猫魈の女性・黒歌。
彼女は、幼い頃に時空の裂け目へと迷い込んだ事がある。
それは、様々な異世界の「規格外の強者たち」と出会い、彼らの心を動かしていく奇跡の旅の始まりだったのである。
第1章:美食の神と料理人、そして3人の弟子と異世界から来た少女
黒歌が最初に辿り着いたのは、あらゆる食材が生命を謳歌する「トリコ」の世界だった。そこで彼女を拾ったのは、IGO会長・一龍である。
「おやおや、珍しい迷子じゃ。腹が減っておるなら、まずはご飯を食べなさい。」
一龍の温和な笑顔と、彼が振る舞う無限の恵みに、黒歌の警戒心は解けていった。彼の周りには、世界の頂点に立つ者たちが集まっていた。
豪快に酒を煽るノッキングマスター次郎。
不敵に笑う美食會のボス・三虎。
世界のすべてを喰らう力を秘めたアカシア
不敵な笑みを浮かべるジョア。
黒歌は、彼らから様々なものを学んだ。
一龍からは、人を導く心。
次郎からは、技術の使い方。
三虎からは、己の信念を貫く強さ。
アカシアからは、美食の果てに存在する「食」の本質。
ジョアからは、料理人としての技術と知識を学んだ。
彼らは一様に、小さくも健気な黒歌を気に入り、自らの技を惜しみなく教え込んだ。
そして、彼女の中には少しずつ、師匠たちの技と精神が刻まれていった。
特に黒歌が懐いたのは、次郎だった。
ある日、次郎が己の「封印」を一時的に解いた。
「黒歌、これがワシの本当の姿じゃ。」
現れたのは、黒髪のポンパドールに浅黒い肌をした筋肉質な肉体を持つ若い男。
かつてアカシアにその凶暴性を恐れられ、力を封印される前のノッキングマスター次郎「暴獣 二狼」の姿である。
「ワシを怖がらねぇのかい?お嬢ちゃん」
それを見た黒歌は、恐怖するどころか「かっこいいにゃ!」と目を輝かせた。
それを見た二狼は笑い、彼女の頭を撫でてくれた。
そして、黒歌が彼らと過ごす中で、一つの出来事が起きた。
アカシアが語った、とある「時間」の話だった。
「時間・・・にゃ?」
黒歌が首を傾げる。
アカシアは静かに頷いた。
「そうだ。」
彼が語ったのは、鹿王スカイディアによって閉じ込められた、常識では考えられない世界。
現実世界では・・・わずか1秒。
しかし、その内部では・・・。
1億年。
「・・・1億年?」
黒歌の表情が固まった。
「そうだ。」
アカシアは答える。
「外の世界では一瞬に過ぎない時間だ。しかし、その中では1億年という途方もない時間が流れる。」
黒歌は言葉を失った。
想像すらできない。
1年でも長い。
10年なら、人生の大半を占める。
100年なら、人間の一生ほどになる。
それが・・・1億年。
「・・・そんな時間を?」
「経験した。」
アカシアは静かに答えた。
その瞬間。
黒歌の魂に、アカシアの「経験」が触れた。
世界が消えた。
音もない。
光もない。
何もない。
ただ、時間だけが存在していた。
1年。
10年。
1000年。
1万年。
100万年。
1千万年。
そして・・・。
1億年。
黒歌は、その時間を「見る」のではなく、「感じて」いた。
途方もない年月。
その中で積み重ねられた思考。
経験、苦悩、孤独。
そして、極限まで研ぎ澄まされた精神。
「・・・これが、1億年。」
黒歌の身体が震える。
それは、アカシアが積み重ねた1億年分の経験、そのものだった。
だが・・・。
黒歌はそれを拒まなかった。
「・・・アカシアさん。」
黒歌は目を閉じる。
「その経験・・・私にも、くれるにゃ?」
アカシアは静かに微笑んだ。
「それは、もう、お前の中にある。」
その言葉と同時に・・・。
1億年の経験が、黒歌の魂へと流れ込んだ。
それは単なる知識ではない。
極限状態でも思考を止めない精神力。
長大な時間の中で培われた洞察。
そして・・・。
どれだけ長い時間が流れても、自分自身を見失わない心。
それらが、黒歌自身の経験として刻まれていく。
「・・・すごい。」
黒歌はゆっくりと目を開いた。
「私・・・、1億年分の経験を持ってるにゃ。」
アカシアは頷いた。
