※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
レイは剣士の斬撃を躱す事が出来なかった。
咄嗟に両手に繋がれた鎖で剣を受けた。
そのままジリジリと刃が眼前に迫る。
剣士は体格差を活かしてレイに向かって体重をかける。
レイと剣士の体格は正に言葉通り大人と子供だ。
子供の力で跳ね返す事など出来ない。
ーーその筈だった。
しかし、レイの眼前まで迫った刃はレイの身体に届く直前に止まった。
そして逆に剣士に向かって徐々に押し返されていった。
それは信じられない光景だった。
何の変哲もない“唯の子供”が大人の、それも厳しい修練を積んだ“剛剣死(士)”の剣士を『力』で押し返しているのだ。
ジリジリと刃が押し戻され、次の瞬間、鎖が断ち斬られ、レイを刃が襲った。
レイは鎖が断ち斬られる一瞬の隙に後方へ逃げ、そのまま距離を取って再度相手を観察した。
いくらクルダ人の身体能力を持っていても、唯の子供に大人の剣士に『力』で抵抗するなど不可能である。
しかし、陸奥圓明流の真の奥義である“肉体の可能性を100%引き出す事”が出来れば可能だ。
レイはそれを実行していた。
“唯の子供”でしかないレイが剛剣死(士)を相手に勝利を収めてきた理由のひとつだった。
強い。
それがレイの剣士に対する実感だった。
今まで闘った相手の中ではとびきりの強さだ。
剛剣死(士)はほとんど使わず、自分の剣のみで闘ってくる。
しかも、剣士に集中した瞬間、剛剣死(士)が視界の外から襲いかかってくる。
もしそれで手傷を負えば終わりだ。
(筋肉の100%開放なんて無理をし過ぎた。早めに決着を付けないと動けなくなる!)
そう判断したレイは相手の懐に飛び込んだ。
しかし剣士は冷静だった。
自分の正面に、自分の視界を遮らないように、まるで鎧か盾のように、剛剣死(士)を立ち塞がらせ、レイの攻撃を受け止めさせた。
動きを止めたレイに向かって剛剣死(士)ごと断ち切る勢いで剣士の斬撃が振るわれた。
剛剣死(士)は、レイの攻撃を受け止め、鎧のように剣士の身を守り続けた。
離れ、打ち込み、また離れ、レイはそれを繰り返した。
剛剣死(士)を貫いて攻撃を剣士に届かせなければ負ける。
そんな技はあるのか?
《
まだ実戦ではとても使用できない。
無空波か?
間に剛剣死(士)がいて攻撃は届かない。
ならば何かないか?
ひとつだけあった。
レイは剣士の懐に飛び込み、立ち塞がった剛剣死(士)に一撃を叩き込んだ。
そして、打ち込んだ拳をそのままに、全身の力を拳に集中して解放した。
《陸奥圓明流 虎砲》
密着した状態から放たれる拳の衝撃力は常人でさえ1トンを超える。
クルダ人の身体能力を持つレイによる虎砲の威力は想像を絶するものだった。
剛剣死(士)は吹き飛び、斬りかかろうとしていた剣士に激突した。
レイは虎砲によって相手を貫くよりも、あえて吹き飛ばすように力を加減した。
そしてレイは剛剣死(士)に打ち込んだ虎砲の反動を利用して、思い切り引き手を引き戻した。
そこに地面を蹴った反動を脚から腰、背中、肩、肘、手首へと順に伝えていった。
そして引き手を引き戻した反動に身体の捻りを加え、拳を打ち込む瞬間に手首を下向きに打ち下ろして加速させ、再度剛剣死(士)に一撃を叩き込んだ。
地面を蹴った反動の伝達である《踊り》、
引き戻した上体の捻り《陰の舞い》とその反動による《舞い》による《二重の舞い》、
手首の打ち下ろしによる拳の加速《下ろし》、
これらが一体となり、
《骨法秘伝 徹し》 が剣士に叩き込まれた。
《徹し》は三人が重なった状態でも、一番後ろの者まで昏倒させる程の威力を持つ。
千数百年前の古代の伝承では《徹し》を打ち込まれて倒れた鎧武者の鎧を剥がすと、拳を受けた腹部と反対側の背骨が肉を突き破って絶命していたという。
クルダ人の身体能力は、常人の手で千数百年の年月をかけて磨き上げられた武術の神髄をも再現可能としていた。
クルダの地で、クルダ人の手によって再現された《徹し》の前には剛剣死(士)は何の障害にもならなかった。
「!!!」
《徹し》を叩き込まれた剣士は、口から鮮血を吐き出しながらも、地に倒れ伏す事を拒んだ。
即座に昏倒しても不思議ではない一撃を叩き込まれていながら、剣士の闘志はまるで衰えていなかった。
しかしダメージは隠しきれず、レイは自由になった両手で剣士に連撃を叩き込んだ。
一歩踏み込んで右の一撃、左に揺れた相手に下方から一撃、伸びた上体の真ん中に一撃、沈む相手の顔面に踏み込んで一撃。
一撃ごとに空気が震える。
一歩踏み込むたびに地面が揺れる。
一撃ごとに拳撃が加速する。
拳が空気を切り裂く音が、連撃のたびに高く、大きくなる。
連撃でぶれる相手の方向を逃す事なく、連撃の速度と威力の増大は止まるところを知らなかった。
《クルダ流交殺法 表門死殺技
闘技場の壁際に剣士が叩きつけられた時、既に勝敗は決していた。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回、レイとクルダの運命を左右する人物が現れます。
彼の試練をレイは乗り越える事が出来るのか?
次回お楽しみください。