フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!! 作:雨傘なななな
■【機械工】ノーイ・デクステル
【機械工】というJOBは、そもそも【技師】系統のJOBと【鍛冶師】系統のJOBの複合系上級職である。
炎と槌、スパナと歯車、どちらも扱うという中々に難しい道のりを乗り越えた者が就くことのできるそのJOBは、機械作成の道を行く者の中でも特に茨の道を選んだ者が就くのだが……。
「んー、やっぱり超級職欲しいよなぁ……」
コンコンと右目部の瞼を突きつつ、幾つもの設計図を前に思考にふける。
先日めでたく……めでたく……?友人となったクラウディアの兄は【機械王】の超級職に就いているし、知り合いではないが、【技師】系統の超級職も所有者が存在する。戦闘職であれば殺して奪うような発想もあるかもしれないが、少なくとも僕にその選択肢は存在しない。
と、言うわけで【機械工】の話の戻るが、この複合系上級職では未だ超級職が発見されていないのである。まぁ発見された時は=誰かがその超級職に就いた時でもあるため、むしろ僥倖と言えば僥倖なのかもしれないが。
これだけ機械的に発展した世界でありながら、戦闘系の超級職の数に比べて機械系の超級職の数が少なすぎると文句の一つも言いたくなるが、それを言っても現状は変わらない。
目の前に置かれた動力炉の設計図と各部パーツ材料は全身で僕ではその製作をするためのレベルが足りないことを主張している。
「くっ……どうあっても劣化か出力低下を避けられない……!」
【設計士】として書いた設計図に不備はない。正確には、あるのかもしれないが少なくとも僕とクラウディアの目には見つけられなかった。
彼女も明らかに機械についての知識を習熟して……ん? 彼女は確か【衝神】……槍系統の超級職だよな? そこにさらに政治の知識と機械の知識も持ち合わせてるのか……? 天才すぎない?
「今度会ったら勉強のコツでも聞いてみよう」
このノーイ・デクステルと友達になってみせる、と彼女は言った。
それが僕には欺瞞やその場の勢いの発言には見えなかったし、きっとどこかで相見えることだろう。
「っと、思考が逸れた。エンブリオとJOBスキルのシナジーか……超級職か……他の自己強化手段か……?」
着ている繋ぎは【技師】や【整備士】などのJOBに就く者達の御用達で、DEXの強化と機械整備スキルにバフをかける優れものだ。レベル制限も500とカンスト前提のもので、この国でこれ以上の装備を望む場合、結局UBMの討伐か超級職の獲得を求められることになる。
「どれも現実的じゃなさすぎるか」
「そうですの? 超級職の獲得自体はノーイさんであれば難しくないと思いますわよ?」
「んーーー、一ヶ月以内ってなるとね。【技師】も【整備士】も超級職埋まってるし」
「私の兄ですわね。譲って貰えるよう交渉することは……さすがに難しいですの」
「でしょうね。………。」
「えぇ。」
「………………。」
「………………………?」
「……………………………………。」
「………………………………………………………え?」
「うふふ、4日ぶりですわね! ノーイさん!」
まじかよさっき思い浮かべたクラウディア様……じゃない、クラウディアが後ろにいるんだけど……まさかここはホラー映画の世界だった?
「……殿下、皇王宮の方々に許可をとってこられたんですよね?」
「そんな寂しい呼び方しないでほしいですわ! ちなみに許可は取りましてよ!」
「そっか……じゃあいいや。で、超級職って一ヶ月で取れるもの?」
「断言はしかねますわ。取れる時は取れますし、取れない時は取れないものですもの」
まぁそうだよなぁ……お手軽とは言わずともスキルの精度を上げる手段があればいいんだけれど。
「…………ノーイさん、あまり素人が口を出すべきではないということは分かった上での進言をしても?」
「勿論。今は猫の手でも皇女の手でも借りたい所だから」
「この国の超級の一人、Mr.フランクリンを参考にされてはどうですか?」
Mr.フランクリン……【大教授】か。
確か大量のモンスターを生産して代わりに戦わせるみたいなスタイルだったはず。
最近話題になったのはマーシャルⅡの作成成功だっけか?
