フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!!   作:雨傘なななな

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10話 【■■■】

■【機械工】ノーイ・デクステル

 

 【精密動作補助機体:Mark III】をイジりながら、思考に耽る。

 あの後、クラウディアとベヘモットは連れ立って皇王宮へと帰っていき、エルブレイン君もクエストへ、トミルは【悪魔王】の行方調査と妹さんの住んでいた場所の調査へ向かった。

 妹さんについては連絡がない以上拉致されたことは間違いないが、それでも現場を確認することで分かることがあるはず、だそうだ。

 

 そして僕は実際に動き出す……【悪魔王】の追跡開始までは好きにしていいとのことで結局いつも通り自宅のガレージにて機械を作り倒している。

 

「神様仏様、クラウディア様〜」

 

 自宅に着く頃にはクラウディア付きの武官から素材がかなり入ったアイテムボックスが届けられていた。

 全開同様アイテムボックスも好きにしていいとのことで、こうして拝み倒すに至っているわけだ。

 

「それほどでもありますわ!」

 

 既にあの拉致があった日から3日、作成した機体は4体。

 全て一から考えた機体だが、納得の行くものには至っていない。やはり超級職、やはり超級エンブリオ……!

 

「どこかでグランバロアの【建造王】の作品を見に……え?」

 

「……………………えっ?」

 

 なに心底驚いたみたいな顔してんだクラウディア。

 

「い、いえいえ! それで、調子はどうですの?」

 

「んー微妙。まぁもう少しでなにか掴めそうではあるんだけど」

 

 【作業補助マニュピレーター】を起動、補助腕を展開して操ることで少し遠くに置いていたジュースを手元に持ってきて飲む。

 うーん操作もだいぶ慣れてきたな。後は銃器の扱いと工具操作が上手く行けば満点。

 

「それで、何しに来たの」

 

「友達に会いに来ただけですわ! ちなみにベヘモットもいましてよ!」

 

「いるよー、がおー」

 

「…………………………………暇なん?」

 

 補助腕操作、冷蔵庫を空けて飲み物を取り出し、2種類のカップへと注ぐ。

 ついでにお菓子……ないわ。

 仕方なくカップをそれぞれへと手渡し、アイテムボックスから秘蔵の果物を取り出した。

 

 包丁操作もわりと慣れてきたなぁ……。

 

「と、言う割には大歓迎ですわね!」

 

「パトロンみたいなもんだから……この借りってどう返せば良い?」

 

「ずっと友達でいてくれればそれで良いですの!」

 

 ……そーいつは大前提なんだよなぁ……。

 切った果物を皿に乗せ、さっとテーブルに置いた。よーし歓迎終了。僕は設計図との睨み合いに戻ります!

 

「ベヘモット、ここはのんびり過ごすには良い場所だとは思いませんか?」

 

「だね。……機械屋がずーーーっと作業してるのはいいの?」

 

「うるさいよ怪獣。僕の部屋で僕が作業してる分には良いでしょ」

 

「前回のその腕輪を作る作業が良くなかった自覚はあるんだ」

 

 ないよ。ないったらない。

 2名?1名と1匹?は僕の作業を眺めながらしばらくの間歓談していたが、僕の作業がちょうど切りよくなったタイミングでコチラに話しかけてきた。

 タイミングをちゃんと把握してるのなんなんだ。その気遣いがあるならアポありできてくれよ。

 

「さて、今度私の出席する皇族の会食についてですわ!」

 

「ふんふん」

 

「そこでは2名まで護衛をつけることができまして……」

 

 僕とベヘモットに頼みたい、ってことか。

 えー。

 

「……嫌だよ? 護衛とか。ていうかせめて戦闘職じゃないとダメでしょ」

 

「そう言わずに! 戦闘自体はベヘモットがいますもの!」

 

 クラウディアは私の友達を自慢したいんですの、と続ける。

 おーおー、ちょっと嘘だねコレは多分。

 僕とクラウディアが拉致された件についての示威行為と見た。

 

 つまり……同じようなことが再び起こらないよう、僕とベヘモットが完全にクラウディアの派閥にいることを示したい的な?

