フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!!   作:雨傘なななな

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6話 皇国特殊任務兵士団

■【機械工】ノーイ・デクステル

 

「ラインハルト・C・ドライフ、ねぇ……」

 

 確か【機械王】の超級職に就いているクラウディアの兄だったはず。

 王位継承権については深く知らないが、第三だか第二だかの継承権を持っていたはずだ。

 

 手紙の内容を素直に受け取れば、【機械王】のJOBを本人が放棄して僕に譲ろう、その代わりに国仕えの技術者になれ的な意味なわけだが……クラウディアを通さない理由がなさすぎる。

 

 もしこれがクラウディアも知っての話ならば彼女は、「私が交渉で兄から【機械王】を頂けるように致しましたの!褒めて下さいまし!」みたいなことを直接言うと思うんだよな。さっきの根回しみたいな部分と違って【機械王】は誤魔化しようがない……。

 

「で、どうしよっっっかなぁ〜〜〜〜」

 

 面倒、ひたすらに面倒だ。

 当たり前だが、こんなもんどうせ王族の陰謀が関わっている。クラウディアと仲良い僕をさっさと排除しようって魂胆が丸見えだし……。

 いつもの癖で右目の義眼を瞼の上からコンコンと突きつつ思考の海に沈む。

 

「問題は狙いが僕なのか、クラウディアなのかってことなんだけど」

 

 僕、っていうかマスターを狙う理由ってなんだ?

 引退させられるぐらい強烈なトラウマを植え付けるとか、リスポーンする度に殺すとか、そういう本当にゲームを楽しめない状況にでもしないと世界から排除できない存在を……?

 あーいや、あるいは監獄に入れるみたいな手段もあるのか。そうだったそうだった。先日も入れられかけたんだったわはは。

 

「行かないって選択肢は……ん?」

 

 封筒の中にまだ何か入っている。

 軽く封筒を振って中身を全て作業台の上に出せば、そこに転がるのは……赤色の【ジェム】と魔力回路、わかりやすく残り生存時間を示す時計、

 

「ッ゙ア!? やらかしっ……!?!? そんな直接命狙いに来るのか!?」

 

 カチカチと音を立てて回路が作動している、【ジェム】自体は市販にも売っている《クリムゾン・スフィア》で間違いない、機構は間違いなく魔力を流すことでジェムを一定時間後に起動させるもの、窓から投げ捨て──住民被害が怖い、爆発したら僕は死ぬしガレージはもう一回吹き飛ぶ、となれば僕にできることは…………!

 

「クソッ、爆発まで後28……26秒だろ!? それだけあって解除できないとでも!?!?」

 

 指輪型アイテムボックスからベンチとドライバーを取り出し、切っても問題のないダミーの導線を取り除いていく。

 必要な操作はジェムの爆発タイミングを決定する部位から、爆発信号を送る導線を切り離すことのみ!

 

 残り18秒。

 

 魔力回路関係など新しく技術書が出る度に熟読している。ティアンはどうか知らないが、少なくともマスターには僕よりもこの分野に詳しい者なんていない……!!

 

「A、B……違う、これは信号を遅延させる導線。切ると同時に爆発するから……」

 

 残り12秒。

 

「よし少なくとも切ったら死ぬ導線は見分けがつく。何の意味もない回路は全部切除した。はい残り4箇所!」

 

 残り8秒。

 残った4本の導線はどれか一つを切れば他の導線を介してすぐさま信号を送り【ジェム】を爆発させる機構、その機構自体の根元をドライバーで取り除くことで、切られたことを伝える信号自体を送れなくしていく。

 ついでにその作業をした導線から除去。

 4本全部にこの作業ができればゲームセットだ。

 

 残り6、5、4………………

 

「間に合った!!!!!!!!!」

 

 相変わらずカチカチと機構に接続された時計部は音を立て続けているものの、それは爆発自体に寄与しない。

 

 1、0、-1、-2……問題なさそうだ。

 

 機構から切り離したことでひとまず無害化した《クリムゾン・スフィア》の【ジェム】を改めて持ち上げて確認する。

 《鑑定》……間違いなくただのジェムだな。

 

「まーーーじか、殺しに来た奴の所に謁見に行けってか……?」

 

 クラウディアに相談するのが手っ取り早いのだろうが、生憎僕から彼女に連絡する手段を持ち合わせていない。

 皇王宮に尋ねた所で教えてもらえる訳もなく。

 

 できることが少ない……!

