⚠︎オリ主とオリキャラ(万城目さん)の絡みがあります。
学校舞台だから仕方ないけど…キャラが、キャラが多い…!
次回も仲間と交流する回です
鬼頭 隼と
事の始まりは、学校に入って初めて休日の一日前。ベッドの上で何気なくスマホをいじっていた時のことだった。おすすめ欄にたまたま流れてきた一本の動画。タイトルは『周りと差をつけろ!男の垢抜け攻略!」。軽い気持ちで再生ボタンをタップした俺は、ものの数分で血の気が引いていくのを感じた。
『はい、まず1つ目は胸元にデカデカと書かれた謎の英字Tシャツ! 2つ目は襟や袖の裏だけに施された謎のチェック柄! そして3つ目は、細いパンツ、今の流行りはワイドパンツです!これらの紹介したアイテムは子供っぽさの塊なので、即刻、処分しましょう!』
「…嘘でしょ?」
動画の画面を硬直したまま見つめ、俺はロボットのような動きでベッドから這い出た。急いでクローゼットの扉を開け、中にハンガーで掛かっている服を一枚ずつ引っ張り出していく。
「英字……入ってる。襟の裏……チェック柄だ。このズボン……スキニーだ!」
全滅だった。そこに並んでいたのは、中学の時に自分が適当に買ったものや親に買ってきてもらった服は動画の指名手配のオンパレードだった。
絶望に打ちひしがれながら、俺の脳裏に、放課後で目にしたクラスメイトたちの姿が次々とフラッシュバックした。
(そういえば……みんな、私服のレベルが高かった気がする!?)
休日にケヤキモールで見かける生徒達は、驚くほど大人っぽくて洗練された私服を着こなしていた。それに対して、自分は完全に中学生のままで止まっていたのだ。
「このままじゃダサすぎて外を歩けない……! みんなと並んで歩けないよ……っ!」
キラキラしてる櫛田さんや一之瀬さんに相談…いや二人に今のこの状況を知られたくない。考えに考えぬいた俺は「とりあえず明日服屋に行こう。」と判断し、明日に備え、すぐベットに入ったのだった。
◇
「ふむ。服のサイズは大きい方が流行り…えっ?大きいと子供っぽく見られる!?じゃあ普通サイズ???」
ケヤキモールの服屋。ネットの記事や動画を見ながら服を漁る。しかしこれが難しい。
「これが流行りのワイドパンツ。なるほど確かに太い。……でもこれ、本当に俺に似合ってるのかな? 浮いてないかな?」
答えを探そうと思えば思うほど、ゲシュタルト崩壊を起こして、わからなくなっていく。なんだこれは、今受けているどの授業よりも難解じゃないか……。
迷宮入りしかけた俺は、ひとまず、自分が一番見慣れている明るいカラフルなチェックシャツを手に取り、鏡に合わせてみた。
「……それにするのか?」
「ひゃいっ!?」
背後から突然、恐ろしい低い声が聞こえ、俺は飛び上がった。恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは、凄い強面の同じAクラスの鬼頭隼が立っていた。
「き、鬼頭!? なんでここに?」
「……通りかかった」
鬼頭も用事があったのか、たまたま服屋いたようだ。そこでスマホと服を見比べながら、長時間、店に居座る俺を不審に思ったらしい。鬼頭はチェックシャツをじろりと睨みつける。
「……そのチェックシャツ、サイズ感が合っていない。色も少し幼く見られる可能性がある」
「そ、そうなんだ。……実は、服を新調しようと思って来たんだけど、何を選べばいいか分からなくて。もしかして鬼頭詳しかったりする?」
俺が肩を落として白状すると、鬼頭のその表情は、仏頂面だが「なるほどな」と得意げな顔に変わっているような気がした。
「……最初は黒色だけを選べ」
「えっ、黒いやつ? それだけでいいの?」
目を丸くする俺に、鬼頭はぬっと腕を伸ばし、無地のダークグレーのTシャツと、太い黒スラックスを引き抜いた。
「…そうだ。黒という色は、すべての光を吸収する孤高の色彩。視覚的な収縮効果もあり、シルエットを引き締める」
めちゃくちゃ早口で、かつ熱っぽく語る鬼頭。教室にいる時のような、怖い雰囲気はどこへやら、謎のイキイキとしたオーラを放っている。もしかして、服が好きなのか?
