フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!! 作:雨傘なななな
■【機械工】ノーイ・デクステル
「よーしよしよし、もうすぐ完成だ!!」
この世界には煌玉機と言うあまりにもバランスブレイカーの機械群が存在する。
先々期文明のとある偉人が作成したシリーズであり、そのあんまりにもあんまりな性能に、機械に冠するエンブリオを要するマスターは揃いも揃ってその機械の眠る遺跡の探索に精を出しているわけだ。
この世界に来てから友人になったカリュートという男もそうだ。
模倣エンブリオで先々期文明の機械を読み込むことで新しく強い機械を作成し、自分の作品と呼んでいる。
まぁなにやら所属するクランとその作品について揉めているようだが、それは良い。彼には彼の製作活動があり、彼の信念があるのだから。
「この……火力発魔式動力炉が!!」
だが、僕は納得していない!!!
納得していないったら納得していない!
なぜ何百年何千年前の機械資源とその解析に頼っていなければいけないのか!!
せっかくこんなにも自由な世界に来て、こんなにもなんでも作れるというのに!
「と、言うわけでコイツは僕が一から考えて一から作成したマジンギアの動力炉だ!」
「そ、そうか……」
今回の機体依頼主たるエルブレイン=ソーリス氏がドン引きの様相を隠すことなく応じてくれる。
彼の依頼は魔術ではない炎の火力を増すエンブリオとのシナジーを持てるマジンギアが欲しいとのことだ。
彼の中では火炎放射器をつけて欲しい程度の依頼だったようだが、ちょうどこの火力発魔式動力炉の設計途中だった僕が無理矢理その性能(期待)とそのシナジーを熱弁して搭載させていただくことにした。
「さて、心の準備はいいかい? 僕は1ミリも良くない、良くないが……起動ー!」
「えっ、いや、あっ」
ゴウンゴウンと重厚な音と共に、未だマジンギアに搭載せず単体で設置された動力炉が動き出す。
「燃料は植物性の油分を想定している。あまり実りのないこの国でもそこそこ生産されているからそこは心配しなくて良い」
炎が灯り、フィンが周り、ガレージ全体が揺られ始めた。
「順調だ。君のエンブリオと合わせれば、少ない資源で多くの力を生み出せる。マジンギア本体に【炎熱耐性】に近いスキルを持たせれば、高いステータスを発揮した上で安全に君のエンブリオを振るえるはずだ」
魔力回路にエネルギーが充電される。
本来であればマジンギアを動かすことになるそのエネルギーは、今回は代替的に繋がれた魔力排出機から排出されていく。
「魔力が……流れてる、魔力が流れてる! 第一関所はクリア、ではエルブレイン君、スキルを!」
「お、おう! ムスペル!」
「うん! 任せて!」
「【炎熱増強】!」
魔法由来ではない炎の火力を強化するスキル。
炎を扱う上で最もメジャーな手段を封じたことで、彼とそのエンブリオであるムスペルのスキル倍率は飛躍的に伸びたという。
既に最大限に近い速度で回っていたフィンがさらに早く回る、魔力が排出される、魔力が排出される、魔力が排出され、魔力が魔力魔力がががががががが……あっ
「「あっ」」
光った。爆発、あっ、やばい、死っ……
「─────────────」
ちゅどーん、とやけにコミックのような効果音と共にガレージが吹き飛んだ。
◆
「あ~~~〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
場所は変われど人は変わらず、【機械工】のノーイ・デクステルでございます。
爆発自体はどうやら【救命のブローチ】で生き延びたらしく、気づいたら吹き飛ばされて空を飛んでいた。
比喩ではなく、本当に。
「しーーーーぬーーー!!!!!!」
空を飛ぶのは初ログイン時以来だが、まさかもう一度同じ体験をすることになるとは思わなかった。
風を切る音が凄い。
エルブレイン君とエンブリオのムスペル君は大丈夫だろうか。彼は戦闘職だし炎熱耐性系の装備をしていたはず、きっと無事だと信じるとして……僕はぁ……そのぉ……
「いやこれ皇王宮に直撃するんじゃ……」
──────やばいやばいやばいやばい!!!
どうしよう国家犯罪者とかになってしまう! やだー!生産職が他の国にセーブポイント持ってるわけないじゃん満足に機械も作れない監獄に収監なんてほんとにやだー!!!
「たーすーけーてー!!!!!!!」
だが、この勢いを止める手段はない。
なんならぶつかった後生き残るステータスもない。
僕のエンブリオは戦闘には1ミリも役に立たない!死ぬ!できれば死にたくはない!
「こんな吹き飛ぶとは思わなかったんだってー!!!!」
テストでは上手く行っていたわけで……エルブレイン君のスキルの問題じゃーーん僕だけ監獄はさぁーー!!ほら!ね!?こんな吹き飛ぶとか思わないわけでー!?
「うーーーーわーーーーーーあぁああああああ!」
なんとか指輪型アイテムボックスから大きめの布を取り出して帆にしてみるが……うん、若干速度落ちた気がする……かなぁ?
あっ地面すぐそ
「ごっ、ぐえっ、どぅえっ、んぐっ………………………ん?」
こ……生きてる!!!!