 

 と、そこまで考えた所で、ガレージ内にパチパチという乾いた拍手音が響いた。

 

「おめでとうございます! 貴方様は我らが主の試験を乗り越えられた」

 

 返答したくもないが、今は少しでも情報が欲しい。

 ガレージの扉側へ身体を寄せながらも、仕方なく音のした方向を振り向きその姿を確認する。

 

「……………………誰だよ」

 

「あら。見覚えがないとは言わせませんよ?」

 

「クラウディアのとこの武官だな。まぁそうだろうな……お前単独で来たってことは、クラウディアの周囲を探るスパイだったって話か?」

 

「いいえ。」

 

 いいえ、いいえと来たかぁ……《真偽判定》にも反応なし。クラウディアの味方でないのはほぼ間違いないと思ってたんだけど……クラウディアがそもそも僕の味方じゃないって線を消すには付き合いが短すぎるか?

 

「私、皇国特務兵のポール・L・ロングランと申します」

 

 男はまるで貴族かなにかのような優雅な仕草でお辞儀をしつつ、その名を名乗って見せた。

 皇国特務兵……あるって噂は聞いたことあったけれど、本当に実在する部隊だったんだアレ。

 カルディナ、レジェンダリアの黒い噂と一緒に語られることが多い存在だが、この分じゃあそっちの2つも実在するかもな。闇ばっかりか?

 

 《看破》の情報も今この男が名乗った名前が間違っていないことを示している。が、驚くべきはそこではなくJOB欄だ。

 

 そこに綴られているのは、メインジョブ【変装王】の文字列。

 超級職、超級職かぁ……そりゃあ変装の王なんて潜入任務にはぴったりだろうけれど。

 

「僕にその存在とジョブを知られることは今後の仕事に支障を来すんじゃないのか?」

 

「いいえ?」

 

 まーたコレだよ。【ジェム】のこともある。温厚な僕ですら流石にムカついてきたな……。

 

「あっそ。で? どうすんのこっから」

 

「その手紙を履行させないことが私の使命。マスターは死ねば少なくとも3日は生き返りませんから。」

 

「明日の正午までに殺せばあんたの勝ちって話?」

 

 クラウディアの武官のソレだった外見が見たこともない女性のモノに代わり、かと思えば見たこともない壮年の男性のモノに代わった。

 

「私達の、ですね」

 

 その言葉を脳が認識すると同時に先程封筒から出てきた【ジェム】を床へと叩きつける。

 僕を殺しに来たのは目の前の特務兵一人ではない、生産職ですらないマスターにそこまで徹底するのか……!!!

 

「超級職一人でも過剰だろ!」

 

「否定させていただきましょう。貴方は充分に面倒な存在です」

 

 《クリムゾン・スフィア》が足元で爆発した。クソッ襲撃から2秒で【救命のブローチ】を使わされた。

 一ヶ月に2枚も使わされるとは余りにも酷い出費だが、特務兵は退避に1秒時間を使った! 扉は吹き飛んだ、街道に出れば戦闘職のマスターの1人や2人必ずいるはず、走れ走れ走れ!!!

 死んでも復活できるとは言え指名手配で監獄行きになってもその3日間でクラウディアが死んでも僕は後悔する!! 死ぬ気で生き延びねば!!

 

「そのステータスで逃げられるとお思いですか?」

 

「おもっ、わねぇよ!」

 

 振り向いた視界の端、特務兵こと【変装王】が余裕の表情でコチラを見ている。

 《看破》では合計レベルが500ちょうどだった。普段の任務では他のジョブをメインにして超級職を誤魔化しているのだろうが、【変装王】が名前からして直接戦闘力を担保しない以上、奴自身が僕を殺しに来たわけではない! 他の追手が見当たらないのが怖いけれど……時間を稼ぎさえすれば……!

 

 ガレージ前の街道に出た、まだ生きてる、ならば!

 

「誰か!!! 戦闘、職……は?」

 

 街には、普段の喧騒が全て欺瞞であったのかと錯覚するほどの静寂が広がっていた。

 

 現在時刻は昼前、生産職街であるこの場所に人通りが一切ないなんてことはあり得ない、全員殺した?根回し?避難訓練とか言って連れ出した? なんにせよまさか僕に一切気づかれず周辺住民やマスターを排除したっていうのか……?

 

「ふふふ、はじめまして」

 

 静かな、誰もいない道の先に、ポツンと一人の女が佇んでいる。

 

 間違いなく特務兵、《看破》は……ダメか。対策装備、それもかなり効果の高いものを隠し持ってるんだろうな。

 

「さっきのやつは超級職を隠しもしなかったけど……あんたは隠すのか? なんのために?」

 

「私は皇国特務兵の一人、トミル・L・ロングラン」

 

「…………ポンポン出てくるんだな、特務兵」

 

 さっきの【変装王】の身内か。そこは隠さないのね。どういう理由か分からないが、隠す情報と隠さない情報の違いが僕には分からないな。

 

「そもそも私達は特殊任務兵士団であって秘密部隊ではありませんから。……さて。それではスキル起動、《我こそ世界の理を定める者》」

 

 おい絶対超級職の奥義だろそんな物騒な名前のスキルを使うなよ生産職に!! そこらのカンストすらしてない【剣士】に斬られても死ぬよ!!