「そうだ。」
「でも・・・、これって、アカシアさんの経験じゃないの?」
「それは違う。」
アカシアは言った。
「経験は、受け継いだ者がどう生きるかによって、新しい意味を持つ。」
黒歌は胸に手を当てる。
そこには、1億年という途方もない時間が刻まれていた。
「・・・じゃあ」
黒歌は笑う。
「この経験も、私の未来のために使うにゃ。」
それは、アカシアが残したもう1つの贈り物だった。
しかし、別れの時は来る。世界の裂け目が再び開き、黒歌が元の世界へ帰らねばならなくなったとき、一龍達が彼女を呼び止めた。
「黒歌。お前にワシら7人の『技と力』を魂に刻んだ。じゃが・・・。この力は、そっちの世界では強すぎるから、間違っても、他の人を害する時には使わないようにするんじゃよ。
自分の身を守る時や、仲間やその家族を守る必要がある時には、その力を惜しみなく使いなさい。
仲間やその家族が傷つけられたり、侮辱されたりした時も同じじゃ。」
彼らの言葉は黒歌の魂に刻まれ、その肉体に彼らの「姿と力」を模す力が宿った。
「わかったにゃ! みんな、大好きにゃ!」
黒歌は彼らの言葉を胸に刻み、そしてアカシアから受け継いだ「1億年」という途方もない経験を魂に抱えながら、次の世界へと転移した。
第2章:無垢なる全能の神と宇宙の帝王
次に黒歌が足を踏み入れたのは、星々がまたたく広大な宇宙。
そこは「ドラゴンボール」の世界。
「わっ・・・!」
ドサッ。
柔らかな地面に着地した黒歌は、すぐに周囲を見回した。
「ここは・・・、どこにゃ?」
空。
大地。
遠くに見える山々。
一見すれば、普通の世界だった。
しかし・・・。
「・・・変な感じにゃ。」
黒歌は首を傾げた。
この世界には、とてつもなく強い存在がいる。
しかも1人ではない。
「でも・・・、怖い感じじゃないにゃ。」
黒歌が歩き出した、その時だった。
「ねえ!」
「にゃ?」
突然、上から声が降ってきた。
黒歌が顔を上げる。
そこにいたのは・・・。
「誰?」
小さな身体に無邪気な笑顔。
しかし、その存在が持つ力は、黒歌には到底理解できないほどだった。
「ぼく、全王!」
「全王・・・?」
「うん!」
全王は笑った。
「きみは?」
「黒歌にゃ。」
「黒歌!」
全王の顔がぱっと明るくなる。
「友達になろう!」
「・・・え?」
黒歌は目を丸くした。
「いきなり友達にゃ?」
「うん!」
「・・・。」
黒歌は少し考える。
そして・・・。
「いいにゃ!」
「やった!」
二人は、こうして友達になった。
「黒歌、これ知ってる?」
「知らないにゃ!」
「じゃあ、ぼくが教える!」
全王は黒歌を連れて歩き回った。
様々な場所へ行き、様々なものを見て、時には二人で遊んだ。
黒歌にとって、不思議な時間だった。
全王ほどの力を持つ存在なら、もっと威厳があってもおかしくない。
しかし、全王は普通に笑い、遊び、黒歌と話していた。
「黒歌!」
「なんにゃ?」
「これ面白いよ!」
「本当かにゃ?」
「うん!」
黒歌も笑う。
「じゃあ一緒にやるにゃ!」
「やろう!」
その姿だけを見れば、2人はただの仲の良い子供たちだった。
ある日。
2人が遊んでいると・・・。
「全王様。」
声が聞こえた。
黒歌が振り返る。
「にゃ?」
そこに立っていたのは・・・。
大神官。
黒歌は、その人物の姿を見た瞬間に理解した。
この世界には、自分の知らないほどの強者が当たり前のように存在しているのだ、と。
「全王様、この方は?」
大神官が穏やかに尋ねた。
「黒歌!」
全王が嬉しそうに答える。
「ぼくの友達!」
「友達・・・、ですか。」
「うん!」
黒歌は少し照れながら頭を下げた。
「よろしくにゃ。」
大神官は微笑んだ。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。黒歌さん。」
それからしばらくして、黒歌は、また別の場所へ向かっていた。
「全王、また遊ぼうにゃ!」
「うん!」
別れた直後・・・。
「・・・?」
黒歌が立ち止まった。
