才禍の少年と風精の少女 作:長夜月
夢を見た、お母さんとお父さんが居る、かつての温かい夢を見た。
「何で…こんな夢を見たんだろう…?」
そんな答え、一つしかない。あの懐かしい風を纏った少年と出会ったからだろう。それ以外はあり得ない、そう自分の中で断言していた。
「会えるかな…、ベルって子に…?」
分からない、剣を握るしか行ってこなかったアイズにはそれは分からなかった。だから懐かしい風を感じさせてくれた彼を今はどうしても忘れられない。
「会える…と良いな」
そしてアイズは部屋を出た、五月蝿いアマゾネスの少女に呼ばれて外へと出た、いつもとは違う空を感じて、いつもとは違う街並みを感じながら。
「会い…たいな…」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕は今、多分ナンパに遭っている、何故そう確信するのかは謎だが、目の前の灰髪の少女を前にベルは思う。
(この人…どっかで会ったような…?いや、この視線には覚えが…ってこんな事言ったら僕がナンパしてるみたいじゃん!!!駄目駄目駄目!!僕はそんな事をしている暇はないの!!!)
魔石を落とした、と言われてベルはそちらを振り向く、だが考えて欲しい、ベルはそもそも昨日はダンジョンに潜って早々にミノタウロスを倒して逃げ帰った。その道中確かに他のモンスター、ゴブリンなどを轢き殺したが、見向きもせずに逃げた為魔石は一つ拾っていない。故にここに魔石がある事自体が可笑しい。
「あの…違いましたか…?」
「はい…、昨日は魔石を取らずに帰ったので…、ですからきっと人違いですよ」
そんな筈はない、この周りは少し静かだ、それに僕以外がここを通った跡が少なくとも数時間は前の物しかない。つまりこれはどう考えても。
(ナンパやなぁ〜)
「そうだ!!今晩は是非とも当店で食べていかれて下さい!!」
「はい?あぁ、それは別にいいですけど、分かりました。ですが良いんですか?僕はこう見えても結構食べますよ?」
「それは…今晩のお給金は期待できますね!!」
「アハァ!!それは良かった、じゃあまた今晩に」
「あ?!待ってください!!」
そういうと灰髪の少女、シルは店の中へと向かい、一つの小包みをベルに渡す。
「これって…シルさんのお弁当なんじゃ…」
「良いんですよ、私はお店が始まれば賄いが出ますから、ですけど、今晩はいっぱい食べて貰いますよ!!」
「はい!!じゃあありがとうございました」
ベルはそう言って元気よく走り出した。正直怪しかったが、それでもお弁当まで貰っておいて、何の確証もないのに疑うのは失礼だよなと思いベルはこのことを忘れる。
そしてベルはダンジョンへ特攻、する為にバベルへと向かう。
(やっぱりこっち見てるよ、何なんだ?)
『気持ち悪いのぉ、取り敢えず気にせんのが一番じゃ』
そしてベル地下の迷宮へと足を進める、そこには巨大迷宮が広がっており、ベルは昨日の事など完璧に忘れて、まるで今日が初日かのようにダンジョンを楽しんだ。…は?
「にしてはインファントドラゴン出てこねぇな〜」
『あれはかなりレアモンスターだからのぉ〜、中々出てこんのじゃろう、それよりも』
なんやかんやでベルは既に五時間以上は12階層で鎮座していた。モンスターが出ては狩って、そして目的のインファントドラゴンが出るのを待っていた。だがそんなに都合よく出てくる訳もなく、『
(どうしたもんか…、取り敢えずシルさんに貰ったお弁当を食べてから考えよう!!!)
『にしても美味そうじゃのう。サンドイッチか、あの
(ね〜、まぁ多分優しい人だし、大丈夫でしょ!!そんな事よりもあの時はその後ろから僕を射殺さんと視線を向けるあの緑髪のエルフの人の方が怖かったわ!!!)