「彼は作成した生産補助モンスターを利用してマーシャルⅡを作成していたはずですの。生産補助、という分野については─────「倣える!」…………ですの」
最後の言葉を盗られたことで拗ねたような態度を見せるクラウディアに苦笑しつつ、彼女の手を握る。
「ありがとう!! いや、その、本当にありがとう!! 君は天才だ!!!!!!!」
めちゃくちゃに頭を撫でてやりたい気分だが、今の今まで作業中だった僕の手はお世辞にも綺麗とは言えないし、流石の僕とて女性の髪に気安く触れてはいけないことぐらいは心得ている。
「いえっ、その、いえいえっ、でもその、あのっ」
……………?
あっ、あー、手も握るのは良くないか。
「ごめん興奮してつい」
「いえいえいえっ、お友達のお役に立てたなら私も嬉しいですわ!」
急いで手を離して、クラウディアの言葉について吟味する。
機械製作補助用機械。
考えたこともなかったけれど、たしかに当然と言えば当然だ。現実でも機械で機械の部品を大量生産している。
この大量生産の部分を外して、精密作業に注目すれば……取るべき形は当然マニュピレーター。精密動作用にAI補助……は難しいな。思考操作にして僕のDEXを反映する形をとれば……
「あのー……? あっ、ダメですわねコレは。もう私の声は届かないパターンですわ」
うん、うん、行けそうだ。
製図台に紙を広げ、下書きを簡単に進めていく。
「マスターには珍しくもない話ですが、本当に整った顔をされていますわね。髪も男性でここまで綺麗に伸ばされる方はティアンにはほとんどいませんし……」
逆手でメモ帳を開いていくつかのアイディアを書き留め、利き手で設計図を書きながら、ボンヤリと必要素材と必要金額を予想する。
んー、安めで作ってもどうにか動力炉の方に着手できるか? そうやって妥協の末にできたものを僕自身が最高傑作だと言えるのならそれでも良かったかもな。無理だけど。
「むぅ、この目がズルいんですの。キラキラさせて……」
「金が……金は……どこかのマスターに融資を頼むか? クランになら……それこそ〈叡智の三角〉……ダメそうだ。交友関係狭いんだよな僕ってば。じゃあ……」
「あら?この流れは……」
他に案、他に案……そうだ!!!!
「クラウディア!」
「はぁ」
「どこかのティアンの技術者紹介してくれない!?」
「あれ、私に借りる流れじゃないんですの!?」
!?!?!?
「違うよ!? 友達なんでしょ?あれ、まだなんだっけ」
「えっ!? い、いえ、友達!友達ですの!」
「だよね? じゃあそんな一方的に利用するようなのはダメでしょ。」
「そ、そうですの……? ではティアンの技術者を紹介するのは利用に含まれませんの……???」
た、たしかに……!?
なんにも考えてなかった。それもダメか? なんかちょっとダメそうだな。辞めとこう。じゃあどうしようか。
紹介してもらったティアンの技術者に火力式動力炉の設計図を売ればそこそこのお金になるかなと思ったんだけれど……まぁべつに紹介してもわずとも自分で売り込みにいけばいっか。
「と言うわけで思い立ったが吉日! 行ってき「待って!?」────!?」
「お金、ですわね?」
「…………。………、……………うん。」
「ノーイさん、いいえ、ノーイ君が躊躇する理由も分かった上で、私から援助しましょう」
「それは、」
受け取れない、と僕が言葉を発するよりも先に、クラウディアが言葉を続ける。
「というか国から、ですわね。ノーイ君の能力と熱意にはそれだけの価値があると私が判断しましたの。他にも理由がありますが……確認があります」
「過分な評価だと感じはするけど、先に確認とやらを聞こうかな」
どこか不安げな、まだ友人になって1週間も経っていない人間に見せるには明らかに弱々しい目の光に困惑しつつも、彼女の次の言葉を待つ。
「…………もしもこの先なにかあった時、貴方は私の味方で居てくれますか?」
「そりゃあ勿論。都市ぐらいまでなら敵に回してもいいよ」
「あら、世界、とは言ってくれませんの?」
さーすがにこの付き合いの短さで君のために世界を敵に回しても良い……!みたいなことは言いづらいかなぁ……。
それはさておき、クラウディアは苦笑いと共に明るい未来への投資だと言って求めている素材の融通と仕事の斡旋をしてくれた。
言い方に含みがあるというか、今までの人生でしょっちゅう鈍感だと言われ続けてきた僕でも分かるような不穏な気配があったが……だからこそ、彼女の心意気を無駄にしてはならない、と思った。
なにかってなんだろうか。戦争とか? 皇族の後継者争いとか?