背後から、誰かの気配がする。
しかも・・・。
先ほどまでとは明らかに違う。
冷たく、鋭く、底知れない気配がする。
黒歌はゆっくり振り返った。
そこに立っていたのは・・・。
白と紫の身体を持つ宇宙人。
最終形態のフリーザだった。
「おや。」
フリーザは黒歌を見る。
「これは珍しい」
「・・・。」
黒歌はじっとフリーザを見る。
「お前、強いにゃ?」
「ほう。」
フリーザが少し驚いた。
「私を見て、最初にそれを尋ねますか。」
「だって、すごい力を感じるにゃ。」
「なるほど。」
フリーザは笑った。
「あなたも、なかなか面白い方ですね。」
フリーザは黒歌を警戒していた。
しかし・・・。
黒歌には、敵意がなかった。
「フリーザは何をしてるにゃ?」
「宇宙を旅しているところです。少々退屈していたところですがね。」
「楽しい?」
「・・・。」
フリーザが少し固まる。
「楽しい、ですか。」
「うん。」
「考えたこともありませんね。」
「じゃあ、一緒に何かするにゃ!」
「・・・随分と積極的ですね。」
フリーザは苦笑した。
しかし、断らなかった。
それから黒歌は、フリーザとも行動を共にするようになった。
フリーザが食事をしている横で、黒歌も食べる。
「美味しいにゃ!」
「それは結構。」
「フリーザはいつもこんなに美味しいもの食べてるにゃ?」
「ええ。まあ、それなりには。」
「いいにゃあ。」
フリーザは、そんな黒歌を見て苦笑する。
「あなたは本当に変わった子ですね。」
「そうかにゃ?」
「普通なら、私を見た時点で逃げますよ。」
「・・・でも、フリーザは私を傷つけてないにゃ」
「それに・・・。」
黒歌はフリーザの目を見る。
「本当に怖い人なら、私とこんなふうに話してくれないにゃ」
「・・・。」
フリーザは、僅かに目を細めた。
「だから怖くないにゃ。」
その言葉に・・・。
フリーザは一瞬、言葉を失った。
やがて、僅かに口元を緩める。
「なるほど。」
そして、小さく笑う。
「あなたは、見た目や評判だけで相手を判断しないのですね。」
「うん!」
ある日。
黒歌がフリーザに尋ねた。
「フリーザの強さ、見てみたいにゃ。」
「私の?」
「うん!」
「・・・仕方ありませんね。」
フリーザは立ち上がった。
「少しだけですよ。」
次の瞬間、圧倒的な気配が広がり、大地が震え、空気が変わる。
黒歌は思わず目を見開いた。
「・・・すごいにゃ。」
「これでも抑えているのですがね。」
「こんな力、どうやって使うにゃ?」
フリーザは少し考えた。
「重要なのは、力の大きさではありません。」
「・・・?」
「いつ使うかです。」
フリーザは黒歌を見る。
「力を持っているからといって、常に振るえばいいわけではありません。」
「・・・。」
「むしろ、本当に強い者ほど、自分の力を制御できます。」
黒歌は真剣に聞いていた。
「じゃあ、強い人は我慢するのも上手なのかにゃ?」
「・・・その解釈で構いません。」
フリーザは笑った。
「あなたは飲み込みが早いですね。」
ある日。
黒歌は全王とフリーザを引き合わせた。
「全王!」
「黒歌!」
全王が駆け寄る。
「誰?」
「フリーザにゃ!」
「こんにちは!」
「これはこれは、全王様。」
フリーザは丁寧に頭を下げる。
黒歌は二人を見て・・・。
「二人とも友達にゃ!」
「友達!」
全王が嬉しそうに笑う。
「フリーザも黒歌の友達?」
「ええ。」
「じゃあ、ぼくとも友達!」
「・・・、これは光栄ですね」
フリーザは笑った。
こうして・・・。
全王、フリーザ、黒歌。
三人の奇妙な関係が始まった。
「黒歌、遊ぼう!」
「うん!」
「フリーザも!」
「私もですか?」
「うん!」
「・・・仕方ありませんね。」
三人で遊ぶ。
全王が笑う。
黒歌も笑う。
フリーザも、いつしか黒歌の前では自然な笑みを見せるようになっていた。
もちろん、フリーザが急に別人になったわけではない。
それでも・・・。
黒歌と一緒にいる時間だけは、少しだけ肩の力を抜いていた。
「フリーザ!」
「なんでしょう?」