『あれは恐ろしかったのぉ〜、まぁ儂らの業界ではあれはご褒美じゃ!!気にすることはないぞ!!』
(多分睨まれたのジュピターのせいだ)
ベルは辺りを見渡しながらシルから受け取ったお弁当を手早く平らげ、カバンにしまう。そして再度辺りを見回してベルは帰ることにする。
(どうせ出ないし、全く難儀だね、『幸運』のおかげで出たら確定でドロップアイテムを落とすのに、会うのには『幸運』は作用しないなんてね)
『しゃあないじゃろう、今はあの小僧の打つ武器を楽しみにしておれ!!』
(そうだね、後二日ぐらいかな?にしてもこの剣も結構摩耗したね、本当にそろそろ買い替え度胸かな?)
『あの女も言っとった通り、お主の力には耐えきれておれん、もうそろそろ替え時だろうな』
ベルは少し残念そうにしながらヘスティアの待つ本拠へと帰る。本拠へと帰るとそこには誰も居らず、書き置きだけが残さらていた。
□□□
ベル君へ
僕は今日はバイトなんだ!!なので夜までは帰らないのでそこの所よろしく!!
□□□
「スッゲー何で?普通そう言うのって朝に言わない?」
『あの女神も抜けているっと言う事だ』
「神様…もう少し用心して下さい……はぁ…」
ベルは大人しく本拠にてヘスティアを待つ事にする。大人しくベルはソファーの上で寝転がりながら、アルフィア達の事を考える。
(お義母さん達、神様の事許してくれるかな?)
『あの女神はどう見ても善神だ、それにお前が認めたのならあの女も許すじゃろうて』
そうかな、なんて事を考えながらベルはソファーの上で眠りにつく。そうして何時間かが経ち、本拠に一人の女神が帰還する。
「お~いベル君!!帰ったよ〜!!」
「か……神様…?早かったですね、もう少し掛かると思ってましたよ」
「なぁに、僕は確かにじゃが丸君屋台には欠かせない存在ではあるがね、それでも君との時間は少しでも作っておきたいのさ、君が僕のファミリアを選んでくれたんだからね」
「あ?!そう言えばそうだ!!僕考えたんですけど…、もう神様の恩恵を刻んで貰っても良いですか?」
「んあ!?急になんだい?そもそもお義母さん達と…って話じゃあ?」
「どうせお義母さん達は許してくれますし、それにいつまでもギルドの換金所を使えないのは少し面倒ですからね」
「そうかい?それなら良いか…、それにしても君のその剣はすごい剣だね、僕でもわかるよ」
「そうなんですよねぇ、でももう使えなくなりそうで…、なので新しい武器を打ってもらいたいんですが…、如何せん片方の武器は見つかったんですが…もう一本が…」
ベルがいつも使っていた雷霆の大剣はザルドが「かなり摩耗してるから研いでおいてやる」と言ってザルドに預けたままだった。なのでベルは今の所メインウェポン無しというなんとも貧相な装備しか纏っていなかった。
「僕は本来は二刀流でして…長剣二本で戦うんですが…それも今は出来なくて…なので新しい武器が欲しいんですが…、お金や素材はあっても如何せん打つ人が居なくてですね」
「そうなのかい?!でもさっき片方は見つかった…って言ってなかったかい?」
「はい!!素敵な出会いがありまして、なのでその人に片方を、なのでもう一振りはどうしよう?というところなんです」
「そうか………、よし分かった!!!僕の伝手を使ってあげよう!!!安心したまえ!!その神物は凄腕なんだぜ!!だから安心しろ!!」
そうしてベルとヘスティアはベットの上へと行く、先程ヘスティアの
「よし…、でも一体何処のファミリアに所属していたんだい?」
「はい、【ゼウス・ファミリア】って言っ―――」
「―――はぁ!!!ゼウスって…まさか大神ゼウスかい?」
「そうですが…、なにか?」
「何もかもあるか!!そいつは僕の愚弟だよ!!いや~、驚いたよ、案外世界は狭いんだね」
「ってことは貴方がヘラ叔母さんやお祖父ちゃんが言っていた『炉の女神』ですか?」
