フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!!   作:雨傘なななな

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7話 【獣戦鬼】

■【装甲操縦士】エルブレイン・ソーリス

 

「─────ノーイの奴からの緊急連絡?」

 

 【極炎炉 ヘルフレイム】の受け取り以降リルを稼ぐため、そして新機体に慣れるため毎日のようにフィールドを駆け回り戦闘を繰り返していは周囲を焼け野原にしていたエルブレインの下に、突如白紙の連絡が届いた。

 

 元よりなにかあれば助けに来るとは伝えていたが、中々に早い。

 少し待っても確認の連絡をしても追加の連絡はない。

 

「まーーー、なんかあったんだろうな」

 

 ノーイのガレージ以外で問題があったのであれば流石に場所も含めて連絡するだろう。

 

「…………とりあえず向かうか。何もなければ戻るだけ、何かあれば行って良かった、だ。」

 

「おー! 恩義に報いよー!」

 

「そんな言葉知ってんのかムスペル」

 

「当たり前だよ! 私、マスターと知識共有してるんだからね!」

 

 余計な一言を付け加えたことによるムスペルの小言を聞き流しつつ、町中を走る。

 生身の肉体が戦闘職でないことがもどかしいが、ここでマジンギアを出せば街を壊しすぎてしまう。

 

「………………てか、流石に人とすれ違わなすぎだな」

 

 既に5分ほどでノーイのガレージに到着する。

 クラウディア皇女殿下に不敬を働いたノーイを捕らえるために国が周辺地域に避難を呼びかけた、とか……?

 

「いーや、戦闘職相手ならともかく生産職相手なら令状持って家宅捜査、逮捕で良いはず」

 

 そこまで考えた時、爆発音が耳を劈いた。

 

「──っ! 間違いなくガレージの方向!」

 

「だね!」

 

 チンタラしてる場合じゃねぇ!

 キッチリ戦闘沙汰になってるならノーイにどうこうする能力はない、最速で駆け付ける!

 

「《喚起》【極炎炉 ヘルフレイム】!!!」

 

 街、建物や街路への被害を一旦後に回してヘルフレイムをアイテムボックス【ガレージ】から取り出し、搭乗する。

 

「極炎炉起動! ムスペル!」

 

「行くよー! 《炎熱増強》!」

 

 動力炉がうねりを上げて動き出し、その勢いをムスペルが加速する。

 後方に取り付けられたブースターを吹かせることでAGI的な加速ではなく物理的な加速により一刻も早く現場で駆けつける。

 

 走りなら5分かかる道は俺達なら30秒で駆け抜けられる……!

 

 この移動方法では街路、特に地面に敷き詰められたタイルへの損害が激しいが、きっとノーイの危機を救ったと聞いたクラウディア皇女殿下が代わりに支払ってくれる、そうに違いないというかそうであってくれ……!!

 

 駆け抜けた先、大鉈を振り被る軍服の女とノーイが向かい合っているのを発見、

 

『わざわざ来ていただいて悪いねエルブレイン君!!!』

 

「嬉しそうな顔しやがって、まっっっかせろ!!!」

 

「まかせろー!!」

 

『少し遊び過ぎたようですねぇ』

 

 俺の恩人に危害を加えたんだ、その分の駄賃は払ってもらうぜ不審者女!

 何かボソボソと残念そうな表情で言っているのを無視して、肘部ブースター起動、そのまま右腕を振り抜いた。

 

『…………ッ!!』

 

 大鉈で受けられた、硬さからしてJOBは恐らく近接戦闘系か。

 機体の位置をノーイを守れるように調整しつつも吹き飛んで建物へと激突した女から一切目……というかカメラを離すことなく相手のビルドを予想する。

 エンブリオは不明、大鉈を使う近接戦闘職ってだけじゃあ流石に絞りきれんな。

 うちのヘルフレイム君も格闘火力が高いわけじゃない。それこそAGI型のビルドだったとしても一撃で倒せはしない程度の物理火力だ。

 

「火炎放射が使いづらいのが難点だな。ノーイを巻き込むし建物も溶かしすぎる。」

 

『エルブレイン君! 彼女らは皇国特務兵を名乗っていた。現時点で判明している時点で2人、もう一人は僕のガレージから出てくる所は見ていないが《看破》には【変装王】のJOBが見えた!!』

 

「ナイス情報、つーか皇国特務兵……ティアンか!!」

 

『と、思われる! ブラフの可能性もあるが今のところ両名共にエンブリオや紋章は確認していない!』

 

「……分かった」

 

 相手はティアンの軍人ね……。

 エンブリオを持ってなくとも超級職なんて持ってるティアンは技術や戦術に秀でてるから厄介なんだよな。

 

『ふ、ふふふ、ふふふふ、遊び過ぎた代償は高く付きましたねぇ。それで、マジンギアに乗る貴方は彼を守りながら私達と戦えるつもりですか?』

 

「余裕だね」

 

『うふふふ! そうですかそうですか! では───』

 

「…………!!!!!!!」

 

 視界の端になにか映った。大鉈の女は動いていない、【変装王】とやらがノーイを……!?!?