「また遊ぼうにゃ!」
「・・・ええ。」
フリーザは答えた。
「機会があれば、また遊びましょう。」
「約束にゃ!」
黒歌が小指を差し出す。
「これは?」
「約束する時に使うにゃ!」
「なるほど」
フリーザは少し困った顔をしながら、自分の指を黒歌の指に絡めた。
「では、約束しましょう。」
フリーザが指を絡める。
「にゃ!」
黒歌が笑う。
「ぼくも!」
全王も二人の指に自分の指を重ねた。
三人は笑った。
やがて――。
黒歌が元の世界へ帰る時が来た。
「もう帰るの?」
全王が寂しそうに言う。
「うん・・・。」
黒歌も寂しそうに頷く。
「でも、また来るにゃ!」
「本当?」
「本当にゃ!」
「約束!」
「約束にゃ!」
全王が笑顔になる。
「また遊ぼうね!」
「もちろんにゃ!」
そしてフリーザも黒歌の前に立つ。
「黒歌。」
「にゃ?」
「1つだけ、覚えておきなさい。」
フリーザの表情が少し真剣になる。
「あなたがこの世界で得たものは、そちらの世界ではあまりにも強大な力となるでしょう。」
黒歌は頷いた。
「うん。」
「ならば・・・。」
フリーザは続ける。
「決して、他人を傷つけるために使ってはいけません。」
「・・・うん。」
「ですが・・・。」
フリーザは微笑んだ。
「あなた自身を守る時」
「大切な仲間を守る時」
「その家族を守る時」
「そして、大切なものを侮辱され、それを守るために力が必要になった時」
「その時だけは、力を惜しむ必要はありません。」
「・・・!」
黒歌は、その言葉を胸に刻んだ。
「分かったにゃ。」
フリーザは満足そうに頷く。
「良い返事です。」
そして・・・。
「もう1つ。」
「にゃ?」
「強さに溺れてはいけません。」
「・・・。」
「あなたが今の心を失わない限り、その力はあなたを支えてくれるでしょう。」
黒歌は笑った。
「フリーザ、ありがとう!」
そして・・・。
「また会おうにゃ!」
フリーザは微笑む。
「ええ、また会いましょう。」
最後に・・・。
「黒歌! また絶対遊ぼうね!」
全王が大声で叫んだ。
「うん! 絶対にゃ!」
黒歌は大きく手を振る。
そして、次の世界への次元の扉が開き、黒歌はその中へ歩いていく。
最後まで全王とフリーザは、黒歌を見送っていた。
帰還した黒歌は、自分の胸に手を当てる。
「全王・・・。」
そして・・・。
「フリーザ・・・。」
異世界で出会った二人の姿が、心に浮かぶ。
すると、黒歌の中から、2つの力が目を覚ました。
全王へと変身する力。
フリーザへと変身する力。
そして黒歌は理解する。
これは、単なる「記憶」ではない。
異世界で出会い、友達になった者たちとの絆。
その絆と、彼らと過ごした記憶を言葉にする。
それを口にすることで、黒歌は彼らの姿と力を、自らの身に宿すことができる。
「全王・・・。」
「フリーザ・・・。」
「・・・ありがとうにゃ。」
黒歌は笑った。
幼い黒歌は、まだ知らなかった。
いつか自分が大切な仲間たちを守るために、この二人から受け継いだ力を使うことになることを。
第3章:魂を裁く死神の頂点、そして、未来を見通す王と神の使徒
霊子が舞う「BLEACH」の霊王宮。
そこに迷い込んだ黒歌を迎えたのは、零番隊の傑物達と、侵略してきたユーハバッハとリジェ・パロだった。
お互い、敵同士。
しかし、黒歌という異物を前に、その場だけは敵対を忘れた。
「おぅおぅ、見慣れねぇ魂魄が降ってきたと思えば、化け猫のお嬢ちゃんじゃねえか!」
最初に声をかけたのは、鳳凰殿の主・二枚屋王悦。
そして、その背後から巨大な存在感を放つ男、真名呼和尚こと兵主部一兵衛が歩み出た。
「ほっほっほ、面白い。これも何かの縁じゃ。我らの力を授けよう。」
王悦は黒歌に刀の真髄と、万物を切り裂く「刃の鋭さ」を教え、一兵衛は、塗られたものは「名前」と「有していた能力」を奪われてしまう「黒の力」、そして、万物に名をつけ、その存在に書き換える「白の力」、さらに全てを無にする「完全なる黒の力」を教えた。