「そう!!僕は炉の女神ヘスティア、そしてもう一つの名前が『ウェスタ』と言ってね、まぁ竈と家庭を司り、そして正と貞潔を司る三大処女神なんだせ!!だからベル君、安心した前、君の挙式では僕が君とそのお相手さんに祝福を与えよう、なぁに心配は要らない、僕はこう見えても竈と家庭を司る女神だ!!家族愛には定評があるからね!!」(≧▽≦)
「はい!!お祖父ちゃんが言ってました、『いつもぐうたらしているだけだった』って、それにヘラ叔母さんも『あの神は「面倒くさい」と言う理由だけでオリンポス十二神の座をあっさりと明け渡すくらいには面倒臭がり屋』だって」
「んな!?そんな事を言っていたのか?これは後で問い詰める必要があるようだね」
「でも、こうも言っていましたよ『それでもヘラはあいつを手放しに尊敬している、儂もあやつは信用しておる、だからもしあいつが下界に降り立ち、お前がまだファミリアを決めていなかったらそいつの所に行け』って」
「そんな事を……ヘラは分かっていたが、まさかあのゼウスがねえ〜、そんな事を言うなんてね」
「はい、神様がその神だったんですね、ならお義母さん達も絶対に認めてくれますよ!!」
「そうかい?それは嬉しいね、じゃあ刻もうか!!」
そうしてベルの背中に
そしてベルのステイタスの写しを撮り、そしてヘスティアは驚愕の声を上げる。
「えぇ〜!!!なんだいこれ?!レ…レベル5…?それにこれは………」
「はい!僕はレベル5なんですよ」
「あ…あの…君のお義母さん達のレベル…は?」
「確かレベル7ですね…、あ!違う、それから確かランクアップして今は8だったっけ」
「あ……あ……、えぇぇええ………」
意気消沈、ヘスティアは開いた口が塞がらないどころか顎が外れる程口を空けていた。
「ベル君…、これは少し内密にする必要が…」
「はい…?何でですか?別に隠すような事は…」
「いや、流石にこれは…(他の神々が放って置かないだろう、それにこのステイタスは…)ベル君、このアビリティは…」
「ああ、それはスキルのお陰ですよ、SSSっていうのはそういうことですね、ちなみに僕は今まで全部のアビリティをEXまで押し上げたので、でもそれ以上は上がらなかったからそれが限界だと思いますね」
「は……、はぁ〜、やっぱり君達下界の子供達は凄いな〜、こんな『未知』を有しているなんてね」
「はい、これのお陰で僕のステイタスはレベル6に届くぐらいになっているんですよねぇ〜」
「だろうね、これを見たらそう言わざるおえないよね、あ!新しいスキルが出てたから、それもついでに加えておいたよ、それと…、これは効果が追加されたのかな?まぁ見れば分かるよ!!」
「え?そうなんですか?へぇ〜、暫く新しいスキルが出てなかったから久しぶりですね〜」
□□□□□□
ベル・クラネル
Lv.5
力:B791⇒A809 幸運:D
耐久:B716⇒B755 斬撃:E
器用:S999⇒SS1071 精癒:E
敏捷:SSS1511⇒SSS1551 連撃:G
魔力:SS1001⇒SS1109 覇撃:I
≪スキル≫
【
・魔法スロット不要の魔法顕現
【サタナス・ヴェーリオン】
詠唱文【
・広範囲音波攻撃
・
【
【
【
・精霊から好かれやすくなる
・戦闘時、発展アビリティ『魔防』の顕現
・六属性の精霊魔法の行使権限獲得
・精霊種に対して特攻
・各属性攻撃、及び呪詛に対する耐性
≪魔法≫
【ファイアボル卜】
【
【ラグリウス・ヴァーテリア】
・超長文詠唱
・擬似的な『器』の昇華
・残存する
・効果は【
・全
・雷霆の付与を更に自身に付与、『敏捷』のアビリティに対して高補正がかかる
□□□□□□
「それにこれ…最後の魔法って…」
「これは反動が凄くて困るんですよね〜、でもそれ以上の力を出せるんですよ!!これのお陰でザルド叔父さんを一度だけ倒せた事もあるんですよ!!まぁその後もう一度同じ様にやったら普通に倒されちゃいましたけど…(スキルに追加されたこの魔法は…あ、アカン、原始的恐怖が…
「でもそれってレベル7か8なんだろう?レベル5でそれは十分すごいよ!!」
「あはは…、あ!そう言えば夕食は外食にしませんか?」
「ん?良いけど…、何処か当てがあるのかい?」
「はい!!それじゃあついてきて下さい」
