※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
周囲の強さを再確認したレイは必死に技を身に付けようとした。
しかし結果は悲惨だった。
見よう見まねで“
“
拳や足に真空派を纏わせる事は出来た。
だがそれを撃ちだす事はどうしてもできなかった。
我流ではそれが限界だった。
誰かに教えを乞おうとしても、わざわざ子供に自分の技を教えようという者はいなかった。
教えても子供ではすぐ死ぬ。
生き残ってもその技が今度は自分を殺す事になるかもしれないのだ。
奴隷という立場では当然でもあった。
結局、レイは我流で技を磨くしかなかった。
それならと、自分の格闘漫画オタクの知識を活かし、漫画の中の技を実現できないか、試行錯誤した。
結果は、実現出来た技もあったが、実現出来ない技がほとんどだった。
レイをもっとも落ち込ませたのは「これなら!」と思った技が全く実現出来なかった事だった。
それは男の子なら、誰でも一度はやってみた事があるであろう「あの技」だった。
「か・め・は・◯・波〜〜〜〜!」
「・・・はあ〜、やっぱりダメか?」
無駄な事に時間を費やす事もあったが、レイは自分に出来る事と出来ない事を把握する事に全力を傾けた。
そうこうしているうちにレイの次の出番が、処刑の日が決まった。
相手はクルダの支配者、キシュラナの“剛剣死(士)”だった。
“剛剣死(士)”の男は退屈していた。
キシュラナでも高い身分に生まれ、若くして“剛剣死(士)”となったものの、周囲では戦乱もなく力を振るう機会もない。
出来る事といえばクルダの薄汚い奴隷をなぶり殺して鬱憤を晴らすぐらいしかない。
奴隷の死に際の悲鳴を聞いている間は退屈を紛らわす事が出来る。
“剛剣死(士)”の男はそんな事を考えながらレイが闘技場に連れてこられるのを待った。
レイは緊張していた。
後の聖王国アシュリアーナ守護流派・四天滅殺のひとつキシュラナ流剛剣死(士)術。
自分は今からそれと対峙するのだ。
“
前世では『剣道三倍段』とも言われ、剣道初段の相手には空手や柔道では三段が必要という説もあるほどだった。
武器の有無、間合いの深さというのはそれほど重要なのだ。
自分は無手でそれと対峙するのだ。
観客は自分が惨めに殺されるのを望んでいるのだろう。
だが、自分がそれに黙って従う謂れはない。
最期まで、徹底的に抗ってやる!
そう決意したレイの耳に、死闘開始の合図が飛び込んできた。
“剛剣死(士)”の男はにやにやと薄笑いを浮かべていた。
怯えた様子はないが所詮は薄汚い奴隷。
力の差を見せつけてやればすぐに怯えて泣き出すだろう。
そう考えた男は刀を抜くと剛剣死(士)を現出させた。
「「殺」の一文字を心に懐け―
さすればその一文字は「牙」となる」
「キシュラナ流剛剣死(士)術 殺文字
刀からにじみ出た純粋な『殺意』が、形をもって目の前に現れていた。
巨大な剣の両手を持つ異形の鎧武者の上半身だけが虚空に浮かび、レイに向かってその刃を打ち下ろしてきた。
とっさに身を躱したレイの傍の岩を剛剣死(士)の刃は軽々と切り裂いた。
そこへ剣士の男が剣を構えて振り下ろしてきた。
その踏み込みは修練の賜物か“剛剣死(士)”の名にふさわしく鋭いもので、その打ち下ろしは電光石火の如く目にも止まらなかった。
レイはその斬撃を躱す事が出来ず、身体から血しぶきがほとばしった。
観客席からは歓声が上がった。
これから始まる殺戮に向けて、観客たちの興奮は限りなく高まって行った。
実際に“剛剣死(士)”の技を目で見て、レイは冷静に自分の身体の状況を把握していた。
(出血は多く見えるが行動に支障はない。派手に見えるように手加減したな?それならこっちも遠慮はしない)
にやにやと薄笑いを浮かべる“剛剣死(士)”の剣士を見てレイは思った。
(コイツは俺よりも強い。だが『コイツは弱い!』)と。
レイは正面から男に突っ込んだ。
男はにやにやと笑いながら剣を振るい、真空派を撃ち出した。
“
しかしレイは真空派を纏わせた拳で真空派を相殺した。
一瞬驚いた男は笑いを停めないまま、レイの背後から“剛剣死(士)”を襲い掛からせた。
レイが背後からの攻撃を躱すと同時に、男は正面からレイに斬りかかった。
小柄な体格を生かし、男の足元に身を投げ出して転がるとレイは男の背後に躍り出た。
男は一撃で仕留められなかったのが不満なのか不機嫌な顔をしていたが、レイの言葉に激怒する事になった。
「なんだ?キシュラナの“剛剣死(士)”ってのは満足に子供一人斬る事も出来ないのか?
いくらお前がへなちょこでも動かない子供を斬る事ぐらい出来るだろう?
ホレ、ここを斬ってみろよ?」
そう言ってわざとらしく男の目の前で右半身を指差すレイに、男は激怒して斬撃を繰り出した。
それはレイの胴体を両断しかねない鋭い斬撃だった。
しかし男が繰り出した斬撃がレイに届く事は無かった。
斬撃が放たれた瞬間、レイは一瞬速く踏み込み、剣を握った男の手の指を真空派を纏った拳で切り裂いたのだ。
「ぐあああ!」
剣を取り落とし、思わず前屈みになり手を抑えて呻く男の顔にレイの横蹴りが打ち込まれた。
「くっ」
さすがと言うか、仮にも剛剣死(士)の男はこのレイの蹴りを躱してみせた。
しかし躱されたはずのレイの蹴りは、そのまま引き戻され男の後頭部に踵が打ち落とされた。
「ぐあっ!」
そして地面に残ったもう一方の足が跳ね上がり男の顔面に叩き込まれた。
子供とはいえ、クルダ人の身体能力で後頭部に踵を撃ち込まれ、頭部を固定された状態でさらに顔面に蹴りを打ち込まれれば、例え剛剣死(士)でも耐える事は出来なかった。
さらにレイはその状態で上半身を捻って地面に手を着くと、両足で男の首関節を固めたまま、全身のバネを生かして男を頭部から固い地面に叩きつけた。
大きく弧を描いた男の身体は地面に倒れ伏したまま動かなくなった。
《陸奥圓明流 斗波》
レイの格闘漫画の知識がクルダ人の身体能力によって実現した奇跡だった。
一瞬の静寂の後、歓声が爆発し闘技場は混乱に包まれた。
“
信じられるはずがなかった。
レイは男の取り落とした剣を頭上に掲げると大きな声を張り上げた。
「この剣は勝利の証として俺がもらった!取り戻したければいつでもかかってこい!」
それは子供の、奴隷の言葉ではなかった。
クルダに住む者たちにとって絶対的な存在であったキシュラナの“剛剣死(士)”。
それが唯の子供によって敗れ去ったのだ。
この瞬間、レイはクルダの者たち全ての希望となった。
※あとがきです。
私の拙い作品に目を通していただきありがとうございます。
本作の更新は不定期になります。
具体的には数日更新が続いた後、週一から月一、また週一と一定しない事が考えられます。
お手数をおかけしますが、拙作をお見捨てなくよろしくお願いします。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
他にもガンダムseedの二次創作を投稿しています。
よろしければ、こちらもお楽しみください。
https://syosetu.org/novel/396797/
転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜
次回お楽しみください。