※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
第1話 混乱
神崎玲司は混乱していた。
自分は日本の何の変哲もないサラリーマンだったはずだ。
昨夜は仕事帰りに一杯飲んで、コンビニから自分の部屋へ戻ったはずだ。
その途中で何か・・・
目の前に迫る強烈な光。
強い衝撃。
暗くなる視界。
後は何も思い出せない。
気が付いたら“レイ”と呼ばれる、瘦せこけた子供の姿で座り込んでいた。
両手に鎖が繋がれていた。
鉄環が手首へ食い込み、動くたびに鈍い音を立てる。
ジャラ……ジャラ……。
まるで家畜だ。
「立て、クルダ犬!」
腹を蹴り上げられ、レイは石畳へ転がった。
肺の空気が一気に抜ける。
吐き気が込み上げた。
観客席から笑い声が降る。
「弱ぇぞ!」
「それでもクルダか!」
「殺せぇ!」
怒号。
血の臭い。
砂埃。
レイは荒い息を吐きながら顔を上げた。
円形闘技場。
高い石壁。
豪奢な衣装の貴族と思われる者達。
今日の娯楽として惨めに殺される役。
白い旗。
黄金の紋章。
知らないはずの事が、名前が脳裏へ浮かぶ。
キシュラナ王国。
(……なんだよ、ここ)
頭が混乱していた。
確か自分は日本にいたはずだ。
コンビニ帰り。
夜道。
交差点。
ヘッドライト。
急ブレーキ。
そこで記憶が途切れている。
なのに今、自分は何故か薄暗い闘技場にいた。
裸同然の姿。
痩せた身体。
焼印。
そして両手の鎖。
「終わりだぁ!」
怒声。
目の前に巨漢が突進してくる。
筋肉の塊のような男。
手には鉄棍。
一撃受ければ終わりだと本能が理解した。
怖い。
身体が動かない。
巨漢が鉄棍を振り上げる。
その瞬間。
ギギギギギ――。
不快な音が頭へ響いた。
まるで巨大な何かが軋むような音。
「……え?」
レイは反射的に空を見上げる。
灰色の空。
その奥。
一瞬だけ見えた。
巨大な黒い鎖。
山ほどの大きさを持つ鎖が、空の彼方へ伸びている。
その中で一本だけが赤黒く脈動していた。
それを眼にした途端、頭に激痛が走る。
「がっ……!?」
視界が歪む。
知らない光景。
黒い空。
歪む森。
巨大な黒い渦。
そして。
黒衣の男。
長い黒髪。
静かな目。
『……まだ足りない』
低い声。
『あと四千年』
男が振り返る。
その顔を見た瞬間レイは凍りついた。
自分と似ていた。
「死ねぇぇぇ!!」
怒号。
現実へ引き戻される。
巨漢が迫っていた。
鉄棍が振り下ろされる。
避けられない。
死ぬ。
だが、その瞬間。
身体が勝手に動いた。
一歩踏み出し、半身だけ身を捻る。
振り落とされる鉄棍の勢いに逆らわないように手を添え、軌道を紙一重で外す。
巨漢の懐へ潜り込む。
そして、短く、鋭く、下から突き上げるように、抉り込むように、肘を突き出す。
次の瞬間。
ドゴッ!!
鈍い音。
肘が鳩尾へ突き刺さる。
巨漢の目が見開かれた。
そして肘を突き立てた腕の拳を開き、その掌に向かって振りかぶって全力を込めた拳を撃ち付けた。
拳が撃ち込まれた事で、突き立てられた肘が杭打機のように巨漢の漢の体の中へ撃ち込まれた。
それはレイが知らないはずの技だった。
「――ッ!?」
男の身体がくの字に折れ曲がる。
鉄棍が手から落ちた。
巨体が数歩よろめき、そのまま前のめりに崩れ落ちる。
沈黙。
観客席が静まり返った。
レイ自身が一番驚いていた。
「……なんだ、今の」
自分はこんな技は知らない。
なのに身体が勝手に動いた。
それは《クルダ流交殺法表技
観客席がどよめく。
「今のは……」
「肘の一撃で?」
「馬鹿な……」
「あんなガキに……」
だがレイには、その声が遠かった。
再び。
ギギギギギ――。
あの音が聞こえる。
世界そのものが軋んでいるような音。
レイは思わず空を見る。
だが何もない。
灰色の空だけ。
鎖など存在しない。
「……どうした、小僧」
低い声。
顔を上げる。
観客席最上段。
片腕の老人が、こちらを見下ろしていた。
高い身分であろう周囲の者達は近寄ろうともせず、ただ老人を遠巻きにしていた。
巨大な体躯。
獣のような眼。
その視線だけで空気が重くなる。
「今、何を見た」
レイは息を呑む。
「……鎖」
思わず答えていた。
その瞬間。
老人の眼が細くなる。
「ほう」
だが周囲の観客達は怪訝そうな顔をした。
「鎖?」
「何を言ってる?」
「頭でも打ったか?」
誰も聞こえていない。
誰も見えていない。
あの音も。
空の鎖も。
レイだけだった。
老人だけが静かにレイを見つめている。
まるで、何かを確信したように。
台風200号と申します。
私の拙い作品に目を通していただきありがとうございます。
今まで投稿された皆様の素晴らしい作品に目を通して参りましたが、格闘ファンタジーの傑作と言うべき『影技〜SHADOW SKILL〜」の二次創作は非常に少ない。
それなら自分で書いてみよう!
そう思い立ち投稿させて頂きました。
「原作と違う」「勝手な事を書くな」という声も当然あるとは思います。
しかし『自分が読みたいモノを書く事』
これを第一に考え、勝手な自己満足ではありますが投稿させて頂きます。
拙い作品ですが皆様にも楽しんで頂けたら幸いです。
次回お楽しみください。