「うん、わかったよ」
ベルとヘスティアは廃教会の本拠を後にし、豊穣の女主人へと足を運ぶ。
―――――――――――――――――――――――――――
アルフィア
Lv.8
力:G201 魔導:C
耐久:H119 対異常:D
器用:E491 魔防:E
敏捷:E489 精癒:D
魔力:D513 覇光:I
≪スキル≫
【
【
【
【
・全状態異常無効化
・子を想う限り効果持続
・
≪魔法≫
【サタナス・ヴェーリオン】
【
【ジェノス・アンジェラス】
ザルド
Lv.8
力:D520 狩人:C
耐久:E497 対異常:D
器用:F397 破砕:F
敏捷:G259 剛身:F
魔力:G221 覇撃:I
≪スキル≫
【
【
【
【
・全状態異常無効化
・子を想う限り効果持続
・喰らった物のデバフを無効化
≪魔法≫
【レーア・アムブロシア】
―――――――――――――――――――――――――――
「来ましたよ、シルさん!!」
「あら?ベルさん…、そちらの方は?」
「あや、君がシル君だね?僕はヘスティア、この子の主神さ!!」
ベルとヘスティアは豊穣の女主人へと入り、シルの案内にて奥のカウンター席へと座る。
「あんたがシルの言っていた子だね、なんでも凄い大食漢なんだってね、そうには見えないけどね〜」
「任せてください!!僕はこう見えても結構食べますよ、それに神様の方は僕の倍は食べますよ」
「んあ?!ベル君!!何を言っているんだい」
「へぇ〜、そうかい。ならこっちもシルの客だ、腕によりをかけて飯を作るとするかねぇ〜」
「じゃあ、パスタの大盛りと
「僕は…、エールと…そうだね〜」
「遠慮はしなくていいですよ!!そんな事よりもいっぱい食べてください」
「そうかい、じゃあ…ん〜、迷うな〜、女将君、オススメをお願い出来るかい?」
「あぁ、分かったよ、それじゃああたしのオススメで行かせてもらうよ!!」
そういうとミアは厨房へと向かう。そしてベルは中央の無人の席を見てシルに話しかける。
「あの…シルさん、あの中央の―――」
「ご予約のお客様のご到着ニャ〜」
「―――あ、なんでもないです」
「にしてもすごい人の量だね…、ってあれはロキか?!」
そこには金髪青目の
「おいおい、偉ぇ上物だな〜」
「おい馬鹿!ロキ・ファミリアだよ!!」
「まさか…、巨人殺しのファミリアか…?」
「ってことはあそこにいる金髪の女が…」
「【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン」
そんな彼等彼女等を見て、ヘスティアは縮こまる様に呟く。
「僕はあそこの主神と仲が悪いんだ…、あまり関わりたくないから静かにしよう…」
「そうなんですか…?まあ僕も関わることはないと思うので…、お義母さん達が彼等を嫌いなので…」
「そうなのかい?それは好都合だったね」
「いえ…、下手したら都市が滅びます」
「え?!それってどういう意味なんだい?」
「えぇっと、「彼奴等は気に入らん、もし妙な事をすれば私達が滅ぼしてやる」って言っていて……」
「それは…、なんとも…」
「ベルさ〜ん、料理が出来ましたよ!!」
そうシルが言うと、ベルとヘスティアの卓の前に料理が並ぶ、それらを心底美味そうに食べるベルとヘスティアは満足そうに食べまくり、やがて全ての料理を食べ終える。
「いや~、美味しかったですね、神様」
「うん、そうだね、また来ようね!!」
「そうですね、今度はお義母さん達も一緒に」
「そうだね、その時はまた新たなファミリアの子達と一緒に来ようね!!」
「そうですね、じゃあ少し休憩してから」
「そうだね、じゃあもう少し―――」
「おいアイズ!!!あの話を聞かせてやろうぜ!!!」
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
楽しい…、この時間が続いて欲しいと心底思う。こう思えるのはきっとあの子が見せてくれた夢のお陰。だから会いたいな、会ってお礼と謝罪をしたいな。
(ベル…か、どこに居るんだろう?)