「……着てみろ」
「うん、着てみる!」
鬼頭に渡された「上下黒」のセットアップを抱え、俺は試着室へと滑り込んだ。
制服から着替え、姿見の前に立つ。
「わあ……っ!」
カーテンを開けて外に出ると、姿を見守っていた鬼頭が、ふむ、と満足そうに頷いた。鏡に映っていたのは、いつもの子供っぽさが消え、シンプルながらもどこか洗練された、綺麗さが引き立つ俺の姿だった。
「すごいよ鬼頭! 自分で言うのもなんだけど、なんかすごくお洒落に見える! 魔法みたいだ!」
パッと顔を輝かせてぶんぶんと手を振る俺を見て、鬼頭は照れ隠しか後ろを振り向いた。耳の裏がちょっと赤い。
「……もう行く」
「ありがとう鬼頭!よし、この服買う!」
他の黒系のアイテムを色々集めると、お会計は一瞬で1万円を超えた。ポイントが引かれる端末を見つめながら、ふと思う。中学まで親は俺のためにこんなに高いお金を払って服を揃えてくれていたのか、と。今更ながら親のありがたみが身に染みて、頭が上がらない気持ちになった。
ポイントは計画的に大事に使おうと思っていたけれど、今回ばかりは必要経費だ。痛い出費だったけれど、これからの人生の彩りを手に入れたと思えば、安い買い物だった。
◇
Aクラスの教室に着くと、俺は真っ直ぐ鬼頭の席へと向かった。
「鬼頭!一昨日このブルゾンを買ったんだけど、サイズが合ってない気がして。どうかな?」
スマホに映った自撮りの写真を鬼頭に見せる。何を隠そう、気がつけば、俺はすっかりファッションの虜になっていた。ゲームでいうところの、ステータス画面を見ながら装備を付け替えていく感覚にそっくりで、楽しくて仕方がないのだ。
朝の教室。いつも仏頂面で座っているコワモテの鬼頭と、その前で嬉しそうに私服の相談をしている水瀬。あまりにもアンバランスな二人の組み合わせに、周りのクラスメイトたちは「あいつら、いつの間にあんなに仲良くなったんだ……?」と遠巻きに驚きの視線を送っていた。
しかし当の鬼頭は、少し大きな声で無邪気に話しかけてくる俺に対し、腕を組みながら仏頂面だった。しかし、「ようこそ、こちらの世界へ」と言わんばかりの、最高に満足げなドヤ顔を浮かべているような気がした。
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万城目麗香と
とある日の放課後。学校の出口で俺は足を止めた。外からは、ザァザァと激しい雨音が響いている。図書室で勉強をやっていると、ウトウトしてしまい、すっかり遅くなったというわけだ。
「うわあ、雨だ。完全に油断してたなあ」
空は分厚い雲に覆われた土砂降りだ。予報では晴れだったのだが、運が悪かったようだ。傘は自室に既に沢山あるので、今更買うのは損だ。走って帰るしかないか?
そんなことを考えていると少し離れた柱の影に、見覚えのある綺麗な長髪の女子生徒が佇んでいるのが見えた。同じ1年Aクラスの、万城目麗香さんだ。いつも凛としていて、いかにも『財閥のご令嬢』というオーラを纏っている彼女だが、今はなぜか、所在なさげにスマホを見つめて困り顔をしている。
「万城目さん? どうしたの、誰かと待ち合わせ?」
声をかけると、万城目さんはハッとしたように顔を上げ、微笑んだ。
「あら、水瀬さん。……いえ、誰かと待ち合わせというわけではないのですけれど。中学の頃は、こういう雨の日はいつも、すぐに迎えの車が来てくださっていたものですから……」
「な…なるほど?」
迎えの車。黒服の人がリムジンのドアを開け、レッドカーペットを広げる姿を想像する。いや現実でそこまで派手なことはしないか。
というか、ここは高度教育高校。迎えなんて来ないし、そもそも学校関係者以外立ち入り禁止だ。
「……困りました」
万城目さんは、トホホ……という擬音が似合いそうな顔で困り果てていた。
