フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!!   作:雨傘なななな

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2話 青空ガレージ

■【機械工】ノーイ・デクステル

 

 結論から言うと、僕のガレージは天井に大穴が空いたことを除けば概ね無事だった。

 

「おう、俺のムスペルが爆発の指向性を咄嗟に上に向けてくれたからな。お前は吹き飛んだがガレージ自体は無事だ」

 

「それは……本当にありがとう!」

 

「いいよー!」

 

 ムスペル……メイデンの少女としゃがみ込むことで目線をあわせてお礼を言う。

 

「それと、エルブレイン君もありがとう」

 

「あん?」

 

 一通りガレージを見回した所、爆発の影響で色々と黒焦げしているものの建物をはじめとして多くの物品がその原型を保っている。そもそも貴重品はアイテムボックスにしまっているとはいえ、ガレージがこの程度の被害で済んでいるのはきっとエルブレイン君が消化系のアイテムを使用してくれたからだろう。

 彼のエンブリオからして、そういったアイテムを常備していることは想像に難くないからね。

 

「特になにもしてないし気にしなくて良いぜ」

 

 今回の失敗のせいで彼の依頼を達成できるのは少し先になるし、彼はきっとアイテムを使ってくれたし、そもそも爆発事故に巻き込まれたというのに、気まで遣ってくれる彼に改めて頭を下げて……

 

「それで、これが例の貴方を吹き飛ばしたという動力炉ですの?」

 

 そして、彼女の言葉によりその誠意は遮られることになった。

 うーん、まじで着いてくるとは思わなかったなクラウディア様……。まじでか……王族との縁が本当に意味のわからん形でできてしまった……。

 

「いらないこんな縁」

 

「あら、貴方、死罪になりたかったんですの? それは意外でしたわ!」

 

 聞こえないように呟いたのに聞いてるしコッチ見てにっこり笑ってるぅ〜怖すぎ〜!

 ハイ。僕が全面的に悪いです。緊張する機会が嬉しくないだけで死罪にしないでいただいたことは心からありがたいと思っていて……いや本当に……だから勘弁して下さい……。

 

「えぇ、えぇ! それで……この動力炉はどういった原理で?」

 

「聞いてどうす……いいえ、なんでもございません殿下。」

 

 改めてにっこりと笑顔を向けられたので仕方なく説明していく。

 説明自体はさっきもしたので省くが、要するにこれはフラグマン製の動力炉とは一切異なる新たなものであると言うことや、まぁ見ての通り失敗したこと、次回の設計では出力部に変更を加えたいことなどの概要を設計図と実物を元にツラツラと伝えていく。

 

「フムフム」

 

「それで、この魔力回路を改造して……」

 

「あら、それではこの回路が意味を失うのでなくて?」

 

「そ、そこまで理解を……!? そうですね、それを踏まえた魔力回路の設計図がコチラで、」

 

 設計図をガレージとは別に専用の部屋に置いていて良かった。爆発に巻き込まれてここまでの研究成果も吹き飛んでいたら監獄行きにならなくとも引退している所だ。まぁ爆発事故を見越して別で保存していた訳だけれど。

 

 天井に大穴が空いた、質素な部屋で彼女は熱心に僕の書いた設計図を見つめ、僕の言葉に耳を傾けている。

 

「こ、これは……!?」

 

「あっ、それは部外秘です。まだ研究段階なので」

 

「それは残念ですわ……」

 

 まぁ隠していた禁忌研究まで見られたがそれは仕方あるまい。アレの研究で死罪になるのであれば本望。大人しく監獄に入り……動力炉の世界を変える第一歩として設計図と設計思想をデンドロwiki編纂部にでも送りつけてやろう。

 

「ふーむ、大体満足しましたわ!」

 

 思ったよりも熱心だったクラウディア様は、3時間もの間僕の研究記録をこねくり回し解説を求め倒した後、ようやくそう言って大きな伸びをする。

 さーて肝心なのは僕の罪状についてなわけだけれど……。

 

「それは何よりです。それで……僕の罪は?」

 

「えぇ、私の権限でお咎めなしとしておきます!」

 

 おまかせをと胸を叩いた彼女に、近くで護衛をしていた数名の武官が大きく肩を落とした。

 

「貴方は間違いなく、ドライフ皇国の未来を変え得る存在だと私確信しましたの! それで、その……」

 

「?」

 

「貴方の名前を、教えてくれませんか?」

 

「あっ、あー、あー」

 

 そういえば名乗ってなかった。クラウディア様は対面してすぐに名乗っていたというのに。

 まさかこれも周囲の人達の不敬ポイントを稼いでいたのか……?

