※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ・・・」
荒い息をついてレイは立っていた。
立っている事しか出来なった。
陸奥圓明流の奥義によって100%の力を行使し続けた全身は悲鳴を上げ、限界を超えた連続した“
全身には様々な打撲、裂傷の傷が刻まれ、呪符による治癒も追いつかない状態だった
立っている事どころか生きている事さえ不思議だった。
(これで立ってこられたら、もう俺に打つ手はないな。そうなったら諦めるしかないか?)
しかしそんな考えを頭を振って振り払う。
(諦めてたまるか!何があろうと、どんな事をしてでも、もう一度同じ事をしてでも、俺は生き残ってやる!)
そんな事は不可能だった。
それはレイ自身が最もよく理解していた。
他にも様々な考えが浮かんでは消えていったが、そんな考えは倒れ伏した王虎が起き上がった事で意味を無くした。
(ちっ!やっぱりこうなったか?だったらもう一度、いや、何度でも同じ事を繰り返すだけだ!)
そう言って一歩踏み出すレイだったが、足は震え、手に力も入らず、一歩踏み出すほどの全身に激痛が走り、力なくふらつくその姿はもはや戦う事などできないのは明らかだった。
「我が地に伏すか・・・。まさかお前がこれほどの者だったとはな。『陰流』もこれなら問題あるまい」
そう呟いた王虎の手元から、銀色の閃光が飛び出し、レイに向かって放たれていた。
「な!?」
不意を突かれたものの、「あのジジイ相手に油断なんか出来るか!」と一切油断していなかったレイは放たれた銀光をつかみ取っていた。
それは王虎のような男が持つには不似合いな細身の短剣だった。
柄を掴んで受け止めた短剣を一瞥してそう判断したレイだったが、突進してきた王虎に柄を掴んだ手ごと握りしめられ、そのまま短剣の刃が顔面に向かって突き出されてきた。
「くっ!」
残った手を添え、両手で抗うものの、片腕でも王虎の力は強く、王虎との闘いの間、限界を超えた力を出し続けていたレイの身体は、もはや満足に動く事さえ出来なくなっていた。
さらに引き続き100%の力を引き出そうとしたものの、限界を迎えていた身体では不可能だった。
そうしている間にもじりじりと剣は目の前まで迫り、(ち、ちくしょお。こ、ここまでなのか?)とレイでさえ一瞬諦めが脳裏をよぎった時、王虎の手首が翻り、王虎はレイの手を握ったまま自分の胸元へ刃先を滑らせた。
レイの手を握ったまま短剣は王虎の心臓を貫いていた。
「がっ!」
「なっ!?」
レイは血を吐いて倒れ伏す王虎に驚愕の声を上げた。
「おい、ジジイ!自分で何やってるんだよ!」
「ふっ、妻の元に逝くついでだ。お前には栄誉を与えてやろう。
これでお前は名実ともに栄誉ある『儂を倒した男』という事だ」
心臓を貫いてもまだ王虎は生きていた。
「キシュラナの剛剣死(士)もジュリアネスの聖騎士も我が肉体を傷つける事は出来なかったが、やはり儂自身であれば可能であったか。
まあ、自分で自分自身を否定したのだ。もはや『己自身』を保つ事は出来まい」
「な!?」
「この短剣は妻が己の命を絶つ時に使ったものだ。妻と同じ剣で終われるなら、それも悪くない。
儂を倒したお前にはこの剣と儂の名をやろう。
儂がこの剣を手放す事はあり得んのはクルダの古い者なら皆知っている。
これからは『カーン』の名を名乗るがいい。
儂の剣を持ち、儂の名と陰流を使う者が何を意味するか誰にでも理解できるだろう」
「勝手な事抜かすな!なんだって俺がそんな事をしなくちゃならないんだ!」
「お前の意思などどうでも良い。儂が勝手にやっているだけだ。不用なら儂の名も、陰流も捨ててしまえばよかろう?」
「・・・あんたはそれで良いのかよ?」
「もはや『陰流』の伝承者はお前だ。
お前が『陰流』を伝えようが、絶やそうが、それは伝承者であるお前の自由だ。
好きにするがいい」
「て、てめえ、最後まで何を勝手な・・・」
「・・・さすがにそろそろ限界か、頼むぞ?」
その最後の言葉はレイではなく、いつの間にかその場に現れた、全身に呪符を巻き付けた男に向けられたものだった。
「・・・心得た」
呪符の男はそう短く答えると、倒れた王虎の身体の上に二枚の呪符を置いた。
「スレイ・ルイクスが符に問う。答えよ。其は何ぞ?」
『我は光、輝く光。力の光に成り代わり貴公を天へ
呪符が発動すると同時に王虎の身体が光に包まれた。
「・・・やはりお前の肉体を魔導力に変換するにはお前の同意が必要だな。頼むぞ」
その呪符魔術師-スレイの言葉に苦笑を浮かべると王虎は呪符の発動に同意した。
「ライ・カーンが“王虎”の『
その王虎の言葉と同時に二枚目の呪符が発動した。
『我は力、輝く力。光る力に成り代わり、貴公を大地に留めるもの也』
目を開けていられないほどの光が王虎を包み込んだ。
光が収まった時、そこに王虎の姿はなかった。
残されていたのは大きな深紅の宝石と、その傍らに転がる一本の短剣だけだった。
「・・・なんだこれは?」
「宝珠だ」
「宝珠?」
「“
「おい。もっとちゃんと説明を・・・」
ぐらり。
呪符魔術師-スレイに言い募ろうとしたレイの身体が不意に揺れた。
「あ、あれ?」
「王虎に勝ったのだ。お前が無事で済むわけがあるまい。まあ、宝珠を得た礼に師もお前に配慮してくれるだろう。
少し休むが良い」
「ま、待てよ。俺はまだ・・・」
言葉を続ける前に、レイは意識を失っていた。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。