影技異伝~連環の幻影~   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。






第20話 近代ボクシング

 

 

 

レイは王虎に向かって突っ込んだ。

それに対して王虎は超高速の連撃を打ち込む事で応えた。

 

《クルダ流交殺法 陰流 刹那》

 

一瞬で数十発の貫手と、それを打ち込む事で生じた衝撃波を相手に叩き付ける陰流の秘技である。

 

「ぐっ!」

 

レイはたまらず接近を諦め距離を取る。

しかしその顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

(真空波の攻撃が無くなった。俺には効果が薄いと判断したか。それなら同じ土俵で勝負という事だ。

ならやりようはある!)

 

レイは徹底的に拳や蹴りに真空波を纏わせて、王虎の真空波の攻撃を相殺していた。

さらに王虎の技に対してその瞬間瞬間に陸奥圓明流の奥義を発動させ、身体能力を100%発揮する事で王虎に相対していた。

服に縫い付けられた『治癒』と『防御』の呪符は全力で発動を続け、レイの意志力もそれに応じて急速に消耗していたが、レイにそんな事を気にする余裕はなかった。

 

(同じ土俵での殴り合いか。あのジジイは俺より遥かに強い!技の強さも比較にならない!だが、それでも俺の方に分がある!)

 

それは普通ならあり得ない結論だった。

 

(確かにジジイの“陰流”は強い。しかし“陰流”は『どうやって強力な技を繰り出すか?』という流派だ。

普通なら分からないだろうが、俺の『眼』なら、あのジジイであっても予備動作を察する事は出来る!

予備動作が見えれば、躱すだけなら十分可能だ!)

 

そう判断してレイは再び王虎に向かって突っ込んだ。

 

(見せてやる!ただの力押しじゃない技術の結晶、『近代ボクシング』ってやつを!)

 

王虎は再び“刹那”で迎え打った。

 

レイの動きはそれまでと違っていた。

両拳を顎の下に揃え、上体を左右に振り、姿勢を低くして、王虎に接近していった。

それはクルダ流交殺法ではなく、ボクシングの動きだった。

しかも現代ボクシングでもほとんど見られなくなった独特の動き、デンプシー・ロールだった。

 

(動いてない目標に当てるなら簡単だろうな?

しかしどれだけ修練しようが動き回っている目標に当てるのが至難の業なのは変わりはない。

ストレートは横から弾かれるのに弱い。

どんなに速くても、正面からの『突き』を横から弾くのはロールしながらなら十分可能だ!)

 

近代ボクシングの源流は紀元前のギリシャまで遡る。

真空波も、驚異的な身体能力も持たない只人が、二つの拳のみを使って、現代までひとつひとつ積み重ねてきたその研鑽と歴史は、陰流に勝るとも劣らない。

 

(一瞬で数十発の連撃?どんなに素早い連撃でも同時に打ち込めるのは左右の二発だけだ。

そして人間の体の構造上、右手でパンチを出せば、左手は後ろに引かれる。

どんなに速い連撃でも最初に打ち込まれるのは実質的には一発だけだ。

目標に当たって反動で拳が引き戻され、それに連動して次の拳が打ち込まれる。

最初の一発を弾くか、空振りさせれば次の連撃は一瞬遅れる。

片腕のジジイならもっと遅れる。後はそれを繰り返すだけだ!)

 

レイは一瞬で繰り出される貫手の連撃の内、最初の一発を身体をロールさせて躱し、それに伴う衝撃波を筋肉を硬直させて耐えた。

 

《陸奥圓明流 金剛》

 

身体を鋼鉄に変え、生身の肉体で銃弾を受け止める事さえ可能とする陸奥圓明流の奥義である。

流石に防ぐ事は出来ないものの、使い方次第では“空牙(クウガ)”や“大牙(タイガ)”の威力をある程度抑える事さえ可能だった。

“刹那”やそれによる衝撃波であれば十分防ぐ事は可能だった。

レイは“金剛”で“刹那”を防ぐと同時に、ボクシングのディフェンス技術“パリィ”を使い、ガードしていた手で“刹那”を外側に弾き飛ばした。

弾き飛ばされた貫手を引き戻す為に一瞬だけ“刹那”の連撃が乱れた。

その一瞬、引き戻される貫手に合わせてレイは王虎の懐に飛び込んでいた。

 

「ぬ!」

 

懐に飛び込んだレイは左手で王虎の胴に向かって全力のリバーブローを叩き込んだ。

しかし流石と言うべきか、片腕でありながら王虎は“刹那”を中断してレイの一撃をブロックすると、そのまま流れるように再び“刹那”を叩き込んだ。

王虎との距離は再び離れた。

 

レイはそれに逡巡する事なくまたしても同じように王虎の懐に飛び込んだ。

また同じような光景が繰り返された。

 

レイは王虎の胴に向かって再び全力のリバーブローを叩き込んだ。

同じように王虎がブロックするが、“刹那”が叩き込まれる前に、拳をブロックに押し付けたままの状態でレイの“虎砲”がブロックの上から叩き付けられた。

 

「ぐうう!?」

 

“虎砲”の衝撃力は一トンを超える。

常人でその威力であれば、クルダ人による“虎砲”はどれほどの威力になるのか?

常に冷ややかな表情を変えなかった王虎の顔色が変わった事がその威力を物語っていた。

王虎が再びレイに“刹那”の連撃を叩き込もうと、ガードを振り払おうとした瞬間、背中越しに振りぬかれたレイのスイングブロー《ドラゴンフィッシュ・ブロー》が王虎の顔面を捉えていた。

 

王虎の注意をリバーブローと“虎砲”で下に引き付けた事。

注意を下に引き付ける事でスイングブローは見えない死角からとなった事。

片腕の王虎にガードさせる事でスイングブローを防ぐ手段を奪った事。

 

様々な積み重ねと『近代ボクシング技術の集大成』によってレイは初めて王虎に一矢報いた。

 

 

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

遂にレイは王虎に対して一撃を打ち込む事に成功しました。

しかし、それはレイの意思に関わりなく、レイが世界の命運に関わる事になる最初の一歩になります。

次は世界の秘密の一端が明かされます。

次回お楽しみください。



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