 

「……………………戦闘になる可能性は?」

 

「さすがにない、と私は見ていますわ!」

 

 ま、クラウディアがそういうのであればそうなのだろう。

 

「じゃあまぁ……マジンギア作成が一段落ついていて……ある程度時間があるのであれば……?」

 

「本当ですの!?」

 

 その後、余りの勢いに面食らう僕に日時と集合場所を書いたメモを手渡し、その勢いのままにわっほーいとでも言わんばかりにはしゃぎながら怪獣(ヤマアラシ)を担ぎ上げたクラウディアは帰っていった。

 

 元気だなぁ。

 

 …………【変装王】事件以降、人と会うたびに意識的に使っている《看破》の結果を見る。

 

 【衝神】クラウディア・L・ドライフ

 【獣王】ベヘモット

 

「【獣王】、か……。怪獣のやつめ」

 

 絶対わざとついてきたな。よく思い出せばあのヤマアラシの顔は自慢気だった気もする。「ふふーん」とも言ってたし、「羨ましいでしょ、がおー」とも言ってた気がしてきた。

 超級職自慢に来やがったんですよアイツは。

 

 羨ましくなんてない、断じて羨ましくなんてないが……。

 

「【機械工】系統の超級職ねぇ」

 

 名前だけで言えばそれこそ【機械王】なんだろうけれど、あれは【整備士】系統由来だとクラウディアが明言していた。

 

 当日、僕とベヘモットの役割はもしもの場合の護衛と最初にする名乗りだ。つまるところ、【獣王】ベヘモットの名乗りの直後に僕が名乗ることになる。

 

「はっぱかけにくるなぁ……」

 

 会談?会食?の日程は1週間後。間に合うわけないだろとか言いたいところだけど。

 …………………さーてさて、どうかなぁ?

 

 生産職系統の超級職の就職条件は前提となる上級職の他に作成数やそのクオリティを問われることが多い。

 それを見越してここ数日……というか【極炎炉 ヘルフレイム】作成あたりから意識的に新たな機体の作成を行うようにしているわけだが……。

 

「数と質どちらも足りてないって可能性が高い」

 

 マニュピレーターを駆使して広げた新たな機体の設計図を睨みつけて脳をフル稼働させる。

 

「【魔導特異機体:ガーゴイル】」

 

 魔術師による自動操縦運用を想定した機体で、イメージとしては煌玉蟲に近い運用になる。

 

 数日前の事件後、解散前にクラウディアの許可を得てラインハルト皇太子が整備しているという機体を見に行った経験からインスピレーションを得て設計した。

 設計したは嘘。草案をまとめたぐらい。今から設計する。

 

 問題は当然動力炉、そして自動操縦機能の実装難度である。

 敵の攻撃を避ける、敵に攻撃を当てると言った操作を自動で行えるようプログラムできるか、という話だ。まぁ無理。

 一応ティアンの技術者達に弟子入りしていた時期の伝手を辿ったが、プログラムの作成ができるものは見つからなかった。強いて言うならばマスターのエンブリオで適任を探すほうが早いだろう。

 

「さて、というわけで自動操作はある程度諦めて、マニュアル操作をもとに考えるべきだよな」

 

 つまるところ、格ゲーのキャラクター操作のようなイメージで戦う。

 搭乗する魔術師は、【操縦士】系統による《操縦》スキルを持たずともある程度の近接戦闘能力を得られるカタチになる。

 その上で機体自体に杖を持たせることでそれを媒介に魔術戦闘も可能にする。

 

「動きは回避、防御、回転、攻撃、横移動、しゃがみ、ジャンプ……階段登れる必要ってある?」

 

 ない。ので、基本的にブルドーザーのようなキャタピラでの機動。

 形状はガーゴイルだってんだから悪魔像を象るかぁ。

 

 魔術師を乗せる以上、操縦のための魔力を使うのでは余りに本末転倒だ。

 少なくとも何らかの手段での動力補助は最低限求められる。

 方式は……最近採用していなかった充電式で、バッテリーを積む形式にしようか。別途発電するというよりはオフタイムに魔力を込めておくことで戦闘時に使用する形式で。

 

