フラグマン製機体に!!!勝ちたい!!!!!! 作:雨傘なななな
■【機械工】ノーイ・デクステル
「……………【悪魔王】トミル・L・ロングランは私の血縁関係ではありません」
【変装王】ことポール・L・ロングランがそう言葉を紡ぐ。
「連絡がついていない特務兵か。」
「そうです。私には別に妹がいるのですが、あの女からの連絡が途絶えた直後、その妹から救援要請がありました」
人質だろうな。
【変装王】の力を得るためであればある程度倫理観を捨てる者がいることなど想像に難くない。
「トミル・L・ロングランは私の妹の名前です。けれど、あの子のことは組織にも隠していたので……知っている訳がないんです」
しかし、現にあの【悪魔王】とやらはその名を名乗った。
「だからあの女が妹の名前を口にした時点で私の中で組織への猜疑が生まれたわけです」
「ああ。それで【悪魔王】の登場以降、僕を攫うまで手を出してこなかったわけか」
「ついでに言えば、貴方への勧誘も少し考えていました。ジェムの起爆装置解除の時点で実力は知っていましたし」
指輪型アイテムボックスが手渡される。
「それと、こちらのアイテムボックスも。貴方の【精密作業補助機体:Mark III】やその他の素材類が収められています」
「マジで!?!?」
百%壊されてると考えてたから有難すぎる……!
いっちばん凹んでた部分ですからね、【変装王】への好感度が若干上がったわ!
「改めまして、どう動くかはもう少し情報を集めなければ決められないため、契約内容は確定出来ませんが……少なくともコレが私の理由です」
「僕の役目は?」
「…………できればクラウディア皇女殿下との繋がりを利用できれば最上ですが、貴方個人には純粋に私の協力者としての立場を求めます。」
「ふーーーーん」
共に策を考え、共に身体を張って戦って欲しい、と。
あって一日も経ってない奴に求めるには重すぎる内容だが、できる範囲かつあまり説明時間のない中で最大限誠意を込めた内容であるようにも思う。
と、いうことを踏まえ、僕の出すべき結論は……
「クラウディアは多分無理。僕個人は出来る範囲で協力しよう」
「! では……っ、え!?」
ドカン、と微妙に聞き覚えのある破壊音と間の抜けた咆哮が轟く。
うーん絶対アイツじゃん。さては僕を置いてけぼりにしたことでクラウディアに叱られたな。
『ガオー、クラウディアを送り届けた私が戻ってきたよ』
その声と共に、僕と【変装王】がいる部屋の扉部分が破壊される。
「怪獣野郎はさぁ……」
『あと2分で私は小さくなるけど、逃げ切れるの? がおー』
「んー、まぁ今味方にしたこの人がいればいけそう」
【変装王】に爪を向けかけた怪獣に彼女が味方であることとある程度有能であることと問題なく帰れそうである旨を伝えれば、当の怪獣はめちゃくちゃ見下した視線の末に納得したらしい。
小さく頷いてまた暴れ周りに戻っていった。
『貴方が死ぬとクラウディアが悲しむからね、へなちょこなんだから』
「あーーっそ。ま、クラウディア助けてくれてありがとね!」
「…………………ok,and good lack」
「あいあい」
英語かつ小声かつ早口でそういった怪獣があの巨体からは想像もできないような動きで風のようにどこかへ消えた。
あー、どうやらまだ敵対者がそこそこ残っていたらしい。
あちこちから響く悲鳴を聞き流……そういえば。
「アレに妹さんが巻き込まれる可能性はないか?」
僕と怪獣の会話にはいれず目を白黒させていた【変装王】が、僕の声かけを受けてハッとしたように動き出した。
「大丈夫です。【悪魔王】も【執筆王】も既にこんな拠点にはいません、行きましょう!」
「はぁい」
◆
と、言うわけで現在クラウディアの用意した皇都の各地にある隠れ家にて集合中です。
メンバーは怪獣(ヤマアラシ)、僕、【変装王】、クラウディア、見ず知らずの女性、である。
変なメンバー……。
「ノーイ君が無事で良かったですわ!」
「ウンウン、アリガトー」
「むぅ! ノーイ君はいっっっつもこうなんですわ!」
会話を雑に流して、アイテムボックスから【精密作業補助機体:Mark III】とその他いくつかの素材を取り出して、元より無数に書き連ねていた設計図と見比べて構想を練る。
求める機体は簡単、僕の身を守れるものだ。
今、この先どうなるにしても僕も【変装王】も直接戦闘力に欠ける。何かある度にクラウディアや怪獣に頼るのも癪だ。
ドローン、無人操作機体、遠隔操作機体、ボタン一つで呼び出せる自動操縦型のマジンギア、背中に背負う形式のマルチツール、色々と案はあるが、現状の素材で作れる範囲を検討しなくては。
「と、とりあえずノーイ君はさておき自己紹介をしておきましょう。私はクラウディア・L・ドライフですわ!」
「……………ok」
「コチラはベヘモット、私はレヴィですね」
「私はトミル・L・ロングラン。立場は……今は派閥なしの皇国特殊任務兵団の構成員です」
「特務兵! 私派閥の特務兵はいませんから……憧れますわ!」
ちなみにこちらの追加戦力として先程エルブレイン君にこの場所を連絡している。
いくつか追加で依頼もしたため少し時間がかかるだろうが、どうやら彼も乗り気でこちらの味方をしてくれるらしい。
あっ。
「【変装王】、当初の目的は【悪魔王】の追跡で良いわけ?」
「トミル、と呼んでもらえれば。そうですね……手がかりもあるので、作戦さえあればそこまで難度は高くならないかと」
「……おっけー、トミルね。手がかりって?」
「コレを」
多分何らかの物品をコチラに見せているのだろうが、設計図から1ミリも目を離すことなく肩をすくめて見せておく。
「……………………これは、あの【悪魔王】の狙っているUBMを封印している部屋の鍵です」
「………………………ん?」
さすがに設計図から目を離した。UBM!?!?
