「はい。かき集めれば元梁山泊の歩兵、二万程は集められますが、今回の戦は呼延凌将軍が言うように、敵の指揮官があまり見えてきません。つまり敵の指揮官さえなんとかできれば、金は南進を継続できないでしょう。古いやり方かもしれませんが、機動力のある騎馬隊で動き回り、隙をついて指揮官を狙うやり方が有効でしょう。水軍は張朔に期待するしかありませんが。南宋の岳霖殿には書簡にて、今の状況を伝えてあります」
「確かに歩兵がいれば腰を据えた戦ができるが、その分動きは鈍くなる。敵は大軍だからな。騎馬で動き回る方が犠牲も少ないだろう」
「轟交賈は領地を持ちません。拠る場所のない軍がいかに兵の心に翳を落とすか、梁山泊は味わっています。此度はこの兵力で行きましょう」
「俺たちもこれくらいの規模の騎馬隊の方が動きやすい。で、我らは何をすればいい?」
「阿列の動きが分かり次第、招集を掛けます。両将軍にはそれまで五千騎の調練をお願いします。」
「なんだ、調練かよ。俺は早く実戦がしたい」
「秦容、やっぱりお前、暴れたいだけだろう」
呼延凌がため息をついた。
「俺はどうしたらいい」
「胡土児殿には賊徒の掃討をお願いしたいと思っています」
「なに、賊徒の掃討だと?」
「はい、この半年、徴兵令が出されてからというもの、中華の金領で賊徒が急激に増えました。銀行鎮のような例が後を絶ちません。今賊徒になる若者は、金の政策の為に食い詰めて、やけになっている者が多いようです」
胡土児に、宋万の顔が浮かんだ。
「その賊徒の掃討に、どれほどの意味がある?」
「掃討と言っても、なるべく殺さないでもらいたいのです。賊徒を解散させ、弱いものに刃を向ける虚しさを、理解させてほしいと思っています。また、仕事をする気のある若者には轟交賈が斡旋します。実は元梁山泊の将軍の高亮将軍や、遊撃隊の耿魁(こうかい)・葉敬将軍にも各地で同様の活動をしていただくよう要請しています」
「それはいい。あいつらなら見事に成し得るだろう。そればかりか義勇軍のようなものまで作ってしまうのではないかな」
呼延凌が嬉しそうに言った。
「規模の大きな賊がいた時はどうする?」
「今のところ五百を超える賊徒の報告はありません。あまり規模が大きくなるとさすがに地方軍に目をつけられるのでしょう」
「分かった。それならここにいる蕭尤(しょうゆう)と耶律哥(やりつか)に、玄旗隊百騎ずつ率いさせよう。こいつらは俺の同心だ。俺の心情も含め理解し、任務を果たすだろう。二人とも、やれるな」
二人が直立し、返事をした。
「分かりました。では胡土児殿は何を?」
「俺は両将軍について調練に参加したい。梁山泊騎兵の動きを身体に染み込ませておきたいからな。どうだろう?」
「いいだろう。梁山泊の騎兵を存分にみるがいい」
呼延凌が胡土児を見つめて言った。
「他にご質問があれば伺います」
「宣凱、ひとつ聞きたい」
「何でしょう、胡土児殿」
「梁山泊と楊令についてなんだが」
三人の顔つきが変わった。