこには石造りの家々や、オラリオのメインストリートがあり、その中心には白亜の塔『バベル』が建っていた。
「なんでも、あの塔の上にいるのは、とても怖い女神らしいから…、あそこには絶対に入らない様にしないと……」
『そうじゃなぁ、そうでもせんとオラリオが滅びるからな』
(見られてる…?!やっぱりあの塔から……)
『不気味じゃな、まるで品定めをするかのような…』
『(気持ち悪い視線だ!!)』
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綺麗な魂があった。何処までも純白で、それでいて何処までも強く光輝く白い魂、それに寄り添う様に蒼白い光沢を放つ魂と金色の光を放つ魂が彼の周りを回っている。
「綺麗だわ〜、私はあの子が欲しい!!!」
前回の失敗を踏まえて、自身からは手を出さない。あの純白の魂の光がじっくり実った時に、収穫するとしましょう。
貴方の魂がどんな色に染まるのか気になるわァ!!
その眼差しは何処までも強欲で、何処までも神々しい雰囲気を放つ女神だった。彼女は知らない、彼が放つ鐘に乗せられて、かつての化け物達がこの地に降り立つことを。
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「取り敢えず、派閥に入るのは確定として、でも焦る必要は無いよねぇ〜、別に僕は
『そうじゃなぁ、まあ大人しく派閥に加わるのが手っ取り早いがのぉ、まあ今日はダンジョンにでも行ってみたらいいんじゃないか?』
そんな会話を繰り広げながら、ベルは一つの館の前へと着く。そこは『黄昏の館』、都市最強の一角が鎮座する派閥の本拠。それを前にベルは思う。
(ここに入るとオラリオが滅ぶので無しだね)
『そうじゃな、よしておこう』
そうして、せめて中を少し覗こうとする変態二人、決してベルはそんな事は思っていなかったが、ジュピターのほうは別だった。
そんなベルに一人の門番が話しかける。
「おい!!そこの者、何者だ?まさか入団希望者なのか?」
「おいおい、君みたいなガキに
そんな事を口走る二人の門番を見てベルは心のなかで吐き捨てる。
(お母さんは居ないし、アルフィアお義母さんは絶対にそんな事許す筈もないだろ?!うん、決めた、ここはいつか必ず滅ぼす)
そう誓いを建ててベルはその場を
そしてベルは路地裏に入ろうとした、何故ならそっちの方が中央のセントラルパークに近いからだ。
「少年君!!そっちは危ないからやめほうがいいよ」
「はい……、女神様…?」
目の前のちびっこ女神、その身の丈とは不釣り合いな乳房を持つ女神、きっとお祖父ちゃんが居たら速攻で口説いたであろう神。
気配は抑えていた、ハシャーナさんにバレた時は冷や汗がしたけど、だから今はがっつり気配を抑えている。
女神の神殿浴を覗くという偉業を成した大神ゼウス、その彼から直々に手解きを受けたベルは、その内包する力の全てを抑えることも容易となった。それに加えて、目の前の敵の視界に入りながらも認識されないという化物技まで習得していた。
ので、ベルの力がバレることはなかった、恐らくそれを見破ることができるのはアルフィアとザルドしか居ないだろう。
「はい…、ありがとうございます」
「ううん、良いよ、それにしても君は…冒険者かい?」
「はい、今は半脱退状態ですけどね」
「それなら!!!僕のファミリアに入らないかい?」
「えぇと、それは…(でも、どう見てもこの食い気味ようは新興ファミリアのそれだ、なら都合が良いか?)じゃあ分かりました、でも僕のお義母さんと叔父さんと待ち合わせているので…、その後で良ければ…」
「えぇ?!いいのかい?やったー!!!ありがとう!!で?その待ち合わせとはいつなの?」
「一ヶ月後ですね、なのでそれまでは一緒に暮らしませんか?ちょうどいい場所を聞いてるんですよ!!」
そして僕と神ヘスティア…神様の二人っきりの生活が始まった。お義母さんに教えてもらった廃教会を本拠として、神様は「こんな所が…良いね!!」と言ってくれたので、そこは良かった。僕も気に入っている。この静けさが、一切の雑音を排したこの空間は、僕も大好きだ。
「雑音がなくて良いですね、ここは」
「そうだね、で…
「はい!!一応冒険者登録はしてるので、前のファミリアのままですけど…だがらお義母さん達と一緒にその時、神様の名前を新しく刻みたいと思っています」
「そうか…、分かったよ、それで君はどうするんだい?」
「そうですね、僕はダンジョンに潜ろうと思います」
「大丈夫かい?君はそんなに強そうには見えないけど…」
ヘスティアがそういうと、ベルは少し唇を曲げて、意地悪そうに自身の中に内包していた力の片鱗を出す。
それを見て一瞬ヘスティアは気圧されるが、瞬時に笑みへと変えてベルを送り出す。
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
「それでは、行きますか!!!」
僕はお義母さん達へと文を出した後、その足でダンジョンへと潜った。
1階層はお義母さんの話道理雑魚モンスターしか居ない。
(にしては、下の階層からの音が静か過ぎる…)
『何か…あると見ていいじゃろうな』
(それじゃあやっぱり、イレギュラー…?)