「万城目さん、もしかして折り畳み傘とかないの?」
「…ないです。いつも運転手の方が差し出してくださっていましたので、自分で傘を持ち歩くという習慣がなくて……間抜けなものですね」
完璧超人なような人かと思っていたけれど、意外と抜けてる所があるんだな、と少し失礼な感想を抱く。
さて、このまま話していても問題は解決しない。俺は辺りを見渡し、傘を貸してくれそうな人を探してみる。が、生徒は全員帰ってしまったのか、自分たちしか残っていなかった。SNSで助けを呼ぶのも、この雨の中、申し訳ない。
「ちょっと待ってて、万城目さん!」
「え? あ、はい?あ!ちょっと!」
確か校舎を出て、すぐコンビニがあったはず。そこで傘を買おう。全力疾走でコンビニへと向かった。途中で、職員室に行ってお願いすれば良いのではないかと思いついたが、すでにコンビニ前だったので却下することにした。
びしょ濡れになりながら、コンビニに着くと棚に並ぶビニール傘を発見する。残り一本だけだったので危なかった。プライベートポイントが数百ポイント引かれたが、あの人を雨の中、帰らせるわけにはいかない。息を切らせて戻ると、万城目さんは驚いた顔で俺を見つめていた。
「はいこれ! これで寮まで移動できる?」
「えっ……。私の、ために?」
俺がパッとビニール傘を広げて差し出すと、万城目さんは少し戸惑ったように、でも嬉しそうに受け取った。
「ありがとうございます。しかし、水瀬さんの傘は?」
「大丈夫! 走って帰るよ!」
腰を低くし、スタンディングスタートの構えをとる。
「ちょっと待ってください!」
「え、はい!」
走り出した途端、急に呼び止められる。
「濡れてしまいますし、一緒に帰りましょう!」
「えぇ!?」
◇
激しい雨の音が、傘のビニールを叩く。一つの傘を分け合って歩く帰り道、万城目さんは俺の横顔を、じっと不思議そうな目で見つめていた。女子にこんなに近くで見つめられると、どうしても心臓がバクバクして恥ずかしい。
「水瀬さんは、不思議な方ですね。今まで暮らしてきた中で初めて見るタイプです」
「そうなの?」
「ええ、本当に珍しいです。私、ずっと厳格な学校に通っていたんです。登下校の寄り道は一切禁止で、車での送迎があたりまえ。周囲には、しっかりした男性ばかり。いつも澄ましたお顔で、どこか油断のない雰囲気の方ばかりでした」
「あー、ドラマとかで見る『ごきげんよう』って世界だ?」
「ふふっ、そうです。ですから、この高度育成高校に入学してからの数日間、私はずっと緊張の糸が解けなかったのです。でも、水瀬さんはクラスの誰にでも明るく挨拶をしてくださって。」
「その上、雨の中、走って傘まで買ってきてくださるなんて。なんとお礼をすればいいか…」
「全然気にしないで!風邪ひいちゃったら大変だし、体が勝手に動いただけだよ!」
「ふふ、ありがとうございます」
そう言って、万城目さんははにかむように微笑んだ。至近距離で見るご令嬢の笑顔は破壊力抜群だ。
そうこうしているうちに、いつの間にか学生寮の近くまで到着する。万城目さんは足を止めると、俺の目をまっすぐに見つめて照れくさそうにスマホを取り出した。
「改めて…今日はありがとうございました。もしよろしければ……連絡先を交換しませんか?」
「嬉しい!よろしくね、万城目さん!」
激しい雨音に包まれた帰り道だったが、友達と打ち解け、心は晴れ晴れなのでだった。
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山村美紀と
放課後の教室。俺は、教室の床に地味な紺色の筆箱が落ちているのに気づいた。拾い上げてみると、小さく『山村』と書かれたネームシールが貼ってあるのが見えた。
(あ、山村さんのだ。さっき教室を出て行ったばかりだから、まだ近くにいるかも!)