「恐らく、あの女は私の妹の身柄とこの鍵の取引を狙っている。妹は取り返したいけれど、あの女をUBMに会わせるわけには行かない」
「なるほどね」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいます!? 今UBMと言いました!?」
会話を静観していたクラウディアが戸惑ったように声を上げる。
UBMは確かに珍しく、重要情報だが、それにしても皇族たる彼女のもとにはある程度情報が集まってくると思うのだが。
「うん」
「……………どちらに?」
「詳しい場所は言えません。が、皇都から直通の地下通路があります」
「………………聞いた話と一致しますわね。まさかこんな所で行方不明のUBM情報に出会うとは」
「討伐報酬は、協力してくれるのであればノーイ・デクステル、貴方に譲ってもいいと思っています」
「え、いらんけど」
「そう、UBM特典は希少価値も武具としての価値も高い、今回の依頼の報酬として…………え?」
「え?」
いるわけないでしょ。僕生産職。自分で作るわそんなもん。
さて、設計図についてなのだが、概ね方向性は決まった。
今後パーティー入りしてくれるエルブレイン君は継戦能力の優れた存在であることから、僕に求められるのは火力と臨時的な身を守る能力……………では、ない。
「えーっと、僕今から集中するからよろしくね」
「…………………分かりましたわ」
「…………………………はい」
「…………………kk」
「調子に乗るなよ、とベヘモットが」
3人と一匹が呆れたような視線を向けてくるのを完全に無視して、各素材と【精密作業補助機体:Mark III】へと向き合う。
「─────《神の武器に銘を与える》」
必殺スキル起動。
【精密作業補助機体:Mark III】が稼働音を響かせ、僕のDEXを反映する。
「この機体の銘は……【作業補助マニュピレーター】。」
火力も、身を守る力も全ては後付けだ。
僕専用の、どこであろうと使える、機械操作や機械作成の補助となる装備が欲しい。
言うなれば特典武具の工具が欲しい。
それを先程の宣言通り自分の力で手に入れてみせる。
「所有者設定:ノーイ・デクステル」
義眼の右目が熱を伴い、炎を写し出している。
後付けの願いなどどうでも良い。僕はただ、最高の機体を作るために必要な道のりを歩くだけだ。
……そういう意味では【機械王】は惜しいものだが、友人の兄を殺してまで欲しくはない。【機械工】のJOBも気に入っているのだから。
駆動音と共に、今まで作ってきた機体達に比べて遥かに小さな、片腕に取り付けられる程度のサイズにするべく素材を加工していく。
マニュピレーターは2本。欲しいスキルは……《作業補助》《専用装備》の2つのみだ。
欲を言えば格納機能も欲しいが、そちらは機体自体にアイテムボックスを仕込むことで解決する。
「形状は腕輪型、必要な時にマニュピレーターを引き出す方向性で……魔力式銃器を支えられる程度の耐久性と駆動性、補助性能があれば……」
先程頂いてきた血に濡れた魔力式銃器2丁を参考にしてその強度を確認、アイテムボックスへの格納機能よし、あとは、
「あ」
作業の合間に銃器のついでに取り出した手紙と亡くなっていた皇国兵士らしき人達の腕章をクラウディアの方へと渡し、作業に戻る。
危ない危ない、クラウディアとはいつ遭遇するか分からない以上はやめに渡しておくに越したことはないのだ。
「えっ!?!?!?」
クラウディアは僕が作業を中断したことに対してか、謎の手紙に対してか、驚きの声を上げているが一旦スルー。
指輪型アイテムボックスからハンマーを取り出し強度確認。問題なし。
マニュピレーターは腕のように働くものが1本、工具を付け替えて使用するものが1本の構成にしたい。
できればアイテムボックスの格納機能とその付随する工具も機体自体に搭載する形で……。
「レベル制限付与、動力炉未搭載の魔力式、魔術への防御コーティング……完璧!!!!」
1時間程の作業を経て、ようやく機体が完成した。
「よっっっし……!」
と、いうわけで綺麗に小型のアイテムボックスを宝石のように設えた腕輪型機体が完成した。
マジンギアと呼ぶにはあまりに様々な要素が不足した物だが、これでも【機械工】のスキルが発動した以上マジンギア……とはならないか。別に《マシン・クリエイション》も《マシン・クリエイション+》もマジンギア作成専用スキルじゃあないしね。