冒険者である事と所属派閥しか知らないアイズはベルを探す事に物凄く難儀していた。出来ればお話がしたいアイズは一人でベルに会いたい為、あんまり相談もしたくない。
(ギルドの人に聞いても、「そんな子は知りませんね」って言われちゃったし…、やっぱり私って
そんな事を考えていると、灰狼の青年 ベートがアイズに大声で話を投げつける。
「おいアイズ!!!あの話を聞かせてやろうぜ!!!」
「あの…話?」
「そうだよ、5階層で会ったあの如何にも『素人臭えガキ』の事だよ!!」
「それって私達が17階層で取り逃したミノタウロスの時の事?」
「そうだよ、俺達が泡食って追いかけ回した奴だよ、んで居たんだよ、そのヒョロ臭えガキがよ」
ティオナがベートへと問う。ベートは更に笑いながら、そして笑いすぎで腹を抱えていた。
「ああ、それでよぉ、そいつがみっともなく逃げていきやがってよ、あれは傑作だったぜ」
「へぇ〜、それでその子は無事だったんか?」
「ああ、別に怪我とかは無かったぜ」
「ほ〜ん、それなら良かったやん」
「いやいや、そいつがよ、マジでみっともなさ過ぎてな、マジで本当に傑作だったんだよ!!!ヒョロ臭えガキかよぉ、そいつ兎みたいに走って逃げちまってよぉ〜!!」
――――――――――――――――――やめて…。
「ごめんなさい…クスクス……、アイズ…」
やめて…、なんで?なんで笑うの?私達が巻き込んだんだよ?
「それでよぉ、そいつ…ウチのお姫様から逃げちまってよ」
「アッハッハハ、冒険者怖がらせてまうアイズたん萌え〜!!!!」
やめて…、私に懐かしい夢を見せてくれたあの子を…汚さないで!!
「大丈夫だよ…アイズ…、私達はアイズの事を…怖いなんて思ってないから…」
泣きそうなアイズがゆっくりと視線を上げる、リヴェリアと目が合い、リヴェリアは「はぁ〜」っと溜め息をつきながらベートを叱責する。
「いい加減五月蝿いぞベート、ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ、その少年に謝罪することはあれど、酒の肴にする権利など我々にはない!!!恥を知れ」
厳しいリヴェリアの叱責に、周りの団員は背中をビクつかせる。
酔いが回りすぎたのか、それでもベートの饒舌な罵倒は止まることを知らない。
「ア゙ァ゙ァァ?流石はエルフ様、誇り高いこって、でもよそんな救えねぇ奴を助けてなんになるってんだ?ゴミをゴミと言って何が悪い?」
「これやめえぇ、酒が不味くなるわ」
「アイズお前はどう思うよ、ビビって逃げ出すような情けない野郎と」
「あれは…そんな事をないです」
「じゃあ質問を変えるぞ!!俺とあのガキ、番にするならテメェはどっちを選ぶ?」
「ベート、君何言ってるのか分かってるのかい?」
「五月蝿え」
ベートの告白紛いな言動にフィンが声をかける。
「ほらアイズ選べよ、
「――私は、そんな事を言う様なベートさんだけは御免です」
「フッ、振られたな」
「黙れババア!!!じゃあ何か?テメェはあのガキに好きだよ抜かされたら受け入れるってのか?」
――――――それは、無理だ…。
そんな余裕はない。
「そんな筈は無いよな?気持ちだけが無駄に空回りしたようなガキが、お前の隣に立つ資格なんてねぇんだよ」
アイズの目から光が消える。アイズの中にある黒い炎が勢いを増す。
「他等ならないお前がそれを認めねぇ!!!」
そうだ、思い出せ!!