そして、ユーハバッハは、未来を見通す『全知全能』で黒歌を見る。
彼が見た未来には、世界を守るため戦う黒歌の姿があった。
彼は静かに微笑んだ。
「その未来ならば悪くない。」
そして、その魂に「未来予知、未来改変(ジ・オールマイティ)」の力を分け与えた。
さらに星十字騎士団のリジェ・パロも、また黒歌を気に入り、天真爛漫な彼女と語り合い、万物貫通(ジ・イクサクシス)の力を、彼女の瞳へと刻み込んだ。
黒歌は死神や滅却師(クインシー)の始祖や最高峰たちに弟子のように可愛がられ、彼らの背中を見て育った。
だが、ここも彼女の永住の地ではなかった。現世へと繋がる門が歪み、冥界の気配が彼女を引っ張る。
第4章:理不尽を体現する男
辿り着いたのは、「めだかボックス」の世界。
この世界にある、ある里で、黒歌は1人の男と出会った。
頭部には鬼や獣を思わせる大きな角が生え、肩や胸元を露出した簡素な衣装と少ない装飾品を身に付けている、筋骨隆々な大男、獅子目言彦だった。
最初は、穏やかでどこか超然とした【温和モード】の言彦だった。
彼は言葉を発しないが、幼い黒歌がトコトコと近づき、その大きな手に頭を擦り付けると、静かに彼女を抱え上げた。
言葉はなくとも、2人の間には奇妙な友情が芽生えていた。
しかし、世界が彼女を排除しようとした瞬間、言彦の雰囲気が一変した。
世界そのものを抉り取るような圧倒的な絶対不可逆の暴力【暴虐モード】へと変貌したからだ。
世界を破壊しかねないその拳は、黒歌を異世界の衝撃から守るために振るわれた。
しかし黒歌は「すごいにゃ!」と目を輝かせるだけだった。
その純粋さに、暴虐の気配は静かに消えていく。
「・・・なるほど。」
言彦は笑い、言った。
「私の暴力も、お前の言霊に預けよう。」と。
第5章:一撃男と、怪人と呼ばれた男から学んだもの
そして最後に立ち寄った「ワンパンマン」の世界。
そこで出会ったのは、あまりに強すぎて退屈していたヒーロー、サイタマだった。
「へえ、お前、別の世界から来たのか? 変わった猫だな。・・・あ、ゲームやるか?」
高級な肉や宇宙の理を語る強者たちとは違い、こたつでみかんを食べながらゲームをするサイタマとの時間は、黒歌にとって最も平穏で、心地よい時間だった。
しかし、黒歌は見た。
サイタマが、本当に何気なく拳を振るった瞬間を。
「・・・え?」
一見すれば、ただのパンチだった。
しかし、その拳が通過しただけで、周囲の空気が激しく震えた。
それは黒歌がこれまで見てきた強者たちの技とは違った。
それは、技巧でも特殊な術でもない。
ただ、鍛え上げられた肉体から放たれた一撃。
サイタマは黒歌に、自らの身体能力をただ与えるのではなく、その身体をどのように動かし、どのように力を引き出しているのかという「感覚」そのものを体験させた。
サイタマと過ごした日常は、今までとは違い、みかんを食べながら、こたつでゲームをする。
そんな何気ない日常だった。
サイタマと別れた後、黒歌が歩いていると、1人の男と出会った。
その男の名はガロウ。
黒歌は最初に出会った時、男を見て思った。
「・・・怖い。」と。
ガロウは笑った。
「俺が怖いか?」
「・・・ちょっとだけ。」
「正直だな。」
しかし、黒歌は逃げなかった。
ガロウはそんな黒歌を見て・・・。
「お前、戦えるのか?」
「少し。」
「少し?」
「・・・たぶん。」
ガロウは笑った。
「じゃあ、見せてみろ。」
第1の修行・・・観察
ガロウは黒歌に攻撃した。
だが、黒歌は避けた。
右、左、後ろ。
ガロウの攻撃をかわす。
「へぇ。」
ガロウが笑う。
「悪くない。」
もう一度。
黒歌は避ける。
「・・・。」
黒歌はガロウの動きを見ていた。
肩、腰、足、視線、呼吸。
「・・・分かった。」
「何がだ?」
「次、左。」
ガロウが左から攻撃。
黒歌が避ける。
「・・・!」
ガロウが目を細める。
「今の、偶然じゃねぇな。」
黒歌は答えた。
「動く前に、ちょっとだけ分かるにゃ。」
「なるほど。」
ガロウは笑った。
「観察してるわけか。」
