アドバイス、変なところがあれば教えてください!
日本の季節は四季があるのが常識だが、地球温暖化の影響か、近年では暑いか寒いの二択になってしまった気がする。もはや「二季」だ。
どうして急にこんな世間話をし始めたのかというと、見事にやらかしてしまったからである。
原因は完全に俺の自業自得。昨日の夜は、4月だというのに妙に蒸し暑かった。そのため、薄着でベッドに入り、夜中に寝苦しくて布団を蹴飛ばし、あろうことかエアコンの冷房をかけてしまったのだ。それがすべての元凶だった。
翌朝、目が覚めた瞬間に「地獄」を察した。昨日の暑さとは打って変わって、今日の朝は信じられないくらい冷え込んでいる。体の芯からゾクゾクと寒気が走り、喉には物凄い違和感。幸いにも熱はないが、頭が重い。入学したてで毎度毎度どうしてこう自分は間抜けなのか。昨日の自分を恨む。
「風邪かぁ〜〜〜」
普段は、少し寒いくらいで風邪にならないのだが、家とは違う寮の環境・慣れない高校生活で自分が思っているより身体が疲れているみたいだった。積もりに積もって今の症状なのだろう。
正直、ベッドに逆戻りして休もうかとも考えた。でも、こんな間抜けな理由で、しかも入学して早々に授業を休むわけにはいかない。何より、授業を1日休んだら、遅れを取り戻すのが面倒だ。
「余裕余裕…」
絶対に誰にも風邪を移さないようマスクを何重にも重ねてつけ、重い体を引きずりながら学校へと向かった。
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ガラガラ、と教室の引き戸を開ける。いつもなら元気よく「おはよう!」と挨拶するところだけど、今の俺にはそんな気力は残っていなかった。
「お゙ばよ゙ゔみ゙ん゙な゙……」
マスクの奥から絞り出した声は、自分でも引くくらいガラガラで、まるで紙やすりをこすり合わせたような音だった。
その瞬間、教室内で談笑していたクラスメイトたちの視線が一斉に僕に集まる。
「え、ちょっと水瀬くん!? 声どうしたの!?」
「うわ、めっちゃ顔色悪いじゃん。大丈夫?」
すぐに近くの席にいた男子と女子の数人が、心配そうな顔をして僕の周りに集まってきた。
「おはよ……うん、ちょっと風邪ひいちゃったみたいでさ。熱はないから大丈夫なんだけど、喉がやられちゃって……。ごめんね、絶対みんなには移さないようするから…」
「気にすんなよ。最近暑かったり寒かったりしてるもんな」
「こちらの喉飴をお使いください。少しは楽になると思います。」
「わぁ…ありがとう、白石」
白石が差し出してくれたのど飴の袋を両手で受け取る。入学して間もないが、みんな本当に優しい。最初は冷徹で静かな感じだったけど、今はみんなは温かく対応してくれて嬉しい。
「本当にありがとう…ちょっと席で、横になってるね……」
みんなの優しさに感謝しつつ、僕は自分の席にたどり着き、机にぐったりと突っ伏した。すると正面からすうっと人影が近づいてきた。森下だった。
『森下藍』。同じAクラスの女子だ。独特な雰囲気を纏っていて、いつも一人でいることが多い紫髪の女子だ。入学してから、何度か挨拶はしたが、会話が長く続いたことはない。そんな彼女が自分からこっちに寄ってくるだなんて珍しい。何の用だろう。
ぼんやりした頭で考えていると、森下は俺の目の前でぴたりと足を止め、おもむろにゆっくりと腕を伸ばしてきた。そのまま、俺がつけているマスクの布地を親指と人差し指でつまみ、ぐーっと前方に引っ張り出す。
「……えっ、何?えっ……?」
あまりの奇行に脳の処理が追いつかず、困惑して固まる僕をよそに、森下は限界までマスクを引っ張ると、何の前触れもなくパッと指を離した。
――スパーンッ!!!