明日は土曜日だ、2日間、筆箱がないのは少し不便なはず。俺は筆箱を掴むと、すぐに教室を飛び出した。
廊下を走り、昇降口の手前で、トボトボと歩いている彼女の背中を見つけて声をかける。
「山村さん! 待って!」
「!?!?!?」
山村さんは激しく肩を跳ね上げ、蜘蛛の子を散らすような素早さで振り返った。長い前髪の隙間から、怯えた瞳が俺を捉える。
「み、水瀬くん……? 私に、何か御用、でしょうか……?」
「はい!これ忘れてたよ!」
俺が笑顔で筆箱を差し出すと、山村さんは信じられないものを見るかのように、自分の手元と筆箱を何度も見比べた。
「私の、筆箱……。わざわざ、届けてくれたのですか……? 」
「私みたいな人間にために水瀬くんの大切な時間を使わせるなんて……」
「大袈裟だよ!筆箱がないと山村さんが困ると思ってさ」
「ありがとうございます…。本当に申し訳ないです…。」
俺が屈託のない笑顔で言うと、山村さんはさらに縮こまり、消え入りそうに呟いた。その時、どこか自分を徹底的に卑下するような彼女の態度に、違和感を覚えた。同じクラスなのに、どうしてそんなに怯えているのかと。
◇
「山村さん、おはよう! 」
「!?」
…
「山村さん、お疲れ様! 今日の授業のここら辺なんだけどさ!」
「…えっ?はい…?」
…
「山村さん、おはよう!」
「…………」ペコリ
元気がなかった山村さんが気になった俺は、毎日のように声をかけた。最初は警戒していた山村さんも、ほんの少しだけ、本当にほんの少しだけ、挨拶を返してくれるようになっていった。
◇
そして、ある日の放課後。いつも通り帰ろうとする俺の前に、山村さんが意を決したように立ちはだかった。
「水瀬くん…。ひとつ、お聞きしてもよろしいでしょうか……」
「ん!どうしたの山村?」
「最近、私によく話しかけるのは…何故ですか…?こんな暗い性格の人間なんかに…」
「なぜ…?」
俺は言葉に詰まった。まさか「いつも自信なさげで、少しでも励ましてあげたく思った!」なんて、直球すぎる同情を伝えるわけにもいかない。そんなことを言ったら、彼女は自分を責めてしまいそうだ。
俺が返答に困っていると、山村さんは質問を続けた。
「………私、昔からこのような性格で、直すべきなのは理解しているのですが…どうすればいいかわからなくて。ですが水瀬くんは、明るくて皆にも優しくて………どうしたらそんな風に明るくなれるのでしょうか?」
「えっ……!」
難しい質問だ。どうすれば明るくなれるか。そう聞かれても、普段から無意識に人と接しているから、明確な答えなんてパッと出てこない。考えても考えても、立派な答えなんて出てこない。それでも、何か伝えたかった。
「俺さ、みんなのことが好きなんだ」
「えっ?」
「友達も、クラスのみんなも。会ったことことがない人も!もちろん苦手な人だっているけど、それでも嫌いになりたいとは思わない」
「でもさ、人を好きになるには、自分のことも少しは好きじゃないと難しい気がするんだ」
「ナルシストになれってわけじゃないよっ!でも自分なんて価値がない、自分なんて嫌われるって思ってたら、相手が好意を向けてくれても信じられないじゃないかな?」
「だから、最初から自分を大好きになる必要はないと思う。でも、自分にも良いところがあるかもしれないって、少しだけ思ってあげてもいいんじゃないかな?山村さん、いつも自分を責めてるし…」
「…………自分を、好きに…? 」
「…………ごめんなさい…難しそうです」
(そりゃあそうだよね)
いきなり「自分を好きになろう」なんて、あまりにも現実的じゃないしハードルが高すぎた。一般人の浅知恵で偉そうなことを言ってしまったと、少し恥ずかしくなる。でも、ここで終わらせたくはなかった。
「じゃ、じゃあさ! 形から入ってみるのはどうかな?」
「形、ですか……?」
「うん! 例えば……挨拶! おはようって言うだけでいいんだ。声が小さくてもいい。会話を続けなくても良い。まずは形から入って、少しずつ慣れていけば、いつの間にかそれが自分の普通になっていくと思うんだ!」
「挨拶……私から誰かにですか?」
山村さんはこちらをじっと見つめながら、真剣に考え込んでいる。よし、手応えはある。
「後は……そうだ!山村さんが自分に自信を持てるように、俺が山村さんの良いとこ言うよ!」
「え……っ?」
「山村さんはね、字がすごく綺麗だし、髪は綺麗だし、声も凛としてて…」
これでもかと、褒め言葉を連射する。すると、山村さんの顔がみるみるうちに真っ赤になり、限界を迎えたヤカンのように沸騰し始めた。
「あ、山村さん!?」
山村さんは両手で耳を塞ぐと、脱兎のごとき勢いで教室から走り去ってしまった。教室に一人残された俺は、ガクッと肩を落とした。
「しまった!女子相手にこれは気持ち悪いに決まってるじゃん!」
良かれと思ってやったのに、完全に変態だ。明日からどうやって顔を合わせればいいんだろうと、俺は激しく猛省しながら帰路についた。
◇
そして、翌日の朝。どんよりとした気持ちで登校した俺は席に着く。昨日は早く寝たはずなのに、全然疲れが取れていない。昨日の失敗を引きずったままだった。
(あーーーー…どうしよう)
すると真横から突如、人の気配を察知。急な気配に振り返るとそこにはいつ間に現れたのか、山村さんが立っていた。
「…… おはようございます…水瀬くん…」
「…!」
一瞬、頭が真っ白になった。次の瞬間、胸の奥から嬉しさがこみ上げてくる。
「山村さん……! おはよう! 」
文字間違えの指摘やコメントをくださりありがとうございます!がんばります!