第2の修行・・・同じ戦い方を2度使わない
ガロウの戦い方は、単純な力押しではなかった。
相手の動きを見て、理解し対応する。
そして・・・、変化する。
「戦いってのはな・・・。」
ガロウは言った。
「相手が変われば、自分も変える。」
黒歌は頷く。
「1つの戦い方に固執するな。」
「・・・。」
「相手が速ければ対応する。」
「うん。」
「力が強ければ受け流す。」
「うん。」
「技術が高ければ崩す。」
「・・・うん。」
ガロウは笑った。
「分かってきたじゃねぇか。」
第3の修行・・・技を「覚える」のではなく「理解する」
黒歌はガロウの動きを何度も見た。
最初は真似をする。
だが・・・。
「違う。」
ガロウが言った。
「?」
「お前は俺の動きをそのままコピーしようとしてる。」
黒歌は黙る。
「そうじゃない。」
ガロウは自分の拳を見る。
「技の形じゃねぇ。」
「?」
「なぜ、その動きをするのかを理解しろ。」
黒歌は考える。
相手との距離、重心、攻撃の角度、相手の力、自分の位置。
全部を組み合わせる。
そして・・・。
黒歌は、自分の身体に合うように動きを変えた。
「・・・!」
ガロウが目を見開く。
「そうだ。」
黒歌の動きは、もうガロウのものではなかった。
ガロウから学んだものを・・・。
黒歌自身の身体能力と組み合わせていた。
「お前・・・。」
ガロウは笑う。
「覚えたんじゃねぇな。」
「にゃ?」
「自分のものにした。」
第4の修行・・・敗北から学ぶ
ガロウは黒歌に、1つだけ重要なことを教えた。
「負けたらどうする?」
「・・・悔しい。」
「その次は?」
「考える。」
「その次は?」
黒歌は少し考えた。
「・・・次は負けない。」
「それだ。」
ガロウは笑った。
「戦いで一番重要なのは、負けないことじゃない。」
「?」
「負けた後に何を学ぶかだ。」
黒歌はその言葉を覚えた。
1度の失敗。
1度の敗北。
1度の読み違い。
それら全てを経験として蓄積する。
そして次へ繋げる。
それは、後に黒歌が「言霊」を扱う上で極めて重要な性質になる。
最後の会話
別れの日。
黒歌はガロウに尋ねた。
「ガロウ。」
「なんだ?」
「あなたは・・・、どうして強くなりたいの?」
ガロウは少し黙った。
そして答える。
「・・・強さってのが何なのか、知りたいからだ。」
黒歌は頷いた。
「私も知りたい。」
ガロウは笑った。
「なら、覚えておけ。」
「うん。」
「強さは1つじゃねぇ。」
「・・・。」
「力が強い、技術が高い、頭がいい、諦めない、誰かを守れる。全部、強さだ。」
黒歌は、その言葉を心に刻んだ。
ガロウからの最後の忠告
「ただし・・・。」
ガロウの表情が真剣になる。
「お前が手に入れる力は、たぶん尋常じゃない。」
「・・・。」
「だから、使い方だけは間違えるな。」
黒歌は頷く。
「他人を傷つけるためには使わない。」
「ああ」
「でも・・・。」
黒歌は拳を握る。
「自分を守る時は?」
「使え。」
「仲間を守る時は?」
「使え。」
「仲間の家族が傷つけられたら?」
「使え。」
「大切な人を馬鹿にされたら?」
ガロウは笑った。
「その時は・・・。」
拳を握る。
「遠慮する必要なんてねぇ。」
黒歌は満面の笑みを浮かべた。
「分かったにゃ!」
ガロウは最後にこう言った。
「お前は俺の技を覚えたんじゃねぇ。俺と戦った時間そのものを覚えたんだ。」
「・・・じゃあ、ガロウと過ごした時間も、私の力になるのかにゃ?」
「ああ。忘れなきゃな。」
「絶対に忘れないにゃ。」
第6章:恐怖の化身と、孤独な九尾
サイタマとガロウとの日々を終えた黒歌は、再び時空の裂け目へと吸い込まれた。
辿り着いた先は、人と妖が長い年月をかけて争い続ける世界「うしおととら」。
空は赤黒く染まり、大地には妖気が渦巻いていた。
幼い黒歌は周囲を見渡し、小さく首を傾げる。
「ここは・・・、どこにゃ?」
その瞬間、世界が震えた。
空を覆い尽くすほど巨大な妖気に、圧倒的な恐怖。
生き物として本能的に膝をつきたくなるほどの存在感。