『十中八九な、それが正しいだろうな』
その言葉にベルは即座に足を動かした、レベル5の中でも恐らくレベル6にすら届き得る速度。それもその筈、ベルは今まで毎回の様に全てのステイタスの上限を超え続けた、その中でも最も合計値が高いのは『敏捷』だった、それ故に速度に置いてはベルは圧倒的だった。
爆音のそのベルが通った跡だけが残る中、ベルはすぐに五階層へと着く。
そこでベルが見たのは―――。
「ミノタウロス…?確か15階層だった気が…まぁ別に良いか、取りま倒すと―――」
―――『ベル、ダンジョン内での獲物の横取りはタブーだからな』―――
ザルドの言葉が思い出される、それが一度頭をよぎってしまい、ベルは即座にモンスターを倒す事から、この獲物を追っていた者が来るまでの時間稼ぎへとシフトする。
(うーん、倒すのは一瞬なんだけどな〜。どうするかな、面倒だしな、もう少しして来なかったな殺ろう)
その殺意が僅かに漏れていたのか、ミノタウロスは一瞬身を固まらせるが、すぐさま自身の身体に鞭を打ってその身を動かす。
『―――グオオオオオォォォォォォオ!!!!!!!!!』
(うん、やっぱり五月蝿いから殺ろう!!!)
ベルがそうして腰に刺していた純白の長剣を引き抜こうとする。それはアルフィアがベルに持たせた第二等級の長剣だった。 その名前は『
その腰に刺している鞘には確かにヘファイストス・ファミリアのロゴが入っており、それは正しくヘファイスト・ファミリアの誰かが打ったものに相違なかった。
その刀身を見てミノタウロスは驚愕した。モンスターでありながらと自身と相手の力量を正確には測ることが出来るという長所が、今は欠点となってしまった。
『グオオオオオォォ…………』
「へぇ、モンスターなのに怖いんだ。やっぱりオラリオって凄いんだね!!」
そんな笑みを浮かべる少年を前に、ミノタウロスは最後の最後まで何が起こったのか分からなかった。一瞬すらも置き去りにする神速の太刀によってミノタウロスはその身体を細切れにされた。
「ふぅ~、これで終わりかな?」
『そうじゃのぉ、って誰か
(あ?やべぇ、気づかなかった)
そこに映るその姿はとても綺麗だった。金髪の長髪に金色の双眸はベルを見据えていた。そんな彼女を見て、ベルは思った。
「ア…リア…?(アリアさんに…滅茶苦茶そっくりだ)」
かつて終末の谷にて託された風、それを託した女性によく似た少女、偶然かともベルは思うが、ベルは即座にその思考を切り替える。
(っていうかやべぇ〜!!!見られちゃったよ)
『落ち着くのじゃベル!!!ここは冷静に一旦逃走だ!!!極東にはな「逃げるが勝ち」という言葉があるんじゃよ!!!』
(さっすがジュピター!!よし、逃げよう)
「えっと…、君は―――――え?」
その少女がベルに言葉をかける直前に、ベルはその場を猛スピードで立ち去った。その速度は0.1秒間に7
そしてその場には一人の少女と、何処からか現れた頬の傷が特徴的な灰狼の獣人だった。
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第二等級
【
・アルフィアが時期を見てベルへと渡した。
ベルがこの名前を付けた時、アルフィアは妙に機嫌が良かったのは別の話。
―――――――――――――――――――――――――――
不味い!!!このままじゃ誰かがあのミノタウロスの被害に遭っちゃう。その前に早く行かなきゃ!!!