「火力は必要ない。本当に防御力を突き詰めれば……!」

 

 設計図は8割型完成。

 キャタピラとガーゴイルの外見の相性が微妙なため、後ほど定期的にお世話になっているデザイン家ことタイク・ロビンソンさんに話を聞きに行くとして……。

 

 先に動力炉系統のパーツは作っておきたいかも。

 

 ……【精密動作補助機体:Mark III】とエンブリオこと【炎視隻眼 キュクロープス】を起動した。

 

「一つ一つ、フラグマンも登ったであろう道を登っていけばいい。超級職に近づいていなくとも、超級エンブリオの近づいていなくとも、僕の技術は彼を超えるための階段をキチンと登れている……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 改めましておはようございますノーイ・デクステルです。

 タイクさんにデザイン案貰って設計図書き直して必要素材確認してクラウディアと少し話してたまたま市場であった怪獣と話して【魔導特異機体:ガーゴイル】を実際に作成して……日付感覚は狂い倒していますが恐らく5日ぐらい経った気がします。

 

 ちなみにガーゴイル君は二億リルでとある魔術師マスターに売り払われました。めちゃくちゃ喜んでてよかったね。二億リルはクラウディアに返そうとしたけれど、普通に断られてしまい手元に残っている。

 

 一応ガーゴイル君は一度バラして、再度作成し直す形で所有者設定も行った。

 性能もそうだが、オンリーワン要素がエンブリオ以外にもあるという事実が彼には嬉しかったのだろう。僕って一回作った機体のレシピ作らないから違う人から同じやつ注文されても断るしね。

 

 二億リルはデカい……!! 何を買おうか、ということでティアンの技術者からガイスト(戦車型)二機といくつかの素材、ついでに高級品の工具を買った。3日しか経ってないにも関わらず後半分しかないんだが……??

 

「よし完成……!!!」

 

 そして、ちょこちょこと合間を縫って作成していた機体が遂に完成した。

 売りに出すものではないためそれほど力を入れていたわけではなく、故に完成が遅れたのだが……トミルの依頼開始前で良かったかな。

 

 彼女の依頼の方はどうやらもう少し情報収集に時間がかかりそうだとか。具体的にはクラウディアの会食の後。

 

 え、クラウディアの会食まで後2日しかないの!?!?

 

「それで、調子はどうだノーイ」

 

「どうなんだー!」

 

「エルブレイン君にムスペル君か。まぁ、悪くないね」

 

 僕のガレージは基本的に鍵をかけていない(店でもあるため)ので、友人達は奥までズカズカとノーアポ/挨拶なしで入ってくるのだ。

 

「挨拶もノックもしたからな俺達は」

 

「そうだよー! ノーイが気づかなかったの!」

 

「…………………………そいつは申し訳ないね。それで、どうかしたかな?」

 

 エルブレイン君がさっと何かの紙をテーブルの上に置いたのを横目に、思考を巡らせる。

 

「今日はヘルフレイムの整備を頼もうかと思って来たんだが……行けるか?」

 

「もちろん」

 

 ガレージから機体を取り出してもらい、破損部や塗装剥がれ、パーツの歪みなどを確認していく。

 リアルでの時計をバラして組み直す作業とほとんど同じで、決まりきった工程の中で違和感を探す作業になる。

 

「そういえばエルブレイン君、【極炎炉 ヘルフレイム】はカスタムを前提にした機体だというのは前にも話したと思うんだが」

 

「聞いてないけど」

 

「……………まじで?」

 

「まじだな。で? カスタム前提って?」

 

 まじかー言ってなかったかーと小さく呟き、ヘルフレイムについての追加の説明を行っていく。

 

 つまるところ、この機体は横に大きく設計してある分だけ内部構造や装備に余白が多いのだ。駆動系の強化や防御用のプレート追加、バッテリーの本数増加など必要に応じてできることは多い。

 

 カスタム前提とはつまり、機体を使用しながら求める最高の形へと近づけていくということだ。

 

