「何だって俺が神様と戦わなきゃならないんだよ!」
「ジュリアネスの封印が限界に達するのは二千年以上後だ。それまで陰流を伝えていれば良い。
秘伝書を渡した以上、儂にとってはもうどうでも良い事だがな」
「ちっ、テメエの後継なんてゴメンだ!」
「奇遇だな。儂もそう思っているぞ」
その途端、王虎の放つ威圧感がさらに膨れ上がった。
「その秘伝書は我が一族に伝えられていたものだが、開祖のお言葉も同時に伝えられていてな」
「・・・なんだよ?それは?」
嫌な予感しかしないが、レイは訊かずにはいられなかった。
「『その秘伝書は一族で伝えろ。ただし、その秘伝書を伝えるに相応しい者が現れたらその者に伝えろ』というものだ」
「それがどうしたって言うんだよ?」
後継に相応しい者が現れたらその者に伝える。
別に不思議な事ではない。
「開祖のお言葉だ。『後継に相応しい者に秘伝書を与えた後、伝承者は自害せよ』との事だ」
「何!?」
「『自分の生命を賭けるに相応しい』と思う者でなければ秘伝書は与えられん。
今まで多くの伝承者が『伝承者にふさわしい』と思う者を見つけても秘伝書を授ける事は無かった。
自分が死んでしまうのだから当然だな。
そうして、次々と先送りし続けて二千年近くもの時が過ぎ去った。
いつまで続ければいい?
また二千年後までか?
その時本当に後継者にふさわしい者が現れるとは限らないのにか?
儂がお前を後継と定めれば文句を言う者などおらん。
一族も延々と続く開祖の妄執からようやく解放されるのだ。
喜べ。お前は儂に一撃を与えたのだ。儂が生命を賭けるに相応しい者だと認められたぞ。」
「ちょっと待て!俺じゃなくてももっと相応しいヤツはいくらでもいるだろう?そいつらならどうなんだ?」
言っても無駄だと思いながら、レイは確かめずにはいられなかった。
「開祖から、どのような者が伝承者となるのかは伝えられている」
「何だよそれは?」
嫌な予感が消えぬまま、レイは尋ねるしかなかった。
「『見ればわかる』それが開祖のお言葉だ。そしてそれは正しかった。見ればわかった。お前こそ儂の、『陰流』の後継だ」
「ふざけんな!そんな理由でそんな大袈裟なもの背負わされてたまるか!」
「お前の意思などどうでも良い。
秘伝書を渡した以上、開祖のお言葉は果たした。
儂は、一族はもう『陰流』からは自由だ。
開祖のお言葉に従い自害するのは別にお前を倒した後でも問題ない。
単に伝承者が未熟だったというだけだからな 」
「ふざけんな!コンチクショー!」
理不尽な暴力がレイを襲った。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
『見ればわかる』
それがレイが陰流の後継に選ばれた理由でした。
しかし、それにはレイの意思は全く考慮されていません(笑)
この理不尽な理由を押し付けてくるのが王虎です。
レイはこれに抗う事が出来るでしょうか?
次回お楽しみください。