17階層にてロキ・ファミリアはミノタウロスの大群と衝突、その果てにミノタウロスは上層へと逃走。奇跡的に何体かのミノタウロスが生き残り、それを狩り続けたアイズと、鼻が利くベートが二人がかりで最後のモンスターを追っていた。
(こっちから……、声が聞こえる!!)
『―――グオオオオオォォォォォォオ!!!!!!!!!』
「え…?不味い!!!誰かを襲ってる(ここには下級冒険者しかいないのに!!)早く行かなきゃ!!」
そしてアイズは更に加速してそのミノタウロスの元へと疾走った。途中でベートはもう一体のミノタウロスを狩りに行き、アイズは一人で最後のミノタウロスを狩る所だった。
「あれは…、剣…?」
どう見ても業物、アイズの持つ愛剣『デスペレート』にだって引けを取らないほどの純白の光沢を放つ長剣。
(綺麗……あれは、誰?)
その太刀筋が見えなかった。速すぎて、それでいて綺麗だった。アイズ自身の『モンスターを殺す』為の剣とは雲泥の差だった。
(それに…懐かしい感じが…する)
その初雪を思わせる白髪に、
「ア…リア…?」
その言葉をレベル5の聴覚がかろうじて拾い上げる。その言葉にアイズは酷く瞠目した。
(なんで…もしかして君は何か…お母さん達の事を知ってるの?)
「えっと…、君は―――――え?」
何かを悩み、そして結論を出したかと思えば、その少年はベルの前から姿を消してしまった。それを見てアイズはポツンと置いてけぼりだった。
「え……、なんで…逃げ…るの?」
「クク…ク、アァァハッハハハ!!!!!あいつ、きっとミノタウロスを倒したお前が怖すぎて逃げたんじゃねぇか?」
「え?ベートさん?」
そしてベートは豪快に笑いながら先程神速で逃げた少年を嘲笑する。そしてそれにアイズは呆気を取られながらも、先程までその少年がいた場所に落ちている一枚のカードを拾い上げる。
(これは…、冒険者カード?名前は…ベル…?)
□□□□□□□
名前 ベル クラネル
所属派閥【
□□□□□□□
(知らない名前の派閥、何処かの新興派閥かな?)
アイズはベルが落とした一枚のカードを大事そうにポケットにしまった。
(これを、あの子に返そう。それで…なんであの子が私を『アリア』と呼んだのかを聞こう…、それにあの子は、なんだか)
―――――懐かしい風がした。
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
やっべぇ、冒険者カードを落とした。まぁいっか、どうせ再発行すればいいし、無くしたってそもそもどうせ作り直すしね。
(そんな事よりも…なんで僕はあの人から…逃げたんだろう?)