「雑魚じゃあアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ!!!」
そうだ…思い出せ、もうあれはただの
アイズは暗い闇の中、一人で遠き日の記憶を思い出し、そしてそれら全てを切り捨てた……その時、風が吹いた。
(これって…、あの子…?)
その風は何処までも優しくて、温かい。あの日の記憶を思い出させてくれる優しい風。それを放つのは白髪の少年。
「待って!!」
気づけばアイズは酒場を出ようとする白髪の少年の手を掴んでいた。決して離さない様に強く…強く握った。
「君は…あの時の…子だよね?」
「えぇ…っと…」
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
へぇ〜、僕みたいに人前から逃げるような
「ベル君…、あれ…見ていて気持ちの良いものじゃないね」
「そうですね…、まぁ僕らの事では無いので気にしなくて大丈夫ですよー」
他派閥への介入禁止はザルド叔父さんに教えられた、それを破るとまあ面倒くさいことになるから関わらないのが吉だと教えられたしね。
「そう…だけど、あれはあの女の子が可哀想だよ」
ヘスティアとベルの瞳に映るのは、今にも涙を零してしまいそうな表情をする金髪金眼の少女。それを見てヘスティアは義憤に駆られるが、それをベルが制止する。
「
「ハイエルフ…、あぁあの翡翠色の髪のエルフ君がかい?そんな事まで分かるのかい?」
「まぁ、ある程度であればわかります、それにあの人達は流石にオラリオでは有名ですしね」
名前くらいは知っている…、というかお義母さんに教えられたし。それにしても酷い罵倒だな、もし僕のことだったら多分僕は今頃ここを泣いて逃げ出してたね。
「そうなのかい?済まないね、僕はその辺が疎くてね」
「僕もあそこの三首領と主神の名前しか知りませんよ、それ以外は何も知りませんし」
「じゃあ行こうか、もう十分休んだしね」
「そうですね。シルさん、僕たちはもう帰ります」
「はい。すみません、少しうる―――」
「雑魚じゃあアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ!!!!」
その狼人の一言が、店全体に響き渡る。それを聞いていい加減怒りが収まらないヘスティアは席を立つ。
「僕…、行ってくるよ」
「さっきも言いましたよね?『他派閥への介入は禁止』だと」
「じゃああれを見逃せと?それは流石に……」
「それがファミリアです、あれは家族内での問題、僕らはそれに介入する資格はありません」
ベルはそう言うと、シルに一瞥しヘスティアの手を引いて酒場を出ようとする。
「ありがとう……、少しは落ち着いたよ」
「はい、それでは行きましょう!!」
ベルは酒場を後にする…、瞬間ベルの左手首を掴む少女の姿が映る。手は何処までも白く、細い。
(身体も…無駄な贅肉なんて一切ない。いや…全てを排してるのか?研ぎ澄ますように…、でもこれは…はぁ)
ベルは心の中で「面倒くせぇ〜」と思いながらもその少女のほうを見る。
「君は…あの時の…子だよね?」
「(え…?)えぇ…っと…」
これはナンパやな…、そうベルは直感した。知らない人からいきなり「君は…あの時の…子だよね?」とか言われればナンパと思わない方が不自然だろう。
(え…、この人誰?)
『この
(え…?それじゃさっきまで話していた『情けない少年』は…まさか僕…?)
「え…っと『ベル』だよね?」
「あッ!?はい…そうですが…なんで僕の名前を知ってるんですか?」
「これを…君が落としたから…」
その少女が大事そうに握っていたのは一枚のカードだった。それはベルの冒険者カードであり、先日ダンジョン内で失くしたものだった。
「(あ?!あの時落としたのか…、まぁ神様の所に所属したからもうそれ要らないんだけどなぁ〜)あ…、ありがとうございます!!え…っと」
やっべぇ〜、名前知らねぇ〜!!!!さっき誰かなんか言ってたよね、何だっけ…?
『すまん、儂は全然聞いておらんかったからの』
(想起するんだ!!あの瞬間を…、彼女達が入ってきた時の事を、何だっけ…、剣…ひ?