九本の尾を揺らしながら現れたのは、あらゆる妖怪の頂点に君臨する存在である白面の者だった。
金色に輝く毛並みに、白い仮面のような顔、そして、黄金の九尾。
見る者すべてに絶望を与える妖怪。
普通ならば、その姿を見た瞬間に心を壊される。
しかし、黒歌だけは違った。
「ふわぁ・・・!」
目を輝かせながら駆け寄っていく。
「きれいな狐さんにゃ!」
その一言に、世界が止まった。
白面の者は数千年もの時を生きてきた。
人間も妖怪も、皆、自分を恐れ、憎み、逃げてきた。
だが、この小さな猫魈だけは違った。
「我が・・・、怖くないのか?」
白面の者は静かに尋ねる。
黒歌は首を横に振った。
「全然怖くないにゃ!」
「ふわふわしてそうだし!」
そう言うと、ぴょんっと跳び上がり、白面の者の巨大な頭へ抱きついた。
「わぁ〜!ふかふかにゃ!」
白面の者は、数千年に及ぶ妖生で初めて、完全に固まった。
「・・・。」
「・・・・。」
「・・・・・。」
遠くから様子を見ていた妖怪達は、腰を抜かした。
「は・・・、白面様に・・・、」
「抱きついたぁぁぁぁ!!」
「あの白面様に触れたぞ!」
「何千年誰も近づけなかったお方だぞ!」
しかし、予想とは違い、白面の者は静かに笑った。
「・・・面白い。」
何千年もの孤独。
誰も近寄らなかった。
誰も笑いかけてくれなかった。
その孤独を、この小さな猫が、
ほんの数分で溶かしてしまったのである。
それから黒歌は、白面の者と毎日のように遊んだ。
大きな尾に飛び込み、昼寝をし、鬼ごっこをし、妖怪達と一緒に遊び回る。
「また乗せてにゃ!」
「好きにするがよい。」
九本の尾で空を飛ぶたび、黒歌は楽しそうに笑った。
その笑顔を見るたび、白面の者もまた、優しく微笑むようになっていく。
妖怪達は信じられなかった。
「あの白面様が・・・、笑っている。」
「世界が終わるぞ・・・。」
ある日、黒歌は白面の者へ尋ねた。
「どうしてそんなに1人だったの?」
白面の者は静かに答える。
「我は恐怖そのもの。」
「誰も近付こうとはせぬ。」
「皆、我を倒そうとする。」
黒歌は小さく笑った。
「でも私は友達にゃ。」
その言葉に、白面の者は目を閉じた。
「・・・そうか。」
「友達、か。」
長い時を生きても、その言葉を向けられたことは、1度も無かった。
やがて、再び時空の裂け目が現れる。
別れの時間だった。
黒歌は涙を浮かべる。
「帰らなきゃいけないにゃ・・・。」
白面の者は静かに頷く。
「そうか。」
長い沈黙。
そして、巨大な九尾が、黒歌を優しく包み込んだ。
「黒歌。我はお前を友と認めた。」
「我は今まで、恐怖は憎しみしか生まぬと思っていた。」
「だが、お前だけは恐怖の向こうに、友を見た。」
「だからこそ、我が力をお前へ託そう。」
黄金の妖気が黒歌の魂へ流れ込む。
九尾を象徴する妖力。
相手の心を惑わす幻術。
世界を震わせる圧倒的な妖気。
そのすべてが、黒歌の言霊へと刻まれていく。
「お前なら、この力に飲まれることはあるまい。」
黒歌は最後に白面の者へ抱きついた。
「また会いに来るにゃ!」
「うむ、いつでも来るがよい。」
最終章:別れの日
長い旅も終わる。
世界を繋ぐ扉が再び開いた。
黒歌は元の世界へ帰る時が来た。
一龍が優しく頭を撫でる。
「黒歌。この力は、そっちの世界では強すぎる。間違っても、他の人を害するためには使ってはいけない。」
次郎は豪快に笑う。
「だが、自分を守る時、仲間や家族が傷付けられそうになった時は遠慮するな。」
二狼は真剣な眼差しで続ける。
「仲間を侮辱された時もだ。そんな時は、ためらわず牙を剥け。」
三虎は静かに頷く。
「その怒りは、大切な者を守るためだけに使え。」
アカシアも静かに告げる。
「力とは意思だ。意思を見失うな。」
ジョアは微笑んだ。
「力をどう使うか。それを決めるのは、いつだってあなた自身です。」
全王とフリーザは小さく手を振る。
「また遊ぼうね!」
「また会う時を楽しみにしています。」
大神官も微笑む。