 

「僕は皇国所属のマスター、ノーイ・デクステルと申します」

 

「ふふ、ノーイ・デクステル、ノーイ・デクステル……ノーイさんとお呼びしても?」

 

「もちろんです。」

 

「ではノーイさん、私のことはクラウディアとお呼び下さいませ」

 

「………………へ?」

 

 …………………ん?

 

「クラウディアとお呼び下さい!」

 

「わ、え?、わ、わかりました……」

 

「敬語も公でない場所では不要ですわ! 私、ノーイさんとお友達になってみせます!」

 

「そう……頑張ってください?」

 

「敬語!」

 

 ビシッと鼻先に指を突きつけられた。強引な人である。

 

「頑張って……?」

 

「えぇ!!!」

 

 まじか、いや良いんだけれど、マジでか。小市民の僕に王族……じゃあないのか、皇族と友人になる器は正直ないんだけれど……。

 クラウディア様ことクラウディアは、なにが嬉しいのか先程までとは明らかに違う笑顔でニコニコと微笑み、最後に僕の頬を強く引っ張った後、また会いましょうと一言言い残して皇王宮へと帰っていった。

 

 うわー、穴空いた天井どうしよっかな。

 しばらく青空教室よろしく青空ガレージ生活か……?

 

 アイテムボックス内の残高を確認……うーん、火力発魔式動力炉の材料買うのにお金ほぼ使い切ったんだよね。材料は残ってるから新しく火力発魔式動力炉二式を作れるには作れるけれど……それをエルブレイン君に売って……材料買って……次の依頼受けて……どのタイミングで天井を直せば……!?

 

「つ、詰んだか……?」

 

「「どんまい」」

 

「………………………………え?」

 

 恐る恐る後ろを振り向く。

 打てば響くクラウディアへの動力炉の説明で完全にエルブレイン君の存在を忘れていた。なんとなく帰ってるかな〜とか思ってたけどまさか待ってたんだ……いや……怒ってるかな………?

 

「待ち時間長かったな〜」

 

「爆発事故の尻ぬぐいもしたよ!」

 

「完全に忘れてたよな〜」

 

「そもそも私達の依頼が先だったよ!」

 

「ていうか爆発のせいで俺達の依頼達成は先延ばしだよな〜」

 

 ッスーーーーーーーーーー

 

「その……まじですみません……」

 

「いやぁ? 良いんじゃないか?? 皇女様となにやら楽しそうにされていたそうで??? ノーイさんと呼んでいいですか?ですっけ????」

 

「すみません……」

 

 なんか今日僕謝ってばっかりだな。

 

「あー、今絶対違う事考えたよー!」

 

「だよなムスペル、俺もそう思うぜ」

 

「ねー!」

 

「大変申し訳なく……納期を決めていただければできるだけ早く二式をお届けするので……!!!」

 

「ん、まぁ、火力を高められるってのは分かった。納期はそっちができる最速で良いから完璧な仕上がりにしてくれ」

 

 え、エルブレイン君、いや、エルブレインさん……!!!

 

「金は払うぜ。こう見えて俺達はカンスト、第六形態のマスターだからな! 一億リルぐらいなら払える!」

 

「……言いにくいんだけど、火力式発魔動力炉を搭載したフルスクラッチのマジンギアの値段って二億リル近いよ」

 

「ぐっ……わかった! 予備のマジンギアも持ってる、一ヶ月で後一億リル稼ごう。だからノーイ、あんたは……」

 

「最高傑作を提出すると約束しましょう」

 

「よしっ、契約成立だ!」

 

 彼がこのガレージに依頼を持ちかけてきてから早6時間。

 既に日は沈み、皇都のティアン達は眠りにつき始めている中ではあるが……ようやく話は纏ったのだった。

 

 まさかこんなに忙しい一日になるとは、当然だけれどログインした時には想像もしてなかった。

 

「中々楽しい一日だったかな」

 

 コンコンと自分のエンブリオのある右目部を瞼の上から突きながらエルブレイン君達を見送った僕は、ガレージが急に広くなってしまったような感覚に首を傾げた後、クラウディアの説明のためあちこちに広げまくった設計図を片付けることにした。

 

 さーて、二式の出力問題はどうやって解決するべきか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり夜も更けきった頃。

 機械を動かす音が、金属を打つ音が、天井に空いた穴を抜けて周辺地域に響く。

 その音はたしかに騒音であるはずだが、周辺地域に住むティアン達にはその音の主の人柄も、その音に込められた楽しげな感情も聞こえていた。

 

 コーンコーンと澄んだ音にこれでもかと込められた感謝と喜びに、少しだけ目を覚ました者達は小さく笑って再び眠りについた。











・クラウディア・Lドライフ
アルティミアとの出会い以降かつ【獣王】との出会い以前という絶妙なタイミングでノーイ・デクステルに出会った。
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