ゴムの力で勢いよく跳ね返った不織布が、僕の顔面にクリティカルヒットする。
「ゔぃえ!?」
鼻と口に衝撃が走り、急な出来事にびっくりして涙目になる僕を見つめながら、彼女は何食わぬ顔で口を開いた。
「おはようございます、水瀬晴人。マスクで顔が隠れていたので、どなたか確認した次第です。」
「ち、ちょっと……! なんで確認するのにマスク引っ張るのさ…!? びっくりした…!」
そもそも引っ張らなくてもわかるでしょ!と色々抗議しようとしたものの、喉が痛みのせいでかすれてしまい、情けない掠れ声になってしまう。すると森下は、じっと僕の顔を覗き込んできた。
「おや。喉がガラガラですね。あまり大声を出すと、更に喉を痛めますよ。」
「誰のせいだと思ってるの!?」
「あなたの自己管理不足のせいですね」
「………そうです」
ピシャリと正論を言われ、思わず敬語になる。
「入学以来、無駄にエネルギーを撒き散らして活動していた反動でしょう。風邪は万病のもとと言います。早急に治すよう努めてください」
「無駄……。まあうん……そうだね、その通りだ。ありがとう、森下」
普段あまり話さないからわからなかったけど、実はすごく優しい人なんだな。ほんわかとした感動に包まれる俺の前で、森下は回れ右をして、自分の席へと戻ろうとする。あ、そうだ。
「あっ!人のマスク触ったんだから、ちゃんと手洗いなよ森下」
森下はピタリと立ち止まった。自分の指先をじっと見つめ、それから何故か急に顔つきを変え、信じられないものを見るような目で俺に振り返る。
「やってくれましたね、水瀬晴人。授業が嫌だからと、私を媒介にしてクラス内にパンデミックを起こし、学級閉鎖を計画するつもりですか?」
「しないよ!ていうか急にマスク触ったのそっちじゃん!」
さっきの感動を返してほしい。俺の必死の抗議をちゃんと聞いているのか、彼女は何食わぬ顔で教室を出て廊下へ去っていった。手は洗いに行ってくれたみたいだけど……俺は嵐が去った後のような虚無感に包まれる。な、なんだったんだ一体……。
「よお水瀬、風邪ひいたって聞いたぜ。大丈夫か」
呆然とする僕の肩を、後ろからひょっこり現れた橋本。
「あいつが自分から他人に話しかけるのなんて珍しいな。変わったスキンシップだったが……森下なりにお前のこと心配なんだろうな」
「凄く嬉しいけど、同時に疲れたよ…」
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その後も、俺の席の周りにはクラスメイトが次々と集まってきてくれた。他の人に移しちゃ悪いから、今日はなるべく誰とも関わらずにじっとしていようと思っていたのに、みんなの優しさが俺の計画を壊していく。ありがたい限りなのだが。移るかもしれないから離れてくれ…。
さっきも桜井や万城目、坂柳が来ては「無理しない方が良い。」「保健室行きたかったらすぐ言え。」と打診してくれたし、あの強面の鬼頭に至っては、無言のまま俺の机にペットボトルの温かいお茶をドンと置いて去っていった。さらに、山村も、どこからともなく現れて「あの、大丈夫ですか……?」と消え入りそうな声で心配してくれた。「平気だよ、ありがとう」とガラガラ声で伝えると、彼女は少しだけ安心したように小さく頷き、またスゥと気配を消して席に戻っていった。本当に、至れり尽くせりでありがたい限りだ。
◇
「水瀬、風邪をひいたと聞いたぞ」
朝のHRが終わると同時に、ずいっと俺の前に影を落としたのは、クラスの葛城康平だった。そして机に置かれたのは――なんと総合風邪薬の箱。
「えっ……?」
コンビニか薬局で、わざわざ買ってきてくれたのだろうか。HRまでの短い時間で?
