異界渡り、ビカム -伝説のエルフは今日も勝手に深読みされる- 作:鹿紅 順
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アイは己の意志と役割の狭間で懊悩していた。
美剣士ビカムは『エデン』を追って自ら宇宙に飛び立った。
少女リンは壮絶な覚悟と共に剣を取り、〝黒鬼士〟――実の父親と激しい剣劇を繰り広げている。
対して今、己には出来る事が何もない。
正確には〝黒鬼士〟の装着する鎧に絶えずハッキングを行っているが、この鎧だけは未だに『エデン』が制御を握っていた。
シティの基幹システムのことごとくを放棄した『エデン』が支配下に置き続けている。それだけ〝テラ・イーター〟の防衛を重視しているのだ。
その『エデン』も理由は不明だが、別の事にほとんどの演算リソースを割いているのか、アイのハッキングにも勝利の目があった。時間さえ掛ければ競り勝つことはできる程度に――
しかし、制御権を掌握する頃には確実にシティが更地になっているだろう。これでは互角どころか敗北と言わざるをえない。
(『――だからといって、諦める理由にはならない』)
(『ビカムが私に地上を託した理由は必ずある。今さら私を危ないなんて理由で残していくわけがない』)
(『でも……ガラ空きのシティ基幹システムを乗っ取るでもなく、わざわざこの娘に預けたのは――』)
保安部指令所のモニターには、リンと〝黒鬼士〟の戦闘映像が映し出されていた。
互角に渡り合う少女の姿に職員たちから歓声が上がる。
〝飛ぶ斬撃〟による迎撃が封じられたことにより、飽和攻撃が本格的に命中を始めた。
〝テラ・イーター〟の装甲表面でいくつもの爆炎が上がり、ダメージを与えているのが分かる。最も内側の機体は防衛部の総攻撃を受け、わずかながら周回のスピードに遅れが生じていた。
「行けるっ、行けるぞ!」
皆の目に希望の光が宿り始めていた。
その様子を指令所の後ろ、最上段の席で見つめながら、イチタカだけは冷静に戦況を見守っていた。
周囲にはそれがどんな状況でも動じない冷静さに映っている。
だが、この場で最も不安に駆られていたのはイチタカであった。
士気を削いでしまうため口にはしないが、
(……本当に、これで止められるのか?)
全高三百メートル、全長二キロ。それが内包する莫大な運動エネルギー。
例えるならば、高速で小石を何個もぶつけて、坂を転がる大岩を止めることができるのか。
止められるかもしれないのだろう。
だが、それはどれくらいの速さで? いったい何個ぶつけたときに?
……残念ながらここは実験室ではない。自分たちは、限られた時間に出来るだけの事を試すしかない。
全ては結果が教えてくれる。
やり直しなどできない――現実という結果が。
***
〝テラ・イーター〟の進行は確かに遅くなり始めた。
シティが内包する戦力が総力を挙げて攻撃を加え、確かなダメージを与えている。
それは象が蜂に刺されたようなものではあるが、傷は傷だ。痛みに顔を
しかし象の足下でたむろする蟻にとって、それがどの程度の慰めになるのか――
「――オイ、〝きつね組〟応答しろ! お前らの担当地区はもう間に合わねえ! 今すぐ避難しやがれ! オイ、聞こえてんのか! オイッ……頼む、返事をしてくれッ……!」
アカネ、ユノーと共に走りながらライゾーが通信機に向けて怒鳴る。疲労と焦りで息が上がり、滝のような汗を流しながら呼びかけるのを止めない。
並走する自警団の仲間がライゾーの通信機を持つ腕を掴む。
「ゴミさん! 今助けられる奴らを優先しましょうぜ! アイツらはもう……」