 

 腕と後方のブースターを調整して吹かすことで最速で背後を振り返る、いない、というか、ノーイもいない……!

 

『うふふ! お粗末、というものですねぇ!』

 

「……………………やらかした」

 

『そうですねぇ! それで、どうされますかぁ?』

 

「………………………………とりあえずお前を拘束する」

 

 殺されていたとしても生き返ることは可能だ。

 コイツラの目的は知らんが、コイツを拘束して皇族とでも特務兵団とでもなんでも交渉して指名手配させなけりゃあ問題ない。

 もしまだ死んでいない場合でもコイツを拘束して人質交換に持ち込む。

 

「まだ余裕だなムスペル」

 

「だね! 本気で行く?」

 

「んん、そうだな。手加減しない。火炎放射器起動」

 

「おー!」

 

『火炎放射! なんて物騒な………………えっ?』

 

 ゴオ、という音共に《火炎増強》により強化を受けた炎が一瞬で周囲を地獄の様相へと変える。

 たった数秒で街路どころか建物の熱耐性の低い部分から燃え尽き、さらに数秒経てば金属で出来た柱なども崩れてゆく。

 

『………………これは想像以上』

 

「そんで、お前、熱への耐性は?」

 

『自信ないですねぇ……なんちって』

 

「そうか。」

 

 ティアンの強者、つーか軍人としてはおふざけが過ぎるな。

 大鉈という武器を選択している所も含めてだが、違和感がある。

 マスターならともかく、この程度の能力のやつがこの性格で特務兵なんてもんになれるか?

 もうちょいノーイと相談する時間があればその正体に迫れたんだろうが……ないもの強請りは時間の無駄だ。

 

『あちゃあ』

 

 特務兵女が消火用らしいアイテムを取り出すが、ムスペルの前にそんなアイテム使う前に燃え尽きる。

 奴本人とその装備がまだ灰にならずその生命や原型を保っているのは、ひとえにそのENDの値が高いからだ。

 

「投降するか、死ぬか、だ」

 

『いーえ? 逃げ出すという選択肢もありますわよね?』

 

「いーや、ないね。ムスペル、火力上げろ」

 

「おうさー!」

 

 動力炉がけたたましく唸りを上げ、さらにステータスを上昇させる。

 肘部ブースター点火、棒立ちの特務兵を盾で殴りつけ『ぐッ』、さらに背部ブースター起動、吹き飛ぶ特務兵に上から追い付く、振り下ろし『ガ、ァ゙!?』、機体の片側のみ肘部ブースターを起動することで回転を威力に上乗せし吹き飛ばし『ゴッ……!』、全ブースター点火機体の全体重を乗せたぶちかまし『グ!?』、床と盾に挟まれ押しつぶす。

 

「……………………………硬いなオイ」

 

『ふ、ぐ……ふふ、うふふ、しんどいですねぇ……』

 

 打撃威力は低いとは言え、ここまでのコンボは炎に耐性のない純竜クラスまでなら余裕で倒しきれるモノだったが……そもそも盾も床も壁も素手で触れれば火傷では済まない温度のはず。

 

『ですがぁ……ノーイ・デクステルさんを襲撃する以上、援軍として来かねない貴方のことも調査済みですよ……!』

 

「はン」

 

『貴方のそのヘルフレイムとか言う名前のマジンギア、そしてエンブリオには単純な火力以外の能力が一切ない! 炎、熱、打撃、それだけです、それだけなんです! そうですよねぇ……?』

 

 ニンマリ、と女が嗤う。

 

『私、貴方みたいな私に打つ手もない相手を甚振るのが好きでぇ……ふふふふ!』

 

「軍人向きの性格じゃあねぇな」

 

『ふっふふ、そうかもしれませんねぇ!』

 

 

 

 

 

■【機械工】ノーイ・デクステル

 

「最悪だ……」

 

 せっかくエルブレイン君に援軍に来てしまったというのに、クソみたいな油断で【変装王】の特務兵に拉致されてしまった。

 ここって本当にどこなんだろうか。

 奴らの目的からして皇王宮から離れた場所なんだろうとは思うが、それにしても数分程度しか移動していない。

 軽く藻掻いてみるが、両手は後ろでガッチリと手錠に嵌められていた。

 また、目の前では仮面をした軍服……意匠的に恐らく皇国特務兵の男が一切動くことなくコチラを監視しており、さらに脱出の難度を上昇させている。

 

「ですわねぇ」

 

「……………。」

 