「そんな悪いよ葛城! あっ、すぐポイント返すから!」
市販の風邪薬は、病院の薬と違って結構高かったはず。慌てて端末を取り出そうとする俺を、葛城は片手を上げて制した。彼は「勝手にやったことだ」とだけ言い残し、いつもの仏頂面のまま席に戻ってしまった。
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昼休み、俺は桜井がコンビニから買ってきてくれたカップうどんをすすっていた。風邪で食欲がない時でも、温かくて柔らかいうどんなら無理なくお腹に入れられる。本当にナイスチョイスだ。本当にありがとう桜井。頼んでもないのにわざわざ買ってきてもらって本当に申し訳ない…。
「ねえ、体調はどうなの?」
不意に上から声をかけられ顔を見上げると、今度は、ポケットに手を突っ込んだまま、心底ダルそうに俺を見下ろしている神室の姿があった。
『神室真澄』。いつもクールで勝気な性格のかっこいい女子だ。最近は、仲良くなったのか坂柳さんと一緒にいるところをよく見かける。
「平気だよ!ごめん、みんなに心配かけてるよね」
ガラガラ声で親指を立てて答えると、神室は小さくため息をつき、俺の顔色をじろじろと観察し始めた。
「頼まれて様子を見に来たけど…大した事なさそうね」
「頼まれたって……もしかして坂柳?」
「そ。『水瀬くんの看病をお願いできますか』ってわざわざ頼まれてね。全く人使いの荒い…」
ぶつぶつと文句を言いながらも、神室はポケットから手を出すと、カサッと小さなレジ袋を俺の机の上に置いた。中を見ると、一口サイズのチョコレートや菓子の袋が沢山あった。一緒に出てきたレシートを見るに、直前に買ってきたもののようだ。
「あげる」
「ご、ごめん神室!わざわざありがとう!」
お礼を言うと、神室さんは少しだけバツが悪そうに視線を泳がせた。
「…別に。うどんや薬だけじゃ飽きるでしょ。食べて、さっさと治しなさいよ」
そう言って、神室は「じゃあね」と手をひらひらと振って、自分の席へ戻っていった。去り際もかっこいいな神室さん。
貰ったお菓子はうどんを食べ終わった後、美味しくいただきました。
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放課後。医療機関に向かおうと荷物をまとめていると、またしても葛城が、ルーズリーフを何枚か持ちながら、こちらに近づいてきた。
「風邪で頭が回らなかっただろう。今回はこれを使え」
「……えっ。もしかして作ってくれたの?」
手渡されたルーズリーフを見て、俺は絶句した。そこには、今日の授業の重要ポイントが、葛城の几帳面な文字でめちゃくちゃ綺麗に整理されていたのだ。自分のノートを取るだけでも大変なはずなのに、風邪で頭が回っていない俺のために、授業中にもう一冊分これを書いてくれていたということだ。
朝の風邪薬に続いて、放課後の特製ノート。筋肉痛で倒れた時も、わざわざ様子を見にきてくれたりもした。
「何もかもごめん!葛城!」
「…そんな顔をするな。体調が悪い時は、授業に集中できないものだ。クラスメイトとして当然の助け合いだろう」
葛城はいつもの仏頂面のまま、淡々とカバンを肩にかけた。元生徒会なだけあってか葛城はAクラスのために、よく動いてくれる場面を何度か見かけたが、これは流石に異常だ。人が良いの範疇を超えてる。
「いやいや、当然じゃないよ!結構凄いことやってるよ葛城!凄く仲のいい友達でも、普通ここまでしないと思うよ!」
申し訳なさと困惑でオロオロしながら「何故ここまでしてくれる?」と理由を尋ねると、葛城は歩き出そうとした足をぴたりと止めた。
「……」
葛城は腕を組み、しばらくの間、何かを迷うように深く考え込んでいた。葛城自身も「そういえば何故だろう」と言った感じだった。やがて、答えに辿り着いたようで、小さくため息をつくと、決まり悪そうに視線を外して口を開いた。
「……そうか…。お前を見ていると、どうにも他人の気がしなくなるようだ」
「つまり?」
「……俺には、親戚に預けている双子の妹がいるんだが、雰囲気だろうか?水瀬、お前の姿が俺の妹に似ているんだ」