「るせェッ! これでもう三組目だぞ! 〝たぬき組〟も〝うさぎ組〟も……!」
ゴミが挙げたのは〝テラ・イーター〟に近い場所で避難活動を行っていた自警団の組である。がさつだが気の良い奴らばかりで、一人ひとりの顔と名前もはっきりと思い出せる。
断じて、たかが機械に踏み潰されて死んでいいような奴らではない。
「クソ……クソッ……!」
増え続ける犠牲を前にライゾーは歯噛みするしかなかった。
このまま逃げ続けてもジリ貧でしかない。
反撃に転じる何かが必要だった。
(――あれは)
ジャンク・タウンを走るライゾーの目にあるものが映り込む。
唐突に足を止めた。
「ゴミさん⁉」
「……テツロー、お前は先に行け。俺はちぃとばかし寄るところがある。
振り払うように踵を返したライゾー。
「……ライゾー」
その背中をアカネの声が呼び止める。
「アンタ、どこに行く気だい」
「へっ……さっき避難に使えそうな大型車両のある場所を思い出してな。通り過ぎちまったからちょっと引き返すんだよ」
「本当に、本当にそうなんだね?」
「ああ。お前らはさっさと逃げろ。守らねえといけねえ命があるんだろ」
そう言われ、アカネは一瞬だけ車椅子のユノーを見る。
再び視線を戻したとき、ライゾーは既に遠く走り去るところだった。
「悪いな、テツロー、アカネ」
ライゾーは謝罪の言葉を独り言ちた。
確かに彼は役に立ちそうな車両のある場所を思い出した。しかし、それは人を乗せる用途のものではない。
辿り着いたそこには鍵が挿しっぱなしの車両が多数放置してあった。慌てて避難していった証拠だ。
ライゾーが乗り込んだのはエネルギーポンプ車だ。
汎用エネルギーパックが普及した時代だが、業務用に纏まったエネルギーを必要とする施設は多い。しかしジャンク・タウンは基本、シティのエネルギーを盗エネしている関係上、エネルギー供給網がどこでも発達しているわけではない。これはそういった所へ満載したエネルギーを供給するための車両だ。
当然、扱い方を間違えれば危険な事になる。
そうならないように安全を重視した設計をされているが、普通の事故ならともかく……〝テラ・イーター〟に突っ込むなどした日には、どれだけの爆発を引き起こすのだろうか。
――それがわずかでも〝テラ・イーター〟を足止めできる可能性があるならば。
クラクションを鳴らしながら通りを爆走する。避難中の住民が慌てて左右へ身を寄せる。「危ねえぞバカ野郎!」と罵声が聞こえた気がした。
(ああ、まったく、ホントにバカ野郎だぜ)
(でもよ……こうせずにはいられねえんだ、俺は!)
――前方に影が落ちる。
炎上するドローンが頭上に墜落しようとしていた。
「ッ!」
間一髪でハンドルを切る。衝突は回避したが、爆発が運転席側のドアを根こそぎ吹き飛ばした。
横転した車両や瓦礫を真っすぐ突っ込んで道を強引に押し開く。
その度に車体は、ライゾーは傷を負っていく。何かの破片が右瞼の上を斬り、どくどくと血が流れているのが分かった。
「ハ、関係ねえ! 帰りを考えなくていいってのは楽だなァ、オイ!」
壮絶な走行を続けた先……ついに〝テラ・イーター〟が眼前に迫る。
巨大な破砕機構の間を埋めるように、さらに小さな破砕機が縦横無尽に連なっているのが見える。構造物を大まかに砕いた後、さらに細かく執拗に粉砕するためのものだ。
単にシティを瓦礫に変えるための機械ではない……あの巨体の内部には資源の再生加工工場が内包されているのだろう。ビルを砕いた傍から新しいビルの建材を製作しているのだ。
猛烈に不愉快だった。
アクセルを最大限に踏み込む。
キュルキュルと音を立てながらエネルギーポンプ車が最後の加速を行う。