「なんで!?!?!?!?」
頭に絡みついた布を投げ捨てて飛び起きる。
と、目の前にいるのは金髪縦ロールのTheお嬢様と言った格好の……うーんどこかで見たことあるな。というかここが皇王宮であることを加味して恐らく彼女は……
「─────それは、私がアイテムを使って助けたからですわ!」
「そのぉ……クラウディア様です……か?」
「正解ですの!」
「い」
「い?」
「命だけはご勘弁を……!!!!」
「そーんな簡単に命を奪うことなどしませんわ!」
ビシッと僕を指差してそう断言してくれる彼女の後ろで、恐らく僕がぶつかったであろう壁が崩れてゴロゴロガシャーンと騒音を上げる。
慌てたようにメイドらしき女性陣がクラウディア様の身体に異常がないかを確認し、文官らしき数名の男性が僕を射抜かんばかりの目で睨みつけている。
うーん、これはダメかもしれんね。
僕が文官なら指名手配して速攻死罪にしている所だ。ほんと……その……まじで悪気はなかったんです。すみません……。
「すみません……本当に。いえ、申し訳ありませんでした。何卒、何卒指名手配だけは……!僕、いえ、私はしがない【機械工】でして、要人暗殺のためとかではなくただ事故でここに吹き飛んできたもので……」
「そうでしたの! 私、驚きました! まさか人が吹き飛んでくるなんて!」
「でしょうね。僕も驚きですあんな吹き飛んなんてまさかまさか」
「何をどうしたらあんな勢いで吹き飛びますの? 【機械工】だ、とは聞きましたが」
と、そうクラウディア様に告げられて先程の動作確認へと思いを馳せる。
やはり主な原因はエルブレイン君のスキルこと【炎熱増強】。元より設計段階で想定していなかったスキルだとは言え、爆発を引き起こすほどの倍率を誇っているとは思っていなかった。
「えーと」
自分のエンブリオが若干特殊である分、少し僕は他人のエンブリオのスキルについて低く見積もる悪癖があるかもしれない。
「その」
改善点としてはやはり耐久性と、持て余すほどのエネルギー/パワーを出力する術。
当然、動力炉自体の出力を下げれば今の耐久性と出力でも運用はできるだろうが、それではあまりにも浪漫に欠けるし、あの動力炉を使う意味自体が薄くなってしまう。
「もしもし?」
機体に付与するスキルも【炎熱耐性】なんかではなく、よりその熱量を上手く使えるようなスキルに───────「聞こえていますの!!?!?!?!?」ひょえっ。
「あー、すみませんすみません、熟考してしまいました。作成していた機体の出力不足で爆発してココまで吹き飛ばされたようで……それで、僕はどうなりますかね?」
「…………? 機体の出力不足、とはどういうものですの?」
「えっと、そのままですね。動力炉から生み出せる魔力を大きく下回る出力機器だったという……」
「動力炉とは魔力を生み出す動力炉のことで間違いないですわね? 自作……でしょうね。どこかのクランに所属されておりますの?」
「い、いいえ……個人で店を構えています」
凄い質問攻めだ。まぁ押し入ってしまったのは僕なので甘んじて受け入れるのだが、ゲーム内とはいえ王族様に自身の身の上を話すのは少し勇気がいる。
「フムフム……では貴方、その貴方の店に案内していただけるのであれば此度の件は私の権限で不問としてもよろしいですわよ!」
「えっ」
そ、それだけ……?
「く、クラウディア様! それは余りにも寛大すぎます! この者は皇王宮に無断で踏み込んだあげく、この歴史ある建物に傷をつけたのですよ!?」
余りの緩さにいつでも僕を殺せるよう構えていながら、一応の静観を保っていたお付きの方々が反対の声を上げる。
ね! 僕は寛大でいてくれる方が嬉しいけど、ね!さすがにね!!?
「私の権限で、と言ったでしょう! それに、彼の発言に嘘はないことは【真偽判定】で確認済みです! そうですわね!?」
「そ、それはそうですが……!」
あ、あー、あーね! そんなんもありましたね。
そりゃあ使うか。もしここで嘘ついてたら文字通り死罪だったと。嘘つく理由も国に楯突く理由も一切ないけど嘘つかなくて良かった〜〜〜〜。
「と言うわけで、どうされますわ?」
「そう、ですね……ではクラウディア様、僕のガレージに案内させて頂きます……」
「ですよね! 嬉しいですわ!」
はは、ははは、そもそもあの爆発で僕のガレージ残ってんのかな……燃え後のみとかになってたらやっぱり嘘つき罪とかで死罪になる?ならないといいなぁ……。なるんだろうなぁ……。
こうしている間にも僕の着地音を聞きつけた人達が僕とクラウディア様の周囲に集まってきている。
そんな余りの周囲からの視線の量と圧に色々と諦めしかなくなってきた僕は、仕方なく立ち上がり自分のガレージへとクラウディアを案内することにした。
あっ、大丈夫ですクラウディア様、手を貸してもらわなくとも立てます立てます、ほら周り見てください、今手まで借りちゃうと気づいたら首と胴体が泣き別れになっててもおかしくないので、大丈夫ですさすがにちょっ、ちょっとぉ……あー、すみませんすみませんすみません本当にすみませんすみませんね……。
視線が怖い!
た、助けてー!!!!!!
SOS!
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へるぷみー!
・ノーイ・デクステル
リアルでは家業であった時計技師を継いでいる24歳成人男性。
デンドロ内では高身長/長髪を器用に三つ編みにしたアバターに深緑色の作業着を着ている。