冷笑なんてぶっ飛ばせ!   作:リアル充実

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3話での綾小路とオリ主の会話なのですが、大雑把な感じになってしまったので、少しセリフを足しました。後々から申し訳ないです!


増える連絡先!

 

 

「ねえ、本当に大丈夫……?」

 

 キーンコーンカーンコーン、と昼休みのチャイムが鳴り響くと同時に、隣の席から心配そうな声が降ってきた。声をかけてくれたのは、物静かなクラスメイトの桜井湊だ。

 

「うん……余裕余裕……」

 

「それはどう見ても余裕ではないよね……?」

 

 上半身を起こそうとするも全く力が入らず、情けない声を漏らしながら再び机に突っ伏す。昨日の筋肉痛が今日になってピークを迎えており、全身がガチガチだ。授業中は先生の話を真剣に聞こうと必死に背筋を伸ばしていたけれど、内心は限界だった。

 

「はい、これ。チョコレート。食べたら少しは元気になるかも」

 

「わぁ、チョコレート……! ありがとう桜井…」

 

「フフッ、湊でいいよ」

 

 湊がくれた一口チョコを剥いて口に放り込む。甘さが疲れた体中に染み渡って、少しだけ元気が湧いてくる気がした。さて、この筋肉痛を治すためにも、食堂でしっかりお昼ご飯を食べて栄養をとろう。

 

「湊、俺これから食堂に行くんだけど、一緒に行こうよ!」

 

「あー……ごめんね。俺、購買のパンをもう買って食べちゃったんだ……」

 

 え? もう食べたの? と疑問に思っていると、彼の机から惣菜パンの空き袋があるのを見つけた。

 

「駄目だよ湊! パンだけじゃ栄養が偏ってる! 食堂でバランス良くしっかり食べるべきだよ!」

 

「そ、それもそうだね……」

 

 俺があまりにも熱心に説得したせいで、湊は少し圧倒されたように目を丸くしていた。だけど、栄養の偏りは大敵だ。まだ高校生で育ち盛りなのだから、しっかりと体を労わらなくちゃ。

 

「次は一緒に食堂に行こうね! じゃあ、俺行ってくる!」

 

「うん、ありがとう。じゃあ次の機会にね。あっ、授業に遅れないように気をつけて」

 

______________________

 

 

「うわぁ……! 凄いメニューの数……! ラーメンに、ハンバーグに……ん?」

 

 食堂の券売機に前に立ち、メニューを選んでいると、驚きのメニューを発見して目を輝かせた。『山菜定食 プライベートポイント:0pt』である。 毎日これを食べれば、今月支給された10万ポイントを全部、別の楽しいことに使えるではないか、そう判断すると、俺は迷わず山菜定食の食券を購入する。

 

(よし、俺これにしよう!)

 

 数分後。席に着くと、受け取った山菜定食をまじまじと見つめた。お味噌汁のスープは向こう側が透けて見えるほど透明で、薄っぺらいワカメが数切れ浮いている。おかずも、申し訳程度に盛られた味の薄そうな山菜だけという、とってもシンプルな内容だった。0円とはいえ、何か……適当すぎないか?

 

「……うん!……うん!……」

 

 とりあえず一口食べてみる。……なるほど! 味もとってもシンプルだ! というか、お湯に近いかもしれない!不味……いやいや、作ってくれたキッチンのスタッフさんに失礼だ! これは美味しい! 誰がなんと言おうと、美味しい!

 

「……次は、普通のメニューにしよう。」

 

 悲しいことに、たった二口目で味に飽きてしまった。決して不味くはない。不味くはないけれど……箸が進まない。どう処理するか、お水で流し込んで無理矢理食べるべきか……と真剣に頭を抱えて長考していると、後ろから明るく爽やかな声が響いた。

 

「あ、やっぱり! 水瀬くんだよね?昨日ぶり! もし良かったら、隣の席いいかな?」

 

 振り返ると、入学式ぶりのピンク髪の美少女――1年Bクラスの一之瀬帆波が立っていた。相変わらず、周りの空気がパッと明るくなるような眩しい笑顔だ。

 

「一之瀬!昨日ぶりだね! もちろん、全然構わないよ!」

 

 一之瀬がトレイを持って隣に座ると、俺の目の前にある山菜定食を見て、興味津々に質問をしてきた。

 

「ねえねえ、それって美味しい? 0ポイントだからちょっと気になってたんだけど、怖くて手が出せなかったんだよね……」

 

「うん。まあ。美味しい……よ?」

 