ライゾーの目に恐怖は無かった。
大き過ぎた責任感と……嘘をついてきた申し訳なさだけがあった。
「――コイツで喉でも詰まらせやがれや、デカブツ野郎ォォォッ‼」
〝テラ・イーター〟にエネルギーポンプ車が突っ込み――大爆発を起こした。
***
もはや何度目かも分からない〝飛ぶ斬撃〟が迫り来る。
人間離れした跳躍力で走り高跳びのように回避しながら、リンは息をつく間もなく戦いに身を投じていた。
まともな人間ならとっくに体力を使い果たしている運動量。そうなっていないのは、魔力による身体能力と自然治癒力の強化が影響している。
対する相手はその場からほとんど動いていない。リンが近づけば斬り結び、距離をとれば〝飛ぶ斬撃〟で攻撃する。リンダリアル世界で一度戦ったときとは明らかに戦闘スタイルが異なる。
それもそのはず――相手にとってリンを倒すことが勝利条件ではない。
今、〝黒鬼士〟を操っているのは『エデン』であり、リンを打ち倒さずとも〝テラ・イーター〟がシティを一周するまでの時間を稼げばいい。
加えて悪い状況は重なる。
「はぁ……はぁ……ッ!」
ここにきて、リンの息が上がり始めた。
(……体の芯から湧きあがる熱が、弱くなり始めてる)
リンが魔力に目覚めて十分な経験を積んだ後ならば、消費する魔力の量をコントロールすることで息切れを防ぐことはできただろう。
しかし。
リンダリアル世界での半覚醒。
すぐにチキュウ世界へ移動し、マーカス戦での開眼の儀による完全覚醒。
〝テラ・イーター〟への対処と〝黒鬼士〟との激戦。
ロクに休む間もなく戦わざるをえなかったリンは、例えるなら常に蛇口を全開にして過剰なまでに魔力を垂れ流したまま剣を振るってきた。水量の絞り方を知らず、閉めるか開けるか、どちらかしか出来ないのだ。
そうして無尽蔵に思えた活力に今、底が見えてきた。
〝黒鬼士〟の大上段からの振り下ろしを、紅刀を横にして受ける。
――リンの左足が、わずかに崩れた。
疲労の影響か、攻撃を受け止めきれず、姿勢に綻びが生じる。
踏ん張る力が不十分なリンは〝黒鬼士〟に蹴り上げられ、空中に投げ出された。
「
(マズい――!)
直感が最大級の警報を鳴らす。
才羽《さいば》流絶技〝手羅〟。
斬撃が網目のごとく敵を覆いつくす連続剣技。
それを〝鎧素徒〟と融合した〝黒鬼士【草薙】〟が放つとどうなるか。
「極技――〝
空中で身動きの取れないリンへ、網目状に密集した〝飛ぶ斬撃〟が襲いかかった。
一秒後、少女の身体は見るも無残なほどバラバラに分割されているだろう。
――だが、忘れるなかれ。
これほど極まった技を繰り出せる剣士の血が、この娘にも流れているのだ。
残り少なくなった魔力、その大部分を紅刀に流し込み、リンは乾坤一擲の一閃を放った。
網目状の斬撃を強引に断ち切る……ためではなかった。
空中で放つ腰の入っていない剣では〝飛ぶ斬撃〟を確実に切り裂けるとは言えない。
ゆえに、魔力を放射した反動でリンは空中の自分の位置を無理矢理ズラした。
網目の中で唯一、体をねじ込めそうなか細い隙間へ。
その試みはギリギリのところで成功した。
まさに髪の毛一本分の距離を〝飛ぶ斬撃〟はかすめていき、リンは命を拾った。
「――才羽流抜刀術〝
――絶望の声が響く。
リンが唯一の活路を見出した先では、〝黒鬼士〟が既に抜刀の構えで待っていた。
理解する。先の攻撃はわざと逃げ道を作っていたのだ。
〝絶汰〟を攻略できず死ぬなら、それでよし。
仮に仕留められなかったとしても、回避した先で、次は避けえぬ技にて待ち構える。
どちらに転んでも構わない。始めから二段構えの戦略。