アイズ・ヴァレンシュタインさんですよ、ベルさん
シルさんナイス〜!!!!愛してます!!!!!!シルは他の人には決して聞こえな様なか細い声でベルに耳打ちをする。それを元々高かった聴覚とレベル5の力技でなんとか拾い上げる。それを聞いたベルは自信満々で答える。
「拾って頂いてありがとうございます、ヴァレンシュタインさん!!!」
「うん…、よかったよ、渡せて」
ベルはアイズに心底感謝する…、ような素振りを見せる。それを心底詰まらなそうに見ていた狼人の青年はベルに向かって吐き捨てる。
「おいガキ!!テメェ誰だ?俺等に何の用だ?ア゙ァ゙ァ゙」
るるるるるるるるるる?!え…、僕スカ?マジスカ?え?この状況で…?僕に非があると?
「(は?今の状況を見ていなかったのかな?獣人って案外五感が鈍いのかな?)え…っと、何もないんですが…」
「んじゃあとっとと失せろ!!―――――――――――ってお前まさかあの時アイズから逃げ出した野郎か?んだよ、恥ずかしくて逃げるところか?んなら悪ぃな、邪魔しちまってよ」
(この人…、相当酔ってるな…、まあ獣人って大体礼儀がなってないってアルフィアお義母さんも言ってたし)
ベルそんな事を考えながら店を出ようとする、それを更に手首を掴む手の力を強めて阻止しようとするアイズをベルはキョトンとした顔で見る。
「は…い?何か…まだ用ですか?」
「え…えっと……」
「おいおいやめてやれよアイズ!!そいつもう恥ずかしくて逃げ出してぇんだよ」
更に笑いが増す、酒場にいるロキ・ファミリアの人々の豪快に笑う声を聞いてベルは少し怒りを募らせる。それ以上にベルの後方で、酒場の少し外から見ていたヘスティアは今にも怒鳴りそうな所をベルの先程の言葉を思い出してなんとか堪える。
(何なんだよこの『レオン・ヴァーデンベルク』の二番煎じみたいな性格の獣人は!!!マジでそのド頭かち割って脳みそカッぴらいて『礼儀』の二文字を脳裏に刻み込んでやろうかおいオラ!!!)
ベルは手が出そうになるのを必死に止める(ジュピターが)。それでなんとかベルは煮え切らない感情を押し殺す。
「おいアイズ!!んな雑魚に構ってんじゃねぇよ!!」
「……?!違…う………この…子は…」
アイズはベルの方をゆっくりと見上げる。それに対してベルは少し眉を細めるが、やがて狼人の青年をその双眸で捉える。
「おいお前、この子がどんな顔してんのか見えねぇのか?よっぽど鈍臭ぇ獣人だな、馬鹿にも程があるし、まあこんな屑を置いてるファミリアだ、そこのパルゥムとハイエルフもそう変わらないんじゃねぇか?」
「「「――――――!?」」」
金髪のパルゥムと翡翠色の長髪のハイエルフはそれを聞いて瞠目、そして周りにいたエルフ達がやがてベルに怒号を投げ捨てる。
「失礼です!!謝りなさい、そこの人!!!」
山吹色の長髪のエルフの少女がベルにそう言い放つ。ベルはそれを輪にも掛けずに狼人の青年を睨みつける。
「あ?そうかいそうかい、こりゃ驚いたぜ、まさかハイエルフは「他派閥の奴は罵倒しろ」なんて教えてんのか?こりゃお笑い草だな、いいこと聞いたぜ(あれってレオンさんが言っていた教え子…?確かレフィーヤだったかな?歳もレベル的にもそうだよな。相当あのリヴェリアって人を尊敬してるのかな?レオンさんが褒めるのも頷けるな)、高貴なエルフさんはどうやら他派閥を見下すらしい、そりゃあこんなゴミ共が集まる訳だ」
「ア゙ァ?んだとテメェ、ぶっ殺されてぇのか?」
ベルの止まらない罵倒に狼人の青年は噛み付くように言う。その双眸は今にもベルを射殺さんとしていた。
「へぇ〜、図星を突かれてキレてんのか?案外可愛いところもあるじゃねぇかよ」
「よし、殺す」