「い、妹さん?」
まさかの理由に、俺は思わず目を丸くした。
「もちろん、容姿が似ているわけではない。お前は男だからな。」
「小さい頃から病弱で…今の水瀬の状況と重ねてしまったのかもしれんな。………要するに、ただの俺の自己満足だ。気にするな」
その後、恥ずかしくなったのか「…柄にもなく喋りすぎた」と言って、葛城は今度こそフイッと前を向き、足早に教室を去っていった。取り残された俺は、手元に残されたルーズリーフを見つめる。あんなに厳しくて強面な葛城が、実はものすごく妹想いの優しいお兄さんだということ。そして、俺のなかにその妹さんの面影を見て、気にかけてくれたこと。
不思議な話だったけど、俺は感謝しながら、ルーズリーフを大切にカバンにしまった。体はまだ少し重かったけれど、なんだか朝よりもずっと軽かった気がした。
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教室を出ると、玄関の近くに天樹が立っていた。俺の姿を見るなり、すっと近づいてきて声をかけてくる。
『天樹祐介』。同じAクラスの男子だ。最初はちょっとクールで近寄りがたい人なのかなと思っていたけれど、話してみると気さくで、色々と教えてくれる、頼れる先輩みたいな人だ。
「水瀬、待っていたぞ。病院に行くんだろ? 」
「え……?」
話を聞くと、葛城は放課後に外せない用事が入ってしまったらしく、代わりに天樹に俺の付き添いを頼んだのだという。そういえば、天樹は最近クラスで葛城とよくつるんでいるな、と前々からの光景を思い出す。それにしても葛城…本当は着いてくるつもりだったのか…。過保護すぎるよ…。
とはいえ、熱がそこまで高いわけではないので、わざわざ付き添ってもらうのは申し訳ない。介助が必要なほど酷くはないよ、と遠慮がちに伝えたのだが――。
「気にするな。少し送るだけだ。ちょうど伝えたいこともあってな」
そう淡々と言われてしまい、結局、並んで一緒に帰ることになった。一体何の話だろう。
◇
並んで歩きながら天樹と雑談をしていると、天樹は売店の『0円商品』に目を止めた。そしてポイントの話題を切り出された。
「そういえば水瀬。ポイントの残高は大丈夫か?」
「どうしたの? 急にポイントの話なんて」
「いや、今日クラスの奴らから色々と看病の品を貰って、お前、律儀にポイントでお返ししようとしていただろう? あとは……高い服をたくさん買った、という話を前に小耳に挟んだからな」
図星だった。最初は節約しようと思っていたのに、確かに少し高い服に手を出したり、遊びや食事でちょいちょいポイントを使ったりで、初月にしてみれば結構な額を消費している。
「確かに使うには使ったから…まあ半分ちょっとは残ってるよ」
「そうか…全部使ってなくて良かった」
流石にそこまで馬鹿じゃない、と少し胸を張る俺を見て、天樹は小さく安堵の息を漏らした。だが、そのどこかホッとしたような横顔に引っかかるものを感じて、俺は小首をかしげる。
「今からでも遅くない。できるだけポイントの節約を徹底した方がいい」
「……? そんなに心配しなくても、来月になればまた補充されるんでしょ?」
「そうだと良いんだがな……。実は少し前、食堂で上級生を見かけたんだが、わざわざあの『0円メニュー』の山菜定食を選択していた。毎月10万ポイントを貰っていて、既にこの学校の生活に慣れているはずの先輩が……だ」
0円メニュー。あの味の薄い山菜定食か……。お世辞にもあんまり美味しくなかったな、あれ。学園への要望書に「もっとメニューを美味しくしてください」ってお願いしたら通るのかな、なんて的外れなことを考えていると、ふと疑問が思い浮かぶ。
「たまたまその先輩が金欠だったんじゃない?それか買いたいものがあって、節約中なのかも、それか山菜定食大好きか」
「金欠の線は俺も考えた。だから、思い切ってその上級生に直接、話を聞いてみたんだ」
「おお」
◇
「失礼ですが、ポイントの残高が厳しいんですか?」
「……そういうわけじゃない。」
