※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
レイは生きていた。
しかしそれは「死んでいない」と言うだけだった。
王虎から《
いや「躱そうとした」。
流石にゼロ距離どころか、直接触れた状態から放たれた一撃を躱す事はできず、《
レイがその場で生命を落とさなかったのは、僅かながらも《
この内、どれか一つでも欠けていればレイの生命はなかっただろう。
しかしそれでも、遠く離れた地でも地震と見紛うばかりの大地の揺れを引き起こし、空を切り裂く巨大な五本の牙痕を生み出す『技』を受けて無事で済むはずもなかった。
レイが死の淵を彷徨い、意識を取り戻すまで10日以上の時を必要とした。
意識を回復した後、レイは傷の癒えぬまま狂ったように修練に没頭した。
「グッ!」
一撃を放つたびに傷が痛む。
だがそれを掻き消すように王虎の笑顔が脳裏に蘇る。
自分を獲物としか思っていない絶対強者の虎の笑顔。
その脳裏に浮かんだ影を振り払うように、恐怖を忘れようとするかのようにレイは拳を振るい続けた。
「フッ、フッ、フッ!」
レイは拳を振るい続ける。
しかし傷も癒えぬ状態でまともな修練ができるはずもない。
その動きは緩慢で、弱々しいものだった。
「・・・もうやめろ・・・」
そんなレイに声をかけたのはダルクだった。
「フッ、フッ、フッ!」
レイはそんなダルクを無視して拳を振るい続ける。
「もうやめろ!」
肩に手をかけたダルクの腕を振り払ってレイは叫んだ。
「止めるんじゃねえ!こうしている間にもあのジジイが!
またあの技を!」
そう言って修練を続けようとするレイの腹部にダルクは一撃を叩き込んだ。
「ガハッ!」
大きく息を吐き出してレイは昏倒した。
「馬鹿者め。儂程度の一撃に耐えられぬのに無理するでないわ」
ダルクはレイを部屋に放り込むと新たに治癒の呪符師を手配した。
――――
「・・・」
「気が付いたか?」
「ああ」
「落ち着いたか?」
「ああ」
「回復にはまだ時間がかかる。もう少し大人しくしておけ」
「・・・回復ねえ?キシュラナの連中が待っていてくれるのかね?
明日にも闘技場に呼び出されそうだが?」
レイは苦笑した。
だがそんなレイの心配はダルクの言葉で無用のものとなった。
「心配いらん。お前は当分闘技場に出る必要はない。キシュラナの連中からそういう話が出ている」
「何?どういう事だ」
「あの方のおかげだな」
「あのジジイの?」
「キシュラナの者で、数日前の大地の揺れと、空を切り裂く巨大な五本の牙痕の意味を知らぬ者などおらぬ。
あの技を受けてお前が生き残っているという事は、お前は確実にあの方の弟子と思われている。
そしてお前があの方の弟子となった事はもう既に知れ渡っている。
お前に余計なちょっかいをかけて、あの方の不興を買うような真似をする愚か者などおらぬ」
「・・・キシュラナでさえあの爺さんを止められないのかよ?」
「むしろキシュラナがクルダにいるのはあの方の監視の為だ。
あの方がおかしな動きをしないように見張り、動きを見せれば止める為に存在するという事だ」
「・・・あの爺さんが動いたら止められるのかよ?」
「止められぬな。だから第三王子がここにいるのだろう。
何かあればすぐにあの方によって生命を奪われるようにな。
自分の手を汚さずに王太子は目的を果たす事が出来る。
よく考えたものだ」
「・・・第三王子は鉱山のカナリアかよ・・・」
「何だそれは?」
「ああ、鉄を掘ったりする時に、息が詰まったりする場所がないか調べる為に鳥を連れて行くって話だ」
「なるほどな。第三王子の実態としてはそれに近い。本人も薄々気付いているだろう。
しかし王命であれば反抗出来ん。
現キシュラナ王はあの方の『力』を良く知っている。
恐れるのは当然だ。
その為の手段は選ばんだろうな。それが自分の息子の生命を賭ける事になっても」
「やれやれ。王族ってのは大変だねえ?」
「全くだ。だからこそ我々が付け入る隙がある。そういう事だ」
「・・・まあ、とりあえず、俺は目の前の自分の目的を果たすだけだな」
「目的?何だそれは?」
「何、それほど難しい事じゃない。
ただ、『あのジジイに一発くれてやる事!』それが今の俺の目的だ!」
「海の水を飲み干す方がまだ現実的ではないのか?」
「うるせ〜!やって見なきゃ分かんね〜だろう!」
「やる前から分かると思うぞ」
「・・・動けるようになったら王太子と第三王子の連中に仕掛けるぞ?
爺さんの事は放置だ」
「良いのかそれで?」
「あの爺さんは動かしようがないだろう?まずは独立の準備だけでも整えるべきだ」
「・・・そうだな。『あの方に頼らなくて出来る』とやって見せねばな」
クルダで独立の機運が高まるある日の出来事だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
本作における『ある意味中ボスにしてラスボス』の前で新たな『目的』を見出すレイでした。
あまりにも困難でささやかな『目的』ですが、レイは『目的』を果たす事が出来るのか?
次回お楽しみください。
他にもガンダムseedの二次創作を投稿しています。
よろしければ、こちらもお楽しみください。
https://syosetu.org/novel/396797/
転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