ベルに向かって一直線に狼人の青年は突っ込む。その間には何個もの障害物があったが、それら全てを飛び越えて彼はベルの喉元へ手を伸ばす。
(お……っそ、あくびが出るは、これ)
それを見てベルはまるで雑魚を見るかのように狼人の青年を見据える。
(後ろは駄目、神様が居る、弾くのは無し、隣にいるシルさんに被害が行く、目の前のヴァレンシュタインさんが見えてねぇのか?それともその程度の相手なのか…、本来なら助ける義理なんてないんだがな、この子がアリアさんに似ているからかな…?まぁいっか、奥へ逃げよ)
その間僅か0.1秒、それらの状況を全て分析し、ベルは一つの解を出す。それはアイズを抱えてカウンターの方へと逃げるということ。
「はい…、これで終わりだよ、狼人の青年さん」
「んな…、は?」
「え…?ベル…、」
そこにいた誰もが瞠目した。ベートの速度を見切れたのは彼と同じレベル対の者達だけ、隣のアイズと中央にいた数人程度、だがその誰もがベルの移動を…その速度を捉えるには至らなかった。
「うん…、やっぱり雑魚だね…はぁ〜」
「テメェ…、どんな手品使いやがった!!答えろ!!!」
狼人の青年はそうベルに言い放つ、その瞳には少しばかりの畏怖の念と、それらを飲み込む怒りを孕んでいた。それを見てベルは心底五月蝿いと思い言い放つ。
「雑音風情が図に乗るなよ―――【
ベルは一瞬でアイズの隣から狼人の青年の後ろへと移動する、その速度は先刻よりも尚速い。それを完全に見失う狼人の青年はなす術なくベルの拳に集約された鐘の音色を奏でる魔法によって地面に叩きつけられる。
「(うん、なんでお義母さんがこれ嫌いなのか分かったわ!!これ使ってる方はめっちゃ五月蝿い、雑音っていうか不協和音だはこれ!!!)はぁ〜、やっぱり雑魚じゃん」
ベルの
「やめるんだ、ベル君。『
「―――……いえ、すみません神様、少し怒りを爆発させ過ぎました―――ミアさんもすみません、店の物を壊してしまって……」
「フン!!それはそこの兵六玉のファミリアに払わせるよ、今回あんたはやられた側だ、だけど次はないよ」
「…はい、ありがとうございます」
ベルはミアに一瞥し、ヘスティアの手を引いて酒場を後にしようとする…、またしてもアイズがベルに声をかける。それをベルは心底ウザそうにしながら振り返り、アイズの
「僕と貴方の間での話は終わりました、お礼は言いましたよね?それ以外に何か?それならファミリアの方へお願いします、明日ギルドへ行くので。それでは」
「……クッ、お願い、待って…!!」
アイズは今にも泣きそうな顔でベルの手を掴む。それを見てベルは少し眉間にシワを寄せながら悩む。
「(う〜ん、その顔には弱いんだよなぁ〜、でも僕そっちのファミリアの人殴っちゃったし…。う〜ん、でも…あ~、そうか、あのハイエルフの人には謝らないとか…それにパルゥムの人にも…はぁ〜、仕方ないか)分かりましたよ、ですからその手を離して下さい、ヴァレンシュタインさん、すみません神様、少し良いですか?」
「んあ?良いよ、君の気が済むまでやればいい、僕はもう気が済んだしね」
「すみません神様、あり―――」
「何や!!ドチビやないか!!!!!何しとんねんこんなところで!!」
(はぁ〜、なんで僕はいつも面倒ごとの方から大きくなって来るのさ〜ぁ、もう帰りたい)
いや~、ベートってホンマに二次創作される度に畜生さを増していくよな〜、まぁそれでも僕はベートを推してるで!!!何故って?そんなの詠唱が格好いいからに決まってるだろ!!!
コメントやお気に入り登録をしてくれると嬉しいです!!!! 評価は好きにして下さい、僕的にはあまり気にしてないので。
それでは次回までさよなら〜