 限界の作り笑いと、引きつった声で返事をする。

 

「アハハ! 嘘が隠しきれてないよ水瀬くん! 無理はしないでね!」

 

 一之瀬はお腹を抱えて楽しそうに笑った。友達がこうして笑ってくれると、不思議とこっちまで嬉しくなってくる。よし頑張って食べるか。

 

「ところで水瀬くん、Aクラスだよね?今朝、階段で寝転んでいた生徒がAクラスに運ばれたって聞いたけど本当? Bクラスでちょっとした騒ぎになってたんだよ」

 

「ゴホッ、ゴホッ!?」

 

「わわっ、大丈夫!? お水飲んで、お水!」

 

 あまりにもタイムリーで身に覚えのある内容に、お味噌汁を喉に詰まらせて激しくむせてしまう。一之瀬が背中を叩きながら、水を差し出してきた。優しさがしみる…。

 

「それ……実は、俺なんだ……」

 

「へ?」

 

「ええっ!? あれ、水瀬くんだったの!?」

 

「うぅ……はい……恥ずかしい…」

 

「えっと……まあ、元気出して! 噂なんて、ほとぼりが冷めればみんなすぐに忘れちゃうよ!」

 

 いろんなクラスの人と仲良くしたいとは考えていたけれど、こんな情けない理由で有名になるのは本意じゃない。しばらくは目立たないように、静かに過ごそう。

 

「あ、そうだ。せっかくこうしてまた会えたんだし、もし良かったら連絡先交換しない? 他クラス同士だけど、みんなで仲良く協力できたら良いなって思って!」

 

「えっ、連絡先!? 嬉しいよ、ぜひ交換しよう!」

 

 俺は喜んで端末を取り出した。ピピッ、と通信を終えて自分の連絡先リストを見ると、そこに一之瀬の名前が加わっていた。どんどん友達が増えていく実感が湧いて、大満足だ。

 その後、昼休み終了のチャイムが鳴ると、俺は一之瀬さんに元気に手を振り、急いで教室へと戻るのであった。

 

_______________________

 

 あっという間に放課後。なんとか激痛の一日を乗り越えた。今日は寮に戻ったら早く寝て筋肉痛を治そう。

教室を出る前、俺はクラスの皆に向かって大きく声を張り上げた。

 

「みんな、お疲れ様! また明日ねー!」

 

 すると、Aクラスの面々は一瞬ギョッとした目でこちらを見て、完全に固まってしまった。……あれ? 何か変なことをしてしまっただろうか?

 

「……あ、あぁ……またな、水瀬」

「お、おう、また明日……」

「またねー……」

 

「?」

 

 数秒遅れて、皆どこか恐る恐るといった様子で、パラパラと返事をし、困惑しながら手を振っている。そうか、Aクラスのあの静かで厳格な空気の中で、いきなり大声で挨拶するのはちょっと浮いていたかもしれない、と少し反省しながら教室の扉を閉めた。

 

 パタン、と扉が閉まった後の教室内。

 

「なぁ、あいつ。確か…水瀬だよな?」

「なんか、緊張感ないっていうか……元気な奴だな、あいつ……」

 

 Aクラスの中で、数人の生徒が呆れたように、けれど、どこか毒気を抜かれたように小さく笑い合っていた。

 

_________________

 

 玄関ホールに到着すると、ガラスドアの前で、バスケットボールを小脇に抱えてキョロキョロと周りを見渡している赤髪の少年がいた。昨日、気まずい別れ方をしてしまったDクラスの須藤だ。

 

「須藤?」

 

「あっ!……おう、水瀬 か、昨日、ぶり、だな……」

 

 須藤は、めちゃくちゃ気まずそうに顔を背け、首の後ろをごりごりと掻きながら、何を言えばいいか分からないといった様子でこちらに近づいてきた。

 

「……おい、水瀬。……昨日は、その……悪かったな。俺、カッとなると周りが見えなくなるんだよ、昨日…寮に帰ってから、その、俺バカだなって…」

 

「……! うん、大丈夫だよ須藤!」

 

 嬉しくて、笑顔が溢れてしまう。俺だって聖人君子じゃない。昨日の突き放すような彼の態度には少し思うところもあったし、もし次会った時も無視されたらどうしようかと内心不安だったけれど、杞憂に終わって、とても良かった。それにしても、ちゃんと謝ってくれるなんて。昨日練習していてわかったけど、やはり根は熱くて良い奴だ。

 