〝鎧素徒〟の分子干渉能力の応用――周囲の空気分子を操作し空気抵抗を限界までゼロに近づける。
空気すら排除することで〝運動を邪魔する因子が一切存在しない〟という机上の空論を実現させた技。
あまりの速さに剣閃は文字通り閃き光を放ち、輝きが夜を一瞬で終わらせる――それほどまでに鋭き剣技と名付けられた神速の抜刀。
「空想理論抜刀――〝
避けよと脳が肉体に命令を下すよりも早く、
〝黒鬼士〟の黒刃はリンの首を通り抜ける。
――アキツ・シティの夜空にペンキをぶちまけたように、赤い血飛沫が舞った。
***
青と黒――母なる星チキュウと冷たい宇宙の狭間で幾筋ものビームが乱舞する。
美剣士ビカムと仮想顕現獣バハムート。
二つは高速移動しながら螺旋の軌道を描き、攻撃の応酬を繰り返す。
バハムートの口腔が吐き出すビームを美剣士はときに避け、ときに霊剣フェーレで逸らしながら肉薄する。
攻防の果て、ついにビカムがバハムートの背後をとった。
――がら空きの巨竜の背中に十を超える光の球が生じる。
「……!(コイツ、口からだけじゃなく――)」
不意打ちのビーム群はしかし、ビカムを撃ち抜くことが叶わなかった。攻撃の予兆を察した彼はあっさりと身を翻し、木立の間を翔けぬける小鹿のごとく悠々と回避したからだ。なんという反射神経か!
「……(危なっ……! 体のどこからでもビームが出せるのか。厄介な……)」
『なるほど。この程度の不意打ちを読むのは雑作もありませんか。……そろそろ趣向を変える時期ですね』
これまでの戦闘が遊びだったかのようにバハムートは全身を砲口と化し、あらゆる箇所、あらゆる体勢からビームを連発する。
ビカムは冷静に回避と防御に専念している。反撃の機を窺っているのだろう。
「……(いやいやいやいや! まったく反撃する隙が無い……! 何なのだこれは……⁉)」
風を纏い、妖精よりも軽やかに空中を飛ぶビカム。
その美貌の一メートル先を高速で何かが通過した。
「……(ん……? ネジ?)」
――次の瞬間、大小様々な機械部品が嵐のごとくビカムに降り注いだ。
咄嗟に魔法で雷の障壁を厚く張り、防ぐのではなく磁力で反発させ受け流すように直撃を回避する。
「(円柱状の金属板、細長いアンテナ、太陽光のパネル……この部品は)……衛星か」
『ご明察』
ビカムが正体を言い当てる間にも、雨あられのごとく破片が降り注ぎ続ける。
ビカムと戦闘を開始した直後から『エデン』は近辺の軌道周回物にハッキングを仕掛けていた。
通信用・軍事用衛星、宇宙間航行シャトル、船外修理ドローン、軌道質量爆弾、エトセトラ……何百もの旧時代の遺物たち。
まだ電源が生きているだけの、主を失った機械どもの支配者に『エデン』は成り替わると、精密な軌道計算の結果を彼らの
新しい主の命令を疑いもなく、忠実に機械たちは実行した――姿勢調整用のスラスターを噴射し、チキュウへと帰還する落下軌道へ突入する。
半世紀以上前に造られた彼らは最後の命を振り絞ったのか、大半が落下の途中で自壊し、何百という部品へと散華していく。
しかし、それがむしろビカムへの脅威度を何倍にも高めた。たとえネジ一本でも、秒速数キロで地球軌道上を周回していた運動エネルギーは危険極まりない。
結果として宇宙デブリという名の極悪な散弾が生み出される。
対する美剣士は残骸の間を縫うように飛び回り、細かい破片は雷の障壁のクーロン力で弾き、それでも避けえない破片は霊剣フェーレで斬り裂く。
突如、夜が訪れたような暗闇がビカムを包んだ。
「……(ん……?)」
それは、
――国際メガ宇宙ステーションの巨影がビカムに迫っていた。