「それを踏まえて、なにかカスタム希望はあるかい?」

 

「んー……今のバランスと速度が気に入ってるんだ。ちょっとの間はそこも考えながら使って答えを出すことにするかな」

 

「おっけー」

 

「……………で? それはなんだよ?」

 

 ガレージの隅に安置された二対の巨大な機械を指差して、エルブレイン君が訊ねる。

 ゴウンゴウンと静音処理を経てなお騒音を響かせ稼働し続けるその機体は全体を黒く染められ、その内部で成される動きの一切を外界に伝えていない。

 

「………………【禁忌】だね」

 

「はぁ?」

 

「どうやら僕の友人であるクラウディアは、僕に超級職の座に就いてほしいようで」

 

「おぉ。それは俺達もだぜ」

 

「うん! ノーイは凄い奴だから!」

 

「それはどうもありがとう」

 

 わざわざ僕と相性の悪い【獣王】ベヘモットを連れてきてまで焚き付けようとしたのだ。

 

 きっと彼女は、僕に対して「その気になればいつでも超級職になれる」と考えているし、彼女の政争に関係なく「超級職という誉れを手にしてほしい」と考えている。

 その信頼と尊敬に免じて、僕はいくつか自分に課していた枷を外すことにしたわけだ。

 

「枷?」

 

「同一機体の量産をしない、といういわゆる縛りのようなものだよ。それは技術を鈍らせると考えていたから」

 

「………なるほど」

 

 二対の【禁忌】機体のうち一体は、常に最近購入した【ガイスト】を解体する機体。もう一体は、解体した【ガイスト】を再び組み上げ直す機体だ。

 

「生産系超級職では、その作成機体数が条件に含まれる事が多いからね。その数を無限回の試行を持って達成する」

 

「………!!!」

 

 エルブレイン君が絶句したのを無視して、話を続ける。

 量産機体の作成は主義に反する。だが、機体を組み立て続ける機体の作成は主義に反しない。

 

 そしてこの機体が稼働し続けるということは、もう一つ僕に大きなメリットを与えてくれるのだ。

 

「それと、この機体は僕の意思に関係なく動き続けるが……判定としては当然僕が作成作業をしているというカウントになる」

 

「それでどうなる?」

 

「僕のエンブリオのステータス補正は、機体作成時以外は機能を停止している。」

 

「!」

 

「この機体の存在により僕は、常にDEXを高め続けることができる」

 

「それは……確かに……、いや、DEXの値ってのは機体操作時と生産中ぐらいしか役に立たないはずだ! いくらDEXを高めようと剣を振る技術は向上しない! それになんの意味がある……!?」

 

「そうだね。僕もそう考える。だからそこはおまけ。本命は超級職だよ」

 

 何度目かも分からないガイストの作成が終わり、【禁忌】の解体側へと送られる。同時に解体作業が終わっていたガイストが【禁忌】の作成側へと取り込まれ、再び組み立て作業が始まる。

 そして、少し間の抜けた音と共に、アナウンスが伝えられる。

 

 僕が超級職に就くことで、僕が縛りを妥協することで大切な友人達が得られる利益がある。きっとエルブレイン君の機体の強化もより上手く行くだろうし、クラウディアの願いへの到達も早くなる。なにより、コレからも共にクラウディアの横に立つであろうあの怪獣ヤマアラシに先を行かれることが許し難い。だから、

 

「─────友のためだ。僕は本気で取りに行く」

 

 

【レシピを用いない機械の作成数が一定を突破しました】

【条件解放により、【神機工】への転職クエストが解放されました】

【詳細は【機械工】系統への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

 

 皇王宮で行われる皇族の会食まで残り2日。

 世界が彼を知る日は、刻々と近づいていた。










 
・【禁忌】
ガイストの組み立て/解体に必要な操作のみを行うよう動きを設定された二対の機体。
この機体の最も特異な点は、ガイストという既に【レシピ】の存在する機体を組み上げているにも限らず、その【レシピ】を介することなく組み立て作業を行なっている点である。

この機体設定こそが彼に【神機工】の条件を達成させた。
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