「……そ、そうか! サンキューな、水瀬!実はよ、今日綾小路の奴に捕まってさ。水瀬がお前のことを心配してたぞって言われたんだよ」

 

「綾小路が?」

 

 聞くところによると、綾小路が須藤に声をかけて、「ちゃんと水瀬と話せ」と促してくれたらしい。静かだけど、なんて優しい人なんだろう。ますます彼には、ちゃんとしたお礼をしなくてはいけなくなった。

 

 

「よしっ!なんとか一件落着だね! 早速、バスケの練習をしよう!」

 

 俺の言葉を聞いて、須藤は少しニヤリと笑うと、小脇のボールをひょいっとこちらに投げてきた。玄関の中であるにも関わらずだ。「えっ、ここでやるの!?」と思いながらも、ボールを落とさないように手を縦に向け、しっかりと胸元で受け止める。その瞬間、衝撃が引き金となって全身の筋肉に凄まじい激痛が走った。

 

はうっ!?

 

 俺はその場にボールを落とし、情けなくうずくまってしまった。……そうだ、俺は今絶賛、筋肉痛の真っ最中だった。

 

「はぁ……だと思ったよ。そんな顔真っ青にして何がバスケだ。身体が完全に治ってからな」

 

「あはは……うん……」

 

 

__________________________

 

 

 須藤と別れ、今度こそ寮へと向かおうと校門をくぐると、前方にまたしても見覚えのあるピンク髪の姿を発見した。

 

「あ、一之瀬!また会ったね!」

 

「あ、水瀬くん! 本当に奇遇だね!」

 

 声をかけると、一之瀬の隣には、ショートカットで明るく可愛らしい雰囲気の女の子が寄り添っていた。女友達同士で楽しそうに談笑している最中だったようだ。邪魔をしちゃ悪いなと思い、挨拶だけしてすぐ立ち去ろうとすると、一之瀬に呼び止められた。

 

「紹介するね! こちら、Dクラスの櫛田桔梗ちゃん。最近お友達になったんだ!水瀬君と櫛田さん二人とも、とっても明るいから良い友達になれると思うんだ!」

 

「おお! 初めまして、櫛田さん! 俺は1年Aクラスの水瀬晴人です。よろしくね!」

 

「わぁ!はじめまして! Dクラスの櫛田桔梗です。よろしくね、水瀬くん!」

 

 櫛田さんは人懐っこい満面の笑みを浮かべると、俺の手を両手でギュッと優しく握りしめてきた。すごい、初対面なのに距離感がすごく近い……!すると、櫛田さんが俺の顔をまじまじと覗き込んできた。綺麗な瞳に顔を近づけられて、何だかすごく恥ずかしくなってくる。

 

「んー?…えっ!もしかして君って、今朝のあの階段でうずくまってた人!? 」

 

「!?!?!?…うーーん…そう、だね」

 

「あはは、やっぱりそうなんだ! 朝、Aクラスの人に運ばれてるの見ちゃったんだよね。お昼休みにすっごく噂になってたんだよ、『階段の踊り場で可愛い男子が倒れてた』って! 晴人君だったんだね!」

 

 櫛田さんは楽しそうにクスクスと笑った。けれど、俺の心臓はドキンと嫌な跳ね方をした。Dクラスにまで広がっているのか!これ以上『Aクラスのヤバい奴』なんてイメージが定着したら、せっかくの青春の高校生活が台無しになってしまう。これから一層、普通に、周りに迷惑をかけず、真面目に暮らしていこう……! 俺は密かに、心の中で固く固くそう決心した。

 そんな俺の内心の焦りを知ってか知らずか、櫛田さんは少し上目遣いになりながらポケットから端末を取り出した。

 

「晴人君!実はね私、この学校の学年全員とお友達になりたいって思ってるんだ!でも、Aクラスの人とは全然接点がなくて、どうしようかなって思ってたの。もし良かったら……水瀬くんの連絡先も教えてもらえるかな?」

 

「学年全員とお友達!? すごい目標だね! もちろんいいよ!」

 

 純粋に彼女の目標に目を輝かせた俺は、先ほどの焦りを吹き飛ばすように、喜んでピピッ、と端末をかざした。

 

 櫛田と一之瀬と別れた俺は、端末を見て喜んでいた。。まだ入学して二日目だというのに、俺の端末には、クラスの垣根を超えた名前が次々と登録されていくからだ。

 

(他クラスの友達、たくさんできたな! みんな良い人ばかりだし!)

 

このまま、楽しい生活が続くと良いなと思いながら寮へと帰っていった。




ほっ本編に進まない…
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