人類が最後の平和を享受していた時代に建造され、国際的連帯の象徴として静止軌道上を燦然と周回していた、宇宙空間最大級の人工物である。
最終戦争が始まってから、宇宙に打ち上げられるのは宇宙飛行士ではなく軍事兵器ばかりとなり、最後の居住乗組員が帰還してからはただ宇宙を漂う二千トンの廃墟でしかなかった。
かつて国や人種の違いに関わらず、人々が科学の発展のために日夜協力しながら研究に勤しんでいた施設――それを『エデン』は人類の歴史に何ら憚ることなくビカムへの攻撃に転用した。
「……!(こんなものまで――⁉)」
麗しき美身が、宇宙ステーションの影に呑まれた。
美剣士ビカム、これまでか……⁉
『――いや。まだですか』
『エデン』のサーモセンサーは、宇宙ステーションの内部を移動する熱源を捉えていた。
『なるほど、外壁を破壊して内部に侵入することで衝突を免れましたが』
加えて宇宙ステーション自体がデブリの雨除けとなる。回避と防御を両立する……ピンチをチャンスに変えるとはまさにこの男のためにある言葉であろう。
バハムートがビームを放つ。
宇宙ステーションの着弾した箇所は大きく破壊されるが、貫通するほどではなかった。極限環境下を想定した高い耐衝撃、耐熱性能が威力を減衰させた。
『こういうのを人類は〝かくれんぼ〟と呼称していたようですね。遊んであげましょう』
宇宙ステーションに取り付くバハムート。
その竜を模した
外壁越しで見えないはずであろうに、ビカムは攻撃を予知したように宇宙ステーションの内部で爪を回避する。
『ちょこまかと』
あちこちで蜂の巣のように穴が開き、残存空気が白い噴煙を放つ。
ビカムの意表を突かんと、バハムートは宇宙ステーションの裏側――すなわちチキュウへの落下面側に降り立つ。
足下を暗黒の宇宙へ、頭上を青きチキュウへ向けながら、バハムートは再び爪で中身を抉り出さんと、
――その時、バハムートの右脚下の宇宙ステーション外壁が陥没した。
竜の体が倒れ込むように大きく姿勢を崩す。
――バハムートの眼前、外壁を切り裂きビカムが飛び出る。
あまりにもタイミングが良過ぎる。
すなわち陥没は彼の仕掛けによるものに違いない。遠距離攻撃に富むバハムートが自ら近づき――彼の霊剣フェーレの前に『エデン』をさらす最大の好機を生み出すための。
バハムートの口腔が今までで最大出力のビームを放った。
それすらも読み切っていたビカムは身を躱し、彼の背後に暗黒宇宙が見える穴を穿つだけに終わった。
咄嗟に巨竜は
だが、ビカムの剣閃がその最後の防御を切り裂く! 斬り落とされた前腕が魔子粒子にほつれて霧散する。
「……終わりだ(とった――!)」
霊剣フェーレが振りかぶられ、無防備な『エデン』本体を斬断する――
『――ええ。貴方が』
――一筋のレーザーが、ビカムを背後から撃ち抜いた。
「……ッ⁉(が……ッ⁉)」
バハムートのビーム――ではない。
闘いの前、『エデン』に仮想顕現のための電力エネルギーを供給した、発電・送電用衛星からの電力レーザーであった!
しかもそれは、バハムートが直前にはなったビームで宇宙ステーションに穿たれた穴を通してビカムに命中した。
「……最初から、これを……ッ!(狙っていた、のかッ……!)」
『当然です。衛星による狙撃。五十一通りの勝利パターンの一つでしかありません』
再度、バハムートの口腔にエネルギーが収束する。
『お見事でした、美剣士ビカム。私の記憶領域に名を刻み――燃え尽きよ』
残酷なまでに
――閃光が過ぎ去った後、
炎に巻かれた人影が、青き星の大地へ、静かに、力なく、
ゆっくりと……