フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!! 作:雨傘なななな
■【衝神】クラウディア・L・ドライフ
その日、クラウディアは珍しく緊張していた。
アルティミアに出会い、彼女と仲を深める時に感じていたものと同じものを、今ここで感じているのだ。
それだけで彼女がどれだけの感情をノーイ・デクステルとベヘモットの両名に向けているのかが分かるというものだろう。
あの二人は、仲が悪い癖に微妙に似ている所がある。気まぐれで、感情豊かで、自分にとってなによりも大切な何かがあるのだ。
「来てくれるでしょうか……」
2人には食事会へ自分の護衛として参加することを頼みこそすれ、命令はしていない。それはもちろん彼らが彼女にとって配下ではなく友人であるからだが、アルティミア以外とまともな友人関係を気づいてこなかった彼女にはそれがとてももどかしかった。
だが、強制もしたくない。
もしもクラウディアよりも大切な物が出来たとき、あるいは優先すべきことを見つけた時、ためらって欲しくないと思ったから。そう、思ってしまったから。
「開始時刻まで2分程です。クラウディア様、準備はよろしいでしょうか?」
「……………えぇ」
少しだけ、クラウディアの体が強張る。
そして……遠くから聞き慣れた悪態が聞こえてきた。
「──────────おい怪獣ヤマアラシ、お前のせいで遅刻しかけたじゃんか!」
「私悪い怪獣、グチグチ言ってると踏み潰しちゃうよ、がおー」
「今はちびっ子ヤマアラシだろ!」
「変身しなくても私が勝つ」
「いーーーや! それならさすがに僕が勝つね!」
「ノーイ君! ベヘモット!」
愛しく、大切な友人達だ。友人達の声だ。
2人の声が一際大きくなったと思った瞬間、扉が開け放たれて2人が控室へと飛び込んでくる。
自分でも目が輝いているのが分かってしまう。
自分にとって彼らはまだ、アルティミアほどの大切な存在ではない。彼女に比べれば捨て置ける存在、そのはずだ。けれど、そのはずだと何度言い聞かせても、クラウディアの魂はそれを否定するように叫ぶ。
「間に合った?」
「遅れたなら機械屋のせいだよ、がおー」
「僕も語尾つけようか? ガコンとかで良い?」
「真似したら踏み潰しちゃうかも」
「うざいな〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ふふふ、大丈夫ですわ! 行きますわよ二人とも!」
きっと他の皇族達は護衛に自分の派閥の皇国特務兵を選抜するはずだ。
クラウディアがそうしなかったのは、無意識に二人を誰にでも良いから見せつけて自慢したかったのだろうと今更思い至る。
控室から廊下を進み、少し離れた所にある会食会場へと足を踏み入れる。
既に会場には全皇族が揃っており、着席していた。
「失礼致します」
後ろの2人に恥をかかせないため、いつも以上に丁寧に所作を意識して挨拶、席についた。
そんなクラウディアの気も知らない後ろの2人は、流石に言い合いはしないもののマイペースに睨みつけ合いながら私の後ろを歩いている。その姿すら愉快で笑いそうになってしまう。
……中身は人間だとは言えど、小動物と本気で睨み合うノーイ君の絵面終わってますわね。
「さて、時間通りだ。全員揃ったことだし改めて会食を始めようか。私は第一皇太子、グスタフ」
「【超操縦士】カーティス・エルドーナ」
「【雷王】エレクィング」
「2人は私の護衛だ。よろしく頼む」
2名の特務兵が、ハロンの後ろに完璧な所作で並び立つ。
その動きと、2つの超級職だけで主であるハロンの力がどれだけ大きいかを示しているのだ。
「第二皇太子、ギルベルトだ」
「【潜伏王】カルドニス」
「【執筆王】ロスタイム・シンドローム」
「……【執筆王】はマスターかつ皇国特務兵ではないが、諸事情により私の護衛を務めている」
第一皇太子に比べて第二皇太子の派閥は母数が少ない。超級職2名の護衛という見栄をなんとか維持するためにわざわざマスターから護衛を連れてきたのだろう。
その後も、第一、第二皇太子の息子達やその護衛が各自名を名乗っていく。
第三皇太子の妹でしかないクラウディアの手番は当然最後となる。
自分と皇太子達の才能など比べようもないが、ここまでの彼らの護衛達に自分の友人達が劣っているなどとも微塵も思わない。
自身の才能、護衛の質、その両方に置いて勝っているのであれば、順序など些細な問題だ。
一つ前の者の名乗りが終わり、クラウディアはゆっくりとあえて時間をかけて立ち上がった。
「第三皇太子ラインハルト代理、クラウディアですの」
思わず、唾を飲み込む。
「【獣王】ベヘモット」
「────【
「…………!」
後ろで2人が小さくお辞儀をしているのを気配で感じて、クラウディアは胸が詰まる思いという概念を初めて実感した。
きっと彼は、クラウディアのためだけに時間と気力を費やしてこの短い期間で超級職の誉れを手に入れたのだろうから。
つい作法を忘れて後ろを振り向けば、同じくコチラを見返していたクラウディアの二人目の友人はニヤリと得意げに笑っていた。
あと名乗りの少し前くらいからベヘモットが心底ウザったそうな顔をしている。
愉快な気持ちはそのままに、本当に相性の悪い(むしろ良いのかもしれないが)2人の様子に顔を顰めた。
◆
■【神機工】ノーイ・デクステル
いやー、最高だったね!