今代の皇王とそこそこ年配なんだったっけ?
◆
設計図、素材、工具を作業台の上に並べて、改めて求める機械作成補助専用機に求める能力値について考えていく。
そもそも僕の目的はレシピがなく、先々期文明の恩恵も受けない完全新規のマジンギアの作成である。
今回であればエルブレイン君の要望に応えた実戦レベルのワンオフ機体。
この作成にあたり、レシピを頼ることができないということはつまり……僕の無駄に高いDEXが意味をなしてくれない。
僕の義眼型エンブリオこと【炎視隻眼 キュクロープス】は、必殺スキル以外の一切のスキルを切り捨て、さらには必殺スキル使用時以外は右目として使うこともできないという生活への負荷すらかけて、その全てのリソースをDEX強化に費やしている。
これにより僕のDEX補正値は第六形態でありながらS。EXに至っていないことについては不満だがさておき、300%の補正を受けたDEXの最終的な値は2万近くに至っている。
特化型の超級職と遜色ない数値だが、エンブリオのリソースを全て込める価値があるかと言われれば微妙な所だ。そもそもレシピを使わないアイテム作成に置いて、DEXという値は何の役にも立たない。
そう、レシピを使わないアイテム作成に置いてせっかくここまで高めたDEXは何の役にも立たないのだ!
「それを解決する手段として補助機体、つまりDEXを反映して精密作業を行うようなスキルを持つマジンギアを作成する……!」
形状はマジンギア製作以外なんの機能も持たない直方体、内部に素材を取り込ませて僕が操作することで使用するような……!
「クラウディアから投資として貰った素材はこの機体3つ分、つまり!!!!」
一回目の作成でレベル1の【精密作業補助機体:Mark I】を!
二回目の作成でレベル2の【精密作業補助機体:Mark Ⅱ】を!!
三回目の作成でレベル3の【精密作業補助機体:Mark Ⅲ】を作り!!!
最高レベルまで高まったMark Ⅲと共にエルブレイン君の依頼機体を作成する!!!
多分クラウディアの思考では【精密作業補助機体】一機分と残りの素材で他の依頼を熟せという事だったのだろうが、僕は!僕の道を征く!!!!
「【Mark Ⅲ】では外装は大きめのマジンギア一体が入る分にする必要があるけれど、【Mark I】と【Mark Ⅱ】はそこそこの大きさで作って良し。必要部位はマニュピレーターとスキル補助機能、後精密動作用の固定/移動器具……!」
手順は何度も確認した。
設計図の不備もない。
僕の野望は止まらない……!
「────────《
必殺スキルが起動されたことにより普段は目を空けていてもなにも映していない右目が輝き、素材と設計図を捉えた。
◆
【精密作業補助機体:Mark I】
装備制限:レベル500
装備補正:DEX+10%
所有者設定:ノーイ・デクステル
形状:精密作業台
装備スキル:
《マシン・クリエイション+》
自身の所有するスキル《マシン・クリエイション》を強化するスキル。
この機体動作には所有者のDEXの30%が参照される。
「僕って………やっぱり天才の可能性があるな……」
【炎視隻眼 キュクロープス】
TYPE:ルール・アームズ
到達形態:Ⅵ
紋章:“炎を映す隻眼”
能力特性:DEX強化/機体作成
ステータス補正:DEXのみS
スキル:なし
必殺スキル:《神の武器に銘を与える》
(キュクロプース)
自身が機械アイテムを作成する際に起動することで、作成した機体に銘を自由に設定することができる。
また、銘の設定時に対象をしていることでスキル《専用装備》を与える事ができる。
《専用装備》を持つ機体は所有者以外の者が操作することはできず、所有者の意思に反して売買、強奪することはできない。