「あなたの未来に幸運を。」
兵主部一兵衛が巨大な筆を肩に担ぐ。
「力は振るうためではない。守るためにある。」
二枚屋王悦は笑った。
「カッコよく生きろ!」
ユーハバッハは静かに未来を見る。
「お前は多くを救う未来を持つ。」
リジェ・パロも微笑む。
「神に恥じぬ生き方を。」
獅子目言彦は穏やかな表情で言う。
「暴力は目的ではない。」
そして最後に真剣な目で告げた。
「仲間や家族が傷付けられるなら、迷う必要はない。」
サイタマは照れくさそうに頭を掻く。
「難しいことは分かんねぇけどさ、自分が後悔しない方を選べ。」
ガロウはぶっきらぼうに言った。
「1人で勝つことだけが強さじゃねぇ。誰かと一緒に立ち上がれる奴も、十分強い。」
白面の者は穏やかに微笑む。
「恐怖とは、力なき者を踏みにじるためにあるのではない。」
「守るべき者へ迫る悪意を退けるためにある。」
「お前なら、その意味を違えまい。」
黒歌は涙をこらえながら深く頭を下げた。
「みんな・・・、ありがとうにゃ。」
その瞬間、全員の力が優しい光となって黒歌へ集まる。
しかし、それは本人の力を奪うものではない。
黒歌の持つ「言霊」の才能に刻まれた、新たな可能性だった。
エピローグ:言霊の覚醒
冥界へと戻ってきた黒歌は、成長し、妹の白音を守るために「はぐれ悪魔」となり、周囲からは恐れられる日々を過ごす。
だが、彼女の瞳に絶望の色はなかった。
「ふふん、みんな言いたい放題にゃ。でも、私には大切な友達(おじいちゃん達)がくれた、最高の宝物があるから平気にゃ。」
黒歌はそっと胸に手を当てる。彼女の魂の中には、異世界の強者たちの姿と力が眠っている。
「『力と技術のハイブリッドモンスター、ここに降臨!』」
黒歌が呟くと、彼女の小柄な身体が眩い光に包まれる。
光の中から現れたのは、黒髪のリーゼントをなびかせ、浅黒く引き締まった筋肉を持つ若い男の姿。
その身から放たれるのは、世界を震撼させる暴獣の気圧。
「『ぼくが消せば、それで終わり』」
言霊を変えれば、その姿は一瞬で、宇宙のすべてを握る全能の神のシルエットへと変貌し、周囲の空間が恐慌を来してパチパチと消滅し始める。
「『世界は食で満ちている』」
「『命も世界も止められる』」
「『私は飢えそのもの』」
「『我は、飢えと向き合い、共に歩む者』」
「『奇跡は料理できる』」
「『ぼくが消せば、それで終わり』」
「『宇宙に君臨する帝王』」
「『ワシは全てに名を付けし者』」
「『ちゃんボクの刀は一振一殺』」
「『全ての未来は我が掌の上』」
「『この銃口は全てを貫く』」
「『世界のすべてに、消えない傷を』」
「『一撃で、戦いは終わる』」
「『強者は弱者を守るもの』」
「『我は災厄そのもの』」
姿を変えるごとに、彼女の内に去来するのは、異世界の友達たちの温かい言葉。
私利私欲では使わない。
誰かを無闇に傷つけるためにも使わない。
これは、自分と仲間を守るための力。
黒歌は、この力に「言霊」と名前をつけた。
「・・・でもね。もし、私の可愛い白音や、私の大切な仲間を馬鹿にする奴がいたら・・・。」
元の美しい猫魈の姿に戻った黒歌は、妖艶に、そして底知れない笑みを浮かべて唇を舐めた。
「その時は、友達がくれた力で、必ず守り抜いてみせるにゃ。」
異世界の神々と強者たちに愛された猫魈は、静かにその爪を研ぎ澄ましている。
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次回「暴獣VS追手の悪魔」
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
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前日譚
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倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す