 

「現在私を中心とした半径100メテル内にいる者はその範囲を出られない」

 

「いやいやいやいやいやいや…………」

 

 自由にルールの付与を行う超級職……? スキル名とも一致するとは言え、そんな無法に過ぎる効果が許されるのか??

 

「言いたいことは分かります。でも消費が大きいですから。ゆえに、私は基本的に大規模な作戦時以外は出張りませんの」

 

「そうかよ!!!」

 

 なんの超級職かは知らないが、この効果と能力範囲で本人のステータスも高いなんてことはあり得ない、では僕を直接殺しに来るような特務兵が少なくとも他にもう一人いるはず!

 ていうか大規模な作戦にしか参加しない奴を運用してまで僕を殺したいのか!? なんのために!?

 

 周囲に新しい人影がいないか、それと例の【変装王】の動向を確認しつつ、少しずつ近づいてくる特務兵……名前忘れた、仮称女特務兵からなるべく距離を取る。

 

 手札、手札、手札、一枚はもう切った。戦闘に使える手札なんて持ってないけど……!?

 

「ふふふふふ、ちなみに今のスキル宣言、嘘なんです」

 

 歩きながら、心底楽しそうに彼女はそう嘯いた。

 

「は?」

 

「周辺に人が一人もいないのと合わせて、そういうスキルがあれば出来かねないと思いましたね?」

 

「いや……は??」

 

「マスターなのに! それなのに! 私に反則だ、なんて思いましたね!?」

 

 間違いなくイかれてると直感できるような恍惚の表情で女特務兵が叫ぶ。

 

「そう思ってほしくて! 私、わざわざ高い《看破》対策の装備を買ったんです! ふふ、うふふ、ふふふふ!!!」

 

「なんだお前……」

 

「改めて名乗ります! 私は【悪魔王】の特務兵、トミル・L・ロングラン!!」

 

 女特務兵が懐からアクセサリー型のアイテムを投げ捨てそう名乗った瞬間、《看破》と《真偽判定》がその宣言が今度こそ嘘ではないと告げる。

 【悪魔王】、【悪魔王】か。

 ローガンの【魔将軍】と似た系列の超級職だろうか。単体で強い悪魔を召喚することに特化した超級職的な……?

 って、なるわけないんだよな。

 

「いーーや、それも嘘だね」

 

「………………………はい?」

 

 瞬間、満面の笑みだった女特務兵の表情が張り付けたような薄気味の悪い悪意に塗れたものに変わる。

 

「こわっ」

 

「うふふ、ふふふ、なぜそうお思いに?」

 

「さっきのスキル宣言の時も《真偽判定》は反応しなかったからな。2回目の自己紹介の前に捨てたアイテムが《看破》対策なのは本当だけど、他に《真偽判定》対策のアイテムと追加で捨てたやつより効果の高い《看破》対策を持ってる」

 

「アはぁ!」

 

「それ笑い声?」

 

「我慢の限界! わたし、貴方を殺したいのかもぉ!!」

 

 懐から取り出された大鉈を振り上げ、女特務兵がコチラへと駆け出した。

 先程からずーーーっと理解不能に過ぎる状況に、もはや3週くらい回って脳みそがクリアだ。

 

 それと、

 

「あーーーーー、タイムアウトだよタイムアウト。特殊任務兵士団だっけ? 君等はなんの宛もなく逃げ惑う僕を楽しく追い詰めてるつもりだったんだろうけど、先に来たのは君等のタイムアウトだった」

 

「……? ………なるほど」

 

 動力炉がうねりを上げる音が聞こえている。

 手紙に同封されていた【ジェム】に気づいた時点で連絡は送っていた。彼は良い奴なのですぐ来てくれるんだろうなとは思っていたけれど、それにしても早い。

 

「わざわざ来ていただいて悪いねエルブレイン君!」

 

『まっっっかせろ!!!』

 

『まかせろー!』

 

「少し遊び過ぎたようですねぇ」

 

 ─────炎が灯る、街は赤く染まり、ヘルフレイムがうねりを上げ、巨大な盾が女を殴り飛ばした。











・【変装王】
幻術師系統+化粧師系統+役者系統複合超級職
より具体的には一定数以上の自身の姿を誤認させるスキルを取得することで就職クエストが解放される超級職。
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