「でしたら、なぜ山菜定食を?」
「1年は気にしなくていい。そのうち分かる。」
「……何があるんですか?教えてください。」
「……。」
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「理由は最後まで教えてもらえなかった。だが、一つだけ確信したことがある。上級生たちは、何らかの”理由があって”意図的に節約をしている。気になって担任の教師にも『過去に、個人の目的以外でポイントを大量に使用せざるを得ない状況はあったか?』と質問してみたが、煙に巻かれた。先輩の時と同じだ。……どうだ? 酷く臭うだろう?」
天樹くんは一度言葉を区切り、俺の目をまっすぐに見つめた。
「入学式での『何でも買える』という説明。ただの生徒に毎月10万ポイント配布する違和感。何故か話をはぐらかす先輩や教師。根拠してはまだまだ薄いが…俺はこの学校の生活において、近いうちに『ポイントを大量に使用しなければならない事態』、あるいは『ポイントが貰えなくなる事態』が起きると想定している。まぁ、あくまで俺個人の仮説の話に過ぎないが……」
す…凄い。探偵作品の推理を聞いているような臨場感。なるほど……。難しい仕組みはよく分からないけれど、この学校のポイント周りには、何か大きな仕掛けや秘密があることだけは、天樹くんの話からひしひしと伝わってきた。確かに最近はお金を使いすぎている気がする。うん、気をつけよう。
「……あぁ、すまん。具合が悪いお前に、小難しい話を長々と押し付けてしまったな。要するに、ポイントには用心しとけということだ」
俺が素直に頷くと、天樹くんはどこかやり切ったような表情を浮かべた。そこで、俺の中にふと一つの疑問が湧き上がってくる。
「…天樹」
「ん?」
「なんでその話を、俺にしてくれたの?……上手く言えないけど、その話、葛城とか坂柳に話した方が、もっと建設的で凄い作戦とか立てられるんじゃないかな……って」
こんなすごいこと、俺に話すより、然るべき人に相談した方が絶対に有意義なはずだ。すると、天樹は呆れたように肩をすくめて、クスリと苦笑した。
「お前が、このクラスで一番危なっかしくて見ていられないからだ」
「そ、そうなの?」
「もし俺のこの仮説が当たっていた場合、真っ先に苦しむのはお前みたいな奴だ。……水瀬、お前は良いやつだよ。ここ数日一緒にいて、それは本当によく分かった。周りに元気よく挨拶をして、困っている奴がいたら、自分のことを二の次にして手を差し伸べる。クラスの明るい空気感はお前が作ってると言っても過言ではない。……だが、その真っ直ぐすぎる性格は確実に損をする」
天樹の言葉は、冷たい警告のようでいて、その実、不器用な優しさに満ちていた。
「だから、お前が取り返しのつかないことになる前に、伝えておこうと思ったんだ」
「そっか……。……ありがとう天樹! 俺、頑張ってポイント節約するよ!」
胸がいっぱいになった俺は、熱っぽさも忘れて、ぐっと拳を握りしめた。そして「ポイント億万長者になる!」と意気込むと「…飯くらいはちゃんと美味いものを食え、風邪が長引くぞ」と冷静にツッコミを貰った。
その後、病院の受付まで見送ってくれた天樹と別れ、処方された薬を貰ってから、俺は足取り軽く寮への道を歩いていった。
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今日は、クラスのみんなに沢山心配された日だった。風邪をひいたので当然なのだが。
でも入学したばかりの頃は、周りの空気がなんだかピリピリしていて、これからどうなるんだろうと考えていた。今ならはっきり言える。
「俺、Aクラスで良かった!」
みんな、本当に優しくて、良い人たちだ。天樹のポイントの話が本当ならちょっと怖いけれど……。この頼りになるAクラスの仲間となら、どんな困難だって必ず乗り越えられるはずだ。
俺は大切なクラスメイトたちの顔を思い浮かべながら、心地よい布団の温もりに包まれて、すうすうと眠りに落ちていった。
ちなみに風邪は薬のおかげで数日で治った。
次中間試験編…?