僕が名乗った時のクラウディアと怪獣ヤマアラシの驚いた顔ったらないぜ。
わざわざ縛りを緩和してまで超級職を獲った甲斐があったってものである。
ちなみに就職クエストだが、一般的な生産系超級職らしいもので、レシピを使わずに与えられた工具と素材から最高の機体を作成せよというものだった。
このクエストは僕にとっては余り難しいと言うものではなかったため、全カットとなる。
言及すべき点がマジでない。
また、残念ながらその作成した機体は現実には持ち出せないようで、僕の就職クエスト突破用機体である【纏雷機 ウォーディン】君は手元にない……訳ではない。
なぜならクラウディアの会食に参加する前に外観だけ書いた設計図をタイク・ロビンソンに渡してレプリカとして出力してもらったからである。
我ながら良い感じのデザインにできていたため、現在はガレージの隅に飾られている。
「ま、性能的には自由に素材を使って作った機体の方が強いからなんとも言えないんだけども」
なにはともあれ就職クエストを無事に乗り越えられたのならばそれで良いのだ。
さて、ようやく無意味に長ったらしい食事会から帰宅し、着ていた正装たるスーツ(デザイン監修:タイク・ロビンソン)を脱ぎ捨て、繋ぎに着替えながら2人の表情を思い返す。
話は変わるが、タイク・ロビンソンが便利すぎる。
建物、機械、スーツのデザインが総じてめちゃくちゃ素晴らしいんだが、そろそろ僕も彼をデザイン担当として雇い入れることを考慮して良いかもしれない。3Dプリンターのエンブリオがバカクソ便利なのもあるし、1人分ぐらいなら給料を払えるぐらいの収入もある。
「トミルの作戦開始まで3日。超級職込みの今の僕でどこまで進めるか、だな……」
残る問題はコレだ。
制作方面は後述の通り飛躍的に向上しているが、僕自身の戦闘能力は圧倒的に足りないまま。色々と護身の手段を準備してはいるのだが……それでもなお足りない。
よって、エルブレイン君の機体の強化や【作業補助マニュピレーター】の改良など、行うべきことは無数にあるのだ。
超級職獲得後も稼働させ続けている【禁忌】により得られる経験値で、既に僕の合計レベルは580を超えている。
まぁ昨日から丸一日作成作業を続けていることになるのだから当たり前といえば当たり前だが、これってめちゃくちゃ効率のヤバいレベル上げなのではないだろうか。
「……や、莫大なエネルギーを賄うためにめちゃくちゃ金喰ってるから効率はそこそこか。ゲームじゃあお金で経験値を獲得するなんてそう珍しいことじゃないし」
だが、金を湯水のごとく使った甲斐はあった。
《マシン・クリエイション》のレベルEX到達と奥義の解放を知らせる通知を見てニマニマと口角が上がるのを自覚しつつ、気合を入れるため大きく伸びをする。
ちなみに、レベルが600を超えたらこの機体は一旦稼働停止させる予定だ。ま、流石にね。お金がいくらあっても足りなくなってしまう。
既に【禁忌】の遠隔起動装置は作成して腕につけた【作業補助マニュピレーター】に取り込んである。
ほんとこのマニュピレーター便利ぃ……。
それはともかく……ともかくだ。
「これでやりたかったことを全部実現できるんだ……!!」
新たな機体を作成するにあたってだが、僕が超級職を獲得することで最も変わることはなんだろうか?
はいシンキングタイム5秒。
5、4、3、2、1、タイムアップ。
というわけで解答……の前に、コレを見ていただきたい。
【精密作業補助機体:Mark Ⅲ】
装備制限:レベル500
装備補正:DEX15%
所有者設定:ノーイ・デクステル
形状:精密作業台
装備スキル:
《マシン・クリエイション+》
自身の所有するスキル《マシン・クリエイション》を強化するスキル。
この機体動作には所有者のDEXの70%が参照される。
コレは知っての通り、【精密作業補助機体:Mark III】の《看破》内容だが、この中で今重要なのは1点。
『装備制限:レベル500』
この部分だ。
……もうお分かりだろうか?