【作業補助マニュピレーター】
装備制限:レベル500
装備補正:なし
所有者設定:ノーイ・デクステル
形状:腕輪型(展開時、腕全体を覆う形状になる)
装備スキル:
《補助腕》
魔力を込めることで自由にマニュピレーターを稼働させられる。
1秒ごとに一定の魔力を要求する他、その作業精度は本人の技量に基準する。
「んーーーーー完璧!」
ガシャガシャとマニュピレーターを出したり戻したりしつつ、なにやら僕の作業中に相談していたらしいクラウディアとトミルがコチラを急かすように見つめている。
「遅いですわ!」
「まぁ……私は構わないけれど、皇族を待たせるのはどうかと思います」
「そう? ごめんね。必要だったから」
展開した腕に魔力式銃器を持たせたり工具を持たせたりマルチツールを展開させたりしてみる。
これで次捕らえられたとしてもコイツを展開するだけで自分と誰かの手錠を一瞬で外せるはず。技量が僕に基準するってのもありがたい。
「………魔力封じられたらダメなのがネックだな。自爪とかにもなにかツール仕込もうか」
「一旦こちらの話をしてもよろしいですか?」
おーっと、めちゃくちゃジト目のクラウディアがコッチ見てる。今は話を聞いたほうが良い、と。
「どーぞ」
「作業中に、ノーイ君に私の兄から届いたという手紙は読みましたの。それと……」
「私の目的についても話しました」
「そうなんだ。」
「事情も知らずに巻き込まれることが確定した俺達にも一言欲しい所だな」「欲しい所だー!」
あっ、エルブレイン君いる。いつのまに。
「ありがとう?」
「いいってことよ」「ことよー!」
「元気だなぁ……」
ほら二人とも、後ろでまたクラウディアがジト目になってるから。
「分かっているとは思いますが、私とベヘモットは協力出来かねますの。皇位継承についての問題はデリケートですから。」
「あっ、怪獣の方もなんだ」
「当然でしょ、機械屋さん。私は、クラウディアの友達」
「なーるほど」
つまり個人的に依頼する分にはおっけー、と。報酬次第かな。
「ですが私はノーイ君の友達ですから、見えない範囲での協力は可能です」
さっすが友達だぜ。
「主に情報や活動拠点の提供、ノーイ君に関しては素材の融通ですわ」
「素材も!? それは……いやぁ……」
さっすがに申し訳なさが勝つんだぜ。
「兄の【機械王】はまだ譲れませんから、その罪滅ぼしですわ。それと、報酬としてオーダーがありまして」
罪滅ぼし……?
「ま、罪滅ぼし云々は兎も角オーダーは内容次第かも。あんまし余裕ないクエストになりそうだし」
「えぇ。オーダーの内容はズバリ! 今回の事件を起こした黒幕が誰なのかを突き止めることですわ!」
「……なるほどね」
黒幕……つまりクラウディアの兄であるラインハルト・C・ドライフ殺害計画を建てた者が誰かという話かな。
恐らく、というか間違いなく皇位継承戦に向けた暗殺計画である以上、その黒幕は皇太子及びその周辺人物に限られる。その情報は必須となるだろう。
そしてそれはつまり、
「必要なのは誰か、ではなく、その誰か追い落としうる証拠なわけだ」
「そうなりますわ!」
「おっけー、やるだけやろう」
作ったばかりの腕輪型マニュピレーターを撫でて頷く。
………やっぱそこの怪獣貸してくれない???
やることの難度的に必須だと思うんですが。
今後の行方に暗雲立ち込める中、無言のトミルから渡されたメモが母国の言語へと変換されていく。
【クエスト【探し人/討伐──皇族暗殺事件黒幕 難易度:十】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
「────クエストスタートってわけだ」
・組織について
ノーイ・デクステルは作業中/あんまり興味がなかったため聞き逃したが、皇国特殊任務兵士団の内部組織。
特務兵各自に第一皇子、第二皇子、第三皇子と派閥があるが、その中のどれかの下請けとしてグレーな任務を行なっていた。
超級職かカンストのティアンで構成しているが、彼ら自身は出自などに理由があってここに組み込まれていることが多く、リスク回避のためもありこの組織がどの派閥に属していたのかを知らされていない。
【変装王】はその超級職の利便性とグレーな任務への適性の高さからここに組み込まれた。
ベヘモット及び第三者により壊滅済みだが、【悪魔王】を始めとした一部メンバーは生き延びた。