 そしてさらに最悪なのは、横でクラウディアがなんの痛痒も感じていないような表情で同じく両手に手錠をかけられ拘束されていることだ。

 

「なーーーしてんだ」

 

「コッチのセリフですわ!? ノーイ君はいつの間に皇族と同様の扱いを受けるような重要人物になりまして!?」

 

「これのどこが皇族扱いなんだよ……。たしかクラウディアって戦闘系の超級職じゃなかった?」

 

 無理矢理取れるんじゃないのかと確認するも、彼女は顔を小さく横に振った。

 

「スキルが封じられていますの。手錠の効果……ではなさそうですが……」

 

「なんでそんな余裕なわけ??」

 

「それもコチラのセリフですわ!!」

 

 んー、僕側はそりゃあ余裕なんだよな。

 仮面の特務兵をどうするかは難しいが、既に手錠の確認は終わっており、1秒もあれば外せるのだ。

 ついでにクラウディアの方の手錠の構造が同様なものであることも確認しているため、5秒あれば外せる。

 

 計8秒と言った所だろうか。

 あとは戦闘だが、クラウディアは【衝神】。槍さえあればほとんどのティアンより強いだろう。槍さえあれば。

 

 …………壁に棒が置いてあるんだよな。時間稼ぎぐらいならアレでやってくれるだろう。

 

 つまり計画はこう。

①隙をついて手錠を外す

②クラウディアが壁の棒で時間稼ぎ

③どこかに置いてあるであろう僕の指輪型アイテムボックスを回収

④逃げる

 

 ………………………………ちょっと余裕なくなってきたな。

 指輪型アイテムボックスの中身が荒らされていないことを心から願うぐらいには。

 

「……まぁノーイ君の余裕については一旦置くとして、私の余裕の理由は簡単ですわ!」

 

「?」

 

「私、友達が三人いましてよ! アルティミア、ノーイ君、そして最近出会いました……」

 

 遠くで咆哮と悲鳴が聞こえた。

 爆発音、爆発音、爆発音……

 

「準超級のマスター! 【獣戦鬼】ベヘモットですわ!!」

 

 驚いたような動きで、仮面の特務兵が爆発音のした方へと顔を向け────はい手錠解除、「クラウディア!」

 

「えぇ!」

 

「なん────!!?」

 

 片手で自分の手錠を外し、そのまま流れるようにクラウディアの手錠を外す。

 なんの躊躇いもなく振り向いた仮面の特務兵に殴りかかったクラウディアにドン引きしつつも先程見つけてあった壁の棒を投げ渡し、離脱する。

 

 エルブレイン君の時で気付いたんだが、僕が現場にいた所で自体は何も解決しな…………………んえっ

 

「nf」

 

 一際大きな爆発音の直後、巨大な怪獣が僕らを閉じ込めていた建物の壁と屋根を粉々に吹き飛ばして登場した。

 

「ベヘモット!!」

 

『safe?』

 

「えぇ!! 助かりましたわ!」

 

 クラウディアと怪獣がその体格差をないかのように包容を交わし、その怪獣の足元で仮面の特務兵がグリグリと地面に踏みつけられて悶絶しているわけだが……なによりも僕が言いたいことは2つ。

 

「せっかく脱出のために扉の鍵開けたんですけど!?」

 

 ………だ!

 

『…………………』

 

「それに、適当に暴れて建物のどっかにある僕のアイテムボックスが壊れてたらどうするんだよ!」

 

 …………………だ!

 

『細かいこと気にしない、私怪獣だよ。がおー』

 

「細かく、ない!」

 

『……………クラウディア、コレ、友達?』

 

「そうですわ!! 2人は気は合わないだろうと思っていましたの!」

 

 じゃあ引き会わせるなよと思わなくもないが、今は緊急自体。この怪獣がいなければ脱出には苦労しただろうし、今は忘れよう。というかアイテムボックスの捜索が先だ。

 ……なんか見るからにコッチを舐め腐った目で見てくるベヘモットとやらに叛意はあるが、今は忘れよう。そう、今は、忘れよう。

 

「…………おっけーおっけー、じゃあベヘモットさん、この建物内を捜索するんで護衛を頼んでもいいですか?」

 

『駄目。クラウディアをお城に届けるから』

 

「……………………僕は?」

 

『……………………Nice Fight』

 

 で、クラウディアを抱えた怪獣は仮面の特務兵にだけトドメを刺してどっかに走っていきましたとさ。ちゃんちゃん。

 ………………気が合わねぇなあの怪獣……!!!!!











・ベヘモット
ノーイ・デクステルが【極炎炉 ヘルフレイム】の作成にかかりきりになっていた一ヶ月の間、遊びに行っても気付かれすらしないことがあったクラウディア・L・ドライフが傷心中に仲良くなったマスター。
ノーイ・デクステルと相性が悪い。
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