『儂らの力がバレると面倒だから?』
(それもあるぇ〜)
そんな事を考えながら、ベルはプラプラと街を歩いた。そうして一つの槌の音が聞こえた。
その音はとても強く、そして何より魂が籠もっていた。
(綺麗だ…。雑音一つない、良い音だ)
ベルはその槌の音に導かれるように一つの工房の前で足を止める。このままこの音を聞いていたいが、ここは意を決して中に入るべきだと思い、ベルは勇気を出して中へと入る。
「ん?誰だ…、見ない顔だがテメェは誰だ?」
「…えっと、槌の音が聞こえて…、それで来ました」
「は?武器を打ってもらう為じゃねぇのか?」
「えっと、武器は見たかったんですが…、それでこの近くに来た所で、貴方のならず槌の音を聞いて…いい音だなと思って来ました」
そこに居た赫灼の短髪に青の瞳の青年はベルを品定めするような目で見て、少し悩みながらも言う。
「ますます意味がわかんねぇよ、それで、何を打って欲しいんだ?悪いが魔剣は打―――」
「―――あぁ、魔剣は入りませんよ、どうせ砕けちゃうのにお金かけても勿体ないですしね」
ベルのその言葉に、赫灼の青年は目を見開き、口元に手を当てながら心底可笑しそうに笑う。
「アハハハァ!!おもしれぇよお前、気に入ったぜ、お前に武器を打ってやるよ、俺はヴェルフ・クロッゾだ、レベル4の第二級冒険者でな、まぁこれはほぼウチの団長のせいなんだがな」
「えっと…、僕はベル・クラネルです、えっとヴェルフさん…?」
「ヴェルフで良いぜ、よろしくなベル!!」
「…うん!!よろしくねヴェルフ!!」
そこからベルとヴェルフは仲良くなった、お互いに自分達の事を話したり、オラリオに何をしに来たのかを話たり、夢の話をとにかくしていた。
「――英雄…か、いい夢じゃねぇか!!俺が武器を打つんだ!!それくらい大層な夢がねぇとな!!」
「ヴェルフだってすごいよ!!魔剣を超える魔剣って、そう簡単に言えるものじゃないし!!凄い覚悟が伝わってくるよ!!」
ベルはヴェルフの夢の話を食い入るように聞き、ヴェルフもベルの夢を聞いて笑いながら褒めた。お互いに大層な夢を抱える者同士だったこともあり、二人はすぐに仲良くなる。
「でも…、いいのか?それは話によればお前のお義母さんがくれた物なんだろ?」
「『オラリオで気に入った鍛冶師が出来たらそれは捨てろ、いつまでもそれを使う訳には行くまい?』って言われて、だからいつかは変えようと思ってたんだけど、もうヴェルフなら良いかなって思ってさ!!」
「フン、嬉しい事言うじゃねぇか!!良いぜ、二つ名【
「うん!お金や素材は山程あるからさ!!」
「それにしても信じられねぇな、お前があのゼウスとヘラの生き残りだなんてな」
「そうだよね〜、僕も最初は「は?」って感じだったけどね、まあそんな暇も無くひたすら剣を振ってたから、気づいたら竜狩りのせいでお金がいっぱいあるよ」
「まぁお前が何であれ、精霊に認められてんだ、悪ぃ奴じゃねぇって事は分かるしな!!」
そしてベルはヴェルフに自身のノームの貸金庫へと案内した。そしてベルはそこにあった黒い鱗と
「これ…ってまさか…竜の…鱗か…?」
「うん、なんかレベル5に成った時に狩った竜で、名前は確か、イビルなんたらセンチネルなんたらドラゴンだった気がする様な…?」
「んで覚えてねぇんだよ!!忘れねぇだろ普通によぉ!!」
「だってあんまり記憶にないんだもん!!そもそも竜なんて皆顔が同じで、ただただ五月蝿いだけの雑音なのに、そんな奴の事覚えてらんないよ!!!」
ベルの言葉にヴェルフは瞠目、ヴェルフは今渡した素材を元に、これを長剣にするにはまる3日かかると言った。ベルはそれをいいて「案外短いんだね」と心の中で思っていた。
「じゃあね!!ヴェルフ」
「あぁ、じゃあなベル!!」
そして二人は別れた、ヴェルフは自身の鍛冶場へと、そしてベルはヘスティアの待つ新たな本拠へと。
あとがき
ベルの所持金はノームの分を合わせるとざっと五億、それ以外にも様々なドロップアイテムを所持しています。そのどれもが竜のドロップアイテムであり、まさに『幸運』様々ですね!!!
ベルはレオンとは知己の仲であり、ベルがオラリオに行くと聞いた時には「あそこには俺の自慢の生徒がいる、言伝を頼んでも良いか?」と言われる程信頼されており、ベルもレオンを尊敬している。アルフィアにはレオンの様々な黒歴史を暴露されている、ちなレオンはそれを知らない。