装備を作成するにあたって、この装備制限を設けることでより高い性能のスキルやステータス補助を設定することができる、という話だ。
そしてこの装備制限に置いて、たかがカンストでしかない500レベルの値と超級職を獲得している証である501レベルの値には天と地では済まないレベルの差が生まれることになる。
「装備制限を501にできるなら、これまでスキル性能の維持との兼ね合いで諦めてきた装備スキルの2種設定が可能になる……!!!」
一度【禁忌】の稼働を止め、【精密作業補助機体:Mark III】と必殺スキルを起動する。
「─────《
スーツにあわせて着けていた眼帯を剥ぎ取れば、普段なにも写していないその義眼に光が宿る。
超級職獲得によりDEXはさらに上昇している。
獲得前はエンブリオの補正込みで20000程度だったその数値は今や、30000近い数値に至った。
《マシン・クリエイション+》は70%参照だから実質20000ちょいだが、それでも元の数値である14000と比べればその差は明らかだろう。
「Mark Ⅳじゃ無粋だね。機体の名は…………【片目鬼の鉄床】」
読みはキュクロプス・アンヴィルって所だろうか。
「所有者設定:ノーイ・デクステル」
求める機能は2つ。
より高いDEX参照値の《マシン・クリエイション+》とさらなる性能の機体を作成するため、装備スキル付与の成功率に補正をかけるスキルだ。
スキルレベルEXとなった《マシン・クリエイション》がより高い精度で効果を発揮している。
「《マシン・ヴィジョン》、発動」
まだ、求める精度には程遠い。
必要な道筋を、必要な工程を完璧に掴むため、つい先程取得したばかりの【神機工】奥義を起動する……!
炎を移すためだけに生み出された義眼にスキル行使の光が宿り、手先がブレて見え始めた。
「想像以上だ! これならぁ……!!!!」
心は燃え、技術は炎を吹き、脳は冷徹に自分にできるラインを見極めている。
削り、擦り、焼き入れ、叩きつけ、冷却、削り、切断し、組み合わせていく。
各操作ごとにこの義眼は指が分裂するように先のヴィジョンを見せ、その操作が本当に正しいのかを教えてくれる。
これまでであれば諦めていたような、どうにも成功の未来が見えないプランは、《精緻》などのDEXを一次的に向上させるスキルを使用することで作業精度を上げて対応する。
「今までにないものが創れる……!!」
自分は今確実にフラグマンへと近づいている、その確信がある……!
先程まであったクラウディアと怪獣を驚かせたという喜びなど完全に脳から消え去り、ただ自分の思う通りに制作が進む高揚に身を委ねた。
「─────神の機械を創るものとして……!!」
────ドライフ皇国にて継承される特殊超級職【機皇】、その試作型超級職【神機工】の奥義がノーイ・デクステルに真に未来を見せ、急速に世界の歯車が回り始めた。
◆
【
装備制限:レベル501(超級職必須)
装備補正:DEX15%
所有者設定:ノーイ・デクステル
形状:精密作業台/金床
装備スキル:
《マシン・クリエイション+》
自身の所有するスキル《マシン・クリエイション》を強化するスキル。
この機体動作には所有者のDEXの100%が参照される。
《権能付与》
機械作成のスキル付与段階にて、追加で素材を投入することでその性能や方向性に影響を与えることができる。
精度は追加投入した素材と所有者のDEXを参照して決定される。
「ふふ、ふふふ、ふふふふふふ、次作る時は装備制限1000だな」
何度も、何度も、何度も、完璧な性能に仕上がったことを示すテキストを読み返す。
よくよく考えれば超級職獲得から会食、【片目鬼の金床】作成までノンストップだ。そりゃあ深夜テンションにもなろうと言うもの。
つい漏れ出てしまう高笑いを必死で抑え、これから生み出すであろう最高の機体達へと想いを馳せた。
まぁまずタイク・ロビンソン雇おう。あとエルブレイン君の機体強化。
うっひょ〜やりたいことが無限大だぁ〜〜〜。
・《マシン・ヴィジョン》
【神機工】の奥義。
特殊超級職【機皇】のスキルである《ロードマップ》の寿命を代償に求める未来に必要な工程を視るという効果から代償を取っ払い、ついでに対象を機械作成のみに絞ったスキル。
兵器開発/火力支援の役割としてはむしろ適性であるようにも思われる。
実はめちゃくちゃSPとMPを喰うため、連続使用には向いていない。