※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
男は強かった。
剣士としては少々腕が立つ程度だったが、剛剣死(士)との連携が途轍もなく上手かった。
男はレイとの間に必ず剛剣死(士)を置き、レイは攻撃には必ず剛剣死(士)を躱さなければならず、そこを男の斬撃が襲った。
逆に剣士の男を攻めようとすれば、剣士の相手をしている最中に横から、背後から剛剣死(士)が襲いかかった。
男は途轍もなく闘いが
レイは慎重に周囲を回る。
男と自分の間、やや離れた場所に剛剣死(士)が浮かんでいる。
自分が突っ込めば男との間に立ち塞がり、男が斬撃を放つ時間を稼ぐだろう。
そうならない為には一瞬、僅か一瞬だけでも隙を作れれば。
そう考えながら男と剛剣死(士)が重なる一瞬、レイは男に向かって全力で突っ込んだ。
男は剛剣死(士)を正面に現出させレイに斬り掛からせると、自分はその後ろから斬撃を放った。
剛剣死(士) の斬撃を躱しても、そこへ剣士の斬撃が襲いかかる。
2連続の斬撃を躱す事などできない筈だった。
剣士がレイに斬撃を放った瞬間、レイの姿が剣士の眼前から消え去っていた。
レイは小柄な身体を屈み込ませて、虚空に浮かぶ剛剣死(士)の下を潜り抜けると、剣士の足元に地を這うような蹴り《摺り蹴り》を放った。
《摺り蹴り》は刃物を持った相手に対する為の骨法の技である。
基本的に剣士の視界は自分の前方正面である。
剣を振り下した手元、下方の足元は死角になる。
《摺り蹴り》はその死角を突き、刃物から身を遠ざけ、相手が攻撃される事を想定していない足への蹴りだった。
剣を振り下ろす為に踏み込んだ足に、死角から、予想もしない攻撃がカウンターとなって放たれ、剣士の足は破壊された。
「ぐおおお!」
苦鳴を漏らしながら、素早く動く事が出来なくなった剣士は、レイを見据え、剛剣死(士)を側に移動させて斬撃を放つ時間を稼ごうとした。
その瞬間、レイは一瞬で剛剣死(士)の側面に移動していた。
「!!」
驚愕する剣士に向かってレイは突っ込んだ。
剛剣死(士)で迎え撃とうとするが間に合わない。
咄嗟に迎撃する剣士の一閃はレイを捉える事はなかった。
レイは剣士に突っ込むと見せかけて、その横を駆け抜けていた。
剣士の横を駆け抜けたレイは即座に反転すると剣士の背面から突っ込んだ。
一閃を躱され、体勢を崩しかけた剣士は修練の賜物か、咄嗟に反転して体勢を整えるとレイに再び一閃を加えた。
しかし剣士の一閃はまたしてもレイを捉える事は無かった。
剣士の直前でレイは真横に移動し、その場を離れていたのだ。
再度一閃を躱され、体勢を崩した男の足元に向かってレイは飛び込んだ。
地面に手を着き両足を跳ね上げる。
まるで龍の顎が男の頭部を挟み込むように両足が左右から交差する。
「オオオ!!!」
流石は剛剣死(士)と言うべきか、片足を破壊され、さらに体勢を崩しながら、男は驚異的な反応で左右から迫る龍の顎から身を躱した。
眼前には技を躱され無防備な姿を晒すレイの姿があった。
《黒い幻影が負けた》
誰もがそう思った。
次の瞬間、剣士の首から鮮血が噴き出した。
剣士の頭部を挟み込むように交差した両足が真空波を生み出し、剣士の首を斬り裂いていた。
『陸奥圓明流奥義 龍破』
常人が真空波を生み出し手も触れずに敵を斬り裂く。
神ならぬ人の身が生み出した修羅の技だった。
常人に可能な事がクルダ人のレイに出来ない筈はなかった。
その射程は僅か数十センチ、いや数センチかもしれない。
しかし、レイは遂に触れずに真空波で相手を倒す技を身に付けた。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
真空波の放てないレイがどうやって窮地を乗り越えて行くのか?
無手での地球の格闘技がその答えのひとつになります。
クルダの闘技だけでないレイの力の片鱗が現